久々に休みましたが、休養ということにはならず、スノーボードに挑戦してきました。なかなか難しいですね。手が使えないので、バランスをとるのが、この歳になるし至難のワザ……。やれやれです。きっと明日は、体中が痛いでしょう……、ははは……。
ということで、本日は王道の1枚を――
■The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia Vol.2 (Blue Note)
ハードバップとはビバップの進化形で、分り易さがミソですが、それ以上に強く訴えかけられているのが、黒人としての存在意識だと思います。その部分はファンキーという言葉で集約されておりますが、私はもっと原初的な力強さに大きな魅力を感じています。
そのあたりを徹頭徹尾追求していたのがアート・ブレイキーが率いるジャズ・メッセンジャーズで、そこに去来した歴代メンバーはジャズの歴史を作り上げたとして過言ではありません。
このアルバムは、そのバンド旗揚げ期の物で、メンバーはアート・ブレイキー(ds) をリーダーとして、ケニー・ドーハム(tp)、ハンク・モブレー(ts)、ホレス・シルバー(p)、ダグ・ワトキンス(b) という名手達、録音は1955年11月23日です。
もちろんこれは同時に録音・発売された「Vol.1」とともに、言わずとしれたモダンジャズ名盤の中の大名盤ですが、その内容は若干、「Vol.1」に軍配が上がるような気配があります。
しかし、こちらには強烈な切り札が入っています。
それがB面トップの「Avila And Tequila」で、いきなりアート・ブレイキーを中心としたドラムス&パーカッションの大嵐! もちろんメンバー全員がなんらかの打楽器を手にしての熱演ですし、ブレイキーはラテン~アフロ感覚濃厚なドラム・ソロをたっぷりと聞かせ、その後に魅惑のテーマが奏でられます。
というこの曲はハンク・モブレーのオリジナルで、実はこの録音以前に自身のリーダー盤で発表された名曲ですが、ここでは尚一層、アフロ色が強いアレンジ&演奏になっており、それはファンキーという言葉を超越して天まで昇る熱演になっています。
このあたりの雰囲気は実に黒っぽいというよりも、本当にアフリカ一色で、現在よりもはるかに人種差別が強かった当時、この演奏がどのように受け取られていたかは興味深いところです。まさに黒人としての存在意識というか、アメリカで不当な差別を受ける側の真っ当な自己主張、原点回帰の主張が込められたものと思います。
ジャズはもちろん流行の音楽ですが、モダンジャズ期の聴衆は白人中心であり、黒人が演奏していて初めて価値があるという受け取られ方があったことは、否めません。そしてそれを逆手にとって自己主張していたのが、当時の黒人ジャズメンだったと思います。
ですから、リアルタイムのハードバップに熱気があるのは当然で、それが思いっきり現れたのが、この演奏というわけです。ちなみに、ここでの全員打楽器という手法は、後のジャズ・メッセンジャーズでは「チェニジアの夜」の演奏に受け継がれていく十八番になります。
それにしても、ここでの「Avila And Tequila」は熱く、先発のハンク・モブレーは自作だけあってツボを外さないモブレー節を披露すれば、ケニー・ドーハムは日頃の冷静な仮面をかなぐり捨てて鬼神のソロを聴かせます。もちろんリズム隊は地鳴りせんばかりの躍動感です。
そのノリはアルバム全体に溢れており、A面1曲目の「Sportin' Clowd」はビバップではお約束のリフを流用したブルースですが、ホレス・シルバーのピアノに代表されるように、リズム隊のシンコペーションがビバップに比べて明らかに黒っぽく、つまり粘ってファンキーな感覚が横溢したものになっています。そしてそれに煽られてフロントのケニー・ドーハムとハンク・モブレーが熱血のブローを聴かせるのですから、もう最高です。
また「Like Someone In Love」や「Yesterdays」といったジャズ・スタンダード曲も、例えばマイルス・デイビスのバンドのようなスマートな解釈よりも、あえて泥臭く演奏していこうとするジャズ・メッセンジャーズの意図が感じられます。
それが結実しているのが最後のバラード・ナンバー「I Waited For You」で、このハードボイルドな雰囲気は最高です。そして鳴り止まない拍手の中、短くテーマ曲が演奏されて、このアルバムは幕を閉じるのですが、実際問題として、ジャズ喫茶ではあまり鳴ることの無い、この「Vol.2」に、最近、妙な愛着を感じている私です。