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朝鮮国「政府声明」、日本メディアは読者が正しい判断を培うために寄与する報道をめざせ

2024-06-16 23:40:56 | 朝鮮問題

 日本のメディアは、6日に朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が水爆実験を実施した事を報じた。これまでも、日本メディアの報道の手法には不信感を抱いていたのであるが、「声明」や「宣言」や「発言」などについて、「全文」を載せないのである。また、「要旨」「骨子」という形でしかのせない。また、その「要旨」「骨子」さえも載せない場合もあるのである。そして、メディアの解釈、判断を書き連ねているのである。今回の記事や報道も同様であった。「全文」を載せるべきである。

 そのようにするのは、「読者がそれ(全文)を読んで自分なりに考え、判断する」という行為を想定していないといってもよい。また、しなくてもよいという発想、させないというような発想を感じさせる。そして、メディアの解釈・判断を「正しいもの」として、また、「当然である」かのように読者に押し付けてきているように思えるのである。これは「洗脳」ともいえる行為である。

 読者は自分自身の理解や判断を検証するために、メディアを利用しているのであって、メディアの主張をそのまま信じて鵜呑みにしているのではない。また、そのような姿勢こそが読者が「正しい理解・判断」に近づくためのあるべき姿勢であると思う。

 さて、朝鮮国の「朝鮮中央通信」が発表した「朝鮮政府声明」で、日本のメディアが国民に伝えていない内容を以下に紹介しよう。そこには日本メディアが伝える内容とは異なる朝鮮政府の思いが見られる。

「……わが共和国が行った水爆実験は、米国をはじめとする敵対勢力の日を追って増大する核脅威と恐喝から国の自主権と民族の生存権を徹底的に守り、朝鮮半島の平和と地域の安全を頼もしく保証するための自衛的措置である。

 この世に敵視という言葉が生じて以来、米国の対朝鮮敵視のようにそれほど根深く、暴悪非道で執拗なものは前例になかった。

 思想と制度が異なり、自分らの侵略野望に屈従しないとして千秋に許せない前代未聞の政治的孤立と経済的封鎖、軍事的圧迫を加えたあげく、核惨禍まで浴びせようと狂奔する残虐な白昼強盗の群れがまさに、米国である。

 米帝侵略軍の原子力空母打撃集団と核戦略飛行隊を含むすべての核打撃手段が絶え間なく投入されている朝鮮半島とその周辺は、世界最大のホットスポット、核戦争の発火点になっている。

 米国は、敵対勢力を糾合して各種の対朝鮮経済制裁と謀略的な「人権」騒動に執着してわれわれの強盛国家の建設と人民の生活向上を阻み、「体制崩壊」を実現しようとやっきになって狂奔している。

 膨大な各種の核殺人兵器でわが共和国を虎視眈々と狙っている侵略の元凶である米国と立ち向かっているわが共和国が正義の水爆を保有したのは、主権国家の合法的な自衛的権利であり、誰もけなせない正々堂々たる措置となる。

 真の平和と安全は、いかなる屈辱的な請託や妥協的な会談のテーブルでも成し遂げられない。今日の厳しい現実は、自分の運命はもっぱら自力で守らなければならないという鉄の真理を再度明白に実証している。恐ろしく襲いかかる狼の群れの前で猟銃を手放す事ほど、愚かな行動はないであろう。……

 朝鮮民主主義人民共和国は米国の凶悪な戦争の企図を粉砕し、朝鮮半島の平和と地域の安全を保障するために努力の限りを尽くしている真の平和愛護国家である。わが共和国は、責任ある核保有国として侵略的な敵対勢力が我々の自主権を侵害しない限り、すでに闡明した通りに先に核兵器を使用しないであろうし、いかなる場合にも関連手段と技術を移転する事はないであろう。

 米国の極悪非道な対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、我々の核開発の中断や核放棄はどんな事があっても絶対にあり得ない。わが軍隊と人民は、チュチェの革命偉業の千年、万年の未来を頼もしく保証する我々の正義の核抑止力を質量ともに絶えず強化していくであろう……」以上。     

 以上の内容が「全文」の3分の2を占めている。日本メディアが「骨子」「要旨」として報道している内容はほんの一部である事がわかるであろう。そして、そこには日本メディアが、朝鮮問題に対してどのような「立ち位置」にあり、「価値観」をもっているのかなどが表れているのである。

 朝鮮国は「声明」で何を訴えているのであろうか?考えてみよう。

 朝鮮国が核兵器保有を強化する原因は、米国政府が、朝鮮戦争休戦協定(1953年7月27日)以降、朝鮮国が「戦争終結」を認めて「停戦協定を平和協定に切り替える」事を求めても拒否し続けている事。米国政府が「核兵器の先制不使用の宣言」を決してしようとせず、また、「朝鮮の政権転覆攻撃をしない」との姿勢表明も決してしようとしない事。米国政府が毎年必ず「朝鮮爆撃占領計画」に基づいた、その本番実行にいつでも切り替えられる超大規模な軍事演習を朝鮮直近で実施して威圧をかけ続けて、決してやめようとしない事。米国政府が「敵」と見なし、かつ「核兵器を持っていなかった国」が、次々と米国政府の軍事攻撃によって「国家存在そのものを破壊されてきた」現実が山積みである事。(理不尽でデマだらけの非難宣伝も含めて)その国が「悪魔的な独裁国家」に描き上げられて、「自由と民主主義のための戦争」が発動されている事。アフガン、イラク、リビアそしてシリアなど。そのような現実理解のもとで、朝鮮国は「明日は我が身」と思って身構え、米国に朝鮮国家破壊戦争を思い止まらせる唯一の手段として、核兵器の開発強化に突き進もうとしているようである。

 朝鮮国の核兵器開発強化政策の打開策は?メディアの報道はどうあるべきか?

 メディアは米国政府に対して、朝鮮戦争休戦協定後、米国政府が異様に長く継続(63年目)させている「停戦状態」を終結させ、朝鮮国との「平和協定」に切り替え、毎年の軍事演習をやめる事を米国政府安倍自公政権に要求する事から始めるべきではないか。「被爆国日本」としては、各団体が隣国の核実験を非難する事は最もな事であるが、米国政府からの国家破壊戦争の脅威を現実に受けている感じている朝鮮国の状況への認識なく「非難」する事は、米国政府安倍自公政権の「非難声明」と同根のものとなり、安倍自公政権に取り込まれる事となり、安倍自公政権が強行採決した憲法違反の「安保法制」を支持する事につながり、「憲法改正」=「緊急事態条項」の必要性を正当化する事に寄与する事になるのではないか。メディアが、核実験だけを捉え単純に感情的に「非難」をする状況を改めなければ、かつての「暴支膺懲論」と同様の事態を自ら招く可能性を高めるとともに、朝鮮国を非難しない者は「非国民」とされ、在日コリアンは朝鮮国の手先であるとか、米国政府を非難する者は売国奴であるとか、という風潮を広める効果しか生まないのではないか。もしそれを意図しないのであれば、報道の手法を改めるべきである。

(2016年1月11日投稿)

 

                           

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「戦争マラリア事件」(沖縄県・八重山諸島)に対する政府の対応への怨念は消えない

2024-06-16 11:00:11 | 沖縄

※2023年5月24日朝日新聞は、沖縄地上戦下での島民の「マラリア」被害=「戦争マラリア」の実態に関する記事を掲載した。以下に参考までに拙稿2022年4月22日の内容を紹介したい。

 2022年4月5日の朝日新聞は、「戦争マラリア 忘れない」というタイトルで、アジア・太平洋戦争沖縄戦において「戦争マラリア」で亡くなった波照間島民慰霊碑忘勿石之碑」(西表島南風見田)の修復と波照間島に新たな碑を建立するため、それを企画した有志でつくる期成会寄付を呼びかけているとの記事を載せた。

 戦争中のマラリア被害問題全体を、戦争マラリア「問題」と呼び、軍命による強制疎開でのマラリア被害問題を戦争マラリア「事件」と呼び分けるべきであり、戦争マラリア「事件」も、甲戦備令が出た強制疎開であるか、甲戦備令が出ない強制疎開であるかを分けて考えなければならない。そのように考えたうえで、八重山郡全体での戦争マラリア「問題」としての死者は3825人だといわれ、そのうち軍命強制疎開させられ、戦争マラリア「事件」として死亡した人は3459人だといわれている。

甲戦備令とは……敵軍が島に上陸し、戦闘に突入する状況にあるから、守備軍は陣地を展開して迎撃態勢に入れ、合わせて、住民は指定された地に避難せよ、というもの。

 石垣島と竹富島は甲戦備令が出たが、波照間島、黒島などは甲戦備令が出ない避難命令(1945年4月)であった。後者の場合は、非合法での避難命令であったといえる。その結果、波照間島の島民1590人(1270人説も)は、99.8%が罹患し、死者は西表島南風見田で亡くなった85人(うち学童66人)を含め477人(461人説も)であった

 「忘勿石之碑」の元となる「忘勿石」(刻字10文字、「忘勿石 ハテルマ シキナ」)は波照間島を南方に臨む西表島南風見田浜にある。この碑の由来は、当時マラリアの蔓延汚染地帯であった西表島へ軍命により強制疎開させられた波照間島民がほとんど全員が罹患し、うち学童66人が死亡した事態を識名信升校長が悔やむとともに、島民の3分の1が死亡した事を悼み、自ら軍に直訴して疎開を解除させ波照間へ帰島する際に、この事実を決して忘れてはならないという思いから、刻み残したものである。この碑が2019年の台風18号で破損したため修復したいという事なのである。また、波照間島にも新たな碑を建立をしたいという事なのである。

 軍令による強制疎開によって起きた波照間島民の戦争マラリア「事件」原因は、神聖天皇主権大日本帝国政府による本土決戦作戦のための時間稼ぎであった沖縄持久作戦だったのであり、家畜の屠殺を順序良く進める軍の家畜大量略奪計画の実行のために出されたのである。石垣島でも、住民をマラリア地域(東部)や奥地へ移動させたあと、軍が家畜その他の略奪を行っているのである。つまり、軍が軍を守るために島民の命を犠牲にしたのである。また、軍と県は有菌地を避難地疎開地に決定していたのである。

 1989年5月28日、遺族は「沖縄戦強制疎開マラリア犠牲者援護会」(会長 篠原武夫琉球大学教授)を石垣島で設立し、日本政府に補償を求める方針を決めた。沖縄県議会も同年11月7日、戦争マラリア犠牲者の遺族補償を関係機関に要請するために政府に要請団を送った。「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の適用を受けるためには、一般県民は「戦闘協力者」としての認定を必要とするが、遺族は「軍命」による退去だとして認定を求めた。しかし、1995年、政府は個人への戦後補償を認めず、「祈念館建設などの慰藉事業として3億円を支出する」という決定を県民に一方的に押し付けた。政府は補償要求から、この事件の責任が政府機関へ及ぶ事を避けようとしたのである。いまだに政府によるきちんとした事実解明は行われていないだけでなく、謝罪や個人補償も行われていない。この日本政府の冷酷無情な対応に対し、八重山の島民にとっては現在も、忘れたくても忘れる事のできない、これからも語り継ぐべき残虐な事件として記憶されているのである。

(2022年4月10日投稿)

 

 

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