OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クインシー・ジョーンズ発ブラコン行き

2010-05-03 17:00:14 | Soul Jazz

Body Heat / Quincy Jones (A&M)

昭和49(1974)年頃になると輸入盤を安く販売する店があちこちに開店しましたが、同時に嬉しかったのは洋楽の新譜がこれまで以上に早く聴けるようになったことです。もちろん店内では、そうしたピカピカのイチオシ盤をBGMで鳴らしていましたから、レコードをあれこれ物色する前に、耳でピンッと感じたアルバムを買ってしまうことも度々でしたねぇ~♪

で、本日の1枚もその1974年のちょうど今頃、輸入盤屋の目玉商品となっていたクインシー・ジョーンズの大ヒット盤でしたが、結論から言えば、それまでのモダンジャズ寄りの作りからニューソウル路線に大きくシフトした内容は、イノセントなジャズファンからは敬遠されたのが本当のところだったと思います。

しかし節操がないサイケおやじは、その店内BGMに一発でシビレが止まらなくなり、速攻でお買い上げ♪♪~♪

 A-1 Body Heat
 A-2 Soul Saga (Song Or The Buffalo Soldier)
 A-3 Everything Must Change
 A-4 Boogie Joe , The Grinder
         ~ Reprise:Everything Must Change
 B-1 One Track Mind
 B-2 Just A Man
 B-3 Along Came Betty
 B-4 If I Ever Lose This Heaven

例によって豪華絢爛なメンツが参集していることは言うまでもありませんが、このアルバムで特に活躍しているのが、リアルタイムで有名無名を問わず、クインシー・ジョーンズの目にとまったソングライター&ボーカリストの存在です。

中でも個人的に瞠目させられたのが、アルバムタイトル曲「Body Heat」、さらに「One Track Mind」と「If I Ever Lose This Heaven」の3曲を作り、自ら歌っているレオン・ウェアの素晴らしさ♪♪~♪ もちろんそれにはクインシー・ジョーンズも大きく関与しているわけですが、実は後に知ったところでは、レオン・ウェアは1960年代後半からモータウン系列での仕事として幾つかのヒット曲を書いていた才人だったのです。

そして1972年頃には既にソロ名義のリーダーアルバムも出していて、後追いで聴いたそこには当時の流行だったスワンプロックや元祖AORとしか言えないような、なかなか白人的な音楽が披露されていたのですが、その根底にはもちろん、黒人ならではのメロウなフィーリングと粘っこさが隠しようもなく存在しています。

そうしたレオン・ウェアならではの資質をクインシー・ジョーンズは懐の深いプロデュースで引き出したのが、このアルバムの成功に繋がったんじゃないでしょうか。

それは実際、後のレオン・ウェアの活躍を鑑みれば本当に顕著で、例えば1976年に出たマーヴィン・ゲイの大ヒットアルバム「アイ・ウォント・ユー(Tamla)」は本来、レオン・ウェアがコツコツと書き溜めた曲のデモ録音をマーヴィン・ゲイが強引に横取りしたという裏話は有名だと思いますし、マイケル・ジャクソンやリサ・マンチェスター等々への楽曲提供やプロデュースの仕事の傍ら、時折に発表するリーダーアルバムは全てが黒くてメロウな楽曲揃いという傑作ばかり!

ですからサイケおやじも心底夢中にさせられて今日に至っているのですが、そのきっかけは、このアルバムだったのです。

じっくりと粘着質のビートと新鮮なフィーリングを演出するエレピやシンセのキーボード類が、黒いボーカルやコーラスと最高に有機的な融合を聴かせる「Body Heat」、思わせぶりな演出がたまらないファンク歌謡の「One Track Mind」、そして憂愁の歌姫だったミニー・リパートンと共演した「If I Ever Lose This Heaven」はメロウファンクの極みつきとして、今日までに幅広い支持を得ていると思います。その絶妙の軽さがクセになるんですよねぇ~♪

そして、もうひとり侮れないのが、今ではスタンダード化した名曲「Everything Must Change」を自作自唱しているベナード・イグナーの存在でしょう。もう、ほとんどこの曲だけで音楽史に名を残したといって過言ではないほどの強い印象が残るのですから、幾多の新しいスタアを表舞台に出してきたクインシー・ジョーンズにしても、会心の起用だったと思います。

もちろん、このアルバムはボーカルパートだけでなく、演奏とアレンジも実に秀逸で、唯一のインスト「Along Came Betty」は、ご存じベニー・ゴルソンが書いたハードバップの人気曲なんですが、それをここまでメロウフュージョンに仕立て上げたクインシー・ジョーンズは恐るべし!

ちなみにバックアップのミュージシャンは曲毎のクレジットは無いものの、ビリー・プレストン(key)、デイヴ・グルーシン(key)、ハービー・ハンコック(key)、ボブ・ジェームス(key)、エリック・ゲイル(g)、フィル・アップチャーチ(g)、アーサー・アダムス(g)、デヴィッド・T・ウォーカー(g)、チャック・レイニー(b)、マックス・ベネット(b)、ポール・ハンフリー(ds)、ジェイムス・ギャドソン(ds)、バーナード・パーディ(ds)、グラディ・テイト(ds) 等々、本当にお馴染みの名人達の参加が記載されていますから、濃密な充実感はお約束以上なんですが、特筆しておきたいのが、当時のスティーヴィー・ワンダーのブレーンだったロバート・マーグレフとマルコフ・セシールのふたりが、キーボードプログラマーとして参加していることです。

それゆえに同時期のスティーヴィー・ワンダーが出していた「心の詩」や「トーキング・ブック」あたりの音と共通する感覚が滲んでいるのもムペなるかな! そういう人脈にまで手を伸ばしているクインシー・ジョーンズは流石の目配りだと思います。

あとプロデュースのクレジットがクインシー・ジョーンズと並んでレイ・ブラウンになっていることも要注意でしょうか。もちろん、あのオスカー・ピーターソンの黄金のトリオで活躍しながら、ハリウッドポップスの世界でも確固たる実績を残し、さらにクインシー・ジョーンズが実際に率いていたビックバンドでも1970年前後からプレイしていた天才ベーシストと同じ人物でしょう。

そういうモダンジャズの偉人の名前があるからこそ、このアルバムが現実的にジャズの分野でも無視出来ないものになっているのは確かですし、収められた全てのトラックから立ち昇るジャズ本来の悪魔性が、秘めた魅力になっているのかもしれません。

あぁ、クインシー・ジョーンズは本当に上手いですよ♪♪~♪

作編曲の面では当然ながら自分でやったものに加え、トミー・パーラーとデイヴ・ブルンバーグという子飼の弟子を適材適所に起用したのも、新しさに繋がったところだと思います。

ということで、実に時代にジャストミートした素敵なアルバムでした。

一般的に言われているとおり、クインシー・ジョーンズは確かに「良いとこ取り」のプロデューサーかもしれませんが、所詮はマイナーで終わってしまうはずだった才能を表舞台に引き上げる手腕は、繰り返しますが、最高!

現代に聴けば、このアルバムから流れてくる魅惑の楽曲は当たり前になった感が強いところに、クインシー・ジョーンズの新しさと普遍性の同居があるのでしょうねぇ。


デヴィッド・Tのメロウファンクなギターが好き♪

2010-01-29 12:25:18 | Soul Jazz

Press On / David T. Walker (Ode)

今では固定ファンも大勢ついているデヴィッド・T・ウォーカーも、1970年代には単なる凄腕のセッションギタリストでした。しかし、一旦でも、とろけそうでメロウな味わいと激しく熱いソウルの虜になったが最後、中毒症状は必至!

そう言い放つサイケおやじにしても、最初にデヴィッド・T・ウォーカーを強く意識したのは、キャロル・キングのアルバム「ファンタジー」を聴いて以降なんですが、実は後に知ったところからすれば、以前にも私は、この名人のギターを無意識に聞いていたのです。

何故ならば、1960年代からプロとして活動している多くの黒人ギタリストの例にもれず、デヴィッド・T・ウォーカーもまたモータウン系列のスタジオセッションや巡業バンドで働いていたからですし、一番有名なのはジャクソン・ファイブ関連の音源のほとんどに参加していると言われています。

また一説によれば、リトル・リチャードのバックバンドではジミヘンと一緒だったこともあるとか!?

まあ、それはそれとして、とにかく1970年前後から世に出たR&Bやソウルジャズ系のレコードに参加したクレジットは、当時からようやく表記されはじめた裏ジャケットを見る楽しみにも繋がりましたですね。

で、本日ご紹介のアルバムは、そんな下積みから業界で評価された頃に作られたリーダー盤のひとつで、発売されたのは1973年頃らしいです。というのも、私が入手した経緯は当時、楽器屋に集う諸先輩方に交じって前述の「ファンタジー」とデヴィッド・T・ウォーカーの話をしたところ、強く勧められたというのが真相です。

ちなみに当時の楽器屋は、そうした情報交流の場としても、世界が広がっていく場所でしたねぇ、今とちがってネットも無い時代でしたから。

そして私が入手したのは既に翌年になっていましたが、一聴、シビレて驚愕♪♪~♪

 A-1 I Got Work To Do
 A-2 Brother, Brother
 A-3 Press On
 A-4 Didn't I Blow Your Mind
 A-5 With A Little Help From My Friends
 B-1 Superstition / 迷信
 B-2 I Who Have Nothing
 B-3 If That's The Way You Feel
 B-4 Save Your Love For Me
 B-5 If You Let Me

メンバーはデヴィッド・T・ウォーカー(g,vo) 以下、チャールズ・ラーキー(b)、ハービー・メイソン(ds)、ボビー・ホール(per) が中核となり、ジョー・サンプル(key)、キャロル・キング(p,vo)、ジェリー・ピータース(Key)、オスカー・ブラッシャー(tp)、ジョージ・ボハノン(tb)、アーニー・ワッツ(sax,fl)、さらに女性コーラス隊やストリングス等々が適宜加わった、これはほとんどキャロル・キングの「ファンタジー」とクリソツな編成ですから、たまりません♪♪~♪

しかし、もちろん主役はデヴィッド・T・ウォーカーのギターに他ならず、またアイズレー・ブラザースの「I Got Work To Do」、キャロル・キングの「Brother, Brother」、デルフォニックスの「Didn't I Blow Your Mind」、スティーヴィー・ワンダーの「迷信」、ロバータ・フラックとダニー・ハザウェイが当時カパーヒットさせていた「I Who Have Nothing」、ナンシー・ウィルソンの「Save Your Love For Me」、エディ・ケンドリックスの「If You Let Me」等々、全篇が極めてニューソウルな選曲ばっかりというのも、嬉しいかぎり♪♪~♪

それらが最高にカッコ良いソウルインストで演じられているのは言わずもがなでしょうが、デヴィッド・T・ウォーカーはウェス・モンゴメリーやケニー・バレルあたりのモダンジャズのギタリストからの影響も隠せませんから、例えばビートルズの「With A Little Help From My Friends」は原曲をほとんど感じさせない変奏として、さらにファンクとジャズをゴッタ煮とする裏ワザが凄いところ! 前述のホーンプレイヤーも熱気に満ちたアドリブを聞かせてくれますよ。

ちなみにデヴィッド・T・ウォーカーはピックと指弾きを混在させるピッキングで、あの独得の甘い音色とフレーズを紡ぎ出していると思われますが、ギターそのものにも妙なアタッチメントは繋がず、それでもワウワウとかの使い方は従来から相当に進化したテクニックが強烈無比!

例えばオリジナルバージョンよりもグッと重心の低いグルーヴで演じられる「迷信」でのワウワウは、ニューソウルが明らかにサイケデリックロックの黒人的解釈という説を証明するものでしょう。まさにジェフ・ペックと双璧のエキセントリックでエグイ、本当にゾクゾクしてくる演奏です。

そして今となってはお目当てのメロウなプレイは、既にして全開♪♪~♪

いきなりトロトロに甘く歌いまくるギターが最高の「Brother, Brother」、井上バンドが大野雄二したような「I Who Have Nothing」は、実はこっちが元ネタという本末転倒がニクイばかりですし、シミジミとした情感が黒人音楽特有の色気を滲ませる「Didn't I Blow Your Mind」は、愛おしい女とのふたりの時間がお楽しみ♪♪~♪ 必ず、オチます!

という結末に相応しい「Save Your Love For Me」も、あぁ、本当にせつないほどに感情移入しまくったギターソロが、まさにデヴィッド・T・ウォーカーでしかありません。粘っこいスローグルーヴのお手本のような全員の演奏も素晴らしいですよ♪♪~♪

その意味でアルバムタイトル曲の「Press On」は、自身のボーカルを前面に出したファンキーなヒット狙いなんでしょうが、この人の歌いっぷりもなかなか好感が持てますよ。もちろんバックの演奏パートもカッコ良すぎます♪♪~♪

ということで、デヴィッド・T・ウォーカーの魅惑のギターが存分に楽しめますし、ビシバシにハッスルしたハービー・メイソンのファンクなドラミング、ツボを外さないベースやピアノ、キーボードの使い方も実に滋味豊かな演奏ばかりですから、何度聴いても飽きません。

そこにはファンキーなカッティング、メロウなピッキング、選び抜かれた「音」だけによる珠玉のフレーズ等々、所謂ソウルフィーリングがテンコ盛り! しかも、そのセンスが実にお洒落で大人の味わいであると同時に、イナタイ青春の情熱みたいなものもあって、深いです。

それはデヴィッド・T・ウォーカーという黒人ギタリストの人間性にまでも迫る「何か」なんでしょうが、残念ながら、私は本人を演奏を通じてしか知る由がありません。

でも、それで十分ですよねぇ。

だって、デヴィッド・T・ウォーカーは素晴らしい演奏を幾つもレコードに残しているのですから。う~ん、最高♪♪~♪


ジョージ・ベンソンの下心がグルーヴィン

2009-02-10 11:29:12 | Soul Jazz

Giblet Gravy / George Benson (Verve)

なんだかんだ言われても、やっぱりジョージ・ベンソンのギターは凄いと思います。黒人ならではの感性とロック的なアプローチが上手く融合し、もちろんジャズギタリストとしてのテクニックとアドリブ能力の高さは圧倒的ですよねぇ~。妙に頭でっかちな事をやらないのも、私の好みに合っています。

このアルバムは未だブレイク前の1967年に制作された、下心が滲む本人のポートレートも印象的なジャケットで知られる隠れ名盤♪♪~♪

メンバーはジョージ・ベンソン(g)、エリック・ゲイル(g)、カール・リンチ(g)、ハービー・ハンコック(p,key)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・コブハム(ds)、ジョニー・パチェコ(per) が主力となり、トム・マッキントッシュの編曲で、女性コーラス隊やブラス&リードのホーンセクションが加わっています。そして何よりも選曲がサイケおやじにはジャストミートなのです。

A-1 Along Came Mary
 ソフトロックの人気グループだったアソシエイションが1966年初夏にアメリカで大ヒットさせた名曲で、勢いのあるオリジナルバージョンの楽しさをジョージ・ベンソンは見事にジャズロック系の演奏へと昇華させます。
 トム・マッキントッシュのアレンジは些か凝り気味ではありますが、その昭和歌謡曲に応用されまくった味わいは憎めません。

A-2 Sunny
 これもご存じ、ボビー・ヘブが自作自演で1966年夏に大ヒットさせた名曲の中の大名曲で、サイケおやじにも永遠のお好みメロディ♪♪~♪
 ジョージ・ベンソンのギターはシャープなリズム隊と共謀して歌いまくりですが、バックの女性コーラス隊のソウルフルなムードや大袈裟なブラスアレンジが、ダサダサ限度ギリギリのB級グルメ味で、これまた憎めません。

A-3 What's New
 一転してモダンジャズにどっぷりというスタンダード曲の4ビート演奏ですが、パーカッションやバンドアンサンブルがラウンジ系というか、ジョージ・ベンソンやハービー・ハンコックのアドリブが鋭いわりには、聴き易い仕上がりだと思います。

A-4 Giblet Gravy
 アルバムタイトル曲はジョージ・ベンソンが会心のオリジナルで、痛快なソウルジャズ! もちろんロックビートとの大胆な融合、さらに鮮やかなギターのアドリブ、ノリノリのバンドの勢いが最高の極みつきですから、私なんかはこれがLP片面の演奏であったとしても、物足りないほどに大好きです。
 そのギターから迸るフレーズは、つまらないところがひとつも無いほどの、実に充実したアドリブの連続技! あぁ、こんなギターが弾けたらなぁ~~~♪
 ギター好きの皆様には、ぜひとも、聴かずに死ねるかだと思います。
 エリック・ゲイルのサイドギターもシブイですよ。

A-5 Walk On By
 これまたサイケおやじが大好きなメロディで、作曲はご存じ、バート・バカラックですから、ジョージ・ベンソンのギターも中途半端は許されません。そして見事なフェイクとアドリブで大満足の結果を出しています。
 女性コーラスのソウル味を見事に使いこなしたトム・マッキントッシュのアレンジも素晴らしく、胸キュンの余韻がせつないという演奏時間の短さが残念です。

B-1 Thunder Walk
 シンプルなバンド演奏ですが、黒人ハードバップの基本を大切にしたソウルフルな4ビート、そしてジョージ・ベンソンのジャズ魂が新しい感覚で表出した隠れ名演だと思います。
 リズム隊には新主流派の息吹も濃厚で、ハービー・ハンコックのハッスルぶりがニクイというか、水を得た魚ですよねぇ~。思わずニンマリしてしまうほどです。

B-2 Sack Of Woe
 キャノボール・アダレイのオリジナル人気曲を痛快なシャッフル4ビートで演じるバンドのドライヴ感が、まずは凄い勢いです。ビリー・コブハムのドラムスが、やはり強烈ですねぇ~♪
 肝心のジョージ・ベンソンは得意のオクターヴ奏法も混ぜ込んで、ハードバップの真髄に迫っていますが、痛烈に襲いかかってくるブラス&リード陣のリフと対決するが如き閃きは流石! 正統派ジャズギタリストとしての凄腕を発揮しつつ、大衆的な快楽も同時に追求するあたりが、ジョージ・ベンソンの本領だと思います。

B-3 Groovin'
 これまた嬉しい選曲で、オリジナルはラスカルズが1967年春にヒットさせたブルーアイドソウルの決定版! 山下達郎の偏愛曲としても知られますが、実はこのアルバムの裏ジャケットに記載のデータでは、録音が1967年2月となっていますから、これは楽曲が世に出た直後のセッションになるのでしょうか?
 このあたりの謎は、楽曲の良さに目をつけたプロデューサーの嗅覚の鋭さか、あるいはジョージ・ベンソンのお好みなのか、ちょっと興味深いところです。
 肝心の演奏はオリジナルバージョンのラテンソウル風味を活かしつつ、よりメロウなムードと黒っぽいジャズ感覚を強めた快演♪♪~♪ 素敵なテーマメロディをオクターヴ奏法でフェイクしていくジョージ・ベンソンはアドリブも絶好調で、後のクロスオーバーでブレイクを果たしたスタイルが、既に出来上がっている感じです。
 バンドアンサンブルもシンプルなアレンジの良さが厭味無く、これも演奏時間の短さが残念至極です。

B-4 Low Down And Dirty
 オーラスは、このアルバムでは一番長い演奏で、スロ~なブル~スを素材にジョージ・ベンソンがジャズ&ソウルの保守本道を追求し、超一流ギタリストとしての腕前を堪能させてくれます。
 そのタメと粘っこいフィーリング、感情が激したような早弾きフレーズの熱さ、さらにツッコミと和みのバランスの良さ! じっくりと4ビートを熟成させていくバンドメンバーとの協調性も見事ですし、こういう当たり前の事が一番難しいのかもしれませんが、ジャズ的な快楽も良いもんだなぁ~、と実感されるのでした。

ということで、ソウルポップス系のA面、モダンジャズ味が強いB面という感じですが、それが各々「What's New」と「Groovin'」で緩和されるというアルバム構成も秀逸で、聴き通しても飽きません。

そして何よりもジョージ・ベンソンのギターの上手さと凄さが、気楽に堪能出来ると思います。

後にCTIから出る諸作に比べると、その密度の薄さが気になることは否めませんが、如何にも1960年代後半という、適度にダサい雰囲気が当時の歌謡曲のアレンジに流用されたとおりのお洒落感覚でもあり、サイケおやじは結局、この時代の「音」が大好きです。

今日はこれから、もう一度、聴きますよ♪♪~♪


ビリー・ウッテンの埋もれていたファンク

2009-02-05 11:38:41 | Soul Jazz

The Wooden Glass Recorded Live featuring Bill Wooten
                                
(Interim / P-Vine = CD)

今ではCD化もされ、レアグルーヴの聖典となったこのアルバムも、実は発表からしばらくの間は「知る人ぞ知る」でした。

そして私がこれを知ったのは1987年のことで、当時アメリカ各地へ3ヵ月ほどの長期出張を命じられた時、友人がその間に探して欲しいレコードの1枚として、渡されたリストの中にあったものです。

とはいっても、そのカタログ番号やレベールの住所までもが几帳面に書かれたリストの中にあって、これだけは「Wooden Glass のライブ盤」としか記載がありませんでした。

そこで友人に詳細を訊ねてみたところ、主役はビリー・ウッテンというヴァイブラフォン奏者で、実はジャケットもカタログ番号も分からないけれど、こんなに熱い演奏だと、カセットテープを渡されました。

いゃ~、その演奏、本当に熱くて火傷しそうですし、一転してメロウなファンクバラードとか、その場のむせかえるような雰囲気の良さも最高です! そして特に眩暈がしそうになるのが、意図的にリミッターが使われたようなドラムスの音の録り方や潰れたような全体のミキシングの加減が、実に結果オーライなんですねぇ~♪

そこでビリー・ウッテンについて、ちょいと調べてみたところ、なんとグラント・グリーン(g) の隠れ名作「ヴィジョンズ (Blue Note)」に参加していたのですから、こんなファンクは十八番という正体が見えてきたのです。

しかし結果的に、当時はこのアルバムを発見することが出来ず、しかしそれでも貰ったカセットはずっと、私の密かな愛聴テープになっていました。

ちなみにそのカセットは当然ながらアナログ盤のコピーだったのですが、友人の元テープさえもカセットコピーであり、私の手元にきたものは、そのさらに孫か曾孫のコピーということで、音質も尚更に潰れていたわけですが、それが逆に良い味になっていたというわけです。

さて、肝心の本元の録音は1972年、インディアナポリスのクラブ「The 19th Whole」でのライブセッションで、メンバーはビリー・ウッテン(vib)、エマヌエル・リギンズ(Organ)、ウィリアム・ローチ(g)、ハロルド・カードウェル(ds,per) という4人組から成る、これがザ・ウドゥン・グラスというバンドだったようです。

そのあたりの経緯は、5年ほど前に出た本日ご紹介のCD付属解説書に掲載の本人インタヴューに詳しいわけですが、そのリマスターも長年聴いていたカセットコピーの音とは一線を隔したものですから、私にとっては違和感が強いところも……。

01 Monkey Hips And Rice
 いきなりドカドカ煩いファンクピートが全開のスタートから、ビリー・ウッテンのヴァイブラフォンがテーマメロディをリードし、ワウワウのリズムギターや熱気優先のオルガンが濃厚な味をつけていく展開に、心底シビレます。
 既に述べたように録音の具合からでしょうか、意図的か偶然かは判然としませんが、ハウス系というか、ヒップホップっぽい音で録られたドラムスの音が良い感じ♪♪~♪
 またニューソウル丸出しのギターソロや歪んでシンセぽい音になっているオルガンの熱気も、完全に私好みですから、自然に腰が浮いてきます。
 肝心のビリー・ウッテンは失礼ながら、それほど際立ったフレーズやアドリブ構成を聞かせてくれるわけではありませんが、その本気度はなかなかのもので、観客からも拍手喝采のソロパートは熱いです。
 そしてなによりもバンドの一体感が強い印象を残していますから、愛好者ならば、この1曲だけ完全に虜の名演だと思います。

02 We've Only Just Begun
 熱狂の拍手喝采の中でメロウに演奏されるのが、カーペンターズでもお馴染みというソフトロックの大名曲ですから、たまりません。ゆったりとしたグルーヴが絶妙のおもわせぶりとジャストミートした、これも名演だと思います。
 特にドラムスのドンツカのノリと音の響きが、ビリー・ウッテンの素直なヴァイブラフォンには最高の相性ですし、バンドアレンジも良く練られたシンプルな良さがありますねぇ~♪
 う~ん、確かこんなアレンジの歌が、井上順のシングル曲にあったような……♪
 心底、和んでしまうハートウォームなソウルが素敵です。

03 Joy Ride
 これまたファンクな8ビートが冴えまくったコテコテな演奏で、オルガンのアドリブを聴いていると、なんとなくハードロックのバンドのような感じさえしますが、全体のグルーヴの黒っぽさは完全なジャズ、それも黒人系ど真ん中の熱気に満ちています。
 疾走するギター、ドタバタに暴れるドラムス、ドライなファンクを発散させるヴァイブラフォン、そして歪んだオルガンがゴッタ煮となって作り出される旨みは、まさに唯一無二! こんな名演が長い間埋もれていたんですねぇ~、という感慨が深くなりますよ。

04 In The Rain
 ワイワイガヤガヤの店内のざわめき、それをブッタ斬るようなオルガンとギターのプログレな爆発音、そして流れてくるソフト&メロウなテーマメロディ♪♪~♪ 相変わらずズシズシバタバタのドラムスが、本当に素敵ですよっ♪♪~♪
 ちなみにこれを書いたのはビリー・ウッテンとクレジットされていますが、どっかで聴いたことがあるような……。
 まあ、それはそれとして、ツボを押さえたオルガンやメロディのキモを大切にしたヴァイブラフォンが、まさにフィール・ソー・グッドです。

05 Day Dreaming
 そして間髪を入れずに始まるのが、アレサ・フランクリンが自作の大ヒット曲ですから、ここでも油断は禁物です。ただし、ちょいと落ち着きの無い演奏が賛否両論でしょうか……。個人的には、もう少し粘っこいテンポだったらなぁ……、なんて思います。
 厳しいことを言えば、演奏全体が些か走り気味とはいえ、そこから醸し出される熱気は流石の痛快さが結果オーライかもしれませんね。

06 Love Is Here
 ダイアナ・ロスとシュープリームスでお馴染みのモータウン製ヒットメロディが、こんなに熱い演奏に! グルーヴィな4ビートを、さらに黒っぽく煮詰めていくバンドの勢いが圧巻ですよっ!
 オルガンのフットペダルとドラムスのコンビネーションで作りだされるグイノリのウォーキングも重量感がありますし、ビリー・ウッテンも正統派ジャズにどっぷりの実力を完全披露の熱演を聞かせてくれます。
 そしてその場の観客の熱狂も天井知らずの勢いでバンドを後押ししますから、これぞライブの醍醐味が存分に楽しめると思います。

ということで、まさにレアグルーヴの聖典となるに相応しいアルバムだと思います。そしてこれが長い間埋もれていた真相は、なんとビリー・ウッテンの自主制作盤だったんですねぇ~。ちなみに本人はニューヨーク出身らしいのですが、1970年前後にグラント・グリーンのバンドレギュラーを務めた後、諸事情からインディアナポリスに定住し、地元のクラブをメインに活動していくことになったそうですから、さもありなんの話ですが、実に勿体無いと思います。

当然ながら、私はこのアルバムのオリジナルは見たことがありませんし、そのアナログ盤の実際の音も聴いたことがありません。ですから前述したカセットコピーの団子状の音に夢中になって親しんでいた私としては、このCDの分離のはっきりしたステレオミックスには多少の違和感を覚えるのですが、しかし録音のミソであるガサツな熱気やシカゴ系ファンクな雰囲気のドラムスの音あたりは、確実に楽しめると思います。

さて、このCDにはオマケがあって、それは――

07 Madlib / 6 Variations Of In The Rain

なんですが、これはサンプリングネタの見本みたいな、私が特に好まない音なんで、割愛させていただきます。

率直に言えば、メインの6曲だけは、ぜひとも聴いて熱くなる演奏ということでした。


エディ・ハリスとレス・マッキャン

2009-01-06 11:30:01 | Soul Jazz

Swiss Movement / Les McCann & Eddie Harris (Atlantic)

嗜好品には好き嫌いがつきもので、もちろんジャズも、そのとおりでしょう。

本日ご紹介のアルバムなんか、モロにそれです。なにしろ主役のレス・マッキャンとエディ・ハリスという2人は、特に我が国においては評論家の先生方からは蔑まれることも多いですし、往年のジャズ喫茶でも敬遠状態……。

ですから、結局は何かの「はずみ」で聞いて好きになるか、あるいは???の気分になるかは、全くの運と自らの嗜好の問題かと思います。

ちなみにレス・マッキャンは少年時代からゴスペルを歌い、ピアノの弾いていた黒人プレイヤーですから、モダンジャズを演奏するようになってからもソウル&ファンキーゴスペルな味わいが強い存在です。

またエディ・ハリスは、やはり子供の頃にはゴスペル合唱隊をやっていたそうですが、何時しか音楽業界に入ってからはピアノやクラリネット、さらにテナーサックスを演奏するマルチな活動をしていたそうです。そして1960年になって映画「栄光への脱出」のテーマ曲をテナーサックスで演じてヒットを出し、さらに独自に開発した電気サックスを吹いて人気を得たところから、我が国では正統派では無いとレッテルを貼られ……。

ということで、そうした2人がコンビを組んでの演奏には、最初っから妙な先入観がつきまというのは、さもありなんでしょう。

しかしサイケおやじは、決してゲテモノ喰いではなく、そういうのが大好きなんですねぇ~~~♪

録音は1969年6月21日、モントルージャズ祭でのライブセッションで、メンバーはエディ・ハリス(ts)、レス・マッキャン(vo,p)、リロイ・ヴィネガー(b)、ドナルド・ディーン(ds)、そしてベニー・ベイリー(tp) という強力な布陣です。

A-1 Compared To What
 いきなりレス・マッキャンがイケイケのゴスペルグルーヴを炸裂させ、同時にメロウなソウルフィーリングも醸し出す最高のピアノを聞かせてくれます。ドナルド・ディーンのリムショットも良い感じ♪
 曲はロバータ・フラックも歌っていた有名なメロディなんですが、ここでのファンキーな作り返しは絶妙ですねぇ~。ジワジワと絡んでいくエディ・ハリスの電気サックスにもシビレますよ♪♪♪ もちろんアドリブパートではエグイ音使いとシンプルにして毒気に満ちたフレーズが、たまらなくファンキーです。
 レス・マッキャンのボーカルも「力み」が良い方向に作用して逆にリラックスした感じでしょうか。バンドのテンションの高さが尚更に熱くなっていきますから、ベニー・ベイリーのトランペットがダーティな雰囲気なのも納得されると思います。
 あぁ、実に楽しいですねぇ~♪
 クライマックスでエディ・ハリスのテナーサックスがチャールズ・ロイドになるのはご愛敬? いえいえ、これが「その場の雰囲気」ってやつでしょうねぇ~♪ レス・マッキャンのピアノがガンガンに突っこんでいくのも、痛快です。

A-2 Cold Duck Time
 エディ・ハリスの作曲とされていますが、まるっきり前曲の続編的なグルーヴが楽しいかぎり! それでもリロイ・ヴィネガーのペースがモダンジャズの矜持を保っていますし、エディ・ハリスのテナーサックスは意想外とも思えるクールな味わいが結果オーライです。
 しかしレス・マッキャンとドナルド・ディーンがグルになってファンキーグルーヴを叩きつけてきますから、ただでは終わりません。ついに途中から電気アタッチメントのスイッチをオンにして奇声まで発してしまうエディ・ハリス! さらに過激な姿勢まで見せてしまうベニー・ベイリーのトランペットが飛び出せば、観客も狂熱の拍手喝采です。
 そしてレス・マッキャンの真っ黒なピアノがグリグリのゴスペルジャズロックですよっ!
 こうしたケレンとスタンドプレイ寸前のスタイルは、イノセントなジャズファンには受け入れられないかもしれませんが、楽しいことに変わりはないですねぇ。
 本当にそう思っています。

A-3 kathleen's Theme
 そうした空気を読んだのか否か、これはなかなかに正統派モダンジャズの4ビート演奏です。エディ・ハリスのテナーサックスが、またまたチャールズ・ロイド風になっているのも憎めませんねっ♪ つまりジョン・コルトレーンの音符過多症候群が涼やかに演じられて、その場を混乱させてしまうというか……。
 しかしリズム隊が実に真っ当で、リロイ・ヴィネガーが十八番のウォーキングベースで土台を固め、演奏全体を強烈にスンイグさせていくのでした。

B-1 You Got It In Your Soulness
 レス・マッキャンが作った陽気なゴスペル系のハードバップで、メリハリの効いたリズミックなブルースですから、作者のピアノが大活躍です。この弾みきったノリは唯一無二でしょうねぇ~~~♪ 思わず腰が浮いてしまいます。
 そしてエディ・ハリスのテナーサックスが不思議な浮遊感を表出させて登場すれば、リズム隊がますます強力なビートで煽りたてるという展開が実にエグイです! あぁ、これはもはやヒステリー女とヤキモチ男の恋愛遊戯でしょうか、非常に濃密なソウルグルーヴとゴスペルジャズのエッセンスが横溢していると感じます。
 ベニー・ベイリーも火に油という熱演ですし、レス・マッキャンの大迫力のピアノが炸裂するクライマックスは、本当に修羅場で歓喜悶絶ですよっ! 観客の大歓声といっしょに、思わず拍手してしまいます。

B-2 The Generation Gap
 これもレス・マッキャンのオリジナルで、ちょっとモード系新主流派の変態ジャズロックという感じでしょうか? 小賢しいドラムスと場違いなベースのノリが逆に良い感じだと思います。
 そしてエディ・ハリスのテナーサックスがクールな暴虐というか、相当に暴れた後には、ハッと我に返ったようなコントラストがニクイ演出です。しかもリズム隊が共謀しているんですねぇ~。このあたりは聴いていて納得するしかないと思います。
 ですからベニー・ベイリーの熱演が自然体なのが救いというか、非常に説得力のあるアドリブになっていて、流石! リズム隊もここは会心のジャストミートでしょうねぇ~♪ 続くレス・マッキャンのピアノが緩急自在の自己主張となるのも、高得点です。

ということで、A面ド頭のタガが外れたようなウキウキ演奏に惑わされると、続くモダンジャズ本流の存在感がシンドイかもしれませんが、やっていることは同じです。レス・マッキャンもエディ・ハリスも極めて保守派のプレイヤーであり、大衆芸能の本質を大切にしているのです。

そういうところ敬遠されては、本当に立つ瀬が無いというか、個人的には妙に頭でっかちな演奏よりは、こういうものを好んでしまいます。ちなみに、実は似た様な手口はアーチー・シェップとかファラオ・サンダース、マリオン・ブラウンあたりの所謂前衛フリー派も使っているわけですから、一概にシャリコマとは言えないでしょうね。

特にエディ・ハリスは、なかなか聞けないひとりですが、このあたりから聴いていくのも良いんじゃないでしょうか。


ルー・ドナルドソンと猫と美女

2008-11-24 11:52:29 | Soul Jazz

Midnight Creeper / Lou Donaldson (Blue Note)

美女ジャケットが多い後期ブルーノートの中でも特に有名な1枚ですよねっ、これは♪ レオタード系のセクシーな衣装、太股にいるのは黒猫ですね♪ 見開き仕様のダブルジャケットを開くと完全なお楽しみになるデザインも洒落ていますが、蝋燭も意味深というのは、あくまでもサイケおやじ的な嗜好でもあります♪

さて、内容は当時、ファンキーアルトサックスの第一人者だったルー・ドナルドソンの楽しい傑作で、データ的にはブルーノートに復帰しての大ヒット作「Alligator Bogaloo」に続くものとされますが、その密度はさらにディープで妖しいものになっています。

録音は1968年3月15日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ブルー・ミッチェル(tp)、ジョージ・ベンソン(g)、ロニー・スミス(org)、レオ・モリス(ds) というワクワクしてくるバンドです――

A-1 Midnight Creeper
 アルバムタイトル曲は「Alligator Bogaloo」の完全なる二番煎じですが、さらに重心が低くなったビートがたまりません。オルガンのドヨドヨ~とした響き、粘っこくて歯切れの良いドラムス、微妙にサイケロックっぽいギターのオカズとリズムが、テーマ部分から最高の魅力となっています。
 そしてルー・ドナルドソンがオトボケのフレーズでアドリブをスタートさせれば、早くもバンドのグルーヴは最高潮! このイナタイ雰囲気の良さは筆舌に尽く難いですねぇ~♪ 絶妙のユルフンファンクとでも申しましょうか。
 すると後を引き継ぐジョージ・ベンソンが持ち味を完全披露♪ 実はこのレコーディング直前にはマイルス・デイビスとのセッションにも呼ばれていた当時の尖鋭派でありながら、俺はやっぱり、こっちだよ~ん、と自己主張しているような潔さが最高です。
 またブルー・ミッチェルの気抜けのビールようなアドリブも、この弛緩した黒っぽさの中ではかえって心地良く、ロニー・スミスのハッスルオルガンが浮いてしまうほどです。
 あぁ、これが最高っ! なんて台詞は、昭和のジャズ喫茶では禁句でしたねぇ。尤も鳴ることも、ほとんどありませんでしたが……。

A-2 Love Power
 レイ・チャールズあたりが十八番にしているカントリー&ウェスタンのR&B的解釈とあって、ここでのバンドの勢いも止まりません。レオ・モリスのドラムスがキメまくりのビートは実に気持ち良く、ロニー・スミスのオルガンが軽やかに疾走すれば、ルー・ドナルドソンは正統派ビバップをお気楽に変質させた楽しいフレーズを連発してくれます。
 そしてタイトル曲ではイマイチの調子だったブルー・ミッチェルが本領発揮♪ 全体のノリがホレス・シルバーのバンドに近くなっているのも要注意でしょうか。ジョージ・ベンソンもツッコミ鋭いアドリブで、その場をさらに熱くするのでした。

A-3 Elizabeth
 さて、これがこのアルバムの中のハイライト! と私が勝手思い込んでいる名曲にして名演です。それはズバリ、ルー・ドナルドソンが書いた妖しいラテンのキャバレーモード♪ ユル~いビートとモタレのグルーヴの中で、ルー・ドナルドソンの艶やかなアルトサックスが魅惑のメロディを歌いあげるテーマ部分だけで、気分は最高♪
 アドリブパートではジョージ・ベンソンが、これまた雰囲気を大切にしてジンワリと歌う素晴らしさですし、ロニー・スミスの思いっきりラウンジ系のオルガンも、何故か胸キュンです♪
 あぁ、素敵な美人ダンサーが目の前に現れてくるような♪♪~♪

B-1 Bag Of Jewels
 ロニー・スミスが書いた、ちょっとモードが入ったブルースということで、まずは作者本人が手本を示したような硬派なソウルを披露♪ レオ・モリスとジョージ・ベンソンが作りだすグルーヴにもハードな雰囲気が滲ます。
 ブルー・ミッチェルの神妙なアドリブは、些か???な気分も漂いますが、リズム隊の重いビート感がそれを十分に補っていますから、結果オーライでしょうか。
 そしてジョージ・ベンソンが正統派としての実力を見事に発揮しています。そのスタイルは、この時点では相当に新しかったのじゃないでしょうか。今でも古びていないのですからっ!
 肝心のルー・ドナルドソンは適度な力み、自然体の背伸びが全くベテランの味わいで、好感が持てます。こういう、ほどよく尖鋭的なところも本人の持ち味のひとつなんでしょうねぇ~。あまり評価はされていないのが不思議なほどです。

B-2 Dapper Dan
 オーラスは粘っこいシャッフルビートで演じられるソウルフルなハードバップです。
 もちろんこういう雰囲気なら、俺に任せろ! というメンツばかりが集合していますから、まずはブルー・ミッチェルが得意の分かり易いフレーズでムードを設定すれば、ルー・ドナルドソンは居眠り運転のような誘惑のユルフンファンク♪
 しかしジョージ・ベンソンがブルースロックっぽいギターで刺激してくれますから、ハッと気がつく赤信号という感じでしょうか。それを引き継ぐロニー・スミスが、これまたブルースロックのオルガンですからねぇ~~♪ これって本当にモダンジャズ?
 はい、これぞ、モダンジャズだと思いますねぇ~。ジャズ喫茶じゃ、本当に気持ち良い居眠りモードへ突入してしまうでしょう。

ということで、弛緩したグルーヴが許せないというのならば、これは失格盤かもしれません。しかしこの重心の低いビートでユルユルな演奏こそが、新しいソウルグルーヴじゃないでしょうか?

スピーカーに対峙するよりも、所謂「ながら聞き」には最適というのは苦しい言い訳かもしれませんが、そうしていても自然に腰が浮いてきますし、ジャズ喫茶ならば思わず飾ってあるジャケットを確認してしまうかもしれません。

ちなみに冒頭で述べたとおり、このアルバムジャケットは見開き仕様で眺めるとさらに素敵なデザイン♪ ぜひともご確認下さいませ。絶対、現物が欲しくなるはずです。

そうした魅力も含めて、このアルバムは私の大切な偏愛盤のひとつですが、CD化はされているんでしょうか? 車の中でもイケるような気がしています。


ラリー・ヤングのあの手この手

2008-11-07 12:06:03 | Soul Jazz

Larry Young's Fuel (Arista)

ラリー・ヤングという名前に対し、妙に胸騒ぎを覚えるのは私だけでしょうか。

なにしろこの人は黒人ジャズオルガンの正統を継ぐと思いきや、実は1960年代には「オルガンのコルトレーン」と称される過激盤を作り、マイルス・デイビスに呼ばれて「Bitches Brew (Columbia)」のセッションに参加! さらにはトニー・ウィリアムス&ジョン・マクラフリンと結託してライフタイムというバンドを作り、ロックジャズをやらかした揚句にジミ・ヘンドリックスと伝説のレコーディングまでも残しているのですからっ!

つまり優れたジャズの素養がありながら、決して一筋縄ではいかないというか、普通(?)のジャズプレイヤーとは一味違った演奏に徹していた感じです。ある意味では頑固、それゆえに世渡りもイマイチ、上手くなかった雰囲気も濃厚で、私はそのあたりにも惹かれるのですが……。

さて、このアルバムは、そんなラリー・ヤングが1975年頃に発表した久々のリーダー盤♪ 折からのクロスオーバー&フュージョンブームの中で、全くそのとおりの受け取られ方をした1枚ですが、それまでの活動歴からして、決して流行に便乗したと、私は思っていません。

メンバーはラリー・ヤング(el-p,org,ke,vo) 以下、サンチャゴ・ソラーノ(g)、フェルナンド・ソーンダース(el-b,b)、ロヴ・ゴットフリード(ds,per)、ローラ・ローガン(vo) という布陣です――

A-1 Fuel For The Fire
 緩いテンポでビシバシのドラムス、浮遊するエレピ、そして牝猫の鳴き声のようなボーカルスキャットから一転して突進するジャズファンクの世界が始まります。
 ラリー・ヤングはグチャグチャのシンセと感覚的なエレピを主体にアドリブを弾きまくり、ブリブリに蠢くエレキベースとタイトな16ビートのドラムス、また宇宙遊泳したようなコーラスとボーカルスキャットが快感を増幅させていきますから、サイケおやじには本当にたまらん世界です。
 つまり決してジャズファン万人には許されざる演奏でしょう。それゆえにリアルタイムの我が国では、それほどウケたという話は聞きませんでしたが、ここ最近のクラブDJ達からは必需品とされているのは、さもありなんです。

A-2 I Ching
 これまた弾みまくったグルーヴが痛快な演奏で、エレキベースとドラムスのコンビネーションが最高! ラリー・ヤングも各種キーボードでブッ飛びの音を作り出し、ギターも過激な隠し味を聞かせてくれます。
 全くこのあたりは、ハービー・ハンコックも顔色無しだと思うのですが、そんな比較をされること自体が、ラリー・ヤングのポジションを象徴している感じです……。

A-3 Turn Off The Light
 今や蠢きファンクの聖典となった名演でしょう。すてばちな歌い方が素敵なローラ・ローガンにテンションの高いツッコミを入れるラリー・ヤング♪ ジョー・ザビヌルはこれを聴いていたのでしょうか? ベースやドラムスの雰囲気も含めて、天気予報が聞きたくなります。
 まあ、それはそれとして、だんだんとセクシー度を強めていく歌と演奏の一体感は素晴らしく、自然に体が揺れてしまうのでした。
 灯りを消して、私に愛を♪♪~♪

B-1 Folating
 カントリーロックがファンクしたような、ちょっと妙な心持ちになれる演奏です。もちろんラリー・ヤングは各種キーボードをダビングした音作りをやっていますが、ドラムスとベースのグルーヴは、あくまでも自然体ですから、それほどイヤミではないでしょう。
 ただしこういうシンプルなノリはイノセントなジャズファンには我慢ならないでしょうね。フュージョンが忌嫌われる要素がいっぱいです。しかしそれにしてもこれも天気予報の世界で、ついついウェイン・ショーターが出てきそうな錯覚に……。

B-2 H + J = B (Hustle + Jam = Bread)
 なかなかにジャズっぽい演奏で、往年のラリー・ヤングに一番近い感じですが、ビシバシの16ビートが強烈ですし、こちらが喜ぶようなフレーズをなかなか弾いてくれないエレピのアドリブにはヤキモキさせられます。
 このあたりは意図的なんでしょうね、その分だけリズムとビートを楽しんで欲しいというか……。そしてキメはここでも天気予報になっています。

B-3 People Do Be Funny
 前曲に続いてタイトにスタートするのが、この楽しくてユルユルなファンク♪ どこかしらネジがゆるんだような演奏は、曲タイトルどおりに「おかしくなってしまえばE~」という雰囲気がいっぱいなんですぇ~。
 これでいいのか? いや、これでいいんです♪
 という感じに揺れてしまうのでした。

B-4 New York Electric Street Music
 ラリー・ヤング自らが歌いまくるニューヨーク賛歌で、タイトルどおりに元祖ストリートファンクかもしれません。熱いリズムギターとテンションの高いキーボード、手加減しないベースとドラムス!
 ラリー・ヤングの歌は決して上手くありませんし、メロディだって面白くないでしょうが、このビートの嵐の中では正解という感じで、サイケおやじにも許容範囲です。ある時期の吉田美奈子とか、こういうスタイルは好きなんですよ、私は♪
 ただし普通のクロスオーバー、例えばテーマがあってアドリブがあって、またテーマに戻るとかのジャズ色を求めるとハズレるでしょう……。このあたりがウケ無い理由だと思われます。

ということで、ラリー・ヤングだから許してしまったアルバムかもしれません。他のキーボード奏者がこんなんやったら、雑食性の私にしてもスルーしたのは確実です。

その意味で、この作品中に頻出するキーボードのキメがジョー・ザビヌルと一脈通じた感じなのは要注意かもしれません。

ちなみにアリスタでは次に「Spaceball」というアルバムも残していますが、そちらはラリー・コリエルとかレイ・ゴメスという人気ギタリストもゲスト参加していますから、より正統派フュージョンっぽい仕上がりなのが、個人的に面白くありません。

つまり、あまりにも真っ当に近くなったわけですから、このアルバムの孤立した状況が、なおさらに愛おしいのでした。


最高に‘BAD’なベンソン

2008-10-13 12:04:32 | Soul Jazz

Bad Benson / Georog Benson (CTI)

クロスオーバーでのギター名人からブラコンで大衆的なスタアとなったジョージ・ベンソンは、もちろん正統派ジャズギターの達人でもありますから、その腕前を存分に発揮したアルバムも作っていました。本日の1枚は、まさにそうした代表作だと思います。

録音は1974年5月、メンバーはジョージ・ベンソン(g)、フィル・アップチャーチ(g,el-b,per)、ケニー・バロン(el-p,key)、ロン・カーター(b)、スティーヴ・ガッド(ds) を中心にプラス&ストリングスが加わり、そのアレンジはドン・セベスキー、そしてプロデュースはもちろんクリード・テイラーという、CTIが黄金期の名作です――

A-1 Take Five
 デイブ・ブルーベック、そしてポール・デスモンドの代表作にしてモダンジャズを超えた有名曲ですから、お馴染みのメロディと快楽的な変拍子が、本当に素敵な演奏です。
 ここではフィル・アップチャートの強靭なリズムギターと思わず腰が浮くスティーヴ・ガッドのヘヴィなドラミングに支えられたジョージ・ベンソンのハードなギターワークが圧巻です。上手すぎる運指と硬質なピッキングの完全融合は驚異的ですし、アドリブ構成のインスピレーションも冴えわたり♪
 しかも、ここぞっで入ってくるオーケストラの上手いアレンジ、ケニー・バロンのエレピのアドリブも歌心が最高で、さらにアグレッシブな新主流派の趣も強く、これが1970年代ジャズの最先端という確かな響きが楽しめます。
 そしてこの演奏によって、これが当時のジョージ・ベンソンには十八番となり、ライブバージョンも幾つか残されていますが、まずはこのスタジオバージョンをぜひともお楽しみ下さいませ。

A-2 Summer Wishes, Winter Dreams
 いきなりソフトロック調のオーケストラ、そして甘いジョージ・ベンソンのギターが鳴り出せば、あたりは完全にムードミュージックの世界なんですが……。まあ、こういう「品の良さ」がCTIというレーベルの特色のひとつでもありますから、笑って許しての世界かも……。
 次曲につながる「箸やすめ」としては絶品かもしれません。

A-3 My Latin Brothers
 そして始まるのがタイトルどおりにラテンビートを取り込んだジャズフュージョンの名演ですが、個人的にはシカゴソウルっぽいノリやメロディを強く感じます。そういえば初期の山下達郎が、ステージではこんな演奏もやっていましたですね。
 閑話休題。
 ジョージ・ベンソンは抜群のテクニックと強靭なジャズ魂で凄いアドリブを聞かせてくれますよ♪ ケニー・バロンのエレピもジャズ的な快楽としか言えない素晴らしさですし、ドン・セベスキーのアレンジもイヤミなく、そのうえにフィル・アップチャーチのパーカッションが楽しさを倍加させていますから、思わず小皿で「チャンキおけさ」の世界です。もちろんスティーヴ・ガッドのヘヴィなドラミングは最高!
 ちなみにジョージ・ベンソンのギターワークは「Take Five」もそうでしたが、滑るようなフレーズの連続から激しいコード弾きで山場を作るという独自のものが完成された時期にあたると思いますので、やる気の凄さにも圧倒されるのでした。 

B-1 No Sooner Said Than Dane
 これがまたソウルフルにメロウな旋律が心地良すぎます♪ しかも強いビートと妥協しないアドリブの充実がありますから、決して後年の事なかれフュージョンにはなっていません。
 あぁ、ワウワウを使いまくったフィル・アップチャーチのリズムギターとスティーヴ・ガッドのドラムスのコンビネーションが快感ですねぇ~♪ ケニー・バロンの甘いメロディに満ちたエレピも、根底ではジャズっぽさを忘れていませんから、グッときます。
 そしてもちろん、ジョージ・ベンソンのギターは歌いまくってクールに熱いカッコ良さ! ドン・セベスキーのヤバいムードのアレンジも、控え目なのが結果オーライだと思います。

B-2 Full Compass
 ドン・セベスキーが怖さを出したアレンジで挑めば、ジョージ・ベンソン以下、バンドの面々が本性ムキ出しで応戦した熱い演奏です。アグレッシブなエレキベースはフィル・アップチャーチによるもので、またドカドカに重いスティーヴ・ガッドのドラムスが抜群の存在感です。
 ジョージ・ベンソンもガチンコにハードなフレーズ、難解なまでにジャズ本流の凄さを聞かせてくれますし、ケニー・バロンの嬉々としてモード節に浸りきったエレピのアドリブ、そこに激しいツッコミを入れるスティーヴ・ガッドという展開は、もう完全に本物のジャズそのものでしょう。

B-3 The Changing World
 オーラスは華麗なドン・セベスキーのアレンジの中で浮遊するジョージ・ベンソンのギターが、泣きのメロディを思うさま聞かせた胸キュン演奏です。
 そしスローな展開の中では、ケニー・バロンのエレピとロン・カーターが寄り添いながら実に上手い伴奏で雰囲気も良く、ここまでくれば、後はもう……。

ということで、本来はジャズ喫茶でも十分に耐えうるアルバムのはずなんですが、実際はそれほど鳴っていたという記憶がありません。世はまさにフュージョンブーム前夜! その中ではジョージ・ベンソンと言えども、今ひとつ中途半端な存在だったような気がしています。

思えば当時はハードバップのリバイバルもあって、ケニー・ドリューあたりの欧州録音盤がジャズ喫茶の花形でしたし、そういうベテラン勢力の復活とクロスオーバーと呼ばれたプレフュージョンの微妙な対立、そしてバリバリの最先端だったチック・コリアやハービー・ハンコック、またはウェザー・リポートあたりの新譜が常に注目されていた混濁期でした。

その中からジョージ・ベンソンが例の「Breezin'(Warner Bro.)」という神がかり的な大ヒット盤を出し、時代は一気にフュージョンへ! しかしそうなっても、このアルバムが評価されたとか、売れたという話も聞きません。まあ、これは私の認識不足かもしれませんが……。

それはそれとして、ジョージ・ベンソンが正統派ギタリストの実力を存分に発揮した忘れ難いアルバムです。何時聴いても、気分は最高!


日活モードのドナルド・バード

2008-09-21 11:47:57 | Soul Jazz

Up With Donald Byrd (Verve)

私にとってのドナルド・バードは、バリバリのハードバッパーであり、楽しいジャズをやってくれる人に他なりませんが、ジャズ雑誌やレコードの付属解説書を読んでいくうちに、ドナルド・バードは「知性派」とか「大学で博士号」なんていうことが強調されているんですねぇ……。

う~ん、わからん……。

だってドナルド・バードはファンキーやって、その挙句、1970年代にはファンクのメガヒット盤「Black Byrd (Blue Note)」まで出していますし、そこに至る1960年代中頃からの路程にしてもジャズロック~ソウルジャズの演奏を多数残していますからねぇ~♪

尤も、そこが我が国のジャズ喫茶じゃ、ほとんど無視状態なんですけど……。

さて、本日の1枚は私が愛聴して止まないアルバムで、中身は女性コーラス隊も従えた楽しい、楽しすぎる快楽盤♪ まあ、イノセントなジャズファンからしたら、ドC調極まりない演奏かもしれませんが……。

録音は1964年11&12月、メンバーはドナルド・バード(tp,arr) 以下、ハービー・ハンコック(p,key,arr)、ケニー・バレル(g)、ボブ・クランショウ(b)、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds)、キャンディド(per)、ジミー・ヒース(ts)、スタンリー・タレンタイン(ts) 等々が入り乱れ♪ そして「ザ・ドナルド・バード・シンガーズ」と称された女性コーラス隊、さらにアレンジャーとしてクラウス・オガーマンの参加も嬉しいところです――

A-1 Blind Man, Blind Man (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 ハービー・ハンコックが自らのリーダー盤(Blue Note)にタイトル曲として発表していた典型的なジャズロック♪ もちろんそこにはドナルド・バードが参加していたという因縁は言わずもがな、このバージョンは、あのグルーヴィなリズムパターンにテーマメロディが女性コーラス隊のスキャットという、イカシたアレンジと演奏がたまりません。
 この「トュ~リテュ、テュ~」という、絶妙に脱力したコーラスが実に良いんですねぇ~。シンプルなフレーズに徹するドナルド・バードのトランペットも、それなりの味わいですが、ケニー・バレルのカッコイイ小技、3分に満たない演奏時間が大きな魅力でもあります。聴けば、ヤミツキ♪♪~♪
 ちなみにアルバムはステレオミックスですが、シングルカットのバージョンは当然、モノラルミックスが潔い感じです。

A-2 Boom, Boom (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 これまたご存じ、黒人ブルースマンのジョン・リー・フッカーの代表曲にして元祖ブルースロックとも言うべき、一度聞いたら納得のメロディとブンブンブンのビートが楽しい演奏です。
 もちろんテーマは女性コーラス隊によって脱力気味に歌われ、ケニー・バレルが凄い名演を披露しています。これも、本当にカッコ良いですよっ!

A-3 House Of The Rising Sun (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 邦題「朝日のあたる家」として、あまりにも有名な曲ですが、このアルバムが吹き込まれた1964年といえば、イギリスから多くのロックバンドがアメリカに殴りこんだ英国産ビートポップスの大ブーム期で、この曲も本来は古いアメリカの黒人民謡だったと言われているものの、やはり英国のアニマルズが強烈なR&Bロックにアレンジしたバージョンが大ヒット!
 ですからここに取り上げられるのもムベなるかな、しかしドナルド・バード以下のバンドは決して一筋縄ではいかない演奏を聞かせてくれます。決して「歌のない歌謡曲」になっていないんですねぇ。
 ドナルド・バードのアドリブはシンプルにして分かり易く、しかしリズム隊がコクのあってシャープな伴奏をつけていますし、ここでも女性コーラス隊が良い仕事♪ 完全に日活ハードボイルドな世界がなんともたまらない雰囲気で、まるで長谷部安春監督が撮るモノクロ映像って感じです。

A-4 See See Rider (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 これも有名なR&Bのスタンダード曲ですから、女性コーラス隊も良い感じでノリノリ、ケニー・バレルのカントリー&ソウルなギターが鳴りわたり、グラディ・テイトの楽しいドラミング、そして簡単明瞭なドナルド・バードが潔いです。
 まあ、それゆえにこのアルバムは軽視されるんですが……。

A-5 Cantalope Island (1964年12月6日録音 / ハービー・ハンコック編曲)
 おそらく今日のジャズファンというよりも、クラブ系の音が好きな皆様にとっては、これがお目当ての演奏でしょう。そしてご安心ください、完全にその手の期待を裏切らないグルーヴィで雰囲気満点の仕上がりです。
 もちろんここでもコーラス隊が絶妙のスパイスになっていますし、中間部では短いながらもキマッたスタンリー・タレンタインのテナーサックスが聞かれます。

B-1 Bossa (1964年12月6日録音 / ドナルド・バード編曲)
 そのズバリの曲タイトルが嬉しいボサロック♪
 このアルバムの中では最も長い、8分近い演奏で、スタンリー・タレンタインのタフテナー、リズム隊のチャカポコグルーヴも実に楽しく、ドナルド・バードも気負いの無い好演だと思います。
 ただし同時期のブルーノート制作による趣向と比べると、お気楽度が高く、それゆえにケニー・バレルやハービー・ハンコックの存在が眩しく輝くのでした。
 正直に告白すれば、聞いているうちにキャノンボール・アダレイ(as) が聴きたくなりますよ。

B-2 Sometims I Feel Like A Motherless Child (1964年12月6日録音 / ドナルド・バード編曲)
 邦題が「時には母のない子のように」とはいっても、カルメン・マキじゃなくて、これも黒人霊歌を元ネタにしたソウルジャズです。ソフトにジンワリと歌うコーラス隊、そこにハービー・ハンコックが最高の伴奏、さらにドナルド・バードの丁寧なトランペットがあって、実に雰囲気が盛り上がります。
 ちなみにこのセッション全体をプロデュースしたのは、あのクリード・テイラーですからねぇ~♪ さもありなんと言えばそれまでですが、単なるムードジャズには陥っていないと思います。

B-3 You've Been Talkin' `bout Me Baby (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 なんとも下世話なコーラス隊の歌いっぷり、ハービー・ハンコックのヤクザな伴奏もイカシたジュークボックス用の演奏です。実際、この曲はシングルカットされて、それなりにヒットしていたそうです。
 ちなみに男性のハミングボーカルはドナルド・バードでしょうか? なにしろ演奏中には全然、トランペットの音が聞こえませんから……。

B-4 My BaBe (1964年11月録音 / クラウス・オガーマン編曲)
 楽しいアルバムのラストを飾るに相応しいゴスペル系のジャズロック♪ ここでも女性コーラス隊が実に良い雰囲気で、この作品全体の成功は、そこにあると感じています。
 鳴り続ける手拍子、ふっきれたようなリズム隊のグルーヴ、ホーンのアレンジもシンプルでツボを外していません。

ということで、冒頭でも述べたとおり、我が国のジャズ喫茶では完全に無視されて当然の内容です。しかし私は、こういうのが本当に好きで、それは1960年代、あるいは昭和40年代の映画サントラに通じる演奏のキモが好きでたまらないからです。

それはジャズロックであり、ボサロック、あるいはソウルフルな歌謡曲の雰囲気でもあり、その下世話な感覚とグルーヴィなリズム&ビートが私の感性にジャストミートしているんですねぇ。

このあたりは少年時代から今に至るまで、全く変わらない私の本質で、周囲からは大いにバカにされていますが、まあ、リアルタイムから居直っていましたですね。

だから私は軽く見られているのですが……。

しかし全く懲りない私は、車の中でも聴くためにCDまで買ってしまったほどです。あぁ、愛おしい♪ 気分は日活ニューアクション♪


ジョージ・ベンソン、帰ってこいよ

2008-09-10 16:28:54 | Soul Jazz

トップが混乱すると下が迷惑するのは社会常識ですよね。相撲協会、永田町、そして今度は隣の某国!?

ということで、本日は――

It's Uptown with the George Benson Quartet (Columbia)

今ではすっかり大衆的な人気スタアのジョージ・ベンソンも、本来は本格的なジャズギタリストだったという姿も確かにありますが、実はデビュー2作目のリーダー盤から既にポップスタアしての素養は十分に発揮していた証が、このアルバムです。

それは歌うギタリストとしての本領発揮、さらに聞いていて思わず腰が浮くほどのソウルグルーヴに満ちた演奏は魅力がいっぱいです。やはりメジャー会社のコロムビアは違うということでしょうか。

しかし決して売れたアルバムではなかったようで、1976年に例の「Breezin'(Warner Bro.)」で大ブレイクする以前のジャズ喫茶では、ほとんど鳴っていなかったようです。まあ、これが1966年頃の制作発売とあれば、ジャズは悩んで聴くのが本来の姿としていた我が国では、快楽的過ぎたというわけでしょうねぇ……。

実際、私もこのアルバムを初めて聴いたのは1970年代中頃の事でしたし、それでも既にCTIから出ていたクロスオーバーと称されていたフュージョン前期の諸作と比べて、明らかに物足りないと感じていました。なにしろ曲が短いですから……。

まあ、それはそれとして、演奏メンバーはジョージ・ベンソン(g,vo)、ロニー・スミス(org)、ロニー・キューバ(bs)、レイ・ルーカス(ds)、ジミー・ラヴレス(ds) 等々が参加しているらしく、それは当時のレギュラーバンドだったと言われているだけに、纏まりは最高です――

A-1 Clock Wise
 高速4ビートで演じられるジョージ・ベンソンのオリジナルで、このスピード感と切れ味は、ジャズとしては当時の他のバンドとは一線を隔すグルーヴが感じられます。
 ジョージ・ベンソンのギターはウェス・モンゴメリーからの影響に加えてグラント・グリーンやパット・マルティーノっぽいノリとフレーズも聞かれて興味深いところ♪
 またブヒブヒに吹きまくるロニー・キューバのバリトンサックス、ヒーヒー泣いてド派手なロニー・スミスのオルガン、ともにスピード感があって軽い雰囲気なのが実に新しいと思います。

A-2 Summertime
 ノッケからテンションの高いビートが気持ち良いイントロ♪ そして誰もが知っているガーシュインの名曲がソウルフルに歌われ、バックのリフがリー・モーガンの「Sidewinder」みたいな楽しさが、もうヤミツキの気持ち良さ♪
 もちろんギターソロはウェス・モンゴメリー直系のオクターブ奏法に豊かな音量を弾き出すピッキングが最高に上手いですねぇ~♪
 実はこれを初めて聴いたのは、例の「Masquerade」が大ヒットしていた時期なんですが、個人的には圧倒的にこっちの「Summertime」が好きでした。残念ながらギターとユニゾンのスキャットは聴かれませんが、昭和40年代歌謡グルーヴにも通じる味わいがあって、中毒症状♪ 完全に目覚めたというわけです。
 ロニー・スミスのオルガンも地味ながら、ハッとするほど良い感じの伴奏を聞かせてくれますよ♪

A-3 Ain't That Peculiar
 当時のR&Bヒットをカバーしたインストなんですが、このイナタイ雰囲気、絶妙のカントリーフィールがたまらない演奏です。ドラムスのリムショットが素敵なアクセント♪ そしてジョージ・ベンソンの瞬発力に満ちたギターソロ♪ これも本当にグッときます。

A-4 Jaguar
 さらに続くのが日活モードのジャズロック♪ ジョージ・ベンソンがオクターブ奏法でシビレるフレーズを連発すれば、重くてシャープなドラムスも冴えまくりです。
 オルガンとバリトンサックスがグルになって作り出すキメのリフも心地良く、こういうのを聴いていると、自分はやっぱりフュージョンよりもジャズロックが好き! と自覚してしまうのでした。

A-5 Willow Weep For Me
 ジョージ・ベンソンが正統派ジャズギタリストの本領を聞かせた名演で、スローテンポでじっくりと歌いあげるブルージーな味わいが流石だと思います。
 背後で味な伴奏を聞かせるロニー・スミスのオルガン、ジワジワと盛り上がる演奏を支えるドラムスのブラシ、時に早弾きフレーズも交えながらイヤミの無いジョージ・ベンソン♪ コード弾きの伴奏も上手いですねぇ~。
 フュージョン全盛期に聴けば地味な演奏も、実は何時までも古びない名演だったというわけです。

A-6 A Foggy Day
 そしてA面ラストを飾るのが楽しいジョージ・ベンソンのボーカル♪ 意気込んだカウントからアップテンポで屈託無く歌いまくりですから、ウキウキさせられます。
 もちろんギターの伴奏も上手く、ロニー・キューバのバリトンサックスも流れるような歌心♪ 全く4ビートの快楽を堪能させてくれる名演になっています。

B-1 Hello Birdie
 スピード満点のハードバップ演奏ですが、ジョージ・ベンソンのギターからはジャズに加えてロックぽいノリも感じられます。このあたりはパット・マルティーノあたりにも共通するものですが、ジョージ・ベンソンの場合は、より黒人っぽさが強いのは当たり前ですから、痛快至極です。
 バックのドラムスがイケイケのグルーヴを敲き出しせば、ロニー・キューバはブヒブヒに吹きまくり!

B-2 Bullfight
 これが妙なメキシコ系メロディにボ・ディドリー風「土人のビート」を合わせたR&Bかと思いきや、実際の演奏はかなり深淵なモダンジャズという不思議な……。
 ジョージ・ベンソンはモードっぽいアプローチですし、ほとんどドラムスとのデュオで生真面目さをアピールしているような……。

B-3 Stormy Weather
 一転して再びスピード感いっぱいの演奏で、メインはジョージ・ベンソンのノリまくったボーカルです。メロディフェイクは素直すぎて、決して上手くありませんが、間奏のアドリブギターソロは圧巻! 短いながらも縦横無尽です。

B-4 Eternally
 そしてこれがモダンジャズギタリストとしての真髄を披露するジョージ・ベンソン! 重心の低いラテングルーヴ、深遠で妖しいムードが満ちたキャバレーモードの中、グリグリにジワジワと秘めた情熱を吐露していくアドリブは、本当に凄いと思います。
 あぁ、なんだか白木マリが踊りながら出てきそうな、そんな味わいもあって、見事な緊張と緩和です♪
 ロニー・キューバの営業っぽいバリトンサックスも、たまらんですね♪

B-5 Myna Bird Blues
 オーラスはウェス・モンゴメリーの影響も強く感じられる、アップテンポのハードバップ演奏! 流麗に、そして力強く突進するジョージ・ベンソンのアドリブは物凄く、時折出してしまうウェス・モンゴメリーの十八番フレーズも、借り物に敬意を表してのことでょうか。しかし私は憎めませんね。
 ちなみにこのアルバムのセッションに参加しているドラマーのひとり、ジミー・ラブレスは前年にウェス・モンゴメリーが敢行した欧州巡業ではツアーバンドのレギュラードラマーでしたから、ノリが似ているのも納得ではありますが♪

ということで、後にブレイクするジョージ・ベンソンの素晴らしい資質が、既にここで萌芽していたという楽しみが満喫出来ます。

ちなみにウェス・モンゴメリーがCTIレーベルで驚異の大ヒット盤「A Day In The Life」を制作発売するのは、この翌年のことですし、ジョージ・ベンソンがマイルス・デイビスの「In The Sky」セッションに呼ばれるのも翌年という因縁が興味深いところです。

またウェス・モンゴメリーは、早世した所為もあるかもしれませんが、何をやっても基本的にはジャズのフィーリングに自然体で拘っていたのとは異なり、ジョージ・ベンソンはロック&ソウルのグルーヴを、これも自然体で身につけていたように感じています。

最近はブラコン~大衆スタンダード路線を歩んでいるジョージ・ベンソンですが、今だからこそ初期のソウル&ジャズロックに回帰したアルバムを作って欲しいと思うのは、私だけでしょうか……。