■メロンの気持 / 森山加代子 (東芝)
夏の果物の代表格と云えば西瓜が定番かもしれませんが、昭和30年代に少年期を過ごしたサイケおやじにとっては、断然の憧れがメロンでありました。
ど~でしょうか、この気持ち、サイケおやじと同世代の皆様であれば、共感いただけると思うんですが、もちろん、メロンと云っても、我が国古来(?)からある「マクワウリ」とは完全に一線を画す、つまりは所謂「マスクメロン」という、あの表面に迷路みたいな曲線模様が入った大きくて、薄緑色の果物は、デパートや有名果物屋の店頭に鎮座させられていた高級品であり、それだけで仄かに甘い香りが美食の代名詞だったんですよねぇ~ (^^;
ですから、メロン=甘くて、うっとり、キュートな宝物?
そんなイメージが確かにあったからでしょうか、森山加代子が「月影のナポリ」に続けて出した日本語による洋楽カバーの傑作「メロンの気持」が忽ち大ヒットしたのもムベなるかなっ!?
その軽快で、ちょいとばかり粘っこいリズム&ビートを持ったオリジナルメロデイ「Corazón De Melón」は、キューバの作曲家と云われるカルロス・リグアルが書いたそうですが、サイケおやじが原曲ヒットを最初に聴いたのは、ペレス・プラード楽団をバックに歌ったローズマリー・クルーニーのバージョンで、これは1959年頃のレコードではありますが、もちろん、最初の出会いは前述した昭和35(1960)年に大ヒットした森山加代子の日本語バージョンでありました。
それは訳詞:ホセ・しばざき&編曲:岩井直溥というスタッフが手掛けた、これぞっ!
日本語による洋楽カバー曲のお手本とも言いたくなる傑作で、特に歌詞のキメ――
メロン メロン メロメロ メロン♪
―― と歌われるパートの楽しさとキュートな雰囲気の良さは、その前段として――
ねえ わたしはメロン
つきの はたけの
つゆに ぬれた
あまい メロン
―― なぁ~んて、思わせぶりにセクシーな歌詞が附されており、それを森山加代子が愛くるしく節回すんですから、たまりません ♪♪~♪
以降の歌詞も、全く同傾向の誘惑ソングみたいな趣向になっているあたりは、聴いてのお楽しみなんですが、これは聴き方によれば、発禁スレスレじゃ~なかろうか (^^;
そのあたりは前述したローズマリー・クルーニーのバージョンが、意外なほど(?)力強く歌っているのとは完全に異なる印象ですし、また幾つか同時期に制作発売された国内競作バージョンの中でも、この森山加代子のシングルバージョンが、殊更鮮やかな仕上がりだと思っております。
ちなみに、現代でも使われている、何かに夢中になっている表現の「メロメロ」っていう言い回しは、この森山加代子の「メロンの気持」が由来なんでしょうかねぇ~~?
ということで、昭和30年代の果物の王様は言わずもがな、バナナでありましたか、メロンは尚更に「高嶺の花」だった事を鑑みれば、如何に現代が裕福になったのかは説明不要でしょうし、それとは裏腹に憧れの対象が少なくなったのは、些か寂しい気もいたします。
「食べる楽しみ」なんてものは贅沢の象徴でもあり、生きている証でもあろうかと思えば、食物ソング(?)がウケるのも不思議じゃ~ありませんねぇ~~♪
しかし……、最近のサイケおやじは、何を食べようか? という欲望は薄くなっているのですが…… (^^;