読んだ本の数:9
読んだページ数:2841
ナイス数:416
ぶたぶたは見た (光文社文庫)の感想
再読)ぶたぶたさんがベビーシッター業から広がって家政夫業も始めているシリーズ関連(ややこしいな笑)で手に取る。あーそーかこんなお話だったか。家政夫業よりもむしろ探偵さんの方向に活躍、というか緩衝材役というかなんというか。そして長編なのが今はなんだか珍しく思う。こうなった動機も行動もドン引きで怒りすら感じるのは親だから、なのだけれど、二つの家庭がそれなりにほのぼのと丸く収まっていくのはよかった。家族八景パターンの「ぶたぶたは見た」をもっと読みたいなと思う。ってか「出張料理人ぶたぶた」はそのパターンですね。
読了日:05月31日 著者:矢崎 存美
出張料理人ぶたぶた (光文社文庫)の感想
再読)一年経って、あまりにも変わらない日常。昨年よりもワクチンという武器が手に入ったけれど心はかなりくたびれていて。そんな中で読み直すと、この一冊のあちらこちらでぶたぶたさんと登場人物たちの言葉や姿、行動に涙が浮かぶ。「何が食べたいですか?」と尋ねられ、作ってもらう温かな食卓。ああ、いいなぁ。ぶたぶたさんを通した「今の日常」現実を踏まえながらも決して息苦しくならず、あったかい笑顔も涙も含んで生きる世界が描かれる。沈みかけていた気持ちを楽にしてもらって、このシリーズを知っていることを心から嬉しく思う。
読了日:05月29日 著者:矢崎 存美
ひとめあなたに… (創元SF文庫)の感想
再読)え?江古田は「えこだ」じゃなくて地名は中野区で「えごた」なの!?新江古田駅は「しんえごたえき」なの!!??←そこかいっ!あとがき読んでびっくり。はい。西武池袋線の江古田駅に一時娘が在まして一回だけ利用したんです。素子さん談通り何にも目印のない駅(地下)娘のアパートまでもまるで迷路。これが江古田かぁ、と思い浮かべられる日が来るとはなぁなんて1人ほくそ笑み。。と、余談が長くなりました。今この時期に読むには色々しんどい感情も湧き上がり、でもラスト。心からこの2人が会えたことを嬉しくそして幸せに思いました。
読了日:05月27日 著者:新井 素子
グリーン・レクイエム 新装版 (講談社文庫)の感想
講談社文庫50周年で新装版としてまた手にしました。3作品収録。表題作のグリーン・レクイエムは続編も含めて近年何度も読んでまして、それでも淡く切ない思いともどかしさに気持ちを揺さぶられます。そして久しぶりに読む他の2作品。「週に一度のお食事を」は短編で実に面白い。素子流の吸血鬼は怖くないけど社会的に?怖いんです。そして「宇宙魚顛末記」これは本当に久しぶりでそしてちょっとやっぱり苦手なお話。もう片方の地球のお話は何度も読んでいるのにこちらをなかなか読まない理由を思い出しました。が、それも含めて物語作りへの愛→
読了日:05月23日 著者:新井 素子
麦本三歩の好きなもの 第一集 (幻冬舎文庫)の感想
初作家さん)上の子から貰ったもの)なかなか独特の文体と言葉で初めは困ったな、状態。が、その言葉運びにだんだん慣れて来た「麦本三歩は君がすき」辺りから、「ん?」となりその後の各所でくすくすと笑ったりこらこらとチョップしたり、ぐっと背筋を伸ばしたり。なんだか楽しんで読んでいる自分に気が付いた。初作家さんなのでわからないけれど、独特のクセのある三歩の世界はその文体とあいまって、読み進むうちにクセになりそうな、そんな作品でした。おかしな先輩の言葉がガツンときました。
読了日:05月18日 著者:住野 よる
鬼を待つ (光文社文庫 あ 46-12 光文社時代小説文庫)の感想
再読)再読コース一周完了。確かにこの最新刊は清之介の人間らしさがストレートに表に出ているんだな、と始まりの一冊を思いつつ感じる。江戸の町に根を下ろしてから戦い続けてきてそれなりに強く深く根を張って来たはずなのだけれど、「兄」という縛り、呪縛(?)が今後どんな形で彼を襲うのか怖くなる。花を愛で空を仰ぎ風を寿ぐ。そんな何でもない日々の積み重ねがずっと続いて欲しい。それは無理な相談だね、と分かっていながら。なんか感傷的だな。木暮の旦那に鼻で嗤われるね。
読了日:05月16日 著者:あさのあつこ
雲の果 (光文社時代小説文庫)の感想
再読)木暮信次郎は人の生々しくおどろおどろしい内面に容赦なく踏み込む。生臭く目を逸らしたくなる残酷さがあるその内側に。今回は遠野屋清之介の来し方に重なる生き方をしてきた女がひとり。そして遠野屋の大番頭であり最後まで清之介に心を開かなかった喜之助の来し方が重なる、恐ろしくも哀しくもある物語。人はどこまで残酷になれるのか。なんだかその部分に筆者は迫ろうとしているのかな、とふと感じた。怖い。でも目を逸らさない。伊佐治の感じるものを支えにこの世界に臨む。
読了日:05月12日 著者:あさの あつこ
花を呑む (光文社時代小説文庫)の感想
再読)こんなに毒のある話だったのか。木暮進次郎という人物は一体どんな生き方をしてきたんだろう、と最後の最後で本気で思う。かといって目を背け否定し尽くすこともできないんだよね。そこが、つまり伊佐治の毎回の葛藤と同じということか。清之介と兄との諸々は完全に抜け落ちていて我ながら情けないけど、兄を救いたいと願いかつての兄を恋う気持ちもとてもよくわかる。人の闇を描きつつ、でも先には光があると願う。ところで兄上の名前の読み方。かわった?よね?なんで?ルビのミス??うーむ。
読了日:05月09日 著者:あさの あつこ
地に巣くう (光文社時代小説文庫)の感想
再読)今回ふるった刀は、人を、助けるため。過去の刀とは全く違う。それでも。また、人を、斬った。緋色の線をわずかに外して。清之介が捕まったのは父親か、それとも木暮信次郎か。おりんの守りはきっと届いていると、そう願い祈る。そしてそう。解説のとおり、読み手はこの先一体どこに進んでいくのかを、毎回固唾を飲んで見守っている。本当に、ここまで読み進むと、祈るような気持ちで。
読了日:05月05日 著者:あさの あつこ
同じ作品の1巻なのに表紙が2種類。そして新刊情報(単行本)が重なって1巻を2冊買いしちゃったと、一冊娘から貰った今月の初作家さん。
独特の言葉の選び方や運び方に馴染めないまま読み終えて、続きはいいかな、なのだが、娘は気に入っている。この感覚の違いはもしかして、わたしが新井素子に出会った時と同じなのでは?と、ふと、考えた。
掬い上げる懐の広さ、大きさ。柔らかさがなくなってるかな、と。
んー。うまく言えない。
ただ、こんなことを感じさせた作家さんは初めて。何というか馴染むとクセになりそうな何か、を感じたんでした。