つまり、主題の北朝鮮への制裁や、中国が進める南シナ海での人口島の軍事拠点化について双方の間の溝が深く、平行線をたどり、米中関係が不安定化する懸念が生じている様子なのですね。
米中両政府は21日、「外交・安全保障対話」の初会合を開いた。最大の懸案である北朝鮮問題で、米側が核・ミサイル開発を続ける北朝鮮へのさらなる圧力強化を中国に迫り、中国側は、対話による解決という従来の主張を繰り返した。歩み寄りにはほど遠く、両国の思惑の違いが鮮明になった。(ワシントン 大木聖馬、東慶一郎)
■笑顔なし
「我々は直面する脅威に、直接的かつ率直に対処する必要がある」
ティラーソン米国務長官は、マティス米国防長官と臨んだ対話後の共同記者会見で、こう強調した。会見中は終始、厳しい表情を浮かべ、笑顔はなかった。
結局、この日の会合で一致できたのは、国連安全保障理事会の制裁決議の完全履行と、米中の企業が制裁対象に指定された北朝鮮企業と取引を行わないということだけだった。
対話は、スタートからぎくしゃくしていた。双方の出席者が握手を交わす場面はなく、会議に臨む決意表明もなかった。
米中対話は、オバマ前政権下で行われていた「米中戦略・経済対話」を改編し、①外交・安全保障②経済③サイバーセキュリティー④社会・人文の4分野で、両国の閣僚級が突っ込んだ議論を行う狙いで設置された。だが、今回は、オバマ政権時には毎回まとめられていた成果文書の作成や、双方の代表者による慣例の共同記者会見が見送られた。
低調な初会合から浮き彫りになったのは、北朝鮮問題で目に見える成果を示さない中国に対する米側の強いいら立ちだ。
トランプ米大統領は21日、アイオワ州で演説し、中国による対北朝鮮の圧力策について「うまくいっていないようだ」と述べ、不満を隠さなかった。トランプ氏は4月の米中首脳会談で習近平国家主席に、「3か月以内」と期限を定めて成果を求めたとされる。
■鉄鉱石の取引増
しかし、中国がこれまで講じたのは、北朝鮮からの石炭輸送船の入港拒否以外、目立ったものはない。中国税関統計によると、北朝鮮の主要輸出品の一つである鉄鉱石は、今年に入り中国の輸入が急増している。1~4月の輸入量は計約87万8000トンと前年同期比2倍超、金額ベースでは約6105万ドル(約68億円)と同4倍以上に膨らんだ。国連安保理の制裁決議は北朝鮮からの鉄鉱石輸入を禁じているが、「生計目的」の取引は例外とする。中国はこの例外規定を根拠に北朝鮮を事実上、支援し続けているとの指摘もある。米国の度重なる「警告」にもかかわらず、北朝鮮が弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返すのは、こうした中国側の「甘い対応」に原因があるとの不満が米側にある。
北朝鮮から昏睡状態で解放された米国人学生が19日に死亡。韓国系米国人3人がまだ拘束されている。北朝鮮に対する強硬論が強まる米世論も、トランプ政権が中国に一段の対応を求める理由だ。
しかし、中国では、北朝鮮の挑発行為を批判する一方、6回目の核実験に踏み切っていないことなどから、「新たな制裁を科すレッドライン(越えてはいけない一線)に至っていない」(中国外交専門家)との受け止めが多い。
ティラーソン氏は今回、中国に「経済、外交の両面でもっと大きな圧力をかける責任がある」と最後通告を突きつけた。中国の対応が不十分と判断すれば、北朝鮮と取引のある中国企業に独自制裁を科す方針も伝えた模様だ。
トランプ政権は北朝鮮問題の解決を優先し、巨額の貿易赤字や為替問題など、対中国の懸案事項を一時棚上げしてきた。だが、今回の対話をきっかけに、米国がこれまでの様子見から、対中強硬路線に転じる可能性がじわりと高まった。
協力模索に暗雲
初の米中外交・安保対話で、北朝鮮の核・ミサイル問題を巡り大きな進展が見られなかったことから、今後の米中関係は不安定化する事態も想定される。
中国は習近平指導部の2期目が発足する第19回共産党大会を秋に控え、米中関係の安定を外交上の最重要課題に位置づけている。
中国外務省は21日の同対話終了後、「両国首脳は7月にドイツで開かれるG20(主要20か国・地域)首脳会議の際に会談し、前向きな成果を得るだろう」と発表した。一方、米側はG20での米中首脳会談の開催を公式に認めていない。この中国の対応には、党大会前に米中関係が改善していることを内外に示すことで、習氏の外交成果とする思惑が透けて見える。
また、米紙ワシントン・ポスト(電子版)は20日、米政府当局者の話として、中国政府がトランプ氏の最側近であるクシュナー大統領上級顧問、イバンカ大統領補佐官夫妻の訪中を要請したと伝えた。トランプ氏の訪中時期は決まっていないが、中国は娘夫妻を先に迎えて土台固めをする考えとみられる。
21日の対話では、北朝鮮問題以外にも、中国が人工島の軍事拠点化を続ける南シナ海問題が議論された。
米側は今後も南シナ海で米軍艦船の巡視活動「航行の自由作戦」を続ける方針を伝えた。これに対し、中国は「争いのない主権があり、領土や海洋権益を守る権利がある」と反論したとされる。
トランプ政権は海洋進出を強める中国をけん制しつつ、首脳会談の開催を交渉の「切り札」に、対北朝鮮で中国からさらなる協力を引き出す狙いとみられる。中国が思い描く「外交成果」を得るのは容易ではなく、米中双方の駆け引きが続きそうだ。
米中安保対話 対北圧力の溝をどう埋めるか : 社説 : 読売新聞
米国でのトランブ大統領と習近平主席との初会談では、晩餐会の席でシリア空軍基地の攻撃を明らかにし、先制パンチで習近平の度胆を抜き優位に立ったトランプ大統領。北朝鮮の核とミサイル開発については、「中国が制止できなければ米国が直接行う」と、軍事的けん制圧力を高めながら、中国に北朝鮮との交渉を迫る作戦を展開してきました。
中国に対北管理を迫る見返りに、対中貿易赤字での制裁策棚上げの交換条件も示して、中国に期待をかけたのでした。この間、キッシンジャーの動きがあったことは、諸兄がご承知の通りです。
先制パンチにうろたえた習近平でしたが、100日間の猶予を与えられた対北説得と制裁の進展について、トランプ大統領は、「うまくいっていないようだ」とつぶやいてみせました、
ティラーソン米国務長官は会合後、「我々は中国が北朝鮮により大きな圧力をかける責任があることを強調した」と述べたのだそうですね。
中国側は、「話し合いによる解決」を主張し、北朝鮮の金正恩体制を経済的に支えつつ、危険な軍事挑発を放置する姿勢。
国連安保理の制裁決議は北朝鮮からの鉄鉱石輸入を禁じていますが、「生計目的」の取引は例外とする条項を盾に、1~4月の輸入量は前年同期比2倍超に増えているのだそうですね。こうした中国の甘い対応が、北朝鮮が弾道ミサイルなどの発射実験を繰り返す原因しなっていると、トランプ政権側も、中国の「面従腹背」姿勢にようやく気が付き始めた様です。
習近平側は、今秋の共産党大会を前に北朝鮮との間でことを荒げたくない。
腐敗政治追放の御旗の下に政敵を駆逐し、共産党軍(人民解放軍)の改変を進め陸軍の弱体化を図っている習近平ですが、ロシアと対峙し北朝鮮に影響力を持つ、「瀋陽軍区」への影響力は強くないとされ、秋の党大会前には動き辛いようなのですね。
キッシンジャーを仲介して接近・取り込んだ、イバンカ、クシュナー夫妻の動向も要注意ですね。
余談ですが、アメリカファーストで雇用を守る為と、メキシコでのフォードの生産計画を取りやめさせたのに、中国での生産は認めて、フォードは中国から輸入することでコストを10億ドル節減するというのは、対中赤字制裁とは逆行するはなしで意味不明!
米フォード:次世代「フォーカス」を中国で生産-10億ドル節減へ - Bloomberg
今回の会合では、もう一つの課題である、仲裁裁判所の裁定で、根拠を否定された南シナ海での中国の覇権拡大行動について、米側は、「航行の自由作戦」を続ける方針を伝えたのだそうです。中国は仲裁裁判所の裁定にもかかわらず、主権の存在を主張し、「領土や海洋権益を守る権利がある」と反論したのだそうです。国際社会のルールを無視する中国の「中華」意識を、トランプ大統領は改めて認識したのではないでしょうか。それでもイバンカ、クシュナー夫妻が中国に接近するのはなぜか!
貿易赤字国として制裁すると選挙中は言っておきながら、北朝鮮管理を中国に一任いることを表面上の理由として棚上げしたトランブ政権。しかし、面重腹背で行動しない中国。仲裁裁判所の裁定を無視し、南シナ海(ADA2作戦で、米空母艦隊を攻撃する原潜を深海で勇躍させる)への覇権拡大を止めない中国。
今回の対話で、両国間の溝の深さと、対話が平行線で交わらないことが鮮明になりました。選挙中には非難した中国に、接近姿勢を示し始めてしたトランプ政権ですが、この後どうするのか。対中貿易継続企業に制裁を科すとのことですが、どのような進展を見せるのか。要注目ですね。
これも余談ですが、延々と籠池、加計問題に時間と労力を費やすテレビのワイドショーとその下請けをしている野党。ペテン師や、禁じられている天下りシステムを温存していた利権にしがみつく悪徳官僚が野党によってヒーロー扱いされている。日本近海で揺れ動いている中国の覇権拡大行動を隠そうとしているとは思いたくありませんが、平和ボケ現象を痛感させられます。
# 冒頭の画像は、「外交・安全保障対話」を終え、中国の参加がないまま記者会見する、マチス国防長官とティラーソン国務長官
この花の名前は、カワミドリ
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