令和フィーバー(熱狂)の実態は、安倍自公政権とメディアが仕組んだ天皇制に対するフィーバーである。私は国民のその光景を見て、大日本帝国臣民が政府により虚構の天皇像を刷り込まれ、それを誇りに思う姿、それは虚勢であったというべきであるが、その再来再現であるように見えた。敗戦後もその天皇への尊敬と臣民としての誇りを無意識に心の深層に脈々と今日まで継承してきたように見え、今回のフィーバーは急激にそれが解き放たれたようにみえた。元号は、元祖中国では中華民国成立によりすでに廃され西暦を使用しているが、日本では、敗戦前の国家体制・天皇主権国家への回帰を目指した自民党系政府は、敗戦後も「昭和」の元号を法的根拠なく非合法で、国民に選択の余地も与えず、公文書に使用する事を強いてきたと言って良い。ちなみに、旧皇室典範12条には「践祚の後元号を建て、一世の間に再び改めざること明治元年の定制に従う」と定めていたが、現行典範は定めていない。1979年(大平自民党内閣)にはそれを合法化するために「元号法」を成立させた。この法は、その法がしめすように「天皇制」が存在する事を前提とする法であり、国民の意思の如何によって、「天皇制」とともに、廃止できるものである。しかしこの事は、法に「政令で定める」としているように、その制定の主体は国民を代表する「内閣」としたもので、天皇の権力を示すものではなくなっているのである。しかし、安倍自公政権は主権を持つ「天皇制」を存続させるとともに、「元号」を戦前同様の意味を持つものとして復活存続させたいと考えているのである。
元号法制定の経過を見ておこう。「明治100年」に当たる1961年、神社本庁は元号法制化を決議。72年、自民党が元号問題についての小委員会を作り、「昭和50年」「天皇在位50年」の頃から法制化を叫び始めた。
77年、福田赳夫(自民党)が首相として初めて元号存続の意向を表明。78年、自民、民社、新自由クラブの議員411人が「元号法制化議員促進連盟」を結成、79年、大平内閣は元号法案を本会議に提出し、6月成立した。そして、この法の附則で、昭和の元号は、元号法第1項「元号は、政令で定める」の規定に基づき定められたとし、昭和を法的に裏付けたのである。
神聖天皇主権大日本帝国政府下の国民学校における日本の国や天皇についての教育内容を紹介しよう。
6年修身「大嘗祭の御儀」では「大嘗祭は、わが国でいちばん尊い、いちばん大切な御祭であります。御一代に御一度、神代そのままに、こうごうしいこの御祭をあそばされるのは、実にわが大日本が、神の国であるからであります……これこそ、実に大神と天皇が御一体におなりあそばす御神事であって、わが大日本が神の国である事を明らかにするもの、と申さねばなりません」(『初等科修身四』)
天皇陛下は 宮城に おいでに なります
宮城の 松の みどりは いつ ながめても かわりません。
天皇陛下のおおさめになるわが日本は 世界中で一番りっぱな国です。
天皇陛下をいただいている 日本国民は ほんとうに しあわせです。
私たちのそせんは だいだいの天皇に ちゅうぎをつくしました。
私たちもみんな 天皇陛下にちゅうぎを つくさなければなりません。
(『ヨイコドモ下』)
日本の北東から、南西の岸へかけ、遠くわが南洋の島々まで、太平洋の波は、ひたひたと打ち寄せる。(中略)かなた、熱帯の海から流れ起こる黒潮、わが大日本の磯を洗いながら、北上し、東へ転じて、遥かにアメリカの大陸をつく。(中略)黒潮と台風と、その焦点に、神は大八洲を生み、皇祖皇宗は国を肇めたまう。そこには世界の原動力が力強くひそみ、最高文化の源泉が高鳴っているのだ。日向を船出して、都したまう国は大和、わが大日本はおおやまと、また浦安の国であるように、太平洋は、皇国の鎮めによってのみ、とこしえに「太平」の海なのである。(『初等科国語八』「太平洋」)
あかるいたのしい春が来ました。日本は春夏秋冬のながめの美しい国です。山や川や海の綺麗な国です。このよい国に私たちは生まれました。おとうさんも おかあさんも この国にお生まれになりました。おじいさんも、おばあさんも この国にお生まれになりました。日本よい国、きよい国。世界に一つの 神の国。日本よい国、強い国。世界にかがやく えらい国。(『ヨイコドモ下』「日本の国」)
世界に、国はたくさんありますが、神様の御ちすじをおうけになった天皇陛下が、おおさめになり、かぎりなくさかえていく国は、日本のほかにはありません(『初等科修身一』「日本の子ども」)
親房は陣中にありながら、ふでをとって国史の本を書くことにしました。親房はその本の初めにこう書きました。「大日本は神の国である。神がこの国をお開きになり、天照大神が天皇の御位を、ながくさかえますように、お伝えになった。これはわが国だけにあったことで、ほかの国にはまったくないことである。だからこそ、わが国のことを神の国というのである」天照大神の仰せによって、神のお血すじをおうけになった天皇が日本をお治めになります。臣民は祖先のこころざしをうけついで、ひたすら天皇の大みわざをおたすけ申しあげてまいりました。かように、国の初めから、君と臣との分がさだまっているということが、日本の国の一番尊いところであります」(『初等科修身二』「日本は神の国」)
私たちは先生から、いろいろなお話を聞きました。天皇陛下のありがたいことがわかりました。天皇陛下をいただく日本の国は、世界中で一番とうとい国であることを知りました。私たちは天皇陛下にちゅうぎをつくし、このよい国をみんなでいっそうよい国にしなければならないと思います」(『ヨイコドモ下』「ヨイ子ドモ」)
今の日本は海国日本の名のとおり、世界いたるところの海洋に日の丸の旗を掲げて、国の光をかがやかしながら活動しています。へさきに菊の御紋章を仰ぐ帝国軍艦は、み国のまもりもかたく、太平洋から印度洋にかけてその威力を張っています。海国日本のほまれをあげるぶたいは、かぎりなく大きいのです。その広いぶたいに日の丸の旗をささげて進むのが、私たちの尊い務めです」(『初等科修身二』「日本は海の国」)
安倍自公政権やメディアは、上記のように、かつての大日本帝国政府によって、「虚構」の神聖天皇制を刷り込まれた臣民が、それを信じそれを誇り「虚勢」を張ったような風潮が再び今日の国民の間に広まる事を望んでいるのである。