落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

首都高速6号線の下

2013年01月06日 | movie
『麒麟の翼』

日本橋の麒麟像の下でナイフを腹部に刺された状態で発見された青柳(中井貴一)。
直後に現場付近で職務質問を受けた八島(三浦貴大)が交通事故で意識不明の大怪我を負うが、彼が青柳の会社で「派遣切り」に遭っていたことから殺人の容疑をかけられる。一方で、捜査官・加賀(阿部寛)は江戸橋地下道で刺された瀕死の青柳が、なぜ助けも求めずにこの場所まで歩いてきたのか不審を抱く。
東野圭吾原作の同名小説の映画化。

これドラマもあったんですね。ぐりはTV観ないので知らなかったんだけど、家族が毎週観てたらしい。
なのでドラマを観てないと意味不明な箇所も微妙にあったけど、だいたいは普通におもしろかったです。東野圭吾も読んだことないけど、今度読んでみようかな?推理小説ってあんまし読まないんだけど。
この原作小説はシリーズものだけど、このストーリー単体でも見応えあります。モチーフが労働搾取やいじめといったリアルタイムでマクロな社会問題から、偏見や家族間の不和なんという普遍的でミクロな問題まで、実に幅広い範囲から取り上げられているからだ。
ただしそれだけに、主人公・加賀の特異な洞察力のみによってストーリーが展開されてしまうという、小説の映画化に起こりがちな時間短縮法がひっかかる部分も多い。

そういう意味では善くも悪くもドラマの映画版の域は出ていない作品ともいえる。マルチ画面の多用や、ストーリーにはまったく不必要なおしゃべりな女性キャストがやたら活躍するなど、あまりにもオーディエンスに媚びたつくりは正直ぐりはあまり楽しめない。
青柳の長男・悠人(松坂桃李)の部活動の描写があまりにおざなりな部分や、妊娠がわかった八島の恋人・香織(新垣結衣)がとくに躊躇もせず帰郷を決めるなど、ツッコミどころも随所にある(現状では、母子家庭の場合、地方よりも東京などの都市部の方が行政支援を受けやすい)。
ただ、それでも労災隠しに報道被害、ブログに教育問題と、これだけのネタをキチキチにつめこんで、それなりに結論まで物語を着地させるバランス感覚は見事だと思いました。

阿部寛はすごくいい役者だし個性も十分で「映画俳優」にふさわしい人だと思うけど、相棒の溝端くんはねえ・・・映画向きではないよね(笑)。かわいいけどね。中井貴一も実直ないいお父さん役がすごく似合ってました。
しかし奥さん役の合築あきこやら黒木メイサやら看護師の田中麗奈やら、この映画に出てくる女性が全員完全に添え物というか、人物造形がごっつテキトーなのがとにかくムチャクチャ気になりました。これもう邦画ではどうにもならんもんなんでしょうかねえ?なんでみんなこんなんで怒らんの?黙って怒ってる人けっこういると思うよ。

実は今年公開の東野圭吾原作の映画『プラチナデータ』がちょっと観たくて、予習のつもりで観てみたけど、うん、楽しめました。
『プラチナ』はやたら前評判がいいみたいで、逆にちょっとコワいです・・・。