来年のチャイナセブン(党中央政治局常務委員)の改選に向け、椅子取り争いが激しくなるなかで、6中全会(党第18期中央委員会第6回全体会議)が開催され、習近平が、「核心」の座を勝ち取ったことは諸兄がご承知のことで、遊爺も触れさせていただいていました。
これまで中国共産党で「核心」に位置づけられたのは毛沢東、鄧小平、そして江沢民の3人だけなのだそうですが、習近平がどうしても「核心」の座が欲しかった理由は何か。そして「核心」の座を得た習近平は何処へ向かうのかを解説した記事がありました。
習近平がどうしても「核心」の座が欲しかった理由 中国はどこへ向かうのか?ますます強まる党内統治 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.11.1(火) 阿部 純一
10月24日から27日にかけて、北京の京西賓館で「中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議」(6中全会)が開催された。来年秋の第19回中国共産党大会を控えた事実上の最後の中央委員会全体会議である。
今次の6中全会の最大の注目点は、次期党大会に向けて習近平主席がどこまで権力を固めるか、であった。次期党大会の直前に7中全会が開かれるが、これは党大会に向けた最終調整の場となる。6中全会が注目される所以である。
■「反腐敗」キャンペーンを今後も継続
6中全会の主な議題は、「新たな情勢下における党内政治生活の若干の準則」と「中国共産党党内監督条例」であり、この2つの文件はともに審議され採択された。これらに通底するテーマは、「全面的な厳しい党内統治」である。
習近平主席は、政権の座について以来、「トラもハエも一緒に叩く」という「反腐敗」キャンペーンを持続させてきた。その過程で、これまで暗黙の了解事項(「潜規則」)とされてきた「党中央政治局常務委員とその経験者は罪を問われない」を打破し、前常務委員の周永康を「落馬(紀律検査委による立件)」させた。さらに、徐才厚、郭伯雄といった中央軍事委副主席経験者をも「落馬」させ、人民解放軍内部の腐敗状況を白日のもとにさらした。
習近平主席は、この「反腐敗」キャンペーンを今後も継続させることを強調している。その意味において、6中全会で検討された2つの文件に共通するのが党中央の権威を高めることであったのは当然のことであった。
そして、まさにその帰結として、習近平主席は「核心」に位置づけられたのである。
6中全会閉幕後の10月27日に発表されたコミュニケ(「公報」)ではこう書かれている。「第18回党大会以来、習近平同志を核心とする党中央が身をもって実行し、率先垂範し、全面的に厳格な党統治を断固として推進し、思想による党建設と制度による党統治の厳密な結合を堅持し、腐敗を厳しく取り締まり、党内の政治生態を浄化し、党の政治生活に新たな状況が出現させ、党心、民心を勝ち取り、党と国の事業の新たな局面を切り開く上で重要な保証を提供した」
■江沢民を「核心」に位置付けた鄧小平の仕掛け
これまで中国共産党で「核心」に位置づけられたのは毛沢東、鄧小平、そして江沢民の3人だけである。
江沢民が核心に位置付けられたのは、鄧小平による「仕掛け」だった。
<中略>
鄧小平が90歳になり「完全引退」した1994年、9月に開催された党14期4中全会でようやく「江沢民を核心とする中央指導集団」が明記され、第3世代への権力継承の完了が確認された。それ以後、江沢民は権力強化に励み、翌1995年秋の5中全会では「江沢民指導部が自主的に政策を決定する」との秘密決議が採択され、これによって江沢民が鄧小平に代わり、「最終決定権」が付与されたのであった。
■「核心」の座を自分の力で手に入れた習近平
では、6中全会で「核心」に位置づけられた習近平主席も、同様に秘密決議によって「最終決定権」を付与されたのだろうか。現在のところ、それを証明する情報はない。しかし、実際はそれと同等の権限が習近平主席に与えられたと見るべきだろう。その理由は2つ考えられる。
第1に、習近平主席が「核心」に位置づけられたことによって、江沢民を「核心」とする時代が事実上終わったと考えることができるからである。
「第3世代の核心」とされた江沢民はまだ存命であり、「完全引退」を自ら表明しているわけではない。しかし、習近平主席の反腐敗キャンペーンによって、江沢民に近い周永康、徐才厚、郭伯雄等が追い落とされる中で、江沢民が徐々に追い詰められてきたという文脈から導き出せる事実は、習近平が江沢民との勝負に勝ったということであり、その結果が習近平主席の「核心」という位置づけなのである。そうだとすれば、習近平主席が江沢民に代わり、「最終決定権」を事実上保持していると見なすことができるだろう。ちなみに、今年8月、江沢民は90歳になった。鄧小平の「完全引退」の年齢とも平仄が合うのは偶然だろうか。
第2に、江沢民は「核心」の座を鄧小平に用意してもらったのに対し、習近平は「核心」の座を自分の力で手に入れたからである。同じ「核心」でも習近平主席のほうが実力の裏付けがあることになる。
今年1月、地方指導者を中心に、習近平を中国政治における「核心」と位置づける発言が相次いだ。習近平の意思が働いた動きであることは間違いない。その後、習近平主席を「核心」と呼ぶ動きは下火になったが、6月末には、習近平主席の側近である栗戦書・党中央弁公庁主任が党直属機関の幹部表彰式で習近平主席が「核心」であることを強調した。また、年初の習近平「核心」キャンペーンの先頭に立っていた天津市の党委代理書記の黄興国が9月に突然「落馬」したものの、後任の李鴻忠・天津市党委書記が、繰り返し習近平主席が「党中央の指導核心」であることを強調したことで、6中全会直前には再び習近平主席を党中央の「核心」に位置づける機運が高まっていた。こうして、周囲から声を上げさせることによって、習近平は「核心」の座を手中に収めたのである。
■習近平が「核心」の位置づけを欲した理由
習近平主席は、なぜ党の機関決定による「核心」の位置づけを欲したのだろうか。言葉を変えれば、重要な政策決定における「最終決定権」になぜこだわったのだろうか。考え得る理由は3つある。
第1に、習近平主席自身が持つ中国共産党体制維持への危機感がある。経済的には、世界第2位の経済規模にまで上り詰めたものの、高度成長期が終わり、国内産業構造の変革期にあって、貧富の格差拡大や環境問題を含め、これまでの経済成長がもたらした「負の遺産」をうまく処理するために強力な権限とリーダーシップが必要だという認識である。
第2に、全国の政治指導層から官僚組織、国有企業、さらに人民解放軍にまで蔓延した腐敗状況を是正するために、習近平主席が抵抗勢力を無力化できるだけの絶対的権威付けを求めたことである。執政開始から4年にわたる反腐敗キャンペーンで、組織的な抵抗や不作為(サボタージュ)に直面するなかで、党の体制を維持し求心力を持たせる必要性を痛感してきたはずであり、そのために「核心」の位置づけを望んだのだろう。
第3に、軍事改革の関連である。昨年末から今年前半にかけて、習近平主席は、組織を改編しすべてを中央軍事委員会が仕切ることになる人民解放軍の抜本的な機構改革を実施した(参考記事「海軍重視にシフト、人民解放軍が進める再編の中身」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43910)。中央軍事委員会のトップは主席を務める習近平自身である。いわば、米国大統領が米軍の総司令官であるように、習近平主席が人民解放軍の総司令官になったわけであり、そのためにも自らの権威付けが必要とされたのである。
■功をあせって軍事強硬策に走る可能性も
最後に、「核心」に位置づけられた習近平主席の今後について考察する。あくまでも考察であるから、可能性を論じるにとどめたい。
第1に、次期(第19回)党大会に向けた人事である。
人事に関する問題は2つある。1つは政治局常務委員会における「七上八下」という定年制の問題だ。67歳以下なら継続可能だが68歳以上であれば引退という「潜規則」で、この規定に従えば2017年に69歳になる中央紀律委書記の王岐山に再任の目はない。しかし、「余人を持って代えがたい」ことを理由に定年の潜規則を打破して習近平主席が再任を求めれば、それが実現する可能性はありうる。これは、2022年の第20回党大会への布石ともなる。というのも、その時点で李克強総理はまだ67歳で再任の資格があるが、68歳になった習近平主席は退任を余儀なくされる。「七上八下」の潜規則を打破しておけば、習近平主席の「続投」も可能になる。
もう1つは後継者の問題である。江沢民、胡錦濤時代の慣例を踏襲するなら、次期党大会で後継者を政治局常務委員に入れなければならない。胡錦濤も習近平も、「国家副主席」「中央党校校長」のポストで常務委員会入りした。習近平主席は「核心」に位置づけられたことによって、後継者指名権も手に入れたと見なすことができるが、もし習近平主席が自らの「続投」を意識するなら、そうした後継者を置かないという選択肢もあるだろう。
第2に、穿った見方として、「核心」に位置づけられたものの、習近平主席には反腐敗以外にこれと言った政治実績がないがゆえに、「功をあせる」恐れがある。
問題は、どこで「功をあげる」かだが、反腐敗取り締まりをこれ以上強化すれば「恐怖政治」になりかねないし、強い反発もありうる。国内経済に関しては、習近平主席は社会主義経済への「未練」が強く、国有企業優先の罠にはまって経済改革には後ろ向きであるから、実績のあげようがない。外交では近代以降の屈辱的歴史からの復興を強調する「中国の夢」を語ることで国内のナショナリズムに火を付けてしまい、「国家の主権・国益を守る」強硬路線をいまさら軟化させるのは難しい。
となると、自ら大胆な改革を実行した人民解放軍に手柄を立てさせ、国民の喝采を得る軍事強硬策に走る可能性は否定できない。その場所が南シナ海なのか、東シナ海の尖閣諸島になるのかはわからないが、日本としては用心しておくことに越したことはないだろう。
もちろん、習近平主席にとって、軍事作戦の失敗は政権の命取りにもなりかねない危険をはらむから、慎重に判断するだろうが、その成功のメリットが失敗のリスクよりも大きいと判断すれば、習近平主席は迅速に行動に出るだろう。
毛沢東、鄧小平が中国共産党の歴代指導者の中で、大きな役割を果たしたことは揺るぎ様がありません。江沢民は、鄧小平が「核心」の座につけたものだそうですが、「反日」で支持を維持し強い影響力を保持し続けてきました。胡錦濤政権時代もその影響力は大きく、習近平が、胡錦濤・共青団派の勢力を押しのけて主席の座に就くことが出来たは、江沢民の支援のおかげでした。そして、いまだに引退宣言をしていない江沢民に対し、「核心」の座を勝ち取った習近平は、胡錦濤も果たせなかった、江沢民との勝負に勝ったと言う事なのだと。
太子党のコネしかもたない習近平ですが、周到に、地方で支持を固めてきて、周囲から声を上げさせることによって、自らの力で勝ち取った「核心」の座。この強力な権限で、何をしようとしているのか。
ひとつは、唯一の実績の腐敗撲滅で国民の支持を獲得すると同時に、政敵を駆逐した立役者で盟友の王岐山の延命。来年のチャイナセブンの改選では、定年で退任することになるのを、定年の見直しで延命させる。そして、定年の見直しを可能にすることで、その次の改選時に該当する習近平自身の延命につなげるというものなのですね。
もうひとつは、経済成長の減速、国内の格差拡大など民心離反、外交での失政(米国とのG2支配交渉破綻、南シナ海での仲裁裁判所の九段線否定裁定)などで、対抗勢力(江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団派)からの糾弾を回避する強い権力を獲得することなのですね。
何をしたいのかは、強い権力を得て、延命をいたいのですが、そこで問題は、実績がトラ退治しかない。そのトラのネタは限界が見えてきていて、新たな実績造りが必要ですが、「一帯一路」「中華の夢」の行方も難関。
そこで手っ取り早いのは、江沢民が用いた「反日」で国民の眼を逸らす策。それも、記事が指摘するのは、人民解放軍に手柄を立てさせ、国民の喝采を得る軍事強硬策に走る可能性は否定できないと。
投票日が迫った米国大統領選挙。ヒラリー氏の勝利かと観られていましたが、メール事件再燃で、トランプが逆転との報道が出る事態。どちらが勝つにしても、内向きの政策を採らざるを得なくなった米国。日本の、自力での国家の主権の擁護への対策が急務となってきましたね。
# 冒頭の画像は、習近平
中国共産党、習近平を「核心」に位置付け さらなる権力集中へ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
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これまで中国共産党で「核心」に位置づけられたのは毛沢東、鄧小平、そして江沢民の3人だけなのだそうですが、習近平がどうしても「核心」の座が欲しかった理由は何か。そして「核心」の座を得た習近平は何処へ向かうのかを解説した記事がありました。
習近平がどうしても「核心」の座が欲しかった理由 中国はどこへ向かうのか?ますます強まる党内統治 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2016.11.1(火) 阿部 純一
10月24日から27日にかけて、北京の京西賓館で「中国共産党第18期中央委員会第6回全体会議」(6中全会)が開催された。来年秋の第19回中国共産党大会を控えた事実上の最後の中央委員会全体会議である。
今次の6中全会の最大の注目点は、次期党大会に向けて習近平主席がどこまで権力を固めるか、であった。次期党大会の直前に7中全会が開かれるが、これは党大会に向けた最終調整の場となる。6中全会が注目される所以である。
■「反腐敗」キャンペーンを今後も継続
6中全会の主な議題は、「新たな情勢下における党内政治生活の若干の準則」と「中国共産党党内監督条例」であり、この2つの文件はともに審議され採択された。これらに通底するテーマは、「全面的な厳しい党内統治」である。
習近平主席は、政権の座について以来、「トラもハエも一緒に叩く」という「反腐敗」キャンペーンを持続させてきた。その過程で、これまで暗黙の了解事項(「潜規則」)とされてきた「党中央政治局常務委員とその経験者は罪を問われない」を打破し、前常務委員の周永康を「落馬(紀律検査委による立件)」させた。さらに、徐才厚、郭伯雄といった中央軍事委副主席経験者をも「落馬」させ、人民解放軍内部の腐敗状況を白日のもとにさらした。
習近平主席は、この「反腐敗」キャンペーンを今後も継続させることを強調している。その意味において、6中全会で検討された2つの文件に共通するのが党中央の権威を高めることであったのは当然のことであった。
そして、まさにその帰結として、習近平主席は「核心」に位置づけられたのである。
6中全会閉幕後の10月27日に発表されたコミュニケ(「公報」)ではこう書かれている。「第18回党大会以来、習近平同志を核心とする党中央が身をもって実行し、率先垂範し、全面的に厳格な党統治を断固として推進し、思想による党建設と制度による党統治の厳密な結合を堅持し、腐敗を厳しく取り締まり、党内の政治生態を浄化し、党の政治生活に新たな状況が出現させ、党心、民心を勝ち取り、党と国の事業の新たな局面を切り開く上で重要な保証を提供した」
■江沢民を「核心」に位置付けた鄧小平の仕掛け
これまで中国共産党で「核心」に位置づけられたのは毛沢東、鄧小平、そして江沢民の3人だけである。
江沢民が核心に位置付けられたのは、鄧小平による「仕掛け」だった。
<中略>
鄧小平が90歳になり「完全引退」した1994年、9月に開催された党14期4中全会でようやく「江沢民を核心とする中央指導集団」が明記され、第3世代への権力継承の完了が確認された。それ以後、江沢民は権力強化に励み、翌1995年秋の5中全会では「江沢民指導部が自主的に政策を決定する」との秘密決議が採択され、これによって江沢民が鄧小平に代わり、「最終決定権」が付与されたのであった。
■「核心」の座を自分の力で手に入れた習近平
では、6中全会で「核心」に位置づけられた習近平主席も、同様に秘密決議によって「最終決定権」を付与されたのだろうか。現在のところ、それを証明する情報はない。しかし、実際はそれと同等の権限が習近平主席に与えられたと見るべきだろう。その理由は2つ考えられる。
第1に、習近平主席が「核心」に位置づけられたことによって、江沢民を「核心」とする時代が事実上終わったと考えることができるからである。
「第3世代の核心」とされた江沢民はまだ存命であり、「完全引退」を自ら表明しているわけではない。しかし、習近平主席の反腐敗キャンペーンによって、江沢民に近い周永康、徐才厚、郭伯雄等が追い落とされる中で、江沢民が徐々に追い詰められてきたという文脈から導き出せる事実は、習近平が江沢民との勝負に勝ったということであり、その結果が習近平主席の「核心」という位置づけなのである。そうだとすれば、習近平主席が江沢民に代わり、「最終決定権」を事実上保持していると見なすことができるだろう。ちなみに、今年8月、江沢民は90歳になった。鄧小平の「完全引退」の年齢とも平仄が合うのは偶然だろうか。
第2に、江沢民は「核心」の座を鄧小平に用意してもらったのに対し、習近平は「核心」の座を自分の力で手に入れたからである。同じ「核心」でも習近平主席のほうが実力の裏付けがあることになる。
今年1月、地方指導者を中心に、習近平を中国政治における「核心」と位置づける発言が相次いだ。習近平の意思が働いた動きであることは間違いない。その後、習近平主席を「核心」と呼ぶ動きは下火になったが、6月末には、習近平主席の側近である栗戦書・党中央弁公庁主任が党直属機関の幹部表彰式で習近平主席が「核心」であることを強調した。また、年初の習近平「核心」キャンペーンの先頭に立っていた天津市の党委代理書記の黄興国が9月に突然「落馬」したものの、後任の李鴻忠・天津市党委書記が、繰り返し習近平主席が「党中央の指導核心」であることを強調したことで、6中全会直前には再び習近平主席を党中央の「核心」に位置づける機運が高まっていた。こうして、周囲から声を上げさせることによって、習近平は「核心」の座を手中に収めたのである。
■習近平が「核心」の位置づけを欲した理由
習近平主席は、なぜ党の機関決定による「核心」の位置づけを欲したのだろうか。言葉を変えれば、重要な政策決定における「最終決定権」になぜこだわったのだろうか。考え得る理由は3つある。
第1に、習近平主席自身が持つ中国共産党体制維持への危機感がある。経済的には、世界第2位の経済規模にまで上り詰めたものの、高度成長期が終わり、国内産業構造の変革期にあって、貧富の格差拡大や環境問題を含め、これまでの経済成長がもたらした「負の遺産」をうまく処理するために強力な権限とリーダーシップが必要だという認識である。
第2に、全国の政治指導層から官僚組織、国有企業、さらに人民解放軍にまで蔓延した腐敗状況を是正するために、習近平主席が抵抗勢力を無力化できるだけの絶対的権威付けを求めたことである。執政開始から4年にわたる反腐敗キャンペーンで、組織的な抵抗や不作為(サボタージュ)に直面するなかで、党の体制を維持し求心力を持たせる必要性を痛感してきたはずであり、そのために「核心」の位置づけを望んだのだろう。
第3に、軍事改革の関連である。昨年末から今年前半にかけて、習近平主席は、組織を改編しすべてを中央軍事委員会が仕切ることになる人民解放軍の抜本的な機構改革を実施した(参考記事「海軍重視にシフト、人民解放軍が進める再編の中身」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43910)。中央軍事委員会のトップは主席を務める習近平自身である。いわば、米国大統領が米軍の総司令官であるように、習近平主席が人民解放軍の総司令官になったわけであり、そのためにも自らの権威付けが必要とされたのである。
■功をあせって軍事強硬策に走る可能性も
最後に、「核心」に位置づけられた習近平主席の今後について考察する。あくまでも考察であるから、可能性を論じるにとどめたい。
第1に、次期(第19回)党大会に向けた人事である。
人事に関する問題は2つある。1つは政治局常務委員会における「七上八下」という定年制の問題だ。67歳以下なら継続可能だが68歳以上であれば引退という「潜規則」で、この規定に従えば2017年に69歳になる中央紀律委書記の王岐山に再任の目はない。しかし、「余人を持って代えがたい」ことを理由に定年の潜規則を打破して習近平主席が再任を求めれば、それが実現する可能性はありうる。これは、2022年の第20回党大会への布石ともなる。というのも、その時点で李克強総理はまだ67歳で再任の資格があるが、68歳になった習近平主席は退任を余儀なくされる。「七上八下」の潜規則を打破しておけば、習近平主席の「続投」も可能になる。
もう1つは後継者の問題である。江沢民、胡錦濤時代の慣例を踏襲するなら、次期党大会で後継者を政治局常務委員に入れなければならない。胡錦濤も習近平も、「国家副主席」「中央党校校長」のポストで常務委員会入りした。習近平主席は「核心」に位置づけられたことによって、後継者指名権も手に入れたと見なすことができるが、もし習近平主席が自らの「続投」を意識するなら、そうした後継者を置かないという選択肢もあるだろう。
第2に、穿った見方として、「核心」に位置づけられたものの、習近平主席には反腐敗以外にこれと言った政治実績がないがゆえに、「功をあせる」恐れがある。
問題は、どこで「功をあげる」かだが、反腐敗取り締まりをこれ以上強化すれば「恐怖政治」になりかねないし、強い反発もありうる。国内経済に関しては、習近平主席は社会主義経済への「未練」が強く、国有企業優先の罠にはまって経済改革には後ろ向きであるから、実績のあげようがない。外交では近代以降の屈辱的歴史からの復興を強調する「中国の夢」を語ることで国内のナショナリズムに火を付けてしまい、「国家の主権・国益を守る」強硬路線をいまさら軟化させるのは難しい。
となると、自ら大胆な改革を実行した人民解放軍に手柄を立てさせ、国民の喝采を得る軍事強硬策に走る可能性は否定できない。その場所が南シナ海なのか、東シナ海の尖閣諸島になるのかはわからないが、日本としては用心しておくことに越したことはないだろう。
もちろん、習近平主席にとって、軍事作戦の失敗は政権の命取りにもなりかねない危険をはらむから、慎重に判断するだろうが、その成功のメリットが失敗のリスクよりも大きいと判断すれば、習近平主席は迅速に行動に出るだろう。
毛沢東、鄧小平が中国共産党の歴代指導者の中で、大きな役割を果たしたことは揺るぎ様がありません。江沢民は、鄧小平が「核心」の座につけたものだそうですが、「反日」で支持を維持し強い影響力を保持し続けてきました。胡錦濤政権時代もその影響力は大きく、習近平が、胡錦濤・共青団派の勢力を押しのけて主席の座に就くことが出来たは、江沢民の支援のおかげでした。そして、いまだに引退宣言をしていない江沢民に対し、「核心」の座を勝ち取った習近平は、胡錦濤も果たせなかった、江沢民との勝負に勝ったと言う事なのだと。
太子党のコネしかもたない習近平ですが、周到に、地方で支持を固めてきて、周囲から声を上げさせることによって、自らの力で勝ち取った「核心」の座。この強力な権限で、何をしようとしているのか。
ひとつは、唯一の実績の腐敗撲滅で国民の支持を獲得すると同時に、政敵を駆逐した立役者で盟友の王岐山の延命。来年のチャイナセブンの改選では、定年で退任することになるのを、定年の見直しで延命させる。そして、定年の見直しを可能にすることで、その次の改選時に該当する習近平自身の延命につなげるというものなのですね。
もうひとつは、経済成長の減速、国内の格差拡大など民心離反、外交での失政(米国とのG2支配交渉破綻、南シナ海での仲裁裁判所の九段線否定裁定)などで、対抗勢力(江沢民・上海閥、胡錦濤・共青団派)からの糾弾を回避する強い権力を獲得することなのですね。
何をしたいのかは、強い権力を得て、延命をいたいのですが、そこで問題は、実績がトラ退治しかない。そのトラのネタは限界が見えてきていて、新たな実績造りが必要ですが、「一帯一路」「中華の夢」の行方も難関。
そこで手っ取り早いのは、江沢民が用いた「反日」で国民の眼を逸らす策。それも、記事が指摘するのは、人民解放軍に手柄を立てさせ、国民の喝采を得る軍事強硬策に走る可能性は否定できないと。
投票日が迫った米国大統領選挙。ヒラリー氏の勝利かと観られていましたが、メール事件再燃で、トランプが逆転との報道が出る事態。どちらが勝つにしても、内向きの政策を採らざるを得なくなった米国。日本の、自力での国家の主権の擁護への対策が急務となってきましたね。
# 冒頭の画像は、習近平
中国共産党、習近平を「核心」に位置付け さらなる権力集中へ | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
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