遊爺雑記帳

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差し迫っている国際社会の脅威は、新興の中国と米国との対峙か、核を持つ小国の金正恩と予測不能なトランプとの対峙か

2018-06-08 23:58:58 | 米国 全般
 今国際社会に差し迫る本当の脅威は、「トゥキュディデスの罠」に類似していると言われる、「新興の中国と迎え撃つアメリカ」の構図なのか、核兵器が比較的小規模な国家、あるいは国家以外の組織によって保有されることによる危機なのか。
 ハーバード大学歴史学部・アンドルー・ゴードン教授(1998年~2004年、同大学ライシャワー日本研究所所長)が論説しておられます。
 
中国の新興はトゥキュディデスの罠か? 国際社会に差し迫る本当の脅威とは | JBpress(日本ビジネスプレス) 2018.6.8(金) アンドルー・ゴードン

 古代ギリシアの時代、アテネとスパルタを戦争に立ち向かわせた「トゥキュディデスの罠」は今日の国際社会で再現されるのか──? ハーバード大学歴史学部のアンドルー・ゴードン教授は、かつてのアテネとスパルタの対立構図は「新興の中国と迎え撃つアメリカ」という今日の情勢に似通っているが、絶望する必要はないと指摘する。今日、全世界のGDPに占める国際貿易の比率は約6割に達する。また、核兵器も存在する。相互依存と互いを牽制する「恐怖心」が戦争の抑止力として機能しているのだ。さらに中国の軍事費は米国の3分の1ほどに過ぎない(2015年時点)。国際社会の差し迫った脅威は、むしろ核兵器が小規模な国家や組織によって保有されてしまうリスクだ。その点、金正恩とドナルド・トランプという、言動が予測しがたいリーダーに国際社会が翻弄されていることは懸念すべき事実だという。ゴードン教授の論考をお届けする。
<中略>

■トゥキュディデスの罠
 中国の経済的・軍事的な勃興を考える際、ある古代ギリシアからの例示が最近大きな注目を集めている。偉大な歴史学者である
トゥキュディデスは、新興のアテネに対するスパルタ側からの脅威が両都市国家を戦争に導いたと記している
 アテネは民主制を敷いていたが、覇権を脅かされた側のスパルタはそうでなかった。それゆえ、今日(の米中関係)への適用としては逆さまになるわけだが、
新興の中国と迎え撃つアメリカの類似例と見ることができる。核心となる部分は一考に値するだろう。

 かつての状況は今日
「トゥキュディデスの罠」と呼ばれている。この言葉は、国際政治におけるアメリカの役割を論じた、ハーバード大学の著名な学者、グレアム・アリソン教授によって考案された。彼の新たな著書『米中戦争前夜――新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ』は大きな反響を呼んでいる。その中でアリソン教授は、過去500年間で16個の「新興勢力が既存の政治権力を脅かした事例」を取り上げている。うち12例では実際の戦争に発展した。アリソン教授は米中関係についても悲観的な見方を示している。これら12例の中で、20世紀最初の四半世紀における2つの例は強い類似性を持っている。新興のドイツがイギリスの覇権に挑んだ第1次世界大戦と、新興国・日本がアメリカの覇権に挑んだ太平洋戦争である。
 20世紀のこれら
2つの例は考察に値するだろう。安倍首相でさえ2014年のダボス会議で、今日の日中の緊張関係は第1次世界大戦前夜の欧州情勢を思い起こさせると発言している。この発言で首相は強い批判にさらされた。外交的には決して賢明な発言だったとはいえない。しかし歴史家の立場から考えると、このような対比は的を射ているようにも思う。特に米中の関係を考える際には。

 しかし、
今日と、かつて(1910年代や1930年代)との違いも大きい。このことは我々に楽観的な見方も提供してくれる。第1に、よく言われることだが、グローバル経済の結びつきがかつての1910年代や1930年代よりも極めて強くなったということだ。<中略>

 今日、国際貿易が世界の経済取引に占める割合(輸出入が世界全体のGDPに占める割合)はかつてないほど高まっている。現在それは約60%であり、1914年の2倍、1930年代の3倍にのぼる。
理性的な政治指導者であれば軍事的な力は行使しないはずである(さらには経済的な力の行使も)。そのような行動は、お互いが置かれる経済状況の破壊に直結するからだ。

 加えて、トゥキュディデスの罠の前提条件は、新興勢力が本当の意味で既存の勢力のライバルとなり、既存勢力を脅かすことだ。しかし今日、中国が本当の意味でアメリカの軍事的な対抗相手になったとはいえない。

<中略>

 アメリカの軍事支出は依然として2位から8位までの軍事大国の軍事支出合計を上回っている(そして実に世界の軍事支出の40%以上がアメリカ一国に集中している)。これはドイツの軍事費がイギリスに迫っていた第1次世界大戦の直前とはまるで異なる状況だ。1930年代の状況とも異なる。
 当時、日本の軍事費は米国を上回っていた
<中略>。このような状況下では、ある程度の理性を有した国家であれば、戦争に勝利できる(あるいは有利な交渉条件を勝ち取れる)と考えてもおかしくはない。

 最後に、
戦前の独英あるいは日米と現代の状況とを比較する際、決定的に異なる要素がある。当時は核兵器が存在しなかったのだ。核兵器が存在し、「相互確証破壊」(mutually assured destruction:通称MAD)が起きる潜在的可能性のある状況下では、国家間の全面戦争が起きるとは考えづらい(あくまで「理性的な」指導者を想定した場合だが)。

 アリソン教授の事例研究もこの結論を裏付けるものだ。
ヒロシマ以後の世界において、教授は2つの「トゥキュディデスの罠」を取り上げている。1つは、ソビエト連邦アメリカ合衆国に対して世界の覇権を巡り挑戦した時代。もう片方は統一ドイツが欧州最大の勢力となった1990年代だ。これら双方とも戦争には発展しなかった。これらは(アリソン教授の合計16の事例のうち)戦争が回避された4つのうちの2つだ(その他の2つは、15世紀末にポルトガルを追い越したスペインの例と、19世紀の初めにイギリスを追い越したアメリカだ)。

■結論:非対称性がより大きな難題を突きつける?
 このように、20世紀初頭から現代にかけては典型的な「トゥキュディデスの罠」との類似性よりも「違い」の方が際立っているといえよう。
新興の中国と(相対的な)地位を落とすアメリカの対立が「hot war」に発展する可能性は低い

 実際のところ、「トゥキュディデスの罠」との違いが決定的なものとなるためには、指導者が理性的な判断をするという前提を置かなければならない。その点、中国の指導者は極めて理性的な戦略の持ち主といえる。私はアメリカの指導者に対しては中国の指導者ほどの信頼は置いていないが、彼は生涯、大統領であり続けるわけではない(習近平とは違い)。長期的には、アメリカの戦略も理性的なものになっていくだろうと私は考えている。

 
差し迫っている脅威は「トゥキュディデスの罠」によるものではない核兵器が比較的小規模な国家、あるいは国家以外の組織によって保有されることによる危機だ。その非理性的な指導者たちは、自暴自棄や何らかの誤解で戦争への階段を上るかもしれないのである。核武装した北朝鮮の金正恩がまっさきに想起されるが、それが、同様に予想がつかないドナルド・トランプというリーダーと対峙しているのである。

 米朝両国が置かれている状況を考えれば、両者が満足できる妥協点を見出すことは容易ではないと、アナリストの多くは考えていた。だが、トランプ大統領は北朝鮮との会談を中止すると一度は表明したものの、交渉と非核化に向けた会談への準備が進んでいる。ただし、予想不可の流動的な状況の中、確かに言えることは、現実的な準備もなく、いたずらに期待を高め、直後に裏切るという結末ならば、一連の急速な和解が起きる以前よりも国際情勢の行く末がいっそう危ないということだ。

 古代ギリシア時代、新興のアテネに対するスパルタ側からの脅威が両都市国家を戦争に導いたと記す「トゥキュディデスの罠」が、中国の経済的・軍事的な勃興と、追われる米国との対峙に似ていると、注目されているのだそうです。
 
 「トゥキュディデスの罠」という言葉は、ハーバード大学のグレアム・アリソン教授によって考案されたのだそうですが、過去500年間で16個の「新興勢力が既存の政治権力を脅かした事例」を取り上げて、うち12例では実際の戦争に発展したのだと。
 これら12例の中で、20世紀最初の四半世紀における2つの例は強い類似性を持っている。その2つとは、新興のドイツがイギリスの覇権に挑んだ第1次世界大戦と、新興国・日本がアメリカの覇権に挑んだ太平洋戦争であると。

 ゴードン教授は、今日と、かつて(1910年代や1930年代)との違いは大きいと。
 決定的に異なる要素は、核兵器が存在し、「相互確証破壊」が生じる可能性の抑止力の有無。理性的な政治指導者であれば軍事的な力は行使しないはず。
 加えて、「トゥキュディデスの罠」の前提条件は、新興勢力が本当の意味で既存の勢力のライバルとなり、既存勢力を脅かすことだ。しかし今日、中国が本当の意味でアメリカの軍事的な対抗相手になったとはまだいえないとも。

 アリソン教授の事例研究もこの結論を裏付けるもので、ヒロシマ以後の世界において、教授は2つの「トゥキュディデスの罠」を取り上げていて、1つは、ソビエト連邦がアメリカ合衆国に対して世界の覇権を巡り挑戦した時代。もう片方は、統一ドイツが欧州最大の勢力となった1990年代。双方とも戦争には発展しなかったのです。
 アリソン教授の合計16の事例のうち、戦争が回避された4つのうちの2つなのだそうです。

 新興の中国と(相対的な)地位を落とすアメリカの対立は、「トゥキュディデスの罠」との類似性よりも「違い」の方が際立っていて、「hot war」に発展する可能性は低いとゴードン教授。
 
 差し迫っている脅威は「トゥキュディデスの罠」によるものではない。核兵器が比較的小規模な国家、あるいは国家以外の組織によって保有されることによる危機だと。
 核武装した北朝鮮の金正恩と、予想がつかないドナルド・トランプというリーダーと対峙がそれ。
 
 文在寅の使い走りで突如浮上した米朝首脳会談。他国の首脳と会談したことが無かった金正恩が短期間に二度も習近平と対談。すると、やおら強気になって、水面下の交渉でなにがあったのか、側近等が米朝首脳会談の中止もあるとほのめかす。すかさずトランプ大統領が、会談中止の書面を送付し会談をしたければ、手紙か電話をよこせと逆襲。金正恩はあわてて側近に馬鹿でかい封筒に入れた手紙を届けさせ、両者の会談は予定通りに開催へと復縁。
 二国間の注目を集めている歴史的な初会談ですが、バタバタつづき。トランプ大統領と、金正恩ならではのことですね。

 ゴードン教授は、予想不可の流動的な状況の中、確かに言えることは、現実的な準備もなく、いたずらに期待を高め、直後に裏切るという結末ならば、一連の急速な和解が起きる以前よりも国際情勢の行く末がいっそう危ないということだと結んでおられます。
 短期決着を唱えていたトランプ大統領。G7では、1 : 6でいじめられるのを逃げるためか、途中で抜け出してシンガポールへ向かうのだそうですが、米朝会談は今回が始まりの会談で、複数回続けると譲歩しています。初回は、ゴードン教授が指摘される、現実的な準備が無い=事前協議で主要な課題の合意点がないか少ない(停戦を終戦に向けた何らかの動き?)、会うことの意義(政治ショー)が主体の会談になりそうな情勢ですね。
 「トゥキュディデスの罠」の類似例のうちの、戦争にならない指令の一つになれるのか。成り行きに注目ですね。

 気がかりなのは、安倍首相が日朝会談への積極姿勢に触れたこと。
 トランプ大統領は、北への支援は米国は一切行わず、中国、韓国、日本が行うと明言しました。
 日本は、中韓とは異なり、米国と歩調を合わせ「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)」を求め、更に、拉致家族の帰国も求め、その実現まで制裁を解かない姿勢です。
 北朝鮮は、戦後の日本から韓国への支援に習った支援が喉から手が出る程ほしくて、日本外しや「日本列島沈没論」を唱えるなどの戦術を駆使しています。
 「急いては事を仕損じる」。宿泊ホテル代が払えないとプライドを捨てた困窮する北朝鮮。待っていても擦り寄って来ざるを得ないはずです。トランプ大統領との会談で、どんな話があったのか(拉致家族問題で米国に頼むだけでなく自分も動けと言われて当然ですが)揺るぎない姿勢で対峙していただけることをねがいます。



 # 冒頭の画像は、日米首脳会談での両首脳
  
 


  この花の名前は、サルビア


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写真素材のピクスタ


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