椿(シンショッコウ)
岸田政権の支持率が低すぎる。NHK始め、各新聞社の世論調査の結果が軒並み、支持率20%を切っている。漫然とした反対ではなく、支持しないという明確な表明が、70%を超えている。
大きな政治的失態がないのにどういうことなのだろうか。また、経済が上向きの時に内閣の支持率が下落するというのは、何か根本的な欠点があるのではないか、と思う。
政治資金パーティーの処理問題とか統一協会問題とか、野党やメディアが大騒ぎをしているが、本当の下落はそんなことに起因しているのではないはずだ。
私は2つの問題があると思う。
一つは語り口の問題。
例えば以下のように話す。
「この問題については、識者や党内の意見をよく聞き、内容を精査し、然るべき措置を早急に検討し、国民の意向に反しないように、近日中に結論を得るべく、現在、鋭意進めているところです」
何を言っているのか、わからない。本人は懇切丁寧な言い回しで、誤解のないように努めているのだろうが、実質的な中身が何もなく、ただ定型的な用語を並べているに過ぎない。おそらく外務大臣時代の対応が影響しているのだろう。具体的な問題は事務方が処理し、あとは良好な関係を維持するというスタイルである。
いまのネット時代では、表現を畳んで、いかに短く、意図を正確に伝えるかに腐心しているのに、こんな冗長な表現では誰も支持しないのは明らかである。
もう一つはテーマの捉え方。典型的なのは少子化対策。
少子化を政治的課題にするのはなぜなのか、という基本的な思想がない。人口減少が国力の衰退を表すからなのか。核家族時代で育児に手をかけられない家庭が多いからか。人口増は何のための政策なのか、その目的がいっこう明確ではないのである。そしてこども庁などという役所まで作る。ただ単に人口減を憂いているにすぎない。
人口が増えることは必ずしも善ではない。明治初期は4000万、産めや増やせやの戦中でさえ8000万だ。人口は文明や生活の理想と重なり合っていて、子ども減は必ずしもマイナス方向に向かっているわけではない。現在の12,000万人は戦後のべビーブームの名残である。
少子化対策に教育費の免除を加えるというのも論理不明である。
岸田内閣の支持率低迷は、現今の政治的課題を的確に捉えていないからである。ネット論者の池田信夫氏らは、少子高齢化の問題は、少子のほうではなく、高齢化のほうにあると強調している。特に高齢者への高度な医療が若年層の負担費用を高め、彼らの生活全般を萎縮させていると。
政治とは統治のことである。統治を生活の隅々まで巡らすのは、自主独立の意欲をそぐ。岸田内閣には政治の課題が見えていないのではないか。
【彬】