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随筆紹介 老いて・・・・    文科系

2017年08月23日 10時27分00秒 | 文芸作品
 老いて……   H・Tさんの作品です


「なんだ、またひっかかったのか。……もう八十六歳。このままにしておいてもと思うが、どうする?」
 四年前の乳癌。今度は大腸ポリープと診断され、訪れた病院での医師の言葉。どうして良いか分からないから来たのにと落ち込む気持ちを抑え、声のトーンを落として、
「先生ならどうされますか?」
「取るよ」
「私も取っていただきます」
 こんな問診は、若いときにはなかった。
 そして、入院二泊三日。手術。
 一週間後結果を聞いたときも……
「取れた。安心していい。来年は八十七歳か。もう検査しなくてもいいと思うが、どうする?」
「来年のことは来年考えます」、そう答えて帰って来た。病気の治療は年齢に関係ないと思う私だが……。

“七十五歳過ぎた老人の肺炎は治療をひかえる”
“お年です。健康保険では治りません”
“お年寄りを大事にしましょう。親切にしましょう”と教えられたのは昔の話。哀れみや同情などして欲しくないが、“国のため早く死んで下さい、お年寄り”と言われるのも嫌だ。余生とか、終活という言葉に負けず、一日一日を楽しく過ごしている老人も居るのである。

 老いは自己責任に非ず、地球が勝手に回っただけなどと力んでみても、叫んでみても、老いは止まらない。
“デイサービスに、ご参加を!”
“終活のお手伝いは、当社に!”
“食事宅配、いたします!”
“老人ホームに入居されるなら、新築の……”
“老後生活のご不安には、是非ご相談に!”
老人産業は花盛りである。ご親切なことだ。不安があるから、苦労があるから、生きていくことが出来るのではないだろうか。精いっぱいの今を生きてこそ、人生。いただいた命はみんな同じ。大切にして、私は過ごしたい。




コメント (1)
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