伝えたんく

日々の何気ないできごとに感じた幸せ

阿呆煙突

2008-12-28 23:57:38 | 言いたんく

 「阿呆煙突?」

 夏の旅行メンバーのF氏が、生まれ故郷の日立市を案内して下さるというので行ってみた。

 F氏が小さい頃遊んだという日鉱金属には、竣工当時世界一(155.7m)の高さを誇った煙突があるという。そう、日鉱金属と言えば、銅の精錬で有名な所だ。銅の精錬というと一般的には日光の足尾銅山がネームバリューがあるだろう。しかし、足尾鉱毒事件という社会的にマイナスのイメージが付きまとう。

 この日鉱金属では、創始者の久原房之助が鉱山事業の宿命である煙害を、高い煙突の建設と植林により地域との共存を可能にした実績がある。

 その時の煙突が最初の写真の上にある煙突だ。F氏の話では、折れてその残骸しか残っていないということだった。

 今日足を運び、車を停めて煙突を見たF氏はびっくりしていた。

 「まだ、現役なんだ・・・。」

 てっきり、もう使われていないと思っていたという。


日興金属全景 → Map

  この煙突が出来る前の時期は、各地の事業所で煙害による被害が増大していたという。そのため、政府命令で造られた煙突の1つが、大煙突の手前にある太い煙突だ。当時の専門家を集めて建設された煙突の役目は、排出される煙を空気と混合して薄め、大気中に出すというものだった。しかし、薄めたために規制値をクリアーしたが、排煙温度が下がったため、空に上らず地表を這い被害は甚大にものになってしまったという。

 このことから、この煙突をバカ煙突とか阿呆煙突とか呼ぶようになったという。

 そして久原は、このようなことは2度と会ってはならないとして、政府に見せ付けるために「残せ!」と部下たちに命令し、いまだにこの地にあるという。


日鉱記念館(入場無料) → Map

 これまでの日鉱金属の歴史が納められている博物館と言ってもいい。
こんな言い方は悪いと思うが、他地域の記念施設と比べて、非常に明るい感じがする。そして未来を見据えているのだ。銅山の閉山とともに、産業の終焉を迎えたところもあると思うが、ここは現在進行形である。いまや世界と連携して未来を見ている大会社である。

 F氏は言う。「日本の教育も失敗例だけではなく、このような成功例に目を当てて、子供達に夢を持たせてはどうか。」

 ゆきたんくも同意見だ。


久原房之助氏の銅像(記念館内)

 自分のことだけではなく常に全体のバランスを考え、かかわる者全てとの共存を大切にした大人物の自宅は誠に質素な造りであった。日鉱記念館が自宅傍に建てられたので、記念館の敷地傍らに静か佇んでいる。

 

コメント (2)
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