私は旅行の帰路、苦手な航空便に乗り、疲れを感じていたのか、
座席のシートに身を任せると、直ぐに眠りこんだ・・。
目覚めると、前方に『お食事のご希望の方は、前の方でご用意しております』
と案内表示板が見えたのである。
私はうつろな思いで、前に進むと連結列車のような処を抜けると、
誰も乗っていないお座敷客車のような室を通り過ぎたのである。
そのまま前方に進むと、昭和30年代に街で観られた大衆食堂のような情景であり、
デコラ調のテーブルが幾つか並んで折、電子レンジが各テーブルに置いてあった。
そして、入り口の周囲には、魚の干し物があり、
カマス、鯵(あじ)などの干し物が並んでいた。
私は二枚の鯵を買い求め、ひとつのテーブルに座ろうとした時、
奥まった席でご高齢の男性がいて、私を手招きをしたのである。
私はそのお方に近づくと、テーブルの中央に七輪があり、
赤くなった炭火、網の上にカマスが載(の)せられていた・・。
『よかったら・・座らない・・』
とそのお方は私に微笑みながら、云った。
『先生の・・随筆・・いつも拝読致しまして・・』
と私はそのお方に云った。
『鯵・・載せなさいよ・・』
と私は促された。
私は鯵を一枚載せたのであるが、
そのお方は、隅に富山産の地酒の一升瓶、
目の前に茶碗に入った酒、そして灰皿が置いてあった・・。
そのお方は、私に隅にあった茶碗を私の前に置き、
一升瓶から酒を注(つ)いだのである。
その後、ピースの缶から両切りのショート・ピースを口に咥え、
洒落たライターで火を点けて、美味しそうに喫ったりしている。
私は茶碗酒を呑みながら、煙草のチェリーを取り出して、
煙草を喫ったりした。
『先生・・飛行機でこのようなこと・・
出来るなんて・・
夢のようですね・・』
と私は嬉しげにそのお方に云った。
鯵から煙が出て、窓際に大きな換気扇が幾重にも並んで折、
私はこんなことって飛行機でありえるの、
と思ったりしたのである。
『鯵・・焼き過ぎよ・・』
と私はそのお方から忠告されたりした。
『そうですよねぇ・・』
と私は云いながら、網の上に焼いていた鯵を皿に移し、
醤油を少し垂らして、食べようとしたら、
目の前に居たお方が忽然と消えたのである・・。
私は不思議な思持ちで、周囲を見まわしたりした・・。
私は昼寝から目覚めた・・。
いくらなんでも、飛行機の中で、七輪の炭火で鯵を焼くなんて、
有り得るはずがない、と思ったりした。
そして、そのお方も確か5年前の春に他界されているので、
どうしてなの、とぼんやりと私は思い返したりしたのである。
しばらくして、私は最近は鯵の干物を食べていなかったし、
何よりこのお方の遺(のこ)された随筆の数々を再読していなかったことに、
気付かされたのである。
そのお方は久世光彦〈くぜ・てるひこ〉と称せられた方で、
テレビの演出、作詞家、そして小説家と多芸な方で、
私はこの人の随筆を敬愛しながら、愛読したひとりであった。
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座席のシートに身を任せると、直ぐに眠りこんだ・・。
目覚めると、前方に『お食事のご希望の方は、前の方でご用意しております』
と案内表示板が見えたのである。
私はうつろな思いで、前に進むと連結列車のような処を抜けると、
誰も乗っていないお座敷客車のような室を通り過ぎたのである。
そのまま前方に進むと、昭和30年代に街で観られた大衆食堂のような情景であり、
デコラ調のテーブルが幾つか並んで折、電子レンジが各テーブルに置いてあった。
そして、入り口の周囲には、魚の干し物があり、
カマス、鯵(あじ)などの干し物が並んでいた。
私は二枚の鯵を買い求め、ひとつのテーブルに座ろうとした時、
奥まった席でご高齢の男性がいて、私を手招きをしたのである。
私はそのお方に近づくと、テーブルの中央に七輪があり、
赤くなった炭火、網の上にカマスが載(の)せられていた・・。
『よかったら・・座らない・・』
とそのお方は私に微笑みながら、云った。
『先生の・・随筆・・いつも拝読致しまして・・』
と私はそのお方に云った。
『鯵・・載せなさいよ・・』
と私は促された。
私は鯵を一枚載せたのであるが、
そのお方は、隅に富山産の地酒の一升瓶、
目の前に茶碗に入った酒、そして灰皿が置いてあった・・。
そのお方は、私に隅にあった茶碗を私の前に置き、
一升瓶から酒を注(つ)いだのである。
その後、ピースの缶から両切りのショート・ピースを口に咥え、
洒落たライターで火を点けて、美味しそうに喫ったりしている。
私は茶碗酒を呑みながら、煙草のチェリーを取り出して、
煙草を喫ったりした。
『先生・・飛行機でこのようなこと・・
出来るなんて・・
夢のようですね・・』
と私は嬉しげにそのお方に云った。
鯵から煙が出て、窓際に大きな換気扇が幾重にも並んで折、
私はこんなことって飛行機でありえるの、
と思ったりしたのである。
『鯵・・焼き過ぎよ・・』
と私はそのお方から忠告されたりした。
『そうですよねぇ・・』
と私は云いながら、網の上に焼いていた鯵を皿に移し、
醤油を少し垂らして、食べようとしたら、
目の前に居たお方が忽然と消えたのである・・。
私は不思議な思持ちで、周囲を見まわしたりした・・。
私は昼寝から目覚めた・・。
いくらなんでも、飛行機の中で、七輪の炭火で鯵を焼くなんて、
有り得るはずがない、と思ったりした。
そして、そのお方も確か5年前の春に他界されているので、
どうしてなの、とぼんやりと私は思い返したりしたのである。
しばらくして、私は最近は鯵の干物を食べていなかったし、
何よりこのお方の遺(のこ)された随筆の数々を再読していなかったことに、
気付かされたのである。
そのお方は久世光彦〈くぜ・てるひこ〉と称せられた方で、
テレビの演出、作詞家、そして小説家と多芸な方で、
私はこの人の随筆を敬愛しながら、愛読したひとりであった。
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