遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日露首脳会談 「特別な制度」 その後

2017-03-04 23:58:58 | ロシア全般

 昨年末に行われた、プーチン大統領の来日による両国首脳会談。期待の風が吹きましたが、親露発言のトランプ大統領誕生のせいなのかどうか、プーチン大統領の強気姿勢への転向があり、冷や水がかけられました。
 その中で、ロシア側はしっかり成果を得たとされ、延々と続けられた調印の演出があった、北方4島での共同経済活動。ロシアの領土主権下で行われるとのプーチン大統領の、強気でむしろ後退とさえいえる物でしたが、交渉が続けられることとなり、本交渉が3月中旬に東京で始まるのだそうです。
 このところ、トランプ政権の、ロシア接近で辞任者が出たり、虚偽発言者が出るなど、親露政策に逆風が吹き始めてきました。
 それとの関係があるのかどうかは定かではありませんが、ここにきて、ロシア側が、ハードルを下げつつあるのだそうです。
 

北方領土「共同経済活動」に蠢く期待と疑心暗鬼 未知の実験に踏み込む日露の“計算” | JBpress(日本ビジネスプレス) 2017.3.2(木) 新潮社フォーサイト 文:名越健郎

 成果に乏しかった昨年12月のプーチン・ロシア大統領の訪日で、唯一のサプライズが北方4島での共同経済活動に向けた協議開始
だった。「特別な制度」を協議する秋葉剛男外務審議官とモルグロフ外務次官による本交渉が3月中旬に東京で始まる。
 ロシア側は当初、ロシアの法律の下で実施すると牽制し、交渉難航が予想されたが、
ここにきてハードルを下げつつあり、早期合意を目指したい構えだ。背景には、ロシアの財政難や北方領土開発の難度の高さがありそうだ。

■「日本人は兄弟姉妹」
 プーチン訪日について、モスクワでは「プーチン外交の大勝利」(イズベスチヤ紙)、「G7の制裁による封鎖を突破」(コメルサント紙)、「日本資本を極東に引き込み、中国資本の影響力を抑制」(ベレンジエフ・プレハノフ経済大学准教授)などとシニカルな見方が多かったが、極東では日露関係進展を前向きに歓迎する見方が支配的だった

 サハリン州選出のカルロフ下院議員は「日露関係は関係拡大の新段階に入った。日本の投資、技術をサハリン州に誘致することが発展に弾みをつける」と歓迎。極東の知事らも「82の経済協力文書のうち、6つはヤクート(サハの旧名)にかかわるもので、サハ共和国は日露関係改善で積極的地位を占めたい」(ボリソフ・サハ共和国首長)などと手放しで評価している。
 地元メディアによれば、サハリン州では首脳会談をめぐる円卓会議が開かれ、「プーチン大統領は日本で極めて温かく歓迎された」「サハリンは水産加工、養殖、林業、エネルギーなど日本の高い技術の進出を待ち望んでいる」といった意見が出された。
 長年北方領土に居住したプロトニコフ・ユジノサハリンスク市議会副議長は席上、「私は南クリル(千島)の住民を代表して話したい。クリルの住民は今、日本のプレゼンスを受け入れる用意がある。住民は日本人を兄弟姉妹のようにみなしている」と述べ、共同経済活動への期待を表明した。

■「トロイの木馬」
 
サハリン州当局は4島での共同経済活動に向けて、日本人の受け入れ準備を進めている


 プーチン訪日後の12月17日、大統領に同行したサハリン州のコジェミャコ知事は都内で、高橋はるみ北海道知事と会談し、「われわれは南クリルでのプロジェクト実現に向け、日本企業が参加する機会を提供する用意がある。日本人を島に受け入れる準備を始めており、高橋知事がまずビジネスマンらと南クリルに来てほしい」と述べた。高橋知事は「共同経済活動は政府の管轄」とかわしたが、
サハリン州は既に、共同経済活動に関する提案をロシア外務省に提出し、同省と協議を重ねている


 サハリン州では2年前、ホロシャビン前知事が巨額の収賄で逮捕され、連座した州幹部が大量に失脚した。秋田犬を2匹飼い、日本名を付けている
コジェミャコ知事は、前知事と違って親日的発言が目立つ

 ウラジオストクの
ヤコブチュク・イノベーション発展研究所所長は地元メディアで、「共同経済活動では、日本企業に対して広範な優先権やアクセスが与えられるだろう。ロシアの法律に従うというのは建前で、実際には日本に特恵的な条件が与えられ、いずれ島の日本化が進むだろう」と述べ、「特別な制度」の協議でロシアが譲歩するとの見方
を示した。
 これに対し、保守派の間には警戒感が強く、
コシキン東洋諸国大学教授はネットサイトの「REGNUM」で、「経済力でロシアをしのぎ、財政も豊かな日本は数年内に島の全経済を手中に収めるだろう。日本人居住区を作り、ロシアの主権を奪ってしまうだろう。クリルを日本に明け渡すプロセスとなりかねない」とし、「クリルにおけるトロイの木馬」と警告した。
<中略>

■未知の実験
 大統領訪日時に発表されたプレス向け声明によると、両首脳は関係省庁に対し、4島周辺での漁業、海面養殖、観光、医療、環境などの分野で共同経済活動の条件、形態の調整に関する協議を開始するよう指示し、共同経済活動が「平和条約の締結に向けた重要な一歩になり得る」と明記した。
 ロシア側では、外務省、極東発展省、サハリン州、税関当局などがチームで準備を進めている。日本側でも、共同経済活動の具体策を協議する省庁横断の
「共同経済活動関連協議会」の初会合が2月7日に開かれ、座長の岸田文雄外相が準備を急ぐよう指示した。協議は3月中旬から断続的に開かれる見通し
だ。

 
在京ロシア筋は、「共同経済活動は島を協力と平和の土地にする雰囲気づくりを進めるものだ。まず具体的に小さなプロジェクトから始め、大きなものにつなげたい。最初に何をやるかを決め、それから制度を作ればいい」と述べ、先にプロジェクトの協議から入る考えを示した。日本側は、日本の法的立場を損なわないよう、先に法制度を整備したい構えで、このあたりで難航
するかもしれない。
 ロシア側は1998年に合意された4島周辺での漁業協力の枠組みを発展させたい意向だが、陸上での共同経済活動は難題が増えそうだ。
保守的なロシアの税関や国境警備隊が抵抗勢力になるとみられる。

 仮に4島で共同経済活動が進んでも、それが領土帰属問題の解決にどうつながるのか不透明だ。戦後初めて日本人、日本企業が4島に進出する共同経済活動は、未知の実験場となる。

 ロシア側が、早期合意を目指したい構えの背景には、財政難や北方領土開発の難度の高さがありそうだとの名越教授の見解。
 遊爺が唱えている、ロシアの台所が火の車なので、焦らず、先方が折れて来るのを待つべきとの論が、実現しそうな風向きになってきているのですね。

 巨額の収賄で逮捕された前知事の後、現在のコジェミャコ知事は、前知事と違って親日的発言が目立つのだそうです。
 「ロシアの法律に従うというのは建前で、実際には日本に特恵的な条件が与えられ、いずれ島の日本化が進む」と言う声と、「クリルを日本に明け渡すプロセスとなりかねない」とし、「クリルにおけるトロイの木馬」と警告する声があるのだそうです。
 昨年末にには、頓挫したした様にみえた日露の平和条約と北方領土の交渉。共同経済活動が進んでも、それが領土帰属問題の解決にどうつながるのか不透明との名越教授の指摘で、同感ですが、再スタートがきられた様子ですね。
 台所が火の車で、旧来のガス田の枯渇が見えてきて、極東や北極圏での新規開発が迫られているロシア。困っていて、急いで日本他からの投資を呼び込みたいのは、ロシアです。慌てて、世界一ともいえる老獪なロシアの外交交渉の術中に嵌ることなく、日本の国益を見据えて、しかし機を逸することなく、交渉を進めていただくことを期待します。



 # 冒頭の画像は、昨年末来日したプーチン大統領。




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