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遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

南シナ海の攻防 フィリピン・ドゥテルテ大統領は蝙蝠外交路線か?

2016-09-07 23:58:58 | EEZ 全般
 G20が終了し、南シナ海の攻防は、ADSEAN首脳会議や、ASEAN+日本、ASEAN+中国、ASEAN+日中韓、東アジア首脳会議(EAS)の席へと引き継がれています。
 ただ、ASEAN首脳会談では、南シナ海の仲裁裁判所の裁定に触れない様子で、G20同様中国の事前の根回しが効いている様子ですね。
 日米などは、仲裁裁判所の裁定を盾に、中国の国際法を無視した暴挙を阻止したい意向ですが、肝心の提訴したフィリピンのドゥテルテ大統領がオバマ大統領を誹謗する発言をし、両国の首脳会談が中止される事態を招いて、中国につけいるスキを与えています。
 ドゥテルテ大統領は、安倍首相との会談では、「仲裁裁判の結果は尊重されるべきだ。一方、中国との対話は今後も行っていく」と述べ、日米等との協調と、中国の甘言との間でのコウモリ外交を示唆しているのですね。
 

米比きしみ 対中影響も ドゥテルテ氏 暴言で首脳会談中止 (9/7 読売朝刊)

 【ビエンチャン=大木聖馬、向井ゆう子】ラオスの首都ビエンチャンで6日に行われる予定だった米国のオバマ大統領とフィリピンのドゥテルテ大統領の初会談が、ドゥテルテ氏の「暴言」をきっかけに中止となった。同盟国である米比の亀裂が深まれば、一方的な海洋進出を強める中国に対し、日米など複数国が包囲網構築を目指すという南シナ海を巡る構図に地殻変動が生じる懸念
も出ている。

■不信感
 「米大統領への個人攻撃と受け取られてしまったことを後悔している」
 大統領にあるまじき下品な言葉でオバマ氏をののしった
ドゥテルテ氏は6日午前、会談中止を受け、報道官を通じて「陳謝」の談話を発表し、火消しを図った

 だが、6月末の政権発足以降、米比関係がきしんでいるのは事実だ。米軍のフイリピンへの再駐留を認めるなど安全保障関係強化に努めたアキノ前大統領と異なり、
ドゥテルテ氏には旧宗主国である米国への不信感が根強い
とされ、対米批判の発言が目立っていた。
 今年7月、仲裁裁判所が南シナ海での中国の主権主張を全面否定した裁判の原告はフィリピン。
米国は日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国とも連携し、国際法に基づくこの「得点」を有効に生かすため、フィリピンを前面に立て、南シナ海で軍事拠点化などを進める中国に自制を促す戦略
だった。
 しかし、外交筋は、ドゥテルテ政権発足後、前政権時はASEAN内で
南シナ海を巡る中国批判の急先鋒だったフィリピンの姿勢が弱まっていると指摘する。政権幹部は仲裁裁判決を「棚上げ」してのフィリピンとの個別交渉を主張する中国に呼応するかのような発言
を繰り返してきた。米比関係のさらなる悪化は「中国を利するだけ」との懸念も広がる。

■接触の可能性
 ただ、フィリピン政府は主要20か国・地域(G20)首脳会議初日の4日、威信をかけて自国開催にあたる習近平政権に当てつけるかのように、南シナ海のスカボロー礁に中国船が集結する写真を公開した。
一貫しない行動や発言に対し、ドゥテルテ氏に外交問題への理解が欠如しているとの分析やフィリピンが米中両大国の間でバランス外交を進めているとの見方
もある。
 米国にとって、東シナ海と南シナ海の結節点という戦略的拠点にあるフィリピンとの関係不安定化は選択肢にない。会談中止は「警告」とみられ、ベン・ローズ米大統領副補佐官は6日、オバマ氏とドゥテルテ氏が「一連の(ASEANの)会合で会う機会はあるだろうが、正式会談はないと思う」と述べ、非公式な接触は排除しない姿勢を示した。

 
ドゥテルテ氏暴言常に フィリピン 庶民から支持 外交舞台でも強硬 (9/7 読売朝刊)

 【ビエンチャン=向井ゆう子、池田慶太】ラオスの首都ビエンチャンで、オバマ米大統領との首脳会談中止に追い込まれたフィリピンのドゥテルテ大統領の対米「暴言」の背景には、旧宗主国の米国と、その存在を後ろ盾としてきたフィリピンのエリート層への庶民の反感がある。庶民から圧倒的支持を受けるドゥテルテ氏は今後も、米国や中国への強気の姿勢を維持し、地域情勢を揺さぶる可能性がある


 6月末に大統領に就任したドゥテルテ氏は6日、ビエンチャンで開幕した東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で「外交デビュー」。ポケットに片手を突っ込みながら各国記者団に手を振った。会談中止に関する感想を質問されると、「誰と?」ととぼけた。
 ドゥテルテ氏がオバマ氏に対して使ったタガログ語の下品なののしり言葉は、記者らには日常的に使用しており、米国の駐フィリピン大使にも向けたことがある。警官による容疑者射殺を容認し、約2400人が殺害されたとされる
麻薬取り締まりへの「人権侵害」との批判を受けて国連脱退も示唆し、物議を醸した

 
中国に対しても、南シナ海を巡る個別交渉に応じる姿勢を示す一方、大統領選中には、中国が造成した人工島に「国旗を立てる」と挑発的な発言もあった。
 だが、フィリピンの地元メディア幹部は、こうした言動について「計算しつくされたもので、過去のどの政権と比べても広報戦略にたけている」と指摘する。国際的な批判を招く言動も、フェイスブックなどソーシャル・メディアを通じた直接発信で、国内的には広い支持
を得ているという。
 ドゥテルテ氏はフィリピンで最も貧しい地域である南部ミンダナオ島でダバオ市長を20年以上務めた。英語よりもタガログ語や方言を多用し、大統領就任式典も簡素化した「庶民派」だ。一方、親米路線を取ってきたアキノ前大統領らマニラのエリート層に対しては、富や政治の独占といった庶民からの不満が強い。
ドゥテルテ氏はこうした反感をくみ取り、意識して「暴言」を繰り返している可能性がある
という。
 元検事であるドゥテルテ氏について、外交筋は「関心があるのはミンダナオ島と犯罪取り締まりだけ」と、「内向き」姿勢をしてきする。オバマ氏に向けて「フィリピンは隷属国ではない」と言い放ったドゥテルテ氏は
今後も庶民の受けを狙い、米国や中国といった大国に対しても、場当たり的ともとれる強硬な発言や行動を繰り返す可能性がある


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ドゥテルテ大統領の発言要旨
 【5日、フィリピン・ダバオでの記者会見】
 フィリピンは隷属国ではない。私はフィリピン国民だけに答えるが、彼(オバマ米大統領)のことは気にしない。彼は何様だ。私は主権国家の大統領だ。我々が植民地だったのは遠い昔
だ。私の主人はフィリピン国民だけだ。
 敬意が示されなければならない。質問や声明を投げかけるだけではいけない。お前の母親は売春婦だ。
 米国はフィリピンで多くの悪事を働いてきたが、今まで謝罪したことがない。米国は我が国
を侵略し、我々を支配下に置いた。
 裁判なしで人を殺してきたひどい記録が皆にあるのに、なぜ犯罪と戦うことを問題視するのか。

 【6日発表の談話】
 記者からの質問に対する私の強いコメントが懸念を引き起こしたことが、(会談中止の)直接の原因だが、米大統領への個人的な攻撃と受け取られてしまったことを後悔している。
 全ての国、特に、長くパートナーである米国との関係を深めながら、独立した外交方針を進めていくことが、我々にとって最も重要なことだ。
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 トランプ大統領候補との類似性を取りざたされるドゥテルテ大統領。国内の反エリートを唱える庶民の支持で大統領の座に就いたのですから、その庶民の支持を繋ぎとめていくこと(ポピュリズム?)が政権の使命となりますね。
 米国の植民地時代の政治への反感、米国を後ろ盾としてきたエリート層への反発の庶民感情を吸い上げる支持獲得策があり、「内向き」の政治指向となる。暴言は、支持獲得の計算されたものだと。
 外交センスについては未明ですが、どうやら米中の間で国益を追求する指向に見えますね。
 韓国の、北東アジアのバランサーをめざして「均衡論」を唱えた盧武鉉大統領(当時)や、直近の朴槿恵大統領と同じ末路を辿ることにならないよう、留意していただきたい。

 オバマ大統領側はそうした「警告」を発した様で、公式会談は中止したものの、非公式会談の道は残している様子ですね。そして、米政権が今後もアジア重視のリバランス(再均衡)政策を継続するとの認識を示したのだそうです。
 

米、アジア重視継続 オバマ大統領が演説 (9/7 読売朝刊)

 【ビエンチャン=大木聖馬】米国のオバマ大統領は6日、現職の米大統領として初めで訪問したラオスの首都ビエンチャンで、約7年半にわたる任期で自身が進めたアジア政策を総括する演説を行った。米政権が今後もアジア重視のリバランス(再均衡)政策を継続するとの認識を示し、任期中の批准手続き完了を目指している環太平洋経済連携協定(TPP)は「リバランス政策の中核の柱だ」とし、退任前に議会に承認を働きかけることを明言
した。
 オバマ氏は「米国は過去の数十年間よりもアジア太平洋地域に関与している。一時の気まぐれではない」と述べた。南シナ海などで一方的な海洋進出を続ける
中国を念頭に「あらゆる国が同じルールで動かなければならない」と法の秩序の重要性を指摘
した。
 また、昨年4月に日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直し、日米同盟が強化されたことなどを例示し「同盟やパートナー間の協力が以前よりも深まっている」と成果を語った。

 安倍首相は、ドゥテルテ大統領と会談し、仲裁裁判所判決を踏まえ、平和的な解決に向けて協力を強化することを確認したのだそうですが、ドゥテルテ大統領は、「仲裁裁判の結果は尊重されるべきだ。一方、中国との対話は今後も行っていく」と述べ、蝙蝠外交も示唆しているのですね。 
比の海上警備強化を支援 首脳会談 首相、巡視船供与伝える (9/7 読売朝刊)

 
【ビエンチャン=芳村健次】東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議出席のためラオスを訪れた安倍首相は6日、フィリピンのドゥテルテ大統領と会談し、大型巡視船2隻を供与する方針を伝えた。フィリピンの海上警備能力強化を支援し、南シナ海で強引な海洋進出を続ける中国をけん制する狙いがある。
 6月に就任したドゥテルテ氏と首相が会談するのは初めて。大型巡視船は全長約90メートル。円借款(最大約164億円)で資金を提供し、日本で建造してフィリピンの沿岸警備隊に供与する。
 ドゥテルテ氏は「バトロール強化が可能となり、南シナ海でのフィリピンのプレゼンス(存在)が向上する」と述べた。5月に合意した海上自衛隊の練習機(航空機)「TC90」の最大5機の貸与も正式に決まった。
 
両首脳は南シナ海について、中国の主権主張を否定した7月の仲裁裁判所判決を踏まえ、平和的な解決に向けて協力を強化することで一致した。ドゥテルテ氏は「仲裁裁判の結果は尊重されるべきだ。一方、中国との対話は今後も行っていく」
と述べ、首相は支持する考えを伝えた。
 首相はラオス滞在中、東アジア首脳会議(EAS)などに出席し、8日に帰国する。

 習近平が、来年のチャイナセブンの改選に向けた政局争いで、攻撃を受ける外交の失政で最大の「九段線」の否定。この回復には、提訴元のフィリピンを懐柔・取り込み、二国間問題として、仲裁裁判所の裁定を無力化せねばなりません。
 フィリピンを巡る綱引きが、中国と、日米ベトナムなど、国際法の順守を迫る側とで熾烈になっていきますね。米国に反感を持つドゥテルテ大統領を説得するには、日本の役割が重く、大きくなりますね。



 # 冒頭の画像は、ラオスで会談した安倍首相とドゥテルテ大統領




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