疲れました。今年は、というよりも、今月は仕事が超多忙、大暴風雪等々……。
おまけに本日も忘年会の仕切り直しが……。
こういうときには暴虐的な音楽が欲しいということで、本日の1枚は――
■Money Jungle / Duke Ellington (United Artists)
ジャズに快楽や和みだけを求めてはいけない!
このアルバムを聴くたびに、そう思います、否、思わざるをえません。
デューク・エリントンは、言わずとしれたアメリカの大作曲家にしてビックバンド界の大御所で、永遠に不滅なヒット曲・名曲を多数生み出した天才ですが、ピアニストとしても超個性派でした。
このアルバムは、そのピアニストとしてのデューク・エリントンの焦点をしぼった作品で、共演はチャールス・ミンガス(b) とマックス・ローチ(ds) というモダンジャズ界のコワモテ2人! 当然、怖ろしい内容になっています。
まずA面初っ端のタイトル曲「Money Jungle」からミンガスの怒りに満ちたベース、喧嘩を売っているようなローチのドラムスが炸裂し、そこへエリントンの打楽器ピアノが強引に割って入ります。いちおう形式はブルースのようですが、そんな生易しいものではありません。これはもう、喧嘩です。
2曲目はその反動というか、静謐な美しさに満ちた「アフリカの花」♪ しかしミンガスのベースは充分に挑発的なので、エリントンも怒りを爆発させる瞬間があり、最後まで緊張感に満ちています。
3曲目の「Very Special」は軽快なブルースを装っていますが、これも奥が深いというか、和みを排除した恐い演奏です。特にエリントンの大胆さがはっきりと現れており、そこにローチが激しく挑んでいくあたりが、たまりません。もちろんミンガスも健闘しています。
そしてA面最後の「Warm Valley」でようやく、和みが訪れます。ただしそれは、あくまでもご褒美としてのありがたさであって、ここまで聴き通して疲れ切った後でなければ、その真髄を味わうことが出来ないという仕掛けになっているのでした。ちなみにこの曲は、エリントン楽団ではスターのアルトサックス奏者であるジョニー・ホッジスの十八番になっていましたですね♪
しかしB面に入ると、またまた地獄が待っています。それはまず冒頭の「Wigwise」における、聴き手の心を鷲掴みに乱れさせるトリオの迫力演奏に顕著で、この3者の息の合い方というか、本当にモダンジャズを超越せんばかりの鬩ぎ合いは強烈です! 唐突な終わり方にもグッときます。
続くお馴染みの「Caravan」は、これまた最初っから喧嘩状態、特にエリントンの大爆発ぶりが仰天ですし、ローチの迫力シンバルワーク、地底怪獣の出現を思わせるミンガスのベースも圧倒的です。このあたりの展開は、よく言われるように、セシル・テイラー(p) 等々の前衛フリー派への影響も大きいところですが、それにしても、この演奏は最高にスカッとします。
そして最後は、これもエリントンの有名ヒット曲「Solitude」が、エリントンのソロ・ピアノで演じられます。当然、このハーモニー感覚は最高で、心底、幸せな気分にさせられますが、途中から入り込んでくるミンガスとローチの自己主張が強いくせに協調していくサポートも最高で、エリントンも安心して、存分に自分の我侭を押し通すところは感動的です。
ということで、これは聴いていて地獄、聴きとおして天国という、まあSMみたいなアルバムですが、一度虜になると抜け出せない世界が凝縮されています。しかも現行CDにはボーナス・トラックも満載ということで、覚悟をきめて、ぜひとも聴いていただきたい名盤というわけです。