「一言で評するなら、あの伊丹十三の監督デビュー作品”お葬式”に及ばない」と、感想をTBSの関係者に話したら、ひどくがっかりしていた。それにはこちらが驚いた。自社の制作した映画だったのだ。直接、制作には拘わることのない人たちだったが、果たして愛社精神なのかしら。
昨今、テレビ局が 映画作りを競争している。鉦や太鼓、もとい、CMで封切を 派手に宣伝している。タレントがこぞって賞賛 の声を上げる。が、映画の出来不出来は別である。
納棺師という職業があることを多くの人に知らしめたという点において、貴重な映画である。「お葬式」では主人公である夫、この作品では納棺業の社長役の山崎務。難しい役柄を演じて印象深い。穏亡焼の笹野高史は、この人ならではの役。
シナリオの小山薫堂によれば、本木雅弘が「納棺師をやりたい」と言い出したのが企画の始まりとか。とすれば、本木は、並みのタレントではなさそうだ。
モントリオール世界映画祭グランプリ受賞発表の場に、スタッフが一人も参加をしていなかったというオチがいい。
新宿ピカデリー 80点