現在3節が終わって1位・仙台の得失点はいずれも、J1最良。昨年終了時は、失点数がダントツ最少の25点、得点の方は18チーム中13位と少なかったのだが、得失点差の多さでは上から4位とちゃんと帳尻を合わせていた。こういうチームが最少失点は去年のままで、今年は得点数もトップにしている。それで、前回にこういう究明課題を挙げておいた。
『失点がJ1最少というのは去年のままで、今年は得点力もトップになったが、こんな芸当はそうできるものではない。サッカーの場合、この両者は「あちら立てれば、こちらへこむ」と、両立しない場合がほとんどなのだから。どうやってサッカー監督たるものの誰もが切望する結果を導き出したのか』
今年は、去年にはなかったこういう光景が見られるようになった。ディフェンスラインを高くして、敵を陣地に押し込めるときがある。こんな時は、混み合った密集から出るボールや、敵が長く蹴ったボールはことごとく奪って攻撃を続行している。と、こういう攻撃と、去年の攻撃法「守備ブロックを作った堅守から、カウンターの速攻」とを上手に使い分けているのだ。最新第3節の大宮戦から見てみよう。
このゲーム、前半は大宮が凄く走って仙台のボールを寸断し、奪っていた。前半シュート数5対5で、大宮が先取点も取っている。
ところが後半に激変、シュート数は仙台の13対1で、ゲーム結果は4対1。去年の仙台は、先取点を取られると引き分けがやっとだったのに、この後半で去年とは全く違って、上に書いたようなやり方を完遂して見せたのである。前後を詰めた高い陣形で、敵がボールを前に出そうとしても奪い取り、敵を陣地に押し込めて攻撃し続ける、と。まるで絶好調時のバルセロナのような攻撃を見せていた。45分のシュート数が13対1ともなれば、これはもうやりたい放題の乱れ打ちというもの。大宮もけっして弱いチームではなく、今年は上位にも入るだろうと見ているのだが、こういう大宮との密集戦で全てボールを奪い取った仙台のボール奪取(組織)技術と体の強さ、走力には恐るべきものがあると観たのである。
この仙台と東京が又、似たチームに見えるのは、J2近年の原則的傾向を表していると観た。この2チームを相手に巻き返しを図ろうとする古豪チームには、怪我人が多くなること必至だ。そんな闘いは、レギュラーを固定したチームや、幾人かの個人に頼ったチームにはなかなか出来ないと観た。一方、こういう闘いに慣れ親しんできたチームは怪我もしにくいし、控えの層も厚い。古豪チームが余程の戦略的奮起をしない限り、今年の優勝はこの2チームのどちらかだろう。