原題:剃頭匠 英題:THE OLD BARBER
40年前、日本はオリンピック開催を機に、国土が一変した。今、中国が同じ軌跡を辿り、そっくりの只中にある。
再開発に追い立てられる胡同の住人たちの日常を、93歳の現役理髪師の日々を追ったドキュメント・タッチのヒューマン・ドラマ。
「静」のストーリー展開の中には、随所に笑いの箇所があり、古きよき人情や郷愁がしみじみと感じられてくる。
ハスチョロー監督は、「一人の人間が死をどう迎えるか。きちんと生きて死ぬには、どんな心づもりすればいいか。時間をかけて話を練り上げた」と言い、テーマは重い。
巻頭の、チン爺さんが、馴染みの老人の頭を刈り、髭を剃るクローズ・アップのシーンは凄い。ブラシで石鹸を塗り、剃刀で剃る。その匂いと音と感触が伝わってくる。鳥肌が立つほどだ。
ロードショー3日目。場内は見たところ50歳以上の夫婦連れで満席。身につまされずにはいられない。
岩波ホール 85点。