落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ラーメン唐揚げ海老フライ

2009年10月03日 | movie
『南極料理人』

学者(きたろう、生瀬勝久、小浜正寛、高良健吾)、エンジニア(古舘寛治、黒田大輔)、医者(豊原功補)、と男ばかり8人で1年余りを過ごす南極トームふじ基地。
極地中の極地、ペンギンやアザラシどころかウィルスもいない基地で、毎日の食事で隊員をもてなす調理担当・西村(堺雅人)の奮闘を描く。
実際にトームふじ基地で調理担当として活躍した西村淳のエッセイの映画化。

おもしろかったー。なんか予想してたよりもすごい笑えました。
なんか画的に既におかしいんだよね。みんな防寒具でころっころに着膨れてヨチヨチ歩き、ヒゲはぼうぼう髪はぼさぼさ、パッと見には見分けもうまくつかないくらい。
彼らの日常には変化らしいものはほとんどない。映画のなかでもドラマチックなことは何ひとつない。でも一歩間違えたら凍死という極限状態での集団生活でしかもみんな退屈してるから、ちょっとしたことがすごく大切になる。そこの現実感のズレがおかしい。やってる本人たちが真剣だからまた笑える。
全体に「間」が良い。きちっとシナリオ通りに演じてるはずなのに、無言の「間」に言葉では言い表わせない万感の思いがにじみ出る。それがまたおかしい。だってすごくつまんないことにみんな意地になって、それが絶妙な「間」になってるから。笑える。

でてくる料理がみんなすごくおいしそうで、観ていて唾液ばっかりだくだくわいてしょうがなかった。
人間にとって食べることってほんとに基本だと思う。だからまったく娯楽のない南極基地での食事が、こんなに大切に考えられてるんだと思う。
けど、この映画のテーマは南極じゃなくて家族だったりする。究極の単身赴任、家族に会いたくても会えない淋しさを埋めるために、西村は一生懸命おいしいものを用意しようと頑張る。そんな西村にも家族はいる。
観ているうちに、食事がおいしいのには、その料理の質だけじゃなくて、食べているときのシチュエーションが一番重要なのだという思いがしてくる。気のあう仲間や愛する人と囲む食卓だから、話が弾んで箸が進む。なにも特別なものはいらなくて、ごはんがおいしく食べられる「瞬間」こそが幸せで、だから人は「おいしい」と感じられるのだろう。

どっちを向いても雪まみれで常に暴風の吹き荒れる極地で男だらけの映画、なんか観たことある?しかも最近?と思ったら『劒岳 点の記』だった。
映画としてはこっちのが全然好き。だってつくってる人たちが完全に楽しんでる感じが画面から伝わってくるから。
ほんとおもしろかったです。