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教育再生実行会議が「家庭教育」を初議論、1930年にも文部省訓令「家庭教育振興に関する件」で戦争協力

2024-06-20 20:46:42 | 教育

 安倍政権の教育再生実行会議(座長・鎌田薫早大総長)が「家庭の役割」などをテーマに議論を再開するという。学校の負担を減らすため、家庭や地域に役割分担を求めるという。松野博一文科相も「家庭や地域の教育力の低下が指摘され、教育現場は教師の長時間労働に支えられている」と述べている。

 「家庭の役割」を政府が一律に規定し、学校の負担を減らすという事で、家庭にその役割を押し付け果たさせようとしているわけですが、この発想はおかしくないですか。まず、学校の負担は学校行政の中で解消すべきであるという事。そして、「家庭の役割」を一方的に規定する事は不可能であり、越権行為であるという事。

 しかし、それを分かったうえで進めようとしていると考えられるので、真の目的は実は、国民の思想の画一化、そして国民の様々な形での組織化とそれらによる「挙国一致」体制の確立を狙っているという事であろう。

 政府による「家庭教育の振興」政策は、敗戦までの神聖天皇主権大日本帝国政府下においてすでに存在した。安倍政権はおそらくそれをテキストとしていると考えられる。それは、1930年の文部省訓令で「家庭教育振興に関する件」というものである。その内容を大まかに紹介すると、

「国家の盛衰は学校教育や社会教育に負うところが大きいが、その土台をなすものは家庭教育である。家庭は心身の育成、人格の涵養の素地であり、子どもの性行を支配する。……この時に当たり我が国固有の美風を振起し家庭教育の本義を発揚し、さらに文化の進運にあわせて家庭生活の改善を図る事は……国運を伸長するための要訣である。家庭教育は父母ともに責任があるが、特に婦人の責任は重大である。従ってその教育振興婦人団体の奮励を促す事によって一般婦人の自覚を喚起する事を主眼とする。……」

という内容である。

 この訓令によってその後どうなっていったであろう。その直後には「大日本連合婦人会(連婦)」が作られ、満州事変後の軍国ムードに乗って、1932年には「大日本国防婦人会(国婦)」が関西を中心に作られた。国婦はエリート意識がなかったため会員をどんどん増やした。この2つの婦人団体は、すでに1901年に作られていた「愛国婦人会(愛婦)」と互いに競い合いながら、軍事援護、愛国貯金などに乗り出した。千人針集めや前線へ慰問袋を送る運動だけでなく、街頭に立って洋髪の女性に「パーマネントはやめましょう」のビラを渡して圧力をかけたり、和服の長い袖をハサミで切り落とす実力行使も見られ、政府の威光を笠に着た振る舞いが多くなり、「泣く子も黙る婦人会」とも言われるようになった。

 1937年、日中戦争開始とともに、「国民精神総動員中央連盟」が発足し、1940年には「大政翼賛会」が発足して、生活必需品の統制が相次いだ。1942年、3つの婦人団体は「大日本婦人会(日婦)」に統合され、翼賛会傘下に入った。

 神聖天皇主権大日本帝国政府は1938年2月、「家庭報告三綱領・実践14項目」を発表したが、それは皇民教育を前面に出し、貯蓄奨励から食事・服装に至る実践項目を示し、国民生活の隅々までからめとるものであった

 政府はまた、1942年5月には「戦時家庭教育指導要綱」(母の戦陣訓)を発表したが、婦人団体も「戦力増強婦人総決起運動申し合わせ三条」を出し、「誓って飛行機と船に立派な戦士を捧げましょう」「一人残らず決戦生産の完遂に参加協力いたしましょう」「長袖を断ち、決戦生活の実践に決起いたしましょう」と訴えるようになった。

 新聞、雑誌、ラジオもまた国を守るための死を美化し、母を聖化した。「家の光」や「婦人の友」は、座談会で「今まで大事に育ててきた子供に『死ね』と一言言って送り出す強さが日本を支えている」と語らせ、戦争協力に励んだ。

 2千万人の女性を組織した日婦は、部落会町内会隣組と一体となって戦争遂行に大きな役割を果たしたのであった。

教育再生実行会議における「家庭教育」の最終目的はこのようなものとなるであろう。

(2016年10月8日投稿)

 

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自民党家庭教育支援法案は思想統制目的、自治体の条例化も基本的人権侵害する憲法違反

2024-06-20 20:44:40 | 教育

 法案は来年2017年の通常国会に提出する予定だという。家庭の自主性を尊重するとしているが、政府が「家庭教育支援」を進めるための方針を決めるとしている事は、いかなる内容であろうと、「家庭教育」について、政府の立場から何らかの事を決め、それを家庭に要求するという事であり、そのような行為は、現行憲法が、政府に対して国民の「基本的人権」(人間として当然に有し、たとえ国家政府であっても侵す事の出来ない権利)を保障する責務を規定している事に反して、政府が国民の「基本的人権」(第11条、12条、13条、18条、19条、20条、21条、23条、24条など)を「侵害」する憲法違反の法案である。また、親の子どもに対する「教育権」を侵害する憲法違反の法案である。

 自公政権(文科相)が「家庭教育支援」を進めるための「基本方針」を決め、「家庭」だけに止まらず、「地域住民」に対しても「国や自治体」が実施する「施策に協力」する事を「責務」として要求するという。

 「家庭教育」、換言すれば「親が子供に行う教育」という事であるが、その家庭教育は「親の権限(親権)」で行われるものであり、それは親の子どもに対する「教育権」であり、親以外の「他人」が決定し強制できるものではない。もちろん、政府が強制し、親に、また親を介して子供にも強制できるものではない。また親自身も「子どもの権利」を尊重するという面から、親であるという事を理由に、子どもに対して何でも強制要求する事ができるというものではないし、してはならないと考えるべきなのが今日の世界の常識である。日本は「子どもの権利条約」も批准している。

 それにもかかわらず、自公政権の「法案」の「基本理念」は、親の教育権を否定し、子どもに「生活のために必要な習慣を身に付させる」とか「国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」などとしている。今日このような事が許されるものではない。

 そして、ここには、何らかの一定の価値観に基づいた内容を、自公政権が親に、そしてその子どもたちに強制しようとする姿勢が見られる。

 また、政府が地方自治体を下部機関としてみなし、施策の実施を命じ協力させ、地域住民に対しては政府や自治体が実施する施策に対して一人の人間も拒む事を許さないようにし、「地域住民」間の同調圧力をも利用した統制体制をつくり、親も子も「地域」に「取り込」み、自公政権の価値観を押し付ける事ができるようにしようとしている。

 そこには、現行憲法が保障している、多様化している価値観を尊重する姿勢は一切見られない。それとは逆に、政府の画一的な価値観を一律に強制的に押し付けようとしている。もちろん自公政権の意図に反する行為、つまり、「自民党改憲草案」に規定している「公の秩序、公益に反する」行為は、違法行為として処罰の対象とするであろう。

 日本の家庭、地域の環境をこのように変えていく事をめざしている事が「改憲草案」に示されている。「改憲草案」は天皇主権の「大日本帝国憲法」を理想とした内容である事は言うまでもなく、国民の権利保障は「公益及び公の秩序に反しない限り」(帝国憲法の「法律の範囲内」と同じ意味)でしか保障しないとする「政府主権」の内容である。

現行第11条「基本的人権の享有」は、草案では「妨げられない」の字句を削除し、「永久の権利である」までを残し、それに続く現行の「現在および将来の国民に与えられる」の字句は削除している。基本的人権は「政府妨げる場合はある」し、「現在および将来の国民に与える保障はしない」と変更しているのである。

現行第12条「自由・権利の保持の責任とその濫用の禁止」は、草案では「国民の責務」と変え、「憲法が保障する自由及び権利」については現行憲法の「公共の福祉のために之を利用する責任を負う」を、「責任及び義務が伴う事を自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」 と変更している。「公共の福祉」とは、社会を構成する人たちみんなの共通の利益の意味で、人権の衝突を調整する考えを意味する言葉である。ところがそれを「改憲草案」は、「全体の利益」「国家の利益」という意味の言葉にそっくり変更しているのである。

現行第13条「個人の尊重・幸福追求権・公共の福祉」は、草案では「としての尊重等」と変え、「尊重される」のは現行憲法の「個人」ではなく、「生物」としての「人」に変更している。「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は、現行憲法の「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に反しない限りと意味をそっくり変え、現行の「最大の尊重を必要とする」を「最大限に尊重されなければならない」と変更している。「最大限」は政府の恣意的判断を可能とするためである。

現行第18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」は、草案では「身体の拘束及び苦役からの自由」と変え、第1項を追加し、「その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」としている。このような表現は、「精神的拘束(思想的拘束)」は合法で憲法違反ではないという解釈を可能とするためではないだろうか。

現行第19条「思想及び良心の自由」では、「これを侵してはならない」としているが、改憲草案では「保障する」と変更している。現行が禁止事項である事に変え、「保障する」のは「政府」であり、「保障」の中身は政府の恣意的な判断を可能とするものである。

「支援法案」では、政府(文科相)が定める「基本方針」を参考に、「地方自治体」が「家庭教育支援のための基本方針を定めるよう努める」と規定しているが、草案第20条「信教の自由」では、現行第3項の内容に「特定の宗教のための教育その他の宗教的活動をしてはならない。ただし、社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものについては、この限りではない」という字句を追加している。これは、「靖国神社」「伊勢神宮」「護国神社」などオカルト集団天皇家の国家神道行事を神聖天皇主権大日本帝国政府下と同様に「特定の宗教」ではないとする解釈を国民に押し付け、政府関係者自治体公務員参拝を正当化する法的根拠を作り、将来国民を参拝に強制動員する根拠を作り、その洗脳を「家庭教育」において合法的強制的に行おうとしているのである。

 この条文は、国家神道の祭祀における小道具である「国旗」(天照大神を象徴するものでキリスト像に当たる)や「国歌」(天皇を賛美する歌でキリスト教の讃美歌に当たる)に対し、例えば「卒業式」「入学式」の際に教育委員会や校長を通して、起立斉唱を、生徒や保護者、教職員やその他の国民に義務付けし強制するうえでも法的根拠にしようとしているものであり、それは神聖天皇主権大日本帝国政府が国教とした「国家神道」を国民に強制する事を正当化するための法的根拠とする事を目論むものである。

 2016年10月24日には大阪高裁が、卒業式で君が代の起立斉唱を拒否し減給処分を受けた大阪府立支援学校教諭に対し、「処分は適法」とし、教諭が「君が代が国民を戦争に駆り立てた歴史を考えると歌えない」と訴えた事に対して、「起立斉唱慣例上の儀礼的な所作」とし、「式の進行などの目的があるなら思想・良心の間接的な制約も許される」という判断を下している事で明らかであろう。

 ついでながら、大阪府(橋本徹府知事)は教職員に起立斉唱義務付け全国初の条例を2011年6月に施行している。

現行第21条「集会、結社、表現の自由」は、草案では「表現の自由」と変え、その第2項を新設し、第1項で「自由を保障する」とした事について、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害する事を目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をする事は、認められない」とし、多様な価値観に基づく国民の活動を処罰の対象とし、官制の「家庭教育」に反対する活動を抑圧する事を合法化する事を狙っている。

現行第24条「家族生活における個人の尊厳……」は、草案では「家族、婚姻に関する基本原則」と変え、第1項を新設し、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は互いに助け合わなければならない」として、現行の「個人の尊厳」は3項に「字句」を残しているが、2項の「婚姻」も「両性の合意のみに基づいて成立し」から、「のみ」を削除し、3項では「配偶者の選択」「住居の選定」の「字句」を削除し、「家族」を先頭にしたうえ、新たに「扶養」「後見」「親族」の字句を加え、家族の相互扶助、扶養」を義務として強制する事を重点とした内容に変更している。「家庭教育支援法案」の根拠となるものである。

以上、「家庭教育支援法案」に関係する「改憲草案」の「条文」を見ると、すべてに共通する事は、個人の権利を「天賦」のものとして尊重保障せず、政府やその下請け機関とされた「地方自治体」が独断で決定する「家庭教育支援政策」によって各家庭各家族はもちろんそれによって構成される地域住民を丸ごとすべて服従させるための根拠となり、またそれに反対する対応をとった場合には処罰の根拠ともなる内容となっている。

つまり、「改憲草案」は、政府によって国民の「すべてを統制」する内容であり、「支援法案」はそれを実質的に確保するのために家庭家族を社会の基礎単位と位置づけ具体的日常的に、精神的肉体的な自由を統制し服従させる法律であるという事である。つまり、全体主義、ファシズム体制、安倍政権自民党独裁体制を確立するためのものという事である。

 ところで安倍政権自民党が、「人権」を軽視無視する「支援法」を成立させたり、「憲法改悪」をするという事は、この世界でどのような意味を持つのかという事を考えてみると、それは、

国連憲章第1条第3項世界人権宣言(人類普遍の価値として人権尊重を宣言)や国際人権規約(世界人権宣言を条約化したもの)を基本にして成り立っている国際秩序から脱退するという事を意味するものであり、世界から孤立する事を意味する。  

 ※上記にのテーマに関係する別の投稿に

「教育再生会議が『家庭教育』初議論、1930年にも文部省訓令『家庭教育振興に関する件』で戦争協力

がありますので併せて読んでください。

(2016年10月26日投稿)

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