中国海軍の「山東」空母打撃群は、今年(2024年)年7月9日(火)~18日(木)までの10日間、西太平洋(フィリピン海)で機動展開訓練を行った。
海自の警戒監視・情報収集の結果を分析すると、米国と中国の空母には、いまだに大きな戦力格差があることが明らかだと、元・陸上自衛隊幹部学校長、陸将の樋口 譲次氏。
今回、海自の護衛艦が警戒監視した10日間のうち9日間で戦闘機の出撃回数は計260回で、1日平均28.8回だった。
昨年(2023年)10月と11月に山東空母打撃群が西太平洋(フィリピン海)に機動展開した際、12日間の訓練期間で戦闘機の出撃回数は計420回で、1日平均35回だった。
これを踏まえると、空母山東からの艦載戦闘機の出撃回数は、1日平均概ね30回から多くても40回程度とみることができよう。
一方、米空母(主力はニミッツ級)の1日出撃回数は、概ね120回程度といわれている。
空母の真価は、まさに艦載機の攻撃能力に掛かっており、1日出撃回数だけから見ても、米中の空母には「3対1」ないし「4対1」の戦力格差が見て取れると、樋口氏。
米海軍は現在、ニミッツ級10隻、ジェラルド・フォード級1隻、計11隻の空母を保有している。
一方、中国海軍は、現在、空母「遼寧」と「山東」の2隻を保有し、3隻目の「福建」を建造中。
中国には、将来的に原子力空母の建造計画が存在するとの指摘があるが、その実現には10年単位の期間が必要と見られるのだそうです。
米国採用の電磁式カタパルトと中国のスキージャンプ方式には、大きな機能上の差がある。
艦載機の最大発艦重量は、ニミッツ級が45トン、山東が28トンほどでニミッツ級に比べ約40%少ない。
そのため、燃料や武装を減らす必要があり、作戦半径が短くなり、戦闘力も低下する。
さらに、遼寧や山東は早期警戒機や電子戦機などの搭載も困難である。
1日の出撃回数(ソーティ)は、前述の通り、ニミッツ級が120回ほど、山東が30~40回程度で、3分の1ないし4分の1の能力であると、樋口氏。
また、作戦期間は、原子力推進のニミッツ級が燃料補給なしで数年間、ディーゼル機関推進の山東が自艦の燃料で航行可能な期間は15日ほどと見られ、それ以上の運用には補給艦の随伴が不可欠である。
このように、米空母11隻に対し、中国空母は建造中を含め3隻に過ぎず、規模的に劣勢である。
また、排水量や動力源、艦載機の射出方式、艦載機数などのスペック面で、米中には大きな開きがある。
総じて、米中の空母力には大きな戦闘力格差の存在を指摘せざるを得ない状況であるとも。
海軍の運用常識に従うと、現在、空母3隻保有の中国は、1隻を実任務に割り当てるのが精一杯ではなかろうか。
しかも、中国海軍、中でも空母は実戦経験が全くなく、西太平洋(フィリピン海)や東・南シナ海での諸活動も、運用試験や訓練・演習の域を出ていないのではないかと推察される。
米海軍は、地球の表面の3分の2以上を占めるグローバル・コモンズとしての世界の海洋において、米国の戦力を陸上に投射し、あるいは世界中の米国の利益を守るため、米軍事力を機動と作戦の手段に変える能力を米国に与える役割を期待されている。
そのため米海軍は、世界の海洋を利用する能力、そして他国が米国の利益に反する行動をとるために世界の海洋を利用することを否定する能力を持つことを目標に造成されている。
その中心が、空母機動打撃群であると、樋口氏。
将来的に原子力空母の建造計画が議論の段階の中国。空母機動打撃群を造成できるかどうかについては、大きな疑問を呈することができるのではなかろうかとも。
# 冒頭の画像は、
海自の警戒監視・情報収集の結果を分析すると、米国と中国の空母には、いまだに大きな戦力格差があることが明らかだと、元・陸上自衛隊幹部学校長、陸将の樋口 譲次氏。
元自衛隊幹部が米中の空母を比較:数も性能も米国の足元にも及ばない中国軍 電磁カタパルトなど性能向上に努めるも、将来にわたり彼我の差縮まらず | JBpress (ジェイビープレス) 2024.7.22(月) 樋口 譲次
着発艦できる回数は米空母の数分の1
中国海軍の「山東」空母打撃群は、今年(2024年)年7月9日(火)~18日(木)までの10日間、西太平洋(フィリピン海)で機動展開訓練を行った。
統合幕僚監部のプレスリリースによると、海上自衛隊(海自)の護衛艦がその活動の終始を通じて警戒監視・情報収集に当った。
また、航空自衛隊の戦闘機が艦載戦闘機に対し緊急発進するなどの対応を行った。
海自の警戒監視・情報収集の結果を分析すると、米国と中国の空母には、いまだに大きな戦力格差があることが明らかだ。
当該訓練期間に、中国海軍の空母山東の艦載戦闘機および艦載ヘリによる発着艦について、7月9日(火)~15日(月)および17日(水)~18日(木)までの間に確認された実績は計420回であった。
(なお、7月16日の情報収集の結果が説明されていない理由については明らかにされていない)
今回、海自の護衛艦が警戒監視した10日間のうち9日間で戦闘機の出撃回数は計260回で、1日平均28.8回だった。
昨年(2023年)10月と11月に山東空母打撃群が西太平洋(フィリピン海)に機動展開した際、12日間の訓練期間で戦闘機の出撃回数は計420回で、1日平均35回だった。
これを踏まえると、空母山東からの艦載戦闘機の出撃回数は、1日平均概ね30回から多くても40回程度とみることができよう。
一方、米空母(主力はニミッツ級)の1日出撃回数は、概ね120回程度といわれている。
空母の真価は、まさに艦載機の攻撃能力に掛かっており、1日出撃回数だけから見ても、米中の空母には「3対1」ないし「4対1」の戦力格差が見て取れる。
そこで、米中の空母の能力についてその要点を比較してみる。
米中の空母にはいまだ大きな戦力格差あり
隻数・スペック等
米海軍は現在、ニミッツ級10隻、ジェラルド・フォード級1隻、計11隻の空母を保有している。
ニミッツ級は、排水量7.4万トン以上、原子力(原子炉2基搭載)推進、蒸気カタパルトを採用し、艦載機約70機(最大90機)を搭載できる。
ジェラルド・フォード級はさらに大きく、排水量10万トン以上で、時速200キロ以上に急加速できる電磁式カタパルトを採用し、艦載機75機以上を搭載できる。
一方、中国海軍は、現在、空母「遼寧」と「山東」の2隻を保有し、3隻目の「福建」を建造中である。
遼寧は、旧ソ連の空母「ワリヤーグ」を改造したもので、排水量5.8万トン以上、ディーゼル機関推進、スキージャンプ方式を採用し、艦載機24機(「J-15」)を搭載できる。
山東は初の国産空母で、排水量6.6万トン以上、ディーゼル機関推進、スキージャンプ方式を採用し、艦載機36機を搭載できる。
福建は、2隻目の国産空母(中国3隻目の空母)として建造され、2022年6月に上海で進水し、2024年5月に初回の試験航行を行った。
同空母の試験航行には、少なくとも1年間が必要と見られている。
この空母は排水量8万トン以上で、J-15戦闘機や「KJ-600」固定翼早期警戒機などを運用可能な電磁式カタパルトを装備しており、艦載機60~70機の搭載が可能という。
なお、中国には、将来的に原子力空母の建造計画が存在するとの指摘があるが、その実現には10年単位の期間が必要と見られる。
運用・戦闘力など
米国採用の電磁式カタパルトと中国のスキージャンプ方式には、大きな機能上の差がある。
艦載機の最大発艦重量は、ニミッツ級が45トン、山東が28トンほどでニミッツ級に比べ約40%少ない。
そのため、燃料や武装を減らす必要があり、作戦半径が短くなり、戦闘力も低下する。
さらに、遼寧や山東は早期警戒機や電子戦機などの搭載も困難である。
1日の出撃回数(ソーティ)は、前述の通り、ニミッツ級が120回ほど、山東が30~40回程度で、3分の1ないし4分の1の能力である。
また、作戦期間は、原子力推進のニミッツ級が燃料補給なしで数年間、ディーゼル機関推進の山東が自艦の燃料で航行可能な期間は15日ほどと見られ、それ以上の運用には補給艦の随伴が不可欠である。
このように、米空母11隻に対し、中国空母は建造中を含め3隻に過ぎず、規模的に劣勢である。
また、排水量や動力源、艦載機の射出方式、艦載機数などのスペック面で、米中には大きな開きがある。
そのため、運用のスケール・柔軟性や戦闘力にも大きな差を生じ、総じて、米中の空母力には大きな戦闘力格差の存在を指摘せざるを得ない状況である。
世界中に展開する米空母力に対抗できるか
各国の海軍艦艇は、実任務と補給整備および教育訓練の3分野でローテーション運用されているといわれている。
米海軍協会(USNI)ニュース(7月8日付)によると、現在、空母「ジョージ・ワシントン」は、母港である日本の横須賀に向け太平洋を航行中である。
「カール・ビンソン」は、ハワイ諸島および同周辺海空域等で行われている環太平洋合同演習(RIMPAC2024、2024年6月27日~8月2日)に参加中である。
ロナルド・レーガンは東太平洋の第3艦隊の海域で、ニミッツは太平洋北西部で、それぞれ活動中である。
欧州では、「ドワイト・D・アイゼンハワー」空母打撃群が地中海で行動中である。
海軍の運用常識に従うと、現在、空母3隻保有の中国は、1隻を実任務に割り当てるのが精一杯ではなかろうか。
しかも、中国海軍、中でも空母は実戦経験が全くなく、西太平洋(フィリピン海)や東・南シナ海での諸活動も、運用試験や訓練・演習の域を出ていないのではないかと推察される。
米海軍は、地球の表面の3分の2以上を占めるグローバル・コモンズとしての世界の海洋において、米国の戦力を陸上に投射し、あるいは世界中の米国の利益を守るため、米軍事力を機動と作戦の手段に変える能力を米国に与える役割を期待されている。
そのため米海軍は、世界の海洋を利用する能力、そして他国が米国の利益に反する行動をとるために世界の海洋を利用することを否定する能力を持つことを目標に造成されている。
その中心が、空母機動打撃群である。
前述の通り、中国は将来的に原子力空母の建造計画が存在すると指摘されているが、果たして世界の海洋で米国に対抗できる海軍力、中でも空母機動打撃群を造成できるかどうかについては、大きな疑問を呈することができるのではなかろうか。
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樋口 譲次のプロフィール
Johji Higuchi 元・陸上自衛隊幹部学校長、陸将
昭和22(1947)年1月17日生まれ、長崎県(大村高校)出身。防衛大学校第13期生・機械工学専攻卒業、陸上自衛隊幹部学校・第24期指揮幕僚課程修了。米陸軍指揮幕僚大学留学(1985~1986年)、統合幕僚学校・第9期特別課程修了。
自衛隊における主要職歴:
第2高射特科団長
第7師団副師団長兼東千歳駐屯地司令
第6師団長
陸上自衛隊幹部学校長
現在:郷友総合研究所・上級研究員、日本安全保障戦略研究所・理事、日本戦略フォーラム 政策提言委員などを務める。
着発艦できる回数は米空母の数分の1
中国海軍の「山東」空母打撃群は、今年(2024年)年7月9日(火)~18日(木)までの10日間、西太平洋(フィリピン海)で機動展開訓練を行った。
統合幕僚監部のプレスリリースによると、海上自衛隊(海自)の護衛艦がその活動の終始を通じて警戒監視・情報収集に当った。
また、航空自衛隊の戦闘機が艦載戦闘機に対し緊急発進するなどの対応を行った。
海自の警戒監視・情報収集の結果を分析すると、米国と中国の空母には、いまだに大きな戦力格差があることが明らかだ。
当該訓練期間に、中国海軍の空母山東の艦載戦闘機および艦載ヘリによる発着艦について、7月9日(火)~15日(月)および17日(水)~18日(木)までの間に確認された実績は計420回であった。
(なお、7月16日の情報収集の結果が説明されていない理由については明らかにされていない)
今回、海自の護衛艦が警戒監視した10日間のうち9日間で戦闘機の出撃回数は計260回で、1日平均28.8回だった。
昨年(2023年)10月と11月に山東空母打撃群が西太平洋(フィリピン海)に機動展開した際、12日間の訓練期間で戦闘機の出撃回数は計420回で、1日平均35回だった。
これを踏まえると、空母山東からの艦載戦闘機の出撃回数は、1日平均概ね30回から多くても40回程度とみることができよう。
一方、米空母(主力はニミッツ級)の1日出撃回数は、概ね120回程度といわれている。
空母の真価は、まさに艦載機の攻撃能力に掛かっており、1日出撃回数だけから見ても、米中の空母には「3対1」ないし「4対1」の戦力格差が見て取れる。
そこで、米中の空母の能力についてその要点を比較してみる。
米中の空母にはいまだ大きな戦力格差あり
隻数・スペック等
米海軍は現在、ニミッツ級10隻、ジェラルド・フォード級1隻、計11隻の空母を保有している。
ニミッツ級は、排水量7.4万トン以上、原子力(原子炉2基搭載)推進、蒸気カタパルトを採用し、艦載機約70機(最大90機)を搭載できる。
ジェラルド・フォード級はさらに大きく、排水量10万トン以上で、時速200キロ以上に急加速できる電磁式カタパルトを採用し、艦載機75機以上を搭載できる。
一方、中国海軍は、現在、空母「遼寧」と「山東」の2隻を保有し、3隻目の「福建」を建造中である。
遼寧は、旧ソ連の空母「ワリヤーグ」を改造したもので、排水量5.8万トン以上、ディーゼル機関推進、スキージャンプ方式を採用し、艦載機24機(「J-15」)を搭載できる。
山東は初の国産空母で、排水量6.6万トン以上、ディーゼル機関推進、スキージャンプ方式を採用し、艦載機36機を搭載できる。
福建は、2隻目の国産空母(中国3隻目の空母)として建造され、2022年6月に上海で進水し、2024年5月に初回の試験航行を行った。
同空母の試験航行には、少なくとも1年間が必要と見られている。
この空母は排水量8万トン以上で、J-15戦闘機や「KJ-600」固定翼早期警戒機などを運用可能な電磁式カタパルトを装備しており、艦載機60~70機の搭載が可能という。
なお、中国には、将来的に原子力空母の建造計画が存在するとの指摘があるが、その実現には10年単位の期間が必要と見られる。
運用・戦闘力など
米国採用の電磁式カタパルトと中国のスキージャンプ方式には、大きな機能上の差がある。
艦載機の最大発艦重量は、ニミッツ級が45トン、山東が28トンほどでニミッツ級に比べ約40%少ない。
そのため、燃料や武装を減らす必要があり、作戦半径が短くなり、戦闘力も低下する。
さらに、遼寧や山東は早期警戒機や電子戦機などの搭載も困難である。
1日の出撃回数(ソーティ)は、前述の通り、ニミッツ級が120回ほど、山東が30~40回程度で、3分の1ないし4分の1の能力である。
また、作戦期間は、原子力推進のニミッツ級が燃料補給なしで数年間、ディーゼル機関推進の山東が自艦の燃料で航行可能な期間は15日ほどと見られ、それ以上の運用には補給艦の随伴が不可欠である。
このように、米空母11隻に対し、中国空母は建造中を含め3隻に過ぎず、規模的に劣勢である。
また、排水量や動力源、艦載機の射出方式、艦載機数などのスペック面で、米中には大きな開きがある。
そのため、運用のスケール・柔軟性や戦闘力にも大きな差を生じ、総じて、米中の空母力には大きな戦闘力格差の存在を指摘せざるを得ない状況である。
世界中に展開する米空母力に対抗できるか
各国の海軍艦艇は、実任務と補給整備および教育訓練の3分野でローテーション運用されているといわれている。
米海軍協会(USNI)ニュース(7月8日付)によると、現在、空母「ジョージ・ワシントン」は、母港である日本の横須賀に向け太平洋を航行中である。
「カール・ビンソン」は、ハワイ諸島および同周辺海空域等で行われている環太平洋合同演習(RIMPAC2024、2024年6月27日~8月2日)に参加中である。
ロナルド・レーガンは東太平洋の第3艦隊の海域で、ニミッツは太平洋北西部で、それぞれ活動中である。
欧州では、「ドワイト・D・アイゼンハワー」空母打撃群が地中海で行動中である。
海軍の運用常識に従うと、現在、空母3隻保有の中国は、1隻を実任務に割り当てるのが精一杯ではなかろうか。
しかも、中国海軍、中でも空母は実戦経験が全くなく、西太平洋(フィリピン海)や東・南シナ海での諸活動も、運用試験や訓練・演習の域を出ていないのではないかと推察される。
米海軍は、地球の表面の3分の2以上を占めるグローバル・コモンズとしての世界の海洋において、米国の戦力を陸上に投射し、あるいは世界中の米国の利益を守るため、米軍事力を機動と作戦の手段に変える能力を米国に与える役割を期待されている。
そのため米海軍は、世界の海洋を利用する能力、そして他国が米国の利益に反する行動をとるために世界の海洋を利用することを否定する能力を持つことを目標に造成されている。
その中心が、空母機動打撃群である。
前述の通り、中国は将来的に原子力空母の建造計画が存在すると指摘されているが、果たして世界の海洋で米国に対抗できる海軍力、中でも空母機動打撃群を造成できるかどうかについては、大きな疑問を呈することができるのではなかろうか。
---------------------------------------------------
樋口 譲次のプロフィール
Johji Higuchi 元・陸上自衛隊幹部学校長、陸将
昭和22(1947)年1月17日生まれ、長崎県(大村高校)出身。防衛大学校第13期生・機械工学専攻卒業、陸上自衛隊幹部学校・第24期指揮幕僚課程修了。米陸軍指揮幕僚大学留学(1985~1986年)、統合幕僚学校・第9期特別課程修了。
自衛隊における主要職歴:
第2高射特科団長
第7師団副師団長兼東千歳駐屯地司令
第6師団長
陸上自衛隊幹部学校長
現在:郷友総合研究所・上級研究員、日本安全保障戦略研究所・理事、日本戦略フォーラム 政策提言委員などを務める。
今回、海自の護衛艦が警戒監視した10日間のうち9日間で戦闘機の出撃回数は計260回で、1日平均28.8回だった。
昨年(2023年)10月と11月に山東空母打撃群が西太平洋(フィリピン海)に機動展開した際、12日間の訓練期間で戦闘機の出撃回数は計420回で、1日平均35回だった。
これを踏まえると、空母山東からの艦載戦闘機の出撃回数は、1日平均概ね30回から多くても40回程度とみることができよう。
一方、米空母(主力はニミッツ級)の1日出撃回数は、概ね120回程度といわれている。
空母の真価は、まさに艦載機の攻撃能力に掛かっており、1日出撃回数だけから見ても、米中の空母には「3対1」ないし「4対1」の戦力格差が見て取れると、樋口氏。
米海軍は現在、ニミッツ級10隻、ジェラルド・フォード級1隻、計11隻の空母を保有している。
一方、中国海軍は、現在、空母「遼寧」と「山東」の2隻を保有し、3隻目の「福建」を建造中。
中国には、将来的に原子力空母の建造計画が存在するとの指摘があるが、その実現には10年単位の期間が必要と見られるのだそうです。
米国採用の電磁式カタパルトと中国のスキージャンプ方式には、大きな機能上の差がある。
艦載機の最大発艦重量は、ニミッツ級が45トン、山東が28トンほどでニミッツ級に比べ約40%少ない。
そのため、燃料や武装を減らす必要があり、作戦半径が短くなり、戦闘力も低下する。
さらに、遼寧や山東は早期警戒機や電子戦機などの搭載も困難である。
1日の出撃回数(ソーティ)は、前述の通り、ニミッツ級が120回ほど、山東が30~40回程度で、3分の1ないし4分の1の能力であると、樋口氏。
また、作戦期間は、原子力推進のニミッツ級が燃料補給なしで数年間、ディーゼル機関推進の山東が自艦の燃料で航行可能な期間は15日ほどと見られ、それ以上の運用には補給艦の随伴が不可欠である。
このように、米空母11隻に対し、中国空母は建造中を含め3隻に過ぎず、規模的に劣勢である。
また、排水量や動力源、艦載機の射出方式、艦載機数などのスペック面で、米中には大きな開きがある。
総じて、米中の空母力には大きな戦闘力格差の存在を指摘せざるを得ない状況であるとも。
海軍の運用常識に従うと、現在、空母3隻保有の中国は、1隻を実任務に割り当てるのが精一杯ではなかろうか。
しかも、中国海軍、中でも空母は実戦経験が全くなく、西太平洋(フィリピン海)や東・南シナ海での諸活動も、運用試験や訓練・演習の域を出ていないのではないかと推察される。
米海軍は、地球の表面の3分の2以上を占めるグローバル・コモンズとしての世界の海洋において、米国の戦力を陸上に投射し、あるいは世界中の米国の利益を守るため、米軍事力を機動と作戦の手段に変える能力を米国に与える役割を期待されている。
そのため米海軍は、世界の海洋を利用する能力、そして他国が米国の利益に反する行動をとるために世界の海洋を利用することを否定する能力を持つことを目標に造成されている。
その中心が、空母機動打撃群であると、樋口氏。
将来的に原子力空母の建造計画が議論の段階の中国。空母機動打撃群を造成できるかどうかについては、大きな疑問を呈することができるのではなかろうかとも。
# 冒頭の画像は、