OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これでチャック・レイニーの正体に触れた

2012-08-17 15:39:06 | Soul Jazz

The Chuck Rainey Coalition (Skye)

エレキベースの大御所して、今や大衆音楽史にその名を刻すチャック・レイニーをサイケおやじが意識したのは何時の事だったか……?

それは多分、全盛期ブラッド・スウェット&ティアーズ=BS&Tで活躍したボーカリストのディヴィッド・クレイトン・トーマスが1973年頃に出したソロアルバム「テキーラ・サンライズ(Columbia)」を聴いた時だと思います。

正直、実はアルバムそのものの出来はイマイチの感想だったんですが、歌とバックの演奏は素晴らしく、ハッするほど良い感じの瞬間がテンコ盛り! 中でも飛び跳ねて蠢くエレキベースには驚愕的にシビれさせられましたですねぇ~♪

で、もちろん、それを演じていたのがチャック・レイニーというわけなんですが、一緒にやっていたのがダニー・クーチ(g)、ウィリアム・スミス(key)、ケニー・ライス(ds) 等々とくれば、激ヤバのファンキーロックはお約束以上で、あぁ、これで楽曲が良かったらなぁ~~、と思わずにはいられないほどの歓喜と失望がゴッタ煮の迷盤でした。

しかし、忽ちにしてサイケおやじの気になる存在となったチャック・レイニーではありますが、当時はその人を知る情報等は無いに等しく、それでもアメリカで活躍しているスタジオセッションミュージシャンとしてはトップクラスの名手で、ラスカルズやローラ・ニーロ、シャーリー・スコットやハービー・マンアレサ・フランクリン等々、とにかくロックもジャズもR&Bも、何でもござれの仕事をやれる実力者であろう……!?

まあ、そんなところが精一杯の正体暴き(?)ではありましたが、ちなみにサイケおやじがエレキベース大好き人間になったのは、ザ・フーのジョン・エントウィッスルやクリームのジャック・ブルース、我国ではゴールデン・カップスのルイズルイス加部、さらには昭和40年代後半からのエレキ歌謡や歌謡ポップスのバック演奏で存分に聴ける、あの自由にドライヴする存在にグッと惹きつけられた前科ゆえの事です。

そして時が流れた翌年の事、出入りしていた楽器屋に集う諸先輩方々の偶然の話題にチャック・レイニーの名前が飛び出し、そこで様々に教えていただいた中から聴く事になったのが、本日掲載したチャック・レイニーのリーダーアルバムでした。

 A-1 Eloise (First Love)
 A-2 How Long Will It Last
 A-3 Genuine John
 A-4 The Rain Song
 A-5 Got It Togegher
 B-1 The Lone Stranger
 B-2 Harlem Nocturne / Zenzile
 B-3 It's Gonna Rain
 B-4 Theme From Peter Gunn

結論から言えば全篇がインストで、ソウル~ファンキーロック系の演奏がびっしり詰め込まれた内容は、後のスタッフと共通するものなんですが、リアルタイムで聴いた頃にはスタッフという存在は未だに無く、ソウルジャズ系スタジオミュージシャンの演奏集という事は、ブッカーT&MGs みたいなもんかなぁ~、という先入観念が正直ありました。

しかしチャック・レイニー(b) 以下、エリック・ゲイル(g)、コーネル・デュプリー(g)、ビリー・バトラー(g)、リチャード・ティー(key)、バーナード・パーディ(ds)、ケニー・ライス(ds)、モンティゴ・ジョー(per)、ウォーレン・スミス(per) 等々のリズムセクションが織りなすグルーヴには明らかに新しいセンスがあり、同時にその頃からブームになっていたニューソウルの土台がビンビンに感じられたんですねぇ~♪

また適材適所で使われているトランペットやサックス、あるいはストリングスのアレンジも秀逸で、これはどうやらセルワート・クラークという人物の仕事らしいんですが、そこでプロデューサーのクレジットを確認すると、そこにはチャック・レイニーと並んでゲイリー・マクファーランドの名前がっ!

そうです、ゲイリー・マクファーランドについて書こうとすれば、文字数は天文学的になりそうなほど、20世紀の大衆音楽界には偉大過ぎる功績と影響を残した天才肌の音楽家なんですが、一応はジャズ系の仕事から派生した今日のフュージョンというジャンルの礎を築いたひとりであり、自ら主宰していたレコードレーぺルの「Skye」では、このチャック・レイニーのリーダー盤以外にも凄い作品が作られているのですから、本当に今日でも要注意でしょう。

いや、と言うよりも、それらが制作発売されていた1960年代後半から1970年代初頭よりは、時を経るほどに再発見・再評価の機運が高まっているのが実情じゃ~ないでしょうか。

実際、このチャック・レイニーのアルバムにしても、録音されたのは1969年頃であり、世に出たのは1971年と言われていますが、リアルタイムでは同業者間でしか話題にならなかったそうで、しかしそれがニューソウルやクロスオーバー&フュージョンのブームが到来した時、元祖&本家として再評価された歴史は言うまでもないと思います。

例えばA面ド頭の「Eloise (First Love)」は後にリチャード・ティーが初リーダー盤再演していますし、続く「How Long Will It Last」にしても、コーネル・デュプリーやスタッフが、これまた再録したほどの十八番でありながら、その仕上がりの基本形は、このチャック・レイニーのリーダーセッションで既に出来上がっていることが確認出来るはずです。

いゃ~、この「How Long Will It Last」は本当にカッコ良すぎで、もちろん当時はコーネル・デュプリーやスタッフのバージョンが世に出る前でありましたから、サイケおやじは出来ないながらも、ギターやベースのコピーに勤しんだ時期が確かにありました。

しかし、とにかくリズムとピートの作り方が本当に難しいんですよねぇ~~。

と痛感してみれば、これはベース奏者のリーダー盤なんですから、当たり前田のクラッカー!!

バックとはいえ、ブリブリの弾きまくりからシンコペイトが絶妙のアクセント、スラップや疑似チョッパー気味のオカズ入れ、さらにはどっしり構えたルート音の構築等々、チャック・レイニーの基本技がこれでもかと椀盤振舞いですよっ!

そして様々な場面で表になり、裏になって活躍するギターやキーボード、トランペットやサックス等々が本当にイキイキする様が、このアルバム最良の楽しみだと思います。

で、肝心のチャック・レイニーの奏法云々については、今やガイド本や教則映像集までもが出ているほど、各方面への影響は絶大なんですが、その指弾きプレイの硬軟使い分けが流石で、実は数回接したライプの生演奏では、何故か雑なプレイもやらかしてしまう事を鑑みれば、相当にその場の雰囲気や空気を大切にする信条があるのかもしれません。

そう思えば、このアルバム全体の雰囲気が楽しさ優先モードというか、何時もは所謂「お仕事」でやっているメンバー各々の技術の披露が、同じ事でもこれだけウキウキと前向きな感じに録られたのは素晴らしいと思います。

それは繰り返しますが、プロデューサーのゲイリー・マクファーランドの手腕でもあり、1960年代末にこうしたセッションを企画実行した先見性は流石の一言!

今となってはフュージョン名作の人気盤から比べて、非常に地味~な内容ではありますが、聴くほどにジワジワと染み込んでくるソウルファンク系都会派のグルーヴは絶品ですし、その基本姿勢こそが後の同ジャンルをブームに導いた真実は打ち消せないことに、サイケおやじは感銘を受けてしまうのです。

ということで、エレキベースというジャンルに限っては、チャック・レイニーが一番という事では決してなくとも、エレキベースが好きならば、このアルバムは座右のレコードでしょう。

極言すれば、サイケおやじは、このアルバムに出会えた事によって、以降の音楽の聴き方に深みを持てるようになったほどで、気になるレコードの参加メンバークレジットにチャック・レイニーの名前を発見する時、買おうか、買うまいか……、悩んでいた問題を霧散させる力さえも与えてもらいました。

機会があれば、ぜひとも皆様にもお楽しみいただきたいアルバムであります。 

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ソウル&ファンクブラザーズの真髄堪能♪

2012-07-01 15:20:37 | Soul Jazz

The Complete Albums & More / Earl Van Dyke (Motown / Hip-O = CD)

それなりに表に出ていなくとも、良い仕事を成し遂げるためには真摯で優れた裏方スタッフの存在がある事は、この世の常識! ですから、大衆音楽の制作現場においても、所謂縁の下の力持ち達が黙々と働いていた実情が明らかになるのであれば、それが気にならないはずもありません。

中でもレコーディングの現場で活躍するスタジオミュージシャンは、優れた技量と高い音楽性を普通に持ち併せた職人であって、決してスタアではありませんが、そんな彼等が時折にやってしまう、それこそハッとするほど良い感じの得意技の披露こそ、コアな音楽マニアを歓喜させるものであり、誰が演じているのかは不明であっても、ひとつのジャンルを確立させていく要素の大切な部分を担っていました。

特に1960年代のアメリカで大旋風を巻き起こしたモータウン系のレコード諸作で聴かれるバックトラック、つまり演奏パートの充実は同業者の憧れであり、また業界普遍の掟が守られていた事により、尚更に凄い魅力を発散していたようです。

それは演奏メンバーの名前を秘匿していた事に尽きますが、一説によると制作側独自のサウンドを他社に盗まれないようにする必要から、ミュージシャンやソングライタースタッフの引き抜き移動を阻止する目論見があったと言われています。

ところが、それは確かにそうであっても、やはり現場の演奏仲間は狭い世界のようで、実は広い人脈があるのですから、少しずつ所謂モータウンサウンドの秘密とも言うべきメンバーの存在が世の中に知られるようになり、ついに数年前に制作封切されたドキュメント音楽映画「永遠のモータウン」によって、その内幕の真実が相当に近いところまで公になったのは凄い事だったと思います。

さて、そこで本日のご紹介は、件のモータウンサウンドを作り上げていた現場ミュージシャンの代表格たるキーボード奏者のアール・ヴァン・ダイクが残したインストアルバム2枚を基に、シングル盤オンリーの発売だった楽曲やライプ音源を含む未発表トラックまでも集成した決定的な2枚組CD♪♪~♪

もちろん、かなり拘ったリマスターや解説プックレットも嬉しい復刻になっています。

☆DISC 1
 01 Nowhere To Run
 02 Come See About Me
 03 You're a Wonderful One
 04 How Sweet It is
 05 My Girl
 06 All For You
 07 Too Many Fish In the Sea
 08 Try It Baby
 09 The Way You Do the Things You Do
 10 Can I Get a Witness
 11 Can You Jerk Like Me
 12 Money
 まず、以上の12曲がアール・ヴァン・ダイク&ソウル・ブラザーズ名義で1965年に発売されたLP「ザット・モータウン・サウンド」に収録されていたインスト演奏で、内容は上記お馴染みのヒット曲のオリジナルカラオケを基に、アール・ヴァン・ダイクのオルガンやピアノを被せ、さらにリミックスを施したものです。
 しかも今回の復刻はさらにリマスターされたステレオミックスとなっているのですから、様々な部分で興味深い聴きどころが多々ありますよ。
 ちなみにソウル・ブラザーズと称された演奏参加メンバーの仔細は付属解説書にも記載されていませんが、それでもアール・ヴァン・ダイク(key) 以下、ロバート・ホワイト(g)、ジョー・メッシーナ(g)、エディ・ウィルス(g,b)、ボブ・バビット(g)、ジョニー・グリフィス(key)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds)、ベニー・ベンジャミン(ds)、リャード・アレン(ds)、エディ・ブラウン(per)、ジャック・アシュフォード(vib,per) 等々、前述した映画「永遠のモータウン」でベールを脱いだ名手達が挙って参加しているのは言わずもがなで、しかも今回の復刻によって、なかなか細部まで巧みなプロのテクニックやフィーリングを味わえるようになってみると、目からウロコの瞬間がどっさり堪能出来ますよっ!
 特に個人的には初期のストーンズにおいて、ブライアン・ジョーンズが仕切っていた演奏面のアレンジのキモが、同時代のモータウンサウンドから如何に影響を受けていたか、例えばブライアン・ジョーンズのサイドギターの刻みやキメ、そしてオカズがクリソツであったと知れた事だけでも、これは目眩がしたほどですし、もちろんリズムアレンジの妙も同様です。
 そして肝心のアール・ヴァン・ダイクのオルガンプレイは、演目が有名ヒット曲ばかりということで、あえてテーマメロディをそのまま弾くことはせず、パラフレーズを駆使したアドリブは本当に見事だと思いますし、演奏が進むにつれ、なかなか攻撃的なツッコミや熱いフレーズを繰り出していくところには、本当にゾクゾクさせられます♪♪~♪
 それは全てが耳に馴染んだヒット曲であり、しかも刷り込まれたイントロやキメのリフ、あるいは巧みにアレンジされたホーンやコーラスがそのまんまオリジナルバージョンどおりに残されている事があっての仕掛でしょう。
 つまり逆に言えば、それらを既に作り上げていた前述アール・ヴァン・ダイク以下の有能なミュージシャンの存在が、如何に大きかったの証明でもあり、だとすればオリジナルアルバムのタイトル「ザット・モータウン・サウンド」も、全くの偽りが無いわけです。
 あぁ~~、本当に聴いていてワクワク、アッパーな気分にさせられるサイケおやじは、自分の嗜好を再確認させられました♪♪~♪

 13 I Can't Help Myself
 14 Soul Stomp
 15 Hot 'N' Tot
 16 Mobile Lil the Dancing Witch (Previously Unreleased)
 17 He Was Really Sayin' Somethin'
 18 All Day, All Night
 19 Opus and Funk (Previously Unreleased)
 上記のトラックは所謂ボーナストラックで、リアルタイムではシングル盤だけの発売曲やオムニバス盤に入れられて世に出たものに加え、今回が初出となる貴重なトラックもありますから、侮れません。
 中でも1964年にシングル盤両面にカップリング発売された「Soul Stomp」と「Hot 'N' Tot」は今日でも血沸き肉躍る永遠のダンスクラシックであり、同一路線のトップを疾走していたジミー・スミス(org) にも負けない、強烈なピートとグルーヴが楽しめますよ♪♪~♪
 特に派手なホーンリフと手拍子に煽られる「Soul Stomp」は好きだなぁ~~♪ と何時に無く素直に言えますし、ゴスペル風味の熱気が充満する「Hot 'N' Tot」も、本当にたまりません♪♪~♪
 そして当然ながら、同系の制作意図がはっきりしている「Mobile Lil the Dancing Witch」や「Opus and Funk」が、全く未発表にされていたのは、まあ、それだけ他に秀逸な演奏が出来上がっていたと言われれば納得するしかないとは思いますが、勿体無いかぎり! 今、こうして楽しめる幸せに感謝しなくてはバチアタリでしょう。

 20 Too Many Fish In the Sea (Live In Paris)
 21 Soul Stomp (Live In Paris)
 上記2曲は所謂モータウン・レビューと称された巡業ライプからの音源で、1965年4月13日に録音され、同名のライプアルバムに収録されていたバージョンをリミックスしたものと思われます。
 参加メンバーはバンマスのアール・ヴァン・ダイク(key) 以下、ロバート・ホワイト(g) やジャック・アシュフォード(per) を含むツアーバンドながら、流石のグルーヴは圧巻ですし、こういう現場でもジャック・アシュフォードのタンバリンの存在感が、如何にモータウンサウンドのキモであったかが知れようというものです。

 22 6 By 6
 23 There is No Greater Love
 これが今回の復刻でサイケおやじが一番のお目当て!
 初出は1966年頃とされるアール・ヴァン・ダイク&モータウンブラスによるシングル盤オンリーのカップリグ2曲で、特に「6 By 6」は最高にカッコ良すぎる日活アクションモードの歌謡R&B系グルーヴ演奏♪♪~♪
 もう曲もアレンジも、やっている事全てがサイケおやじの最も好むところの極みつきで、実は1970年代のある日、知り合いから聴かせもらって以来、必至で探索を続け、ようやくゲットしたアメリカ盤シングルを聴き狂っていた過去があるものの、如何せん、実態はガタボロの傷だらけ……。
 それがここに涙の復刻とあっては、端坐しての鑑賞も、何時しか身も心もハイグルーヴ状態ですよ♪♪~♪
 また「There is No Greater Love」にしても、モダンジャズでは定番のスタンダード曲ということで、ここでは堂々の所謂レアグルーヴが全開! 当然ながらアール・ヴァン・ダイクのジャズルーツも開陳されていますし、パーカッションが前面に出たチャカポコリズムとメリハリの効いたホーンアレンジもニクイばかりと思います。

 24 The Flick - Parts 1, 2, 3 & 4
 これもまた侮れないトラックで、原曲の「The Flick」はシングル盤オンリーで1965年頃には世に出ていたファンクインストなんですが、ここではその完成に至る4種類のパートが全面公開されているんですねぇ~♪
 あぁ~、それにしても、ここでの熱いグルーヴは、例えばジミー・スミスあたりがやっていた事と比べても決して遜色は感じられないでしょう。もちろんオルガンの技量という点だけでは巨匠に及ばないのは当然としても、蠢くエレキベースを核として醸し出されていくバンド全員による意志の疎通は、ドロドロに融解したマグマの噴出にも似た、実に危険極まりないものです。
 う~ん、こんなん目の前でやられたら、歓喜悶絶の揚げ句、そのまんま昇天してしまうかもしれませんよ。それほどアブナイっていう事です。

 25 You Name It (Live / Previously Unreleased)
 これも未発表のライプテイクで、付属解説書によると、どうやらテンプテイションズの伴奏をやった時の音源のようで、メンバーはアール・ヴァン・ダイク(key)、ロバート・ホワイト(g)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds) ですから、まさに鉄壁のモータウングルーヴが楽しめる予感は嬉しいわけですが、なんとっ! ここでは全員が本来の持ち味である正統派4ビートシャッフルによるモダンジャズをやらかしているんですから、なかなかの面白みがありますよ。
 と言うよりも、実はモータウンのスタジオでレギュラーだったセッションミュージシャンの多くはジャズ屋が本職であり、何れも当地のクラブや有名スタアのツアーバンドで働いていたと言われています。
 それはデトロイトという地域特有のモダンジャズを表出する、まさにひとつの温床であったわけで、例えばハンク(p)、サド(tp)、エルビン(ds) のジョーンズ三兄弟、バリー・ハリス(p)、トミー・フラナガン(p)、ミトル・ジャクソン(vib)、ローランド・ハナ(p)、ポール・チェンバース(b)、ダグ・ワトキンス(b)、ケニー・バレル(g)、ペッパー・アダムス(bs) 等々のモダンジャズの巨匠を輩出した歴史でも明らかなんですが、しかしジャズの本場たるニューヨークで活躍出来るのは余程の個性派という現実もあり、とすれば純然たる実力を発揮するには最新流行のソウルミュージックが最適であったのかもしれません。
 そうした勘繰りも含めて、こういう4ビートが聴けるのは嬉しいところと思います。
 
☆DISC 2
 01 Someday We'll Be Together
 02 Rainy Night In Georgia
 03 Thank You Falettinme Be Mice Elf Agin
 04 Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye
 05 Wichita Lineman
 06 The Flick
 07 Cissy Strut
 08 Stand By Me
 09 My Cherie Amour
 10 Fuschia Moods
 11 The Stingray
 12 The Whip-a-Rang
 さてさて、いよいよ2枚目のディスクも激ヤバなトラックがテンコ盛りで、まずは上記が1970年に発売されたアール・ヴァン・ダイク名義のライプ盤「アール・オブ・ファンク」のリマスター復刻です。
 参加メンバーはアール・ヴァン・ダイク(key)、ロバート・ホワイト(g)、ジェイムズ・ジェマーソン(b)、ユリエル・ジョーンズ(ds)、エディ・ブラウン(per)、ジョージ・ベンソン(sax) という、今では夢のファンクブラーザーズ! もちろんジョージ・ベンソンは、あのギターと歌の大スタアとは同名異人ですが、なかなかの隠れ名手なんで、流石の演奏が披露されていますよ。
 で、まずは結論から言うと、これはライプレコーディングを標榜していますが、データ的にはそれほど大きくはない場所と思われるデトロイトのクラブで録音しているはずなのに、拍手が異様に盛大で、しかも演奏毎にスパッとフェードアウトしたり、個人的には不自然な響きが感じられるところから、おそらくは疑似ライプ? もしかしたらスタジオレコーディングのテイクに拍手を被せたものという推察もしております。
 しかし、だからと言って演奏がダメなんてことは絶対になく、全篇良く知られたリアルタイムのヒット曲が徹底的にグルーヴィなインストに加工されているのは圧巻の歓喜悶絶♪♪~♪
 とにかく、これは曲毎にどうのこうのなぁ~んて事よりも、聴いていただく他は無いほどの素晴らしさで、これを感じられなかったら黒人音楽好きは生きている甲斐も無いと思えるほどです。
 それは極言すればポリリズムによる集団即興演奏的なリズム隊のピート感、中でも幻の名人とまで一時は噂のあったジェイムズ・ジェマーソンのエレキベースは凄いですねぇ~♪ もちろんロバート・ホワイトの繊細にして豪胆なギター、エディ・ブラウンのコンガやユリエル・ジョーンズのドラムスも唯一無二の至芸ではありますが、こういうバンド全体の大きなノリを構築していく優先度の高さは驚異的ですよ。
 また既に述べたとおり、アルト&テナーサックスで参加のジョージ・ベンソンは、モダンジャズの世界では無名に等しいわけですが、流石はデトロイトで活動するに相応しい実力者で、サイケおやじは一発で好きになりました。
 そして肝心のアール・ヴァン・ダイクは時代的にもニューソウル指数が向上したプレイを聴かせてくれますから、安心して身を任せているうちに、気分はすっかりファンク漬け! ただただ生きている、生かされている幸せに感謝するのみです。
 ちなみにリマスターはステレオミックスの分離も良好ですから、参加メンバーの個人技探求も熱い試みだと思います。

 13 Runaway Child, Running Wild
 14 Gonna Give Her All the Love I've Got
 上記2曲も1969年に発売されたシングル盤オンリーのトラックで、実はサイケおやじは初めて聴いたんですが、ビシバシのドラムス&パーカッションにシンコペストしまくったエレキベースが絡んで作り出されるピート感は、まさにニューソウルですよ。
 もちろん鋭いホーンリフやワウワウ使用のギターは「お約束」ですから、アール・ヴァン・ダイクが幾分エレクトリックな響きのピアノを弾いてしまう事についても、特段の違和感はありません。
 う~ん、これまたシビれるなぁ~~~♪

 15 Fever In the Funkhouse (Alternate Mix)
 16 Behold (Previously Unreleased)
 17 Greedy Green (Previously Unreleased)
 上記3曲は、アッと驚くジェイムズ・ジェマーソン名義のセッション音源で、「Fever In the Funkhouse」だけは1995年に発掘系オムニバス盤に収録されて世に出ていたらしいのですが、今回はクレジットされているとおりの別ミックスバージョンになっていますし、他の2曲は完全未発表!
 そしてもちろん、全てが強烈なインスト演奏で、ニューソウル&ファンクなグルーヴが煮え滾っていますよ!! リーダーのエレキベースは言うまでもなく、ギターもホーンセクションもドラムスもパーカッションも、そしてキーボードも、全くひとつのベクトルに統一されていながら、各々の個人的主張も忘れていないあたりは、流石リアルタイムで最先端のサウンドを追求していた証でしょう。
 ぐわぁぁぁ~~~、と思わずアンプの音量上げてしまうこと、請け合いです。

 18 Up On Your Feet (Previously Unreleased)
 19 Too Busy Thinking About My Baby (Previously Unreleased)
 20 Ode To Benny B (Previously Unreleased)
 最後のパートは何れも未発表になっていたトラックで、付属解説書によればグラディス・ナイトやフォー・トップスの為に作られたカラオケパートを活かし、そこにアール・ヴァン・ダイクのキーボードをオーバーダビングしたという、例によって例の手法が使われているようです。
 そしてセッションの時期が1968~1969年という、これが後のニューソウルの発祥に繋がる頃とあって、現場の雰囲気も生々しく記録されたテープのストレートな公開は興味津々♪♪~♪
 正直、未発表になっていただけに出来はイマイチのように思いますが、アール・ヴァン・ダイクがオルガンよりもピアノをメインにしている状況も、それなりの理由を様々に推察出来るのかもしれません。

ということで、これは充実の復刻作!

特にソウルジャズやレアグルーヴ好きには絶対のマストでしょうし、モータウン系を含むノーザンソウルビートファンも楽しく聴けると思います。

また、今回の拙稿を書く中で勉強になった付属解説書も丁寧ですし、ここに記載出来なかった細かいデータや写真のあれこれも、最高に嬉しいところ♪♪~♪

個人的には車の中で鳴らしてしまう事も多いんですが、ちょいと安全運転を忘れがちになるのは要注意なんで、そこだけは強く付記しておく所存です。

あぁ~~、やっぱりこういう音楽が好きですっ!

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ジミー・スミスのケリ、一撃!

2012-05-18 15:03:51 | Soul Jazz

Respect / Jimmy Smith (Verve)

このジャケットデザインだけで、我国の全盛期ジャズ喫茶からは敬遠される事必至であったLPなんですが、現在ではソウルジャズの人気盤という位置付けも不思議ではないのですから、時の流れは偉大です。

まあ、そのあたりの経緯云々は長くなりますので、今回はご容赦願いたいわけですが、実際問題として昭和40年代後半から昭和50年代の中古屋にはカット盤も含めて、かなりの捨値で売れ残っていましたし、サイケおやじにしても、何かバーゲンの三枚千円みたいな員数合わせでゲットしたのが本当のところです。

しかし収録演目は基本的に気になる曲ばっかりですし、その輸入盤だった裏ジャケ解説に演奏参加ミュージシャンのクレジットがきっちり記載されていないところが、もしかしたらのスケベ心を刺激してくれたんですねぇ。

というのも、これが世に出たであろう1967年頃のソウルジャズセッションには、必ずしもモダンジャズを専門職にしていない、R&B系のスタジオミュージシャンや助っ人がノンクレジットで参加している事例が夥しく、特にニューヨークやハリウッドでの仕事がメインの連中には、それが日常でありました。

そして案の定、後に知ったところによれば、ここでのメンバーはジミー・スミス(org) 以下、ソーネル・シュワルツ(g)、エリック・ゲイル(g)、ロン・カーター(b)、ボブ・ブッシュネル(b)、グラディ・テイト(ds)、バーナード・パーディ(ds) の参加が判明!

ただし、どのトラックに誰が参加しているかは、どうにもはっきりせず、とりあえずサイケおやじの独断と偏見の耳によって判断した推察は各々述べさせていただきますが、録音セッションが1967年6月2&14日と2回に分かれているところからして、特定の組み合わせがあったのかもしれません。

A-1 Mercy, Mercy, Mercy
 説明不要、ジョー・ザビヌルが書いたファンキーソウルジャズの聖典として、1967年初頭に出たオリジナルは作者も在団していたキャノンポール・アダレイ・グループの人気インスト曲であり、歌詞付きのバージョンとしてはバッキンガムズが同年夏に大ヒットさせていますが、このジミー・スミスのセッションはその直前の6月ですから、まさにリアルタイムの衝動がそのまんま演奏に表れている感じです。
 それは冒頭からミディアムテンポで重心の低いグルーヴがじっくりと醸造されていく過程において、もう……、本当に最高♪♪~♪
 ジワジワと効いてくるファンキーゴスペルなテーマリフはもちろんのこと、ブレイクやアドリブに入って行く瞬間のゾクゾク感、さらにグリグリにエグイ味わいのフレーズを切れ味鋭く積み重ねていく連続技には、思わず冷静さを失ってしまいますねぇ~♪
 また主役と一体になって演奏を盛り上げていくバックの面々なんですが、おそらくはロン・カーター(b) にグラディ・テイト(ds)、そしてソーネル・シュワルツ(g) というセットではないでしょうか。
 あぁ、このグルーヴの本気度の高さは、何度聴いても、たまりませんっ!

A-2 Respect
 これまたリアルタイムのR&Bヒットのカバーで、オーティス・レディングの作者バージョン、あるいはアレサ・フランクリンの教会グルーヴ系熱唱が超有名とあって、ジミー・スミスも油断がならないという感じでしょうか。
 ですからイントロからテンションの高いソウル&ファンク風味が全開のリズム隊に導かれ、真っ向勝負でテーマからアドリブに突進していくストレートな感性には素直にシビれて正解だと思います。
 ちなみにそのリズム隊なんですが、エリック・ゲイル(g)、ボブ・ブッシュネル(b)、バーナード・パーディ(ds) の参加が濃厚に感じられるものの、実際にはギターが2本聞こえるところは、エリック・ゲイルの多重録音なんでしょうか? またベースは完全にエレクトリックな音色とノリが明確ですよ。
 う~ん、しかし、それゆえに演奏が良いところでフェードアウトしてしまう短さが残念無念……。

A-3 Funky Broadway
 おぉ、実はこれがサイケおやじの一番期待していた演目で、ご存じ! ウィルソン・ピケットの十八番というファンキーダンサーですから、中途半端なソウルは許されません!
 そこでやはり特筆されるのがギターのサイドプレイで、執拗な定型リフ攻撃や合の手リズムカッティングは必須というところでしょうか。また意外に小技が大切なソウルドラミングのお手本と言うべきスタイルは、おそらくバーナード・パーディだと思われます。
 またギターが絶妙にスタッフしているところからして、これはエリック・ゲイルなんでしょうねぇ。
 肝心のジミー・スミスはサイドではボトム重視のリフを演じ、アドリブソロでは凝ったフレーズを排除するという方針を貫いているだけに、これもフェードアウトが勿体無いとしか……。

B-1 T-Bone Steak
 ジミー・スミスのオリジナルブルースで、4ビートの正統的ハードバップの香りも憎めない展開は、しかし同時にナチュラルなソウルグルーヴの噴出も極まっていますよ。
 なによりもジミー・スミスのアドリブラインがアグレッシヴとしか言いようがないほど、時には破天荒なフレーズとリズムアプローチが本当に強烈で、しかし次の瞬間、慣れ親しんだ「お約束」に戻ってみせる手練手管は流石のカタルシス! それをアップテンポでやってしまうジミー・スミスの天才性が楽しめると思います。
 そして気になるリズム隊はソーネル・シュワルツ(g)、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds) と推察出来ますが、もしかしたらベースは参加していないかもしれず、それが高い自由度のキメ手かもしれません。
 あぁ、このドライヴ感、最高~~~~♪

B-2 Get Out Of My Life
 これまたブルースなんですが、やはり作者がニューオリンズR&Bの立役者というアラン・トゥーサンだけあって、演奏の流れに刺激的なシンコペイションを導入するリズム隊の活躍に耳を奪われてしまいます。
 う~ん、このシャープに横揺れするドラミングは絶品ですねぇ~♪ グラディ・テイトなんでしょうか? またギターも素敵なアドリブを演じてくれますが、エリック・ゲイルのようでもあり、またソーネル・シュワルツと言われれば、それで納得する他はない雰囲気……。と、すれば、ドラムスがバーナード・パーディと思えないこともありません。
 ただ、何れの参加メンバーであったとしても、ジミー・スミスの確固たる主演スタアとしての貫録と実力は圧倒的な存在感で、オルガンプレイと呼応する掛け声がソウルフィーリングを尚更に高めているんですから、実に楽しい演奏というわけです。

ということで、ジャケ写には道着姿で空手の型を披露するジミー・スミスが登場しているとおり、当時はこのような趣味に浸っていたのでしょうか? サイケおやじとしては、収録演奏の潔さに一脈通ずるものをなんとなく感じるんですが、逆に言えば分かりが良すぎて、名盤と認定されない要因という気もしています。

しかし実際に聴いていただければ、ジミー・スミスのファンならずとも、グッと惹きつけられる瞬間はテンコ盛り♪♪~♪ もうジャズとか、ソウルだとかに拘るのがバカらしく思えるほど痛快ですよっ!

それもジミー・スミスの魅力のひとつだと思います。

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オルガンジャズの闇鍋大会

2012-01-28 14:54:10 | Soul Jazz

Giants Of The Organ In Concert
           / Jimmy McGriff & Richard Groove Holmes (Groove Merchant)

ジャズの世界の人気企画のひとつが所謂バトルセッション物で、これは同一楽器による対決演奏をメインで聴かせるところから、トランペットやサックス、あるいはギターあたりが主軸になっているんですが、本日ご紹介のアルバムは、なんとっ!

オルガンのバトル物で、しかもライプ録音ですから、ギットギトに脂っ濃い熱気が充満する演奏が楽しめますよ♪♪~♪

録音は1973年、ボストンのボールズモールという、ジャケ写からも推察出来るように、それほど大きくはない店での演奏ですから、雰囲気の良さは保証付き!

メンバーはジミー・マクグリフ(org)、リチャード・グルーヴ・ホルムズ(org)、オドネル・レヴィ(g)、マーク・エルフ(g)、レオン・クック(g)、マイク・モス(ds)、クワシ・ジェイウバ(per) という面々なんですが、ジャケット記載の解説によれば、ステレオレコーディングの左チャンネルにジミー・マクグリフとオドネル・レヴィ、そして右チャンネルにリチャード・グルーヴ・ホルムズとマーク・エルフがミックスされているとの注意書きから、どうやらオルガン奏者各々のバンドが揃って出演したものと思われます。

ただしレオン・クック、マイク・モス、クワシ・ジェイウバがどちらのバンドメンバーかは、サイケおやじの勉強不足で定かではないものの、その場の空気を読み切った演奏は手堅く、決して侮れません。

A-1 The Preacher's Tune
 いきなり低い重心でグルーヴしまくりのジャズファンク♪♪~♪
 もう、このコッテリコテコテの闇鍋感は聴いているだけで体の芯が火照るほどです!
 ちなみにここでの主役でアドリブをやるのは先発がセンターに定位したギターで、これがワウワウ等々のアタッチメントも適宜使った「新世代の新主流派」って感じでしょうか、なかなかの鮮度が良い感じなんですが、前述したジャケット記載の解説からすれば、これを弾いたのはレオン・クック??
 しかし、んなぁ~事はど~でも良くなるほど、ここでの合体バンドは双方の自意識過剰が結果オーライで、二番手のギターソロが左チャンネルから聞こえるということは、これがオドネル・レヴィなんでしょう。こちらも従来のソウルギターから逸脱したカッコ良さが、上手くそのあたりを取り持つ仕事をしていますよ。
 また全篇でチャカポコのパーカッションやリズムギターの存在そのものが、こうした演奏を聴く楽しみでもありますよね。オルガンバトル物とは言いながら、初っ端からそれが提示されているのも意味深ではありますが……。

A-2 Bean's
 高速4ビートで展開されるオルガンビバップ合戦で、ちょいとエレクトリックな響きを使うのがジミー・マクグリフ、如何にもハモンドな音色がリチャード・グルーヴ・ホルムズという左右チャンネルの対決も楽しいわけですが、両手両足を全開使用したベースパートの物凄さを楽しむのもオルガンジャズの魅力だと思います。
 ちなみに基本はブルースながら、弱冠のハードロック風味を感じるのはサイケおやじだけでしょうか?

B-1 Mozanvique
 既に当時は一世を風靡していたラテンロック調のグルーヴが展開されるミディアムテンポの演奏ですが、しかし終始濃密なソウルフィーリングが溢れ出ている結果は流石、このメンバーなればこそっ!
 あぁ、聴いているだけ自然に身体が揺れてしまいますし、魂もどっかへ連れ去られてしまうトリップ感がこれまた本当に秀逸で、もちろん行き着く先はソウルジャズの桃源郷というわけです。
 ちなみに、これを聞きながらのセックスはイイッ♪♪~♪
 なぁ~んて、友人が以前にホザいていましたが、分かるような気がしますねぇ~。もちろんサイケおやじはやった事がありませんが、気になる皆様はお試しあれ!

B-2 Closing Theme
 タイトルどおり、ランダムなメンバー紹介もやってくれる短い挨拶ってところですが、これまたアップテンポでの4ビート演奏は痛快そのもの!
 ただしフェードインしての展開なんで、全く短いのが残念……。

C-1 Brown Bread
 う~ん、またまたヘヴィなオルガンファンクが炸裂ですよっ!
 しかもフットペダル併用の蠢き低音パートには本物のエレキベースの助っ人があるような感じなんですよねぇ~♪ ジャケットにそういう人物の記載が無いので、おそらくは誰かギタリストのひとりが持ち替えでやってるんでしょうか?
 いずれにせよ、これはこれで正解だと思います。
 しかしギターは左右と真ん中から3本がきっちり聞こえますし、センター定位でアドリブを披露する誰かさんは怖いほどにアグレッシヴですよ。
 もしかしたら、これがマーク・エルフ?
 とすれば、A面ド頭の「The Preacher's Tune」のアドリブも同じという雰囲気になるんですが、二番手のアドリブをブチかます左チャンネルのギター、おそらくはオドネル・レヴィも大健闘! 実に熱くなりますねぇ~~♪
 そして肝心の両親分が演じるオルガンは言わずもがなのベテランの味、と書きたいところなんですが、良いところでのフェードアウトは減点です。 

C-2 Talk To Me
 粘っこい4ビートで演じられるハードバップのブルース大会ですから、必然的にバックキングのギターが提供するジャスっぽいコードワーク、またテンポを上げてからのドラムスのグルーヴ等々、まさに黒人音楽の醍醐味が堪能出来ますよ♪♪~♪
 さらに左チャンネルで暴れるジミー・マクグリフに対し、右チャンネルのリチャード・グルーヴ・ホルムズが地道に低音部で煽る仕掛も素晴らしく、後半は両者のオルガンでの対話が流石の緊張と緩和を提供してくれますから、心置きなくシビれましょうねっ!

D-1 Boston Whaler
 アナログ盤LPでは大団円とあって、なかなか快適な4ビートにノリまくったオルガンジャズの典型がここにあります。
 ただし、それゆえに当たり前だのクラッカーというか、各楽器のミックスが錯綜している所為もありますが、何か物足りないと贅沢も言いたくなる気分は否めません。
 それでも個人的には各ギター奏者のワザを盗む目的の鑑賞法もあって、かなり勉強のお手本になっている事を付け加えての感謝のぶる~~す!

D-2 Chopper
 なんとっ! これも前曲同様にアップテンポの4ビートで演じられるブルースとあって、些かLP片面を通して聴くのがへヴぃな時もありますが、まあ、いいか……。
 もちろん現場での丁々発止のアドリブ合戦はきっちり入っていますし、「お約束」であるオーラスのメンバー紹介も安心印なのでした。

ということで、些か不満も書いてしまいましたが、これだけのオルガンジャズが記録されたアルバムは聴かずに死ねるか! という真実もあろうかと思います。

ちなみに書き遅れていましたが、演目は全てジミー・マクグリフとリチャード・グルーヴ・ホルムズの共作とクレジットされていますが、もちろん現場で即興的に作ったリフに基づいた曲、あるいはどっかで聞いたことのあるフレーズを発展させただけという場当たり的なものばかりで、しかし、それが如何にもリラックスした結果を導く要素だとすれば、わかっちゃいるけど、やめられないっ!

もちろんファジーなミックスによる各楽器の存在意義の不確かさ、露骨な編集意図への不同意は賛否両論でしょう。

しかしオルガンばかりでなく、ギターが全体の半分以上で主役を演じている事も合わせて、思わず熱くさせれる瞬間は、こういうレコードの醍醐味だと思います。

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ハンコックとジャズファンクなお正月

2011-01-02 15:48:27 | Soul Jazz

Fat Albert Rotunda / Herbie Hancock (Warner Bros.)

最近は何か、一抹の寂しさも覚えてしまうお正月というのは、自分があの世への一里塚を歩んでいることにも他ならないわけですが、やはり不景気というか、ほとんど気勢が上がらない世相が続いている所為もあるんじゃないでしょうか。

しかし「昭和」の時代ならば、お正月には映画鑑賞♪♪~♪

所謂オールスタア総出演作とか社運を賭けたが如き大作、さらに各社がその年の目玉とする意欲作やシリーズ人気作をぶっつけ合い、大きな宣伝看板や時にはドギツイ色彩のポスターが年末から街頭に溢れていましたですねぇ。

そして映画を観てからは、その余韻に浸るべくジャズ喫茶へ行ったり、さらに続けて中古盤屋巡りや輸入レコードのバーゲンセールを急襲するのが、サイケおやじのお正月でもありました。

例えば本日ご紹介のアルバムは昭和48(1973)年のお正月、中古でゲットしたものですが、当時のメモを読み返してみると、前年末に封切された東映の「女囚さそり・第41雑居房」と「唱和残侠伝・破れ傘」の2本立を観た後、これを買ったことになっているんですよねぇ。思えば高校生だったサイケおやじは、恥ずかしながらその時でも「お年玉」なんていう正月用の小遣いを貰い、また年末にガソリンスタンドでバイトをしていたので、それなりに懐も暖かったのですから、良い時代でした♪♪~♪

さて、肝心のアルバムについては、新主流派の代表格といって過言ではないピアニストのハービー・ハンコックが数々の名作名演を残したブルーノートを離れ、心機一転、ワーナーと新しい契約を結んだ1970年に発表したもので、そこにはジャズファンクがテンコ盛り♪♪~♪

しかし、その快楽性ゆえに、今でこそ所謂フロアDJ御用達のネタとして確立された人気盤も、リアルタイムでは評論家の先生方やイノセントなジャズ者からは無碍に扱われたであろう推察は容易です。

録音は1969年10~12月、メンバーはハービー・ハンコック(key) 以下、アルバム裏ジャケットに記載されているのはジョニー・コールズ(tp,flh)、ガーネット・ブラウン(tb)、ジョー・ヘンダーソン(ts,fl)、バスター・ウィリアムス(b,el-b)、アルバート・ヒース(ds) という当時のレギュラーバンドの面々以外にエリック・ゲイル(g)、ビリー・バトラー(g)、ジェリー・ジェモット(el-b)、バーナード・パーディ(ds) 等々の助っ人が参加しているらしく、また数人のホーンセクションが入っている事も、聴けば自然に納得出来るのですが、実は後に知ったところによれば、ここに収められた演奏は最初っから純粋にアルバムを作るためのものではなく、当時の人気タレントだったビル・コスビーがメインのテレビ番組「ザ・ファット・アルバート・カートゥン・ショウ」の為の音源だったと言われています。

A-1 Wiggle, Waggle
 いきなりサイケデリックなイントロはラガロック風味もあるんですが、続けて強いビートに煽られたリズミックなリフが始まれば、そこは完全なるソウルジャズ天国♪♪~♪ 分厚いホーンによる猥雑な雰囲気も素敵ですが、やはりエレキのリズムギターに蠢いて躍動するエレキベースが良い感じです。
 そしてジョー・ヘンダーソンのジャズロックなテナーサックスにブラスロックを強く想起させられるジョニー・コールズのトランペットがアドリブを披露すれば、ハービー・ハンコックも負けじとエレピで快楽の追及に没頭するのですから、たまりませんっ!
 結論から言えば、最後はフェードアウトで終わる、6分に満たない演奏ではありますが、濃密な熱気が溢れ出すムードは最高です。
 
A-2 Pat Mama
 ちょいと陰鬱なビートがメンバー各々のその後を予兆させてくれますが、ここでの曲と演奏そのものは穏やかなゴスペルメロデイが暑苦しいファンクに熟成されていくという、なかなかクセになる仕上がりです。
 もちろん主役はハービー・ハンコックのエレピとオルガンではありますが、リズム隊の埃っぽい雰囲気も流石だと思います。

A-3 Tell Me A Bedtime Story
 今となっては、このアルバム中で一番有名なジェントルメロディでしょう。
 なにしろハービー・ハンコックも重要メンバーとして参加したクインシー・ジョーンズの大ヒットアルバム「スタッフ・ライク・ザット」での人気トラックですからねぇ~♪ そのオリジナルバージョンが、これというわけです。
 もちろんクインシー版と同じく、ハービー・ハンコックのエレピがメインではありますが、ここでは適度にイモっぽいホーンの使い方やリズム隊のちょいと古い感じのグルーヴが逆に結果オーライでしょう。
 むしろバスター・ウィリアムスのアコースティックベースが効果的なところが、サイケおやじの琴線に触れています。

A-4 Oh! Oh! Here He Comes
 これが如何にもというリアルタイムのソウルジャズ!
 微妙に滲むアフリカ色にニューソウルなホーンリフ、さらにジャズっぽいビートを混濁させるエレキのリズムギターが、本当にたまりません。
 ですからハービー・ハンコックのエレピがアドリブをやっていても、それ以外のパートである前述した要素に耳が惹きつけられるという、確信犯がニクイところじゃないでしょうか。

B-1 Jessica
 ガーネット・ブラウンのトロンボーンとジョニー・コールズのトランペット、さらにはジョー・ヘンダーソンのフルートが絡み合いながら進行するテーマメロデイにアコースティックなリズム隊という展開は、明らかにブルーノート期のハービー・ハンコックという幻想性が大切に継承されていますが、これがリーダーの本音だったか否かは、ちょいと定かではないでしょう。
 極言すれば、このトラック以前のA面収録曲とは完全に異なるジャズっぽさが、賛否両論かもしれません。

B-2 Fat Albert Rotunda
 そのあたりのモヤモヤを上手く解消してくれるのが、このアルバムタイトル曲の演奏です。なにしろ初っ端から新主流派と思わせた次の瞬間、見事なソウルジャズへと進展させるバンドの意思統一は流石!
 しかも決してありがちな即席ではなく、重厚なジャズフィーリングがちゃ~んと奥底に潜んでいて、それをジワジワとを表出させていく演奏メンバーの感性こそが魅力です。
 チャカポコリズムのエレキギター、リズミックなアドリブフレーズを積み重ねるエレピ、タイミング良く咆哮するホーンセクション、そしてドライヴしまくるエレキベースに幾分バタバタしたドラムスが織りなすバンド全体のグルーヴが、ヤバイほど♪♪~♪
 そしてストイックなジャズ魂を発散させるジョー・ヘンダーソンが道化になっていないのも特筆物でしょう。と言うよりも、これが当時最先端のモダンジャズで、後半の呪術的な盛り上がりから自然終息していく展開も秀逸だと思います。

B-3 Lil' Brother
 そしてオーラスは、これまた歓喜悶絶のソウルジャズが実にカッコ良いです。
 ちょいとクインシー・ジョーンズっぽいスタイルもニクイところですが、ワウワウチャカスカのエレキギターと躍動するエレキベースという、このアルバムの味わいを決定的にした要素がますます拡大され、さらにビシバシにキメまくりのドラムス!!
 となれば、ハービー・ハンコックのエレピも大ハッスルですし、ジョー・ヘンダーソンの熱血アドリブにツッコミするどいホーンリフの応酬には、思わず腰が浮いてしまいます♪♪~♪

ということで、B面には新主流派的なジャズっぽさも残っていますが、ほとんど同じメンバーで録音されたブルーノートでの最終作「プリズナー」とは大いに異なる、実にストレートなソウルジャズ風味がたまらないアルバムです。

これは既に述べたように、実はテレビ用の音源という真相があるものの、やはりハービー・ハンコックの資質が、そうさせたものだと思います。

ちなみにご推察のとおり、ここで楽しめる演奏のムードは、その頃の我国で作られていた日活ニューアクションや東宝スパイ物、さらには後のロマンポルノあたりのサントラ音源と共通する味わいがあります。

つまり、これがある意味では「時代の典型」だったんじゃないでしょうか。

最後になりましたが、前述したように、サイケおやじが昭和48年に中古でゲットしたこのアルバムは、時代的に七百円という捨値(?)が当然でした。

冷静に考えても、その頃のハービー・ハンコックの人気はどん底というか、マイルス・デイビスのバンドで築き上げた実績も今は昔……。もちろん往年の人気盤「処女航海」等々は揺るぎない地位を確保していましたが、このアルバムを含む1970年前後に作られていた数作のリーダアルバムは、それほどの話題になることも無かったと思います。

ご存じのとおり、そこからハービー・ハンコックは所謂ブラックファンク路線に突入し、例の「ヘッドハンターズ」の大ヒットを放ったのが今日の歴史になっておりますが、しかし我国では、それがジャズ喫茶という文化が大きな影響力を持っていた事情もあり、決して正当化されてはいなかったはずです。

そして現実的には1970年代半ばに至り、4ビートリバイバルの突発的な復活を演出した「VSOP」によって、再びハービー・ハンコックが息を吹き返したのが真相じゃないでしょうか。

ですから、ここに聴かれるソウルジャズは如何にも中途半端であり、フュージョンブーム期にハービー・ハンコックが出していた諸作からすれば、大きく時代に遅れていたという受け取られ方がありました。

しかし、だからこそ、そして今だからこそ、このあたりのソウルジャズが愛おしい!

ファンクなソウルジャズのお正月も、楽しいものです♪♪~♪

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蘇るカリフォルニア・コンサートの熱気と新風

2010-12-11 14:05:58 | Soul Jazz

California Concert (CTI = CD)

1970年代前半で一番に勢いがあったジャズレーベルは、CTIであったと思います。

もちろん、同時期にはスティープルチェイス、パブロ、コンコード、ザナドゥ、ミューズ等々の正統派も頑張っていましたが、それらがベテラン勢をメインとした往年の味わいを継承する制作方針だったのに対し、CTIは未だ若手とされていたフレディ・ハバード、ジョージ・ベンソンを筆頭に、ヒューバート・ロウズ、ボブ・ジェームス、ロン・カーター、スタンリー・クラーク、ビリー・コブハム、アイアート等々の新進気鋭、そしてハンク・クロフォードやグロバー・ワシントンといったソウルジャズ派に加え、スタンリー・タレンタインやミルト・ジャクソンあたりの既にスタアとなっていた大物を分け隔てなく共演させるといった、実にコンテンポラリーなサウンド作りが魅力でした。

その源はメインのプロデューサーだったクリード・テイラーの手腕によるところが大きく、それはベツレヘム~ABC~インパルス~ヴァーヴ等々の名門レーベルで研鑽を積み重ねてきた成果として、1967年頃にA&M内部に設立した初期CTIから一貫してきたものです。そして、例えばウェス・モンゴメリーの大ヒットアルバム「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」に結実しているのは、ご存じのとおりでしょう。

ただし、それは所謂イージーリスニングジャズと呼ばれ、ガチコンを求めるイノセントなファンには確かに物足りないものだったのも、また事実です。

その所為でしょうか、クリード・テイラーは1970年、ついに独立し、新たにCTI(Creed Tayior Inc.)を設立し、まさに1970年代のジャズを提供し続けたというわけです。

さて、そこで本日ご紹介は、そのCTIに所属していたスタアプレイヤーが一堂に会した1971年夏の豪華なコンサートから作られたライプ盤ですが、初出は1972年のアナログ盤LP2枚組だったものが、1990年代にCD化された時には当然ながらボーナス音源が追加され、そして今年になってリマスター再発された時には、またまたそれが増えたという、なかなか嬉しい拡張バージョンになっています。

メンバーはフレディ・ハバード(tp)、ヒューバート・ロウズ(fl)、スタンリー・タレンタイン(ts)、ハンク・クロフォード(as)、ジョージ・ベンソン(g)、ジョニー・ハモンド(org,el-p)、ロン・カーター(b)、ビリー・コブハム(ds)、アイアート(per) 等々が入り乱れ♪♪~♪

ちなみに録音データは1971年7月18日のハリウッドとされていますが、これには諸説があるようで、もしかしたら複数の会場で録られた音源が組み合わせられているのかもしれません。

☆Disc-1
01 Impressions
 これは今回のリマスターで新たに加えられた音源で、曲はご存じ、ジョン・コルトレーンが定番にしていた過激モードの人気演目ですから、ツカミをOK♪♪~♪ しかも司会者が参加メンバーを順次紹介しながら演奏がスタートしていくという、なかなかVSOPなスタイルですから、いきなりワクワクさせられますよ。まあ、このあたりは逆なんですけどね、まあ、いいか♪♪~♪
 で、肝心の演奏はコルトレーンとは些か距離がある、グルーヴィなムードが横溢した、ある意味では長閑な雰囲気なんですが、これは同レベールで作られたスタンリー・タレンタインの人気アルバム「シュガー」に収録されたバージョンを踏襲したものでしょう。
 そしてアドリブパートでは、そのスタンリー・タレンタインがタフな男気を存分に発揮したハードボイルドなシリアスブローを披露すれば、ジョージ・ベンソンはハードバップ~モード周辺の展開でありながら、実はソウルジャズも忘れていないという味わいの深さです。う~ん、バックで煽るホーンリフも快適ですねぇ~♪
 すると今度はフレディ・ハバードが大らかで懐の深い表現とでも申しましょうか、例によって緩急自在な音符過多症候群の中に独得のフレディ節を織り交ぜてくれますから、たまりません。
 ただし正直に言えば、小手調べでしょうねぇ。そのあたりの答えは、後からたっぷりと証明されすよ。
 ですから、続くヒューバート・ロウズの全力疾走には好感が持てますし、ジョニー・ハモンドのオルガンからも新しいものを表現せんとする心意気が伝わってきます。
 それと言うまでもありませんが、ロン・カーターにビリー・コブハム、そしてアイアートというリズム隊の根幹が実に心地良いビートを弾き出し、これが如何にも1970年代のモダンジャズを感じさせたものです。あぁ、ロン・カーターのベースソロ!

02 Fire And Rain (A-1)
 これはLPではトップに入っていた演奏で、曲はリアルタイムでジェームス・テイラーが大ヒットさせていたジェントルなメロディをヒューバート・ロウズのフルートが思わせぶり満点にフェイクするという展開になっています。
 そして中盤からのヘヴィなソウルジャズビートによるアドリブパートでは、徐々に熱気が充満していくムードがたまらなく素敵ですよ。もちろんヒューバート・ロウズが聞かせるフレーズは先鋭的ですし、リズム隊の容赦しない怖さか一筋縄ではいかないでしょう。
 当然ながらジョージ・ベンソンもそれに追従しますから、最終盤に至ってバンド全体がフリーに近い表現に走るのも、ムペなるかなです。
 そしてラストテーマの爽やかさは、確信犯的な心地良さに満ちているのでした。

03 Red Clay (A-2~B-1)
 フレディ・ハバードの代名詞とも言うべきオリジナルの名曲名演で、初出当時から人気一番のトラックだったんですが、そのLP収録はA面からB面へと2パートに分かれていたという、思わず???の仕打ちでした。
 ちなみに当時は、この2パートを完璧に繋げてターンテーブルで鳴らせると、ジャズ喫茶のサラ回しとして一人前と認可されていたほどです。
 それが確か初CD化された時には、きっちり繋がっていたとかで話題になった記憶がありす。ただし、それをサイケおやじは持っていなかったので、今回は特に嬉しいというわけなんですが、やっぱり聴いているうちに血が騒ぎますねぇ~~♪
 十八番の熱い思わせぶりをイントロに使うフレディ・ハバードはニクイばかりですし、そこからビリー・コブハムが叩き出すヘヴィなジャズロックビートに煽られ、例のキャッチーなテーマが合奏された瞬間、その場はCTI色に染まってしまいます。
 そしてアドリブ先発のフレディ・ハバードが幾分押さえ気味のスタートからスピード感いっぱいの起伏に富んだフレーズの連発に繋げる展開は、これがウケなかったらジャズの未来は無いと思わせるほどなんですが、それに続くスタンリー・タレンタインが余裕綽々の歌心を全開! もう、最初の一撃から出来過ぎとしか言えませんし、熱血プローを披露する中盤からはビリー・コブハムのドラミングも過激になります。
 さらに、お待たせしましたっ! ジョージ・ベンソンが畢生のギターソロ!
 既に述べたように、アナログ盤時代は、その出だしのところでフェードアウトして、B面に続きが入っていたんですが、やっぱり一気に聴ける喜びは、そのアドリブの凄さ共々に痛快ですねぇ~、本当にっ!
 ですから再び登場するフレディ・ハバードが捨て鉢なハイノートを連発した後、すうぅぅ~っと熱気をクールダウンさせるロン・カーターのベースソロが、これまたニクイばかりだと思います。

04 Blues West (C-1)
 またまたグルーヴィな4ビートで演じられるハードバップのブルースなんですが、登場するアドリブプレイヤーは各人が創意工夫を凝らした腕の競い合いが楽しい限り♪♪~♪
 それはスタンリー・タレンタインのソウルフルな任侠路線、それを継承しつつも得意の早弾きを交えながらロックフィーリングまでも表出するジョージ・ベンソン、じっくり構えて実は誰よりも熱いフレディ・ハバード、そしてロン・カーターのウォーキングベースと予想外の相性を感じせるヒューバート・ローズのブッ飛びフルート!!!
 いゃ~、もう随所で観客からは本気の拍手と歓声が沸き起こるんですから、その場の雰囲気の良さは羨ましくなるばかりですよ。

05 So What
 これも今回の新規追加トラックなんですが、ド頭に「Impressions」が入っていますから、似たようなモードを使った演奏なんて……。
 という先入観が見事に覆された強烈な熱演が楽しめます♪♪~♪
 その主役は、この当時から急激な上り調子に入ったジョージ・ベンソンで、とにかくお馴染みのテーマから16ビートのバックを従え、徹頭徹尾の全力疾走ですから、ロン・カーターがちょいと居心地悪そうではありますが、ご安心下さい。直後から突入する高速4ビートのドライヴ感は最高の極みですし、それが突如のスピードダウンからグッと重心の低いグルーヴィな展開となり、さらにソウルジャズがど真ん中の雰囲気に戻って行くという、実に危険極まりない進行が繰り返されるんですから、これがオクラ入りだったとは、何なんだっ!?!?
 特に主役のジョージ・ベンソンは得意技の早弾き節からフリーに近いコードワーク、そしてソウルフルなフレーズで巧みな彩りに添えるという名人芸なんですからねぇ~♪ 演奏そのものはリズム隊がメインなので、ちょいと物足りなくはありますが、この密度の濃さは再現不能の名演だと思いますし、この1曲を楽しめただけで、このCDを買って正解と思わせられました。
 まさに白眉の名演!

01 Here's That Rainy Day
 さて、2枚目のディスクの初っ端もアナログ盤には未収録だった演奏で、お馴染みの人気スタンダードメロディをジェントルにフェイクしていくフレディ・ハバードの名演が楽しめます。
 しかもジョージ・ベンソンのバッキングが正統派モダンジャズの王道とも言うべき素晴らしさですし、思いきったスローテンポでも決してダレない演奏の進行は、名手揃いの証でしょう。
 アドリブパート中盤からのグルーヴィなムードも秀逸ですし、ヒューバート・ローズのプログレなフルートも味わい深いと思います。
 また繊細にしてシャープなビリー・コブハムのドラミングも、流石に侮れませんねぇ~♪

02 It's Too Late
 そして始まるのが、これもリアルタイムでヒットしていたキャロル・キングの名曲メロディなんですが、原曲が隠し味的に持っていたジャジーなフィーリングをソウルジャズのフィルターを通して拡大解釈したアレンジと演奏は、全くサイケおやじの好むところ!
 実は、これ、同時期にジョニー・ハモンドがCTIで制作したリーダー盤でも演じられているんですが、些か小粒だったそのセッション参加のメンバーに比べ、やはりオールスタアズは貫録が違います。
 ただし演奏の核心を作り出すビリー・コブハムの強烈なソウルジャズのドラミングは共通していますから、そのズッシリと重く、しかも腰が浮かされる16ビートのウキウキ感は不変ですよ♪♪~♪
 おぉ、出だしは日活ニューアクションのサントラかっ!?
 ジョニー・ハモンドのオルガンが奏でるテーマのイナタイ雰囲気♪♪~♪
 そしてジョージ・ベンソンが大ハッスルのストレッチアウトを演じれば、ジョニー・ハモンドがケレン味たっぷりのウケ狙いですから、ビリー・コブハムが怒りの千手観音スティックを炸裂させるのも、ひとつの「お約束」なんでしょうねぇ~♪
 ソウルジャズの愛好者ならずとも、熱くさせられますよっ!

03 Sugar (B-2)
 これまた嬉しすぎる演目で、ご存じ、スタンリー・タレンタインがCTIを代表する大ヒットリーダー盤のタイトル曲ということで、イントロが流れた瞬間から、客席のざわめきにも熱気が充満しています。
 そして本人はもちろん、参加メンバー全員が大ハッスル!
 グッとハードボイルドなテーマ吹奏から、グルーヴィとしか言いようがないリズム隊の4ビート、さらに任侠テナーの真髄を披露するスタンリー・タレンタインの親分肌が最高ですし、パックメンバーによるリフの煽りも良い感じ♪♪~♪
 ですから続くフレディ・ハバードの絞り出すような魂のトランペットからは、それこそモダンジャズを楽しむ喜びが満点だと思いますし、幾分の地味~なスタートからグイグイと黒っぽいムードを演出し、ついにはダイナミックな展開に持っていくジョージ・ベンソンの確信犯も憎めないでしょう。
 ちなみに途中でアドリブソロ演奏者を紹介するMCでは、「フレディ~、ハバ~~ドッ」という台詞をジャズ喫茶で酔客が一緒に真似するという流行が、当時は局地的にありましたですね。それも懐かしい思い出というわけです。

04 Leaving West (D-1)
 所謂ボサロック調の楽しい演奏で、基本はブルースながら、ソウルジャズの隠し味が効いているのは言わずもがな、ビリー・コブハムのシャープなドラミングとモダンジャズ保守本流というロン・カーターのペースワークの対比が、実はCTIサウンドの秘密の一端を表わしているのかもしれません。
 そしてアドリブパートではスタンリー・タレンタインの分かり易いフレーズの連発が逆にシブイところですし、ジョージ・ベンソンが微妙なオトボケをやっているように感じるのはサイケおやじだけでしょうか? そのあたりが実に楽しいんですねぇ~♪
 演奏は後半に至り、前述したようにビリー・コブハムとロン・カーターの鬩ぎ合いの中にアイアートが乱入するというリズム的な興奮が用意されていて、これが激ヤバっ!?

05 Straight Life
 オーラスも今回が新規追加のボーナストラックで、しかもフレディ・ハバードのオリジナル人気曲というわけですから、既に歓喜悶絶のサイケおやじを尚更にKOした演奏になっています。
 それは初っ端から激しい対決姿勢を露わにしたフレディ・ハバードとビリー・コブハムの熱血から、かなり荒っぽいテーマアンサンブルとアドリブパートの破天荒な展開が痛快なんですねぇ~♪
 まあ、冷静に聴けばオクラ入りしていたのも当然という仕上がりではありますが、猪突猛進気味のフレディ・ハバードとラフファイトに徹するビリー・コブハム、その間を取り持つ事に腐心するジョージ・ベンソンという構図は、ある意味でジャズの醍醐味を堪能させてくれるんじゃないでしょうか?
 それと冷静なようで、実は過激なリフを演じているロン・カーターの存在も流石だと思いますが、ビリー・コブハムの凄まじい16ビートは!?!? これじゃ、ジョージ・ベンソンがマジギレするのも無理からんですよ。でも、サイケおやじは、そこが大好き♪♪~♪
 ですから事態を収拾出来るのは、やはりスタンリー・タレンタインの親分しかいませんよねぇ。16ビート何するものぞっ! そうした心意気が全てを飲み込む度量の大きさというか、実に豪快なテナーサックスが素晴らしい限りです。
 そして、それがあればこそ、続くジョニー・ハモンド対ビリー・コブハムの熱闘も、また最終盤で繰り広げられるフレディ・ハバードが十八番の乱れ打ちハイノートも、さらにはビリー・コブハムの地獄のドラムソロさえも、見事な大団円となるのでした。

ということで、実はCTI発足40周年記念の再発らしく、最近流行の三面見開き紙ジャケット仕様も嬉しいんですが、ただし、CD本体が内側に収納されている方式なので、ちょっと取り出しずらいのが難点でしょうか。

それとリマスターに関しては、オリジナルのアナログ盤に比べると、スッキリした力強さは感じられるものの、音圧がもう少し高ければなぁ……。

そういう不満が無いわけではありません。

しかし、そんな諸々を考慮しても、内容の素晴らしさは不滅に熱い1970年代ジャズの本領発揮!

既に述べたように、当時のCTIのサウンド作りはソウルジャズやジャズロックのリズムを当然に様に使いながら、例えばロン・カーターという保守本流のベース奏者を起用する等、要所にモダンジャズの本質を決して蔑にしないプロデュースが行われていました。

ですからビリー・コブハムの他にもハービー・メイソンやスティーヴ・ガッド等々の新進ドラマーを積極的に使ったセッションであっても、そこで完成される演奏にはジャズ本来の「4ビート魂」が強く滲み、また同時に温故知新というか、当時はクロスオーバーと呼ばれていたフュージョンの一番良い時期を作り出せたんじゃないでしょうか。

その意味で、このアルバムはソウルジャズに分類するのがサイケおやじの気分ではありますが、立派なモダンジャズとしても異論は無いところです。

そして実際、リアルタイムのジャズ喫茶では忽ちのリクエスト殺到から人気盤の地位を確立したのです。

しかし、こんな理屈なんて、CTIの諸作を聴く事に関しては、全く不必要なんですよねっ! まあ、それを分かっていて御託を並べてしまうサイケおやじは、分かっていなんでしょうか……。

それでも、ここに収められた白熱の名演を数々には、素直に屈服するのでした。

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グラント・グリーンの無視された傑作

2010-12-05 16:20:50 | Soul Jazz

Carryin' On / Grant Green (Blue Note)

一応、グラント・グリーンはジャズギタリストに分類されるのが一般的でしょうが、ご存じのとおり、そのスタイルはレコーディングキャリアの初期から極めてR&B色が強く、それゆえにハードバップ~ファンキーという流れが加速していた当時のモダンジャズ最前線では、一躍スタアになったのも当然が必然でした。

しかし一方、その所謂コテコテのプレイは、悩んで聴くのが常識とされていた昭和40年代までの我国のジャズ喫茶おいて、ちょいと軽んじられていたのも事実です。

というか、ジャズの王道レーベルだったブルーノートに主要録音がありながら、発表される諸作の快楽性が疎んじられていたという……。

ですからジャズ喫茶で鳴らされるグラント・グリーンのリーダー盤は、「フィーリン・ザ・スピリット」や「アイドル・モーメンツ」あたりが圧倒的に多く、それは演奏内容のシリアスな充実度と参加共演者の正統的な顔ぶれゆえの事でしょう。

このあたりの事情はジミー・スミスやルー・ドナルドソンといった人気者にも同様ではありますが、グラント・グリーンが常に標的(?)にされていたのは、単音弾き中心のギター奏法が、ちょいと聴きにはシンプル過ぎることもあろうかと思われます。

ところがギターを弾かれる皆様ならば納得されているとおり、グラント・グリーンのスタイルを模倣する事は想像を絶する難しさ! ごまかしの出来ないメリハリの効いたフレーズ構成と強靭なピッキングのコンビネーションは、あの天才名手のタル・ファーロウにも劣るものではありません。

さて、そういうグラント・グリーンですから、1960年代後半からは尚更にソウルジャズに邁進したのも充分に肯定出来る流れですし、それがジャズ喫茶で一切合財無視されるのも、当時の雰囲気を体験された皆様ならば、当たり前田のクラッカーだと思います。

例えば本日ご紹介の1枚は、まずジャケットからして到底、モダンジャズのアルバムとは思えないでしょう。

発売されたのは、おそらく1970年代初頭だと思われますから、流行が兆していたニューソウルを意識したのかもしれませんが、それは結局、正統派のジャズ愛好者よりは黒人大衆音楽ファンにアピールする商売方針がミエミエ!?

実はアルバムの裏ジャケットに記載されたデーターによれば、録音は1969年10月3日!? ということは約2年半以上のご無沙汰だったブルーノートでのセッションなんですねぇ。

しかもメンバーがグラント・グリーン(g) 以下、クラレンス・パルマー(el-p)、ウィリアム・ビヴンズ(vib)、ジミー・ルイス(el-b)、レオ・モリス(ds)、クロード・バーティ(ts)、ニール・クリーキー(el-p) という、ジャズ者には馴染みの無い名前ばかりが並んでいますから、時代は変わる!?

というよりも、聴けば納得なんですが、グループとして意志の統一とコンビネーションの良さが極めて密度の高い傑作を誕生させた結果からして、多分、このメンツは当時のグラント・グリーンのレギュラーバンドだったのかもしれませんねぇ~♪

A-1 Ease Back
 グラント・グリーンが自然体で弾き出すイントロに導かれ、ビシバシに跳ねるドラムスと蠢くベース、さらにシンプルなエレピとテナーサックスが奏でるのは、ニューオリンズファンクのミーターズが1969年に放った十八番のヒット曲ですから、このセッションではリアルタイムのカパー物!
 こういう姿勢にも、ここ一発に賭けたグラント・グリーンのヤル気が感じられるんですが、その勢いが裏切られる事の無い演奏は実際、熱いですよっ!
 イナタイ雰囲気の良さは言わずもがな、十八番の三連針飛びフレーズを完全披露するグラント・グリーンを煽るレオ・モリスのドラミングが、これまた埃っぽくて最高♪♪~♪ もちろんエレピ&エレキベースが、如何にも当時風に使われていますから、ほどよい鬱陶しさを撒き散らすクロード・バーティのテナーサックスもイヤミになっていません。

A-2 Hurt So Bad
 これまたリトル・アンソニー&インペリアルズが1965年に放ったメガヒットのインストカパーということで、まずはアレンジがオリジナルバージョンの胸キュンフィーリングを大切にしながらも、実に熱くグルーヴする演奏が最高の極みつき!
 そしてグラント・グリーンが先発するアドリブは歌心満載なんですねぇ~♪ もう、その最初のフレーズからして三日ぐらいは寝ないで考えたんじゃないかっ!? 思わずそんな風に思ってしまうほどの素晴らしさなんですが、その後も決定的な三連フレーズの乱れ打ちや原曲メロディの巧みなフェイクが積み重ねられ、筆舌に尽くし難い高揚感に満たされると思います。
 実は無謀にも、このアドリブをコピーした事のあるサイケおやじは、もちろん完璧には出来るはずもありませんでしたが、弾いていて本音で気持が良くなるんですよ♪♪~♪
 それと浮遊感いっぱいのエレピの伴奏がニクイばかりで、それゆえに力強いドラムスとベースのビートが冴えまくり、テナーサックスのセンスの良いプローを呼び込む展開は、このアルバムの中でも白眉の名演になっています。
 あぁ、何度聴いても、飽きません。

A-3 I Don't Want Nobody To Give Me Nothing
 なんと、今度はジェームス・ブラウンのカパーをやってしまうんですから、悶絶ですっ! そのオリジナルバージョンは確か1969年春にシングル発売されたJB流儀のファンクな歌と演奏なんで、サイケおやじは聴く前からワクワクしていたんですが、それは全く裏切られませんでした。
 ここでのグラント・グリーンとバンドは原曲が放っていた黒い熱気を尚更にダークなインストバージョンに変換することにより、適度なジャズっぽさとファンクなソウルを見事に両立させています。
 何時までもイキそうでイカないエレピも、たまりませんよ♪♪~♪

B-1 Upshot
 B面に入ってようやく出ました、これがグラント・グリーンのオリジナル!
 しかしイントロからのリフは完全に昭和歌謡曲ですよねぇ~♪ ほとんど西田佐知子のヒット曲に、こんなのありませんでしたか?
 まあ、それだけでウキウキさせられるサイケおやじではありますが、ここまで弾みきったリズム&ビートを演じてしまうバンドのグルーヴは強烈至極ですし、アドリブパートにしても熱血のテナーサックスを吹きまくるクロード・バーティは、なかなかの実力者だと知れるでしょう。そしてクラレンス・パルマーのエレピが、これまた日活ニューアクションのサントラ音源の如き白熱のジャズロック!
 いゃ~、本当に血が騒ぎますねぇ~~~♪
 さらにグラント・グリーンのギターがスピードの付いた単音メインのアドリブは当然ながら、濁ったコードワークの使い方も侮れず、こういうところがソウルジャズの真骨頂だと思うばかりです。

B-2 Cease The Bombing
 ここに1曲だけ参加したニール・クリーキーのオリジナルで、作者のエレピを存分に活かしたメロウな曲調と演奏には、タイトルの押しつけがましさ以上のせつせつとした心情が胸に染みる、これまた素敵な世界が堪能出来ます。
 う~ん、聴いているうちに、こんなに気持良くなって、良いんでしょうか……?
 アドリブパートでは、先発のウィリアム・ビヴンズがヴァイブラフォンで虚無的な世界を描いて秀逸ですし、繊細でメロウな歌心を意外なほどに聞かせてくれるグラント・グリーンのギターは、音色そのものも魅力だと思います。
 そして作者のエレピが饒舌に披露するスペーシーでソウルフルな味わいは、全くこの時期でしか表現出来なかったものでしょう。本音でシビれます♪♪~♪

ということで、ジャズ喫茶では完全無視の代表格だと思いますが、聴けば万人が虜になること請け合いの傑作だと思います。特にソウルジャズが大好きな皆様にはマストアイテム!

告白すればサイケおやじは昭和48(1973)年のある日、某中古レコード店の3枚千円セールで員数合わせ的にゲットしたLPだったんですが、ソウルジャズ期のグラント・グリーンの諸作の中では、最高に好きな1枚になっています。

とにかく捨て曲、ひとつも無し!

全篇、最高のソウルジャズが堪能出来る決定的な名盤!

これは断言して、絶対に後悔致しません。

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ジュニア・マンスとソウルジャズな仲間達

2010-09-11 16:54:31 | Soul Jazz

With A Lotta Help My Friends / Junior Mance (Atlantic)

所詮は個人芸がウリと言っては失礼かもしれませんが、それゆえにジャズの世界では、そこに参加しているメンバーの魅力に惹きつけられて演奏を聴いてみようというリスナーの姿勢があることは確かでしょう。

例えば本日ご紹介するジュニア・マンスのアルバムは、サイケおやじにとっては、まさにそうした1枚でした。

なにしろジュニア・マンス(p) を支える参加メンバーがエリック・ゲイル(g)、チャック・レイニー(el-b)、ビリー・コブハム(ds) という、後にフュージョンと称されたクロスオーバーな面々でしたからねぇ~♪

しかも制作発売されたのが1970年ということは、ソウルジャズが真っ盛りの時期でしたから、これはもう、サイケおやじの最も好む音がテンコ盛り! そう確信して針を落としてみれば、やっぱり、その通りの演奏が徹底的に楽しめました♪♪~♪

A-1 Thank You
 ド頭から、いきなりスライの曲が演じられるという仕掛けが、もうニクイばかり!
 ビリー・コブハムとチャック・レイニーが作り出す、なかなか重心の低いブラックビートが実に粘っこく、後のメロウなサウンドを知っていれば、アッと驚くディストーションなギターを響かせるエリック・ゲイルの意外性も圧巻でしょう。
 いゃ~、もう、この3人の存在だけで、サイケおやじは歓喜悶絶のソウルグルーヴにシビレまくりです。
 とにかく蠢くチャック・レイニーのベース、シンプルにしてタイトなビリー・コブハムのドラミング、多重録音で左右から対峙するエリック・ゲイルのギターが、この演奏の完全なる主役で、なんとリーダーのジュニア・マンスは、テーマをちょいとフェイクした後は伴奏に徹するというあたりが、アルバム&曲タイトルどおりの潔さかもしれません。

A-2 Never Say Now
 R&B歌謡の人気者たるパーシー・メイフィールドのブルースな佳曲ですから、ジュニア・マンスにとっては十八番の展開がじっくりと楽しめます。
 それはハードなピアノタッチでネチネチとしたフレーズを積み重ねるという、まさにハードバップのソウルジャズ的な解釈に結実し、またエリック・ゲイルのブルージーっていうんでしょうか、如何にも「らしい」ギターが続けば、正統派ジャズファンも満足する演奏に仕上がっていると思います。

A-3 Don't Rush Us
 そしてA面の締め括りとなるのが、メンバーの共作というよりも、ほとんどソウルビートのジャムセッションという強烈な演奏です。
 特にビシバシにハッスルしたビリー・コブハムのドラミングは、隙あらばエグイばかりのツッコミを入れてきますし、地を這う大蛇の如きチャック・レイニーのペースが、時には例の速射砲フレーズを撒き散らし、当然ながらエリック・ゲイルのギターはハードなリズムカッティングと熱いブルースを描きます。
 そしてもちろん、ジュニア・マンスのピアノはゴスペルソウルのファンキー味が全開!
 あぁ、何度聴いても、全身の血が沸騰逆流させられますねぇ~♪
 もう、この1曲だけで、このアルバムが作られた意義を痛感させられるほどですよ♪♪~♪

B-1 Well I'll Be White Black
 こうして熱い気分に満たされ、レコードをB面にひっくり返して最初に遭遇するのが、ビリー・コブハムが書いたニューソウルな隠れ名曲で、ほとんどブラックムービーのサントラ音源の如き味わいが最高です。
 そしてジュニア・マンスのピアノが心置きなくスイングしているのも流石! もちろんそれはソウル&ゴスペル味が濃厚な脂っこいものですから、たまりませんねぇ~♪

B-2 Home Groovin'
 そして唐突な前曲のエンディングがさらに効果的な、このカントリー&ゴスペルな名演がスタートします。
 ゆったりとしたソウルビートを従え、曲調にジャストミートする泣きのフレーズを積み重ねるジュニア・マンスの上手さは絶品ですし、続くエリック・ゲイルのギターが、これまたせつなく泣きますよ♪♪~♪
 あぁ、本当にソウルジャズって、最高~~~♪

B-3 Spinning Wheel
 ご存じ、ブラスロックの大御所たるBS&Tがリアルタイムで大ヒットさせていた名曲のカパーなんですが、ジュニア・マンス以下の面々は、如何にもジャズっほいアレンジを使いながら、実に楽しく聴かせてくれます。
 しかし、それは決してスマートでも洒脱でもなく、あくまでもハードなソウルジャズ魂を全開させた演奏で、チャック・レイニーのマシンガンベースが堪能出来ますし、ビリー・コブハムのドラミングはビシバシと炸裂し、エリック・ゲイルのギターカッティングは強烈無比!
 そこで転がりまくるジュニア・マンスのピアノは、言わずもがなの暑苦しさです。

B-4 Don't Cha Hear Me Callin' To Ya
 確かウイントン・ケリーも演じていたような記憶がある、実に親しみ易いソウルジャズ曲なんですが、やはりチャック・レイニー&ビリー・コブハムのコンビは侮れません。ジュニア・マンスのピアノは絶好調の名演と断言致しますが、ど~してもサイケおやじの耳はベースとドラムスに惹きつけられてしまうんですよねぇ~♪
 こうした、きっちり纏まった演奏の中にも、個人技の自己主張が楽しめるところに、ジャズの面白みがあるんじゃないでしょうか?

ということで、演奏の雰囲気やスタイルから、このアルバムセッションを認められないファンも確かに存在していますし、同時期のジャズ喫茶でも無視されていたと思しきアルバムです。

しかし既に述べたように、ソウルジャズとしては濃厚なアドリブと個人技の充実によって、極みつきの人気盤であることも確かです。

例えばビリー・コブハムにしても、後年の超絶テクニックを象徴する千手観音ドラミングというよりは、タイトなリズム&ビートを大切にした直截的なスタイルが、ブリブリに蠢くチャック・レイニーのエレキベースにはジャストミートしていますし、エリック・ゲイルの予想外にツッコミ気味のギターソロやエグイばかりのコードカッティングも、軟弱なムードをブッ飛ばしたポイントでしょう。

そして主役のジュニア・マンスが、十八番の積み重ねるゴスペルピアノを、これまでの4ビート以外のところでも爆発させたのは、大正解!

実はこの時期のジュニア・マンスは、チェンバロを弾いたり、コーラスやオーケストラとの共演を目論んだり、ちょいとフラフラしたレコードを作っていた印象なんですが、サイケおやじにしても後追いで聴いた中では、このアルバムが最高のお気に入りです。

ただし残念ながら、1970年代前半は健康問題等々から半分はリタイア状態……。

個人的には、もっとこの路線を継続して欲しかったと思うのですが、一応のカムバック後はハードバップリバイバルを演じているのは、悔しいところです。

まあ、それも時代の流れでしょうねぇ。

ご存じのように、ジュニア・マンスにはモダンジャズのピアノトリオ盤としては決定的な名作「ジュニア(Verve)」を筆頭に、凄いアルバムがどっさりあるわけですから、今となっては本日ご紹介の1枚なんか、全くの異端作なんでしょうか……。

しかしジュニア・マンスがやっている事は、そんなに変っていないと思うんですよねぇ。

その意味でソウルジャズがど真ん中の共演者3人に偏って聴くのも、間違いではないでしょう。

これからそうした分野に興味の抱かれる皆様にも、なかなかオススメのアルバムです。

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光る眼のグラント・グリーン

2010-07-18 16:36:48 | Soul Jazz

Visions / Grant Green (Blue Note)

すっかり日射しが強くなって、サングラスが必要となる皆様も多かろうと推察しておりますが、そこでフッと聴きたくなったのが、本日ご紹介の逆効果サングラスな1枚です。

もう、ほとんどR&Bシンガーのアルバムみたいなデザインからして、これはグラント・グリーンが露骨にソウルジャズやジャズロックを演じてくれた歓喜の人気盤であることが一目瞭然♪♪~♪

しかしそれゆえにリアルタイムの1970年代前半には、特にジャズ喫茶において完全無視の代表格でしたし、フュージョンブームの頃になっても、それほど再評価されたという事は無かったと記憶しています。

それでもサイケおやじにとっては、「ゴーイン・ウエスト」に続いて買った2枚目のグラント・グリーンで、それは中古で値段が捨値に近いほどの安さだったことによりますから、これが如何に白眼視されていたか、ご理解いただけるでしょう。

しかし内容は完全にサイケおやじの好みへ直球がど真ん中!

録音は1971年5月21日、メンバーはグラント・グリーン(g)、エマニエル・リギンズ(key)、ピリー・ウッテン(vib)、チャック・レイニー(el-b)、アイドリス・ムハマッド(ds)、レイ・アルマンド(per)、ハロルド・ガドウェル(per) という、モダンジャズでは裏街道の面々なんですが、所謂レアグルーヴなんていうジャンルがお好きな皆様には、血が騒ぐ編成かと思います。

A-1 Does Anybody Really Know What Time It Is
 う~ん、いきなり、これですよっ!
 ご存じ、邦題が「いったい現実を把握している者はいるだろうか?」という、原題に劣らない長~いタイトルがつけられたシカゴのヒット曲を、実にグルーヴィな4ビートで演じるという、これがグラント・グリーンの良いところ♪♪~♪
 もちろん十八番の針飛びフレーズもやってくれますし、なによりもブラスロックという、ジャズミュージシャンからすれば生意気とも受け取られそうなジャンルを易々と、それもホーンセクション抜きで軽快に料理するあたりが、流石です。
 これは立派なモダンジャズ!

A-2 Maybe Tomorrow
 なかなか思わせぶりなパラード演奏で、クインシー・ジョーンズも絡んで作られたメロウな曲メロが、このメンツの手に掛かるとミステリアスなムードも濃くなるようです。とにかく纏まりの良いバンドのスロ~グルーヴは膨らみがあって、しかもタイト!
 後半で繰り広げられるナチュラルなテンポアップが殊更に素晴らしい思います。

A-3 Mozart Symphony #40 In G Minor, K550, 1st Movement
 さてさて、これが臆面も無いというか、誰もが一度は耳にしたことがあるはずのモーツァルト「交響曲第40番ト短調」を、正面からジャズロックで演じてしまった憎めなさです。
 実はこうした仕事は洋の東西を問わず、成人映画のサントラでは頻繁に使われている手口ですから、サイケおやじは今でも聞く度に様々な暗闇の中の名場面を思い出したするんですが、さりとてグラント・グリーンとバンドの面々がそれを意識していたか否かは、知る由もありません。
 ただ、ガチガチのジャズ者からすれば、ドC調!? なぁ~んて非難されかねないアレンジとストレートな演奏は、確かに気恥ずかしいところもあるでしょう。
 それでもアドリブパートに入ってからのグリグリにドライヴするチャック・レイニーのエレキベース、疑似オクターブ奏法も使うグラント・グリーンのギターはツボをしっかり押さえていますし、エレピやヴァイブラフォンが演じる彩りも良い感じ♪♪~♪
 ズバリ、お洒落でイナタイ!
 そんなこの時期ならではのグラント・グリーンの魅力が横溢していますよ。
 ドラムスやパーカッションも熱演する終盤、バンドが一丸となったファンクなノリを聴いてくれっ! 

A-4 Love On A Two Way Street
 所謂甘茶のスウィートソウルグループだったモーメンツの大ヒット曲ですから、ここでのメロウファンクな仕上がりは「お約束」以上の気持良さ♪♪~♪
 グラント・グリーンのギターはもちろん、ヴァイブラフォンやパーカッションの使い方の上手さ、さらに低い重心で蠢くエレキベースと小技も巧みなドラムスの存在感は流石の一言です。
 真っ黒というイメージが強いグラント・グリーンの意外なほどにソフトな歌心も、要注意だと思います。

B-1 Cantaloupe Woman
 そしてこれはサイケおやじがこのアルバムの中で一番に好きなジャズロック演奏の極みつき! しぶとく跳ねるビート&リズムに気持良く乗ったグラント・グリーンのギターが、これぞの名演を堪能させてくれますが、ピリー・ウッテンのヴァイブラフォンやエマニエル・リギンズのエレピによるアドリブが、またまたイケてます♪♪~♪
 あぁ、これはもう当時の日活ニューアクションか東映バイオレンスの映画サントラのような雰囲気が、たまりませんねぇ~~♪ 実際、サイケおやじは車の中の定番ミュージックのひとつとして、ハードボイルドを気取ったりするほどです。
 もう、こんな演奏だったらLP片面でも、全然OK!

B-2 We've Only Just Begun
 これまたご存じ、カーペンターズが1970年にヒットさせた素敵なメロディを、実に素直にソウルジャズ化した名演だと思います。
 いや、ソウルジャズ云々よりも、所謂イージーリスニングジャズって感じでしょうかねぇ~。とにかくフィール・ソー・グッドは保証付きですよ。

B-3 Never Can Say Goodbye
 う~ん、これもヤバイほどツボという選曲は、アイザック・ヘイズがリアルタイムでヒットさせていたニューソウルのメロウパラードですから、グラント・グリーンのギターも心置きなく歌いまっくています。
 そしてここで凄いのはバックの面々の自由度の高い演奏で、おそらくはきっちりとしていない、その場のヘッドアレンジでやってしまった感じが結果オーライ♪♪~♪ 後のフュージョンブームの真っ只中には、こういうやり方が主流となった先駆けかもしれません。

B-4 Blues For Abraham
 さて、オーラスは新主流派がファンクをやってしまったような、実にミョウチキリンなブルースという感じなんですが、アドリブパートの充実度はピリー・ウッテンのヴァイブラフォンが先発で示すとおり、手抜き無し!
 ですからグラント・グリーンも昔取ったなんとやらの快演ですし、こうなると、フェードアウトが如何にも勿体無い……。

ということで、サイケおやじがこのアルバムをゲットしたのは昭和47(1972)年末でしたから、まだまだ新譜の時期だったんじゃないでしょうか。実際、ジャケットも盤質も綺麗でした。

それが既に述べたように、中古で千円していなかったんですから、我国での扱われ方が知れようというものです。

しかし本国アメリカでは相当に売れていたそうですね。同時期に残されたライヴ盤を聴いても推察が容易なところから、この時期がグラント・グリーンにとっては第二の黄金期だったのかもしれません。

今日では日本でもレアグルーヴとかフリーソウルとかの範疇を設けたことにより、この手の演奏が再発見され、堂々と聴かれるようになったのは好ましいと思いますが、その反面、こういうサウンドが肩身の狭い時代があったということを忘れないで欲しいなぁ……。

なぁ~んて、天の邪鬼なサイケおやじは意地悪い中年者の本性を現すのでした。

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ハービー・マン対デュアン・オールマン

2010-06-21 17:00:19 | Soul Jazz

Push Push / Herbie Mann (Embryo)

常に流行に敏感なゆえに、イノセントなジャズファンからは軽視されるハービー・マンも、しかし実際には充実したアルバムを幾つも出しています。

そしてこれは中でも、私が愛聴して止まない1971年に発売されたLPなんですが、実は告白すると、早世した天才ギタリストのデュアン・オールマンが全面的に参加しているのが、大きな魅力♪♪~♪

ご存じのように、デュアン・オールマンはオールマン・ブラザーズ・バンドでブレイクする以前の下積み時代にスタジオミュージシャンとしての実績があり、その腕前は業界でもトップクラスでしたから、例えハービー・マンがジャズに傾いた演奏をやってしまおうが、なんの問題もありません。

しかも同じセッションに参加したのが、コーネル・デュプリー(g)、デイヴッド・スピノザ(g)、リチャード・ティー(key)、チャック・レイニー(b)、ジェリー・ジェモット(b)、ドナルド・ダック・ダン(b)、バーナード・パーディー(ds)、アル・ジャクソン(ds)、ラルフ・マクドナルド(per) 等々の錚々たる面々!

ですから、これは当時流行のソウルジャズ~クロスオーバーの路線を狙ったことはミエミエなんですが、そこに尚且つスワンプロックの注目スタアだったデュアン・オールマン(g) をメインゲストに迎えるという目論見は、商魂を超えた嬉しいプレゼントでした。

尤も、私がこのアルバムの存在を知り、実際に聴いたのは1974年初頭のことで、それは楽器や集う諸先輩方からの情報によるものでしたが、リアルタイムでプロのミュージシャンを目指していた先輩達は、既にチャック・レイニーやバーナード・パーディーあたりの作り出すカッコ良いグルーヴに以前から注目していたらしく、デュアン・オールマンよりも、そっちを聴くことが第一義のようでした。

まあ、それはそれとして、やっぱり私はデュアン・オールマンですよっ!

しかも演目が、これまた素晴らしく魅力的なんですねぇ~♪

ちなみにアナログ盤は通常と異なり、片面毎に「Side One」と「Side A」に表記するという些か力の入った稚気が憎めないところで、それだけこのアルバムセッションに思い入れが強かったのかもしれません。、

One-1 Push Push
 ハービー・マンが作ったアルバムタイトル曲は、もうグッと重心の低いソウルジャズの典型で、全篇を貫くソリッドなキメのリフを弾くリチャード・ティーのピアノに導かれ、祭り囃子のようなフルートが流れてくれば、リスナーは浮かれてしまうこと、必定です。
 もちろんチャック・レイニー&バーナード・パーディ-、さらにラルフ・マクドナルドが加わったリズム隊のブリブリのビートは絶好調ですし、コーネル・デュプリーのチャラチャラしたリズムギターも最高!
 そして気になるデュアン・オールマンは全くのマイペースで臆することなく、切れ味鋭いアドリブを存分に聞かせてくれますよ♪♪~♪
 これはサイケおやじの完全なる妄想ですが、こういう演奏を聴いていると、もしもデュアン・オールマンが生きていたら、オールマンズはこの方向へと進んだような気がしています。

One-2 What's Goin' On
 ご存じ、マーヴィン・ゲイのウルトラメガヒットにして、当時流行のニューソウルでは代名詞ともなった名曲なんですが、なんとハービー・マンはハープまで導入した甘々のアレンジでメロウに演じるという、実に禁断の裏ワザを使っています。
 もちろんそれは原曲とオリジナルバージョンに秘められた魅力ではありますが、ハープの響きが格調というよりは、些か陳腐な感じがしないでもありません。
 しかしスローテンポながら、エグ味の強いソウルグルーヴでバックアップする名手達の存在感はやはり抜群で、特にリチャード・ティーのチープなオルガンが良い感じ♪♪~♪
 そこに救われてと言っては失礼かもしれませんが、結果的に侮れない魅力が横溢しています。

One-3 Spirit In The Dark
 これまたアレサ・フランクリンのニューソウル期を代表する名曲で、そのゴスペル&ソウルフルなオリジナルバージョンの魅力を大切にしたここでの演奏は感度良好♪♪~♪
 まずは最初のパートで展開されるハービー・マンのフルート、デュアン・オールマンのギター、リチャード・ティーのエレピによる、厳かにして神聖なムードさえ滲む会話的なアドリブイントロが素晴らしいです!
 そしていよいよ本題に入るというか、じっくり構えたリズム隊が提供する粘っこいグルーヴの中、ツボを押さえたハービー・マンのフルートがシンプルに歌えば、そこはまさにソウルジャズのゴールデンタイム♪♪~♪
 当然ながら演奏は徐々に白熱し、如何にもバーナード・バーディーなドラミングがビシバシと存分に楽しめますし、ここで参加しているジェリー・ジェモットのペースが暗く蠢けば、リチャード・ティーのエレピがメロウな黒っぽさを見事に表出していきます。
 ちなみに左チャンネルで鋭い合の手を入れるサイドギターはデイヴィッド・スピノザだと思われますが、すると右チャンネルから控えめなアドリブソロに入るのがデュアン・オールマンだとしても、このふたりのスタイルには微妙な共通点も浮かび上がるあたりが興味深いところだと思います。

A-1 Man's Hope
 で、そのデイヴィッド・スピノザの大活躍を堪能出来るのが、このヘヴィなゴスペルソウルのジャジーな演奏で、なかなかシンプルな間合いを活かしたリズム隊のグルーヴもモダンジャズ的ではありますが、醸し出されるビートは間違いなくニューソウルのフィーリングが濃厚です。
 そしてデイヴィッド・スピノザのギターワークにはオクターブ奏法やテンションコードの多用によるジャズっぽいフレーズが散見されるものの、それもまた当時の流行のひとつだったと思われます。
 実際、同時期のグラント・グリーンあたりの諸作と聴き比べるのも楽しいでしょう。
 肝心のハービー・マンは可も無し不可も無し……。デュアン・オールマンは休憩中のようです。

A-2 If
 これまたご存じ、ソフトロックの人気グループとして今日でも根強い人気があるブレッドの代表的な美メロパラードを演じてしまうハービー・マンには、全くニクイほど隙がありません。そのメロディフェイクの上手さは絶品♪♪~♪
 またこういう曲調になると威力を発揮するのが、リチャード・ティーのメロウなエレピなんですねぇ~♪ デュアン・オールマンの神妙なアドリブと後半で暴れるハービー・マンのフルートがエグイだけに、尚更に味わい深く思えます。

A-3 Never Can Say Goodbye
 今やスタンダード化したメロウなソウルパラードですから、ここでのスローで懐の深い演奏にしても、決して甘いだけではありません。
 再び魅力的なリチャード・ティーのエレピ、ほとんど鈴木茂なデイヴィッド・スピノザのサイドギターが殊更に素晴らしく、ですからハービー・マンも実は聴き逃されている歌心優先主義を全開♪♪~♪ 演奏時間の短さが勿体無いですねぇ。

A-4 What'd I Say
 そしてオーラスは、これまた誰もが知っているレイ・チャールズの楽しいゴスペルソウルなヒット曲♪♪~♪ もうここでのグイノリ&ブリブリの演奏の歓喜悶絶具合は筆舌に尽くし難いですよっ!
 なにしろデュアン・オールマンがアタックの強いピッキングで十八番のフレーズを弾きまくれば、ジェリー・ジェモットのペースが饒舌に蠢き、ハービー・マンは祭囃子がど真ん中状態というテンションの高さなんですねぇ~♪
 そしてクライマックスには、ちゃ~んと、例の掛け合いがフルートとギターで演じられるという、実に楽しい「お約束」が用意されていますから、本当に身も心もウキウキさせられますよ♪♪~♪ 終盤でついつい自己主張してしまうデイヴィッド・スピノザが憎めません。

ということで、サイケおやじには、何度聴いても飽きない、大好きなアルバムです。

ただし今日的な聴き方では、例のフリーソウルなんていう意味不明のブームや所謂DJ達の崇拝が面映ゆい感じじゃないでしょうか。

つまり必要以上の期待を持って聴いてしまうと、物足りなさがあるんように思います。

と言うのも、これはリアルタイムのジャズ喫茶では、ほとんど無視状態のアルバムでしたし、フュージョンブームの時でさえ、白眼視されていた事実が確かにあります、

それはロックスタアのデュアン・オールマンの参加以上に、そういうところに色目を使ってしまうハービー・マン特有のシャリコマ体質が、ジャズ者には堪えられない存在の軽さ!? だったんですねぇ、局地的かもしれませんが。

ですから虚心坦懐に1970年代初頭のソウル&ロックジャズに接する姿勢が自然に無いと、些か辛い部分があるように思うのです。

しかし、まあ、それも「時代の音」ということで、好きな人に絶対のアルバム!

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