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米の、中国封じ込め3方面戦略  文科系

2021年05月20日 09時07分44秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など

  「マスコミに載らない海外記事」のサイト18日分に、標記の長い論文が載った。曰く「日本-韓国戦線」、以下「インド-パキスタン戦線」「東南アジア戦線」。地政学などでは特に、全体論を常に鍛えていないと、部分解釈は必ず間違えるもの。日本主流マスコミの論調には、自分らのこの「全体」がどうも欠けがちだと読んできた。アメリカの対中包囲網についての仮説すら無くてそれぞれの方面包囲網の出来事をアメリカサイドニュースで語るから、結局、アメリカが問題とする国際現象だけを追いかけている感じ。
 アジア地政学についてのもう一つの解釈をするこの著者は、バンコックを本拠とする地政学研究者とあった。長いが、全文掲載する。米中覇権闘争に否応なく巻き込まれる心ある日本国民ならば、必ず持っていなければならない問題意識だと考えてきた。ちなみに、今世界流行の「右翼ポピュリズム」は、地球レベル地政学が欠けているからこそ成り立つものにすぎぬはずだ。


【 2021年5月18日 (火) アメリカによる中国包囲:進捗報告 2021年5月7日
Brian Berletic New Eastern Outlook

 ワシントンと北京間の緊張は、ドナルド・トランプ前大統領在任中の結果というだけでなく、中国を封じ込める数十年にわたるアメリカの取り組みの最新の現実だ。実際、アメリカ外交政策は、何十年間も、明らかに中国の勃興を包囲して、封じ込め、インド-太平洋地域での優位維持を狙っているのだ。

 1969年に漏洩した「ペンタゴン・ペーパーズ」は、ベトナムに対する進行中のアメリカによる戦争に関し、こう認めていた。
 北ベトナムに爆弾を投下するという二月の決定と、第1段階の派兵という七月の承認は、中国を封じ込める長年のアメリカ政策を支持する場合に限って意味がある。ペーパーはまた、中国は「世界における[アメリカの]重要性と有効性を損ない、より間接的ながら、より威嚇的に、アジアの全てを反[アメリカ]で組織して脅かす大国として迫っている。」と認めていた。ペーパーの中国封じ込めという長期的取り組みには、三つの戦線があった(そして依然存在する)ことも明らかにしていた。:(a)日本-韓国戦線;(b)インド-パキスタン戦線;そして(c)東南アジア戦線。

 その時以来、日本と韓国二国での継続的なアメリカ軍駐留から、今や二十年に及ぶ、パキスタンと中国両国と国境を接するアフガニスタン占領や、中国に好意的な東南アジア諸国の政権を打倒し、それらをアメリカが支援する属国政権で置き換えることを狙ったいわゆる「ミルクティー同盟」まで、中国封じ込め政策が今日まで続いているのは明白だ。これら三つの戦線に沿ったアメリカの活動を評価すれば、ワシントンが直面している進歩と停滞や、ワシントンの継続的な好戦的態度がもたらす世界平和や安定に対する様々な危険が明らかになる。

 日本-韓国戦線

「米軍を日本と韓国に配備しておく費用はこれだけかかる」というMilitary.com記事はこう報じている。総計80,000人以上のアメリカ兵が日本と韓国に配備されている。日本だけで、アメリカは55,000人以上の兵士を配備しており、これは世界最大の前方展開アメリカ兵力だ。記事は、米国会計検査院(GAO)によれば、アメリカは「2016年から2019年までに、日本と韓国における軍駐留の維持に340億ドル」を使ったと指摘している。東アジアで、なぜこの膨大なアメリカの軍事駐留が維持されているかについて、記事はGAOを引用して説明している。
「アメリカ軍は、同盟を強化し、自由な開かれたインド-太平洋地域を推進するのに役立ち、緊急事態に対する素早い対応を提供し、アメリカの国家安全保障に不可欠だ。」

 実質的なアメリカ占領軍による物理的駐留によって「強化される」「同盟」は、「同盟」が、到底自発的でないことを示唆し、「自由な、開かれたインド-太平洋地域」という主張は、大いに主観的であり、インド-太平洋は、一体誰のために「自由で、開かれた」のかという疑問を提起する。アメリカの権力が、世界規模でも、地域的に、インド-太平洋でも衰えるにつれ、ワシントンは、対中国封じ込め戦略で、財政負担のみの支援ではなく、より積極的になるよう日本と韓国両国への圧力を増大している。

 日本は、アメリカに率いられる「クアッド」としても知られる四カ国戦略対話に徴募された三つの他の国(アメリカ自身、オーストラリアとインド)の一つだ。アメリカは、単に日本に駐留する軍隊や、日本を本拠とする自身の軍隊による支援だけでなく、インド軍とオーストラリア軍と日本軍も、南シナ海内や周囲で、軍事演習や作戦に参加すべく徴募している。
 インドをクアッドに包摂したのも、1960年代早々、ワシントンの対中国に封じ込め政策を構成するアメリカの三戦線戦略にも、ぴったり合う。

 インド-パキスタン戦線

 クアッド同盟へのインド徴募に加え、アメリカは中国とインドの様々な領土問題の政治支援やメディア選挙運動を通して、エスカレーションを促進している。

 アメリカは、パキスタンのバローチスターン州の武装反抗分子支援を含め、中国とパキスタンの親密な進行中の関係にも標的を定めている。最近、バローチスターンのクウェッタ、ホテルでの爆発は、駐パキスタン中国大使、Nong Rongを標的にしていたように思われる。「パキスタン・ホテル爆弾:致命的爆風、クウェッタの贅沢な場所を襲う」という記事でBBCは、こう報道している。最初の報道は、標的が中国大使だったことを示唆していた。Nong Rong大使は水曜日にクウェッタにいるが、攻撃時点にホテルに居合わせなかったと考えられている。記事はこうも報じている。
 バローチスターン州は、アフガニスタン国境に近く、分離主義者を含め、いくつかの武装集団の所在地だ。パキスタンからの独立を要求する現地の分離主義者が、ガスと鉱物資源のため、パキスタンの最貧州の一つバローチスターンを搾取したと、政府と中国を非難している。
 BBC報道で欠落しているのは、アメリカ政府が長年これら分離主義者に提供した大規模な、あからさまな支援だ。明らかに、これは単なる不正とされるものに対する局所的な蜂起を超えているが、ワシントンが中国に対して行なう「代理勢力による武力衝突」のもう一つの例だ。
 昔2011年、National Interestは「自由バローチスターン」という記事で、公然とパキスタンのバローチスターン州で分離主義に対するアメリカの支援拡大を擁護していた。(大企業と金融業が資金供給するアメリカを本拠とする国際政策センターの上級研究員だった)故セリグ・ハリソンが論文を書いて、こう主張している。
 パキスタンは、バローチスターンの中心グワダル海軍基地を中国に与えた。だから独立バローチスターンは、イスラム主義勢力に対処するという喫緊の狙いの他、アメリカ戦略上の権益にも役立つだろう。
 もちろん「イスラム主義勢力」というのは、アメリカとペルシア湾岸諸国が資金援助し、欧米代理戦争を行なうために使われ、欧米介入の口実にもなる過激派戦士の婉曲表現だ。パキスタンのバローチスターンで「イスラム主義勢力」を引用するのは明らかに、後者の例だ。

 影響力のある政策シンクタンクに発表された記事に加えて、ダナ・ローラバッカー下院議員などのアメリカ議員が、以下のような決議を提案した(強調は筆者)。
「米国下院一致決議104(第112番):現在パキスタン、イランとアフガニスタンに分かれているバローチスターンの人々は、自己決定し、自身の主権を持った国家の権利を持っているという議会の同意を表現する。」

 アメリカ政府の全米民主主義基金(NED)ウェブサイトに列記されている通り、「パキスタン」という分類で、パキスタン、バローチスターンで分離主義を支持する隣接した、政治集団に資金が供給されている。「Association for Integrated Development Balochistan」などの組織がアメリカ政府に資金供給され、パキスタン内政に、アメリカによる明確な干渉をし、人々を政治的に動員するために使われる。

 グワダル港プロジェクトは、一帯一路構想の一環として、成長する中国インフラ計画のグローバルネットワーク中で重要な地点だ。アメリカは明らかに中国の勃興に反対で、それに対処するための明瞭に表現された確固とした戦略を述べている。ベトナム戦争に関するペンタゴン・ペーパーズで見られるように、開戦を含め、全てがあるのだ。

 パキスタン、バローチスターンでの最近の爆発は、この戦略が、中国-パキスタン協力に標的を定めるための現地の過激派戦士利用を継続しており、中国を包囲し、封じ込める広範な地域規模の戦略の一環であることを明示している。

 東南アジア戦線

 もちろんベトナムに対するアメリカの戦争は、東南アジアに対する欧米の優位を再主張し、この地域が中国の避けられない勃興に拍車をかけるのを阻止する、広範な取り組みの一環だった。アメリカが戦争で敗北し、東南アジア地域からほぼ完全撤退したことで、東南アジアは彼ら自身の間と、中国との関係を修復することになった。今日、東南アジア諸国は、中国を、最大の貿易相手国、投資国、インフラ整備の重要パートナー、地域の軍隊のための重要な供給元、地域全体への多数の観光客提供に加えて、と考えている。タイのような国では、西欧諸国からの観光客全てを合計したより多くが、中国からやってくる。
 既存の東南アジア諸国政府は、中国に対するアメリカのけんか腰に加わっても、得るべき利益は皆無なので、アメリカは、様々な傀儡を政権に据えるため、養成し、試みることが必要なことに気がついたのだ。これはベトナム戦争以来進行中のプロセスだ。

 アメリカは何年も、個々にそれぞれの国に目標を定めた。2009年と2010年、アメリカに支援された「追放された野党指導者」タクシン・チナワットは、次から次の暴動で、約300人の武装過激派闘士を含む彼の「赤いシャツ」抗議行動参加者を派遣し、バンコク中での放火や、90人以上の警察、兵士、抗議行動参加者や見物人の死で頂点に達した.
 野党を構築するため、アメリカは10年以上、何百万ドルもを注いだ後、2018年、アメリカに支援される野党がマレーシアで権力を掌握した。
 アメリカ全米民主主義基金NEDの下部組織、共和党国際研究所のダニエル・トワイニングは同じ年、国際問題研究所CSIS(56分から始まる)講演で、それを認めた。:15年間NED資源で活動して、我々はマレーシア野党を強化し、61年後、二カ月前に何が起きたかご想像願いたい。彼らは勝ったのだ。
 彼は、アメリカが支援する反対派人物をマレーシア政府の権力の座に送り込む上で、NEDのネットワークが、どのように直接役割をはたしたかを、こう述べている。私はこの政府の指導者の多く、新指導者を訪問し、彼らと一緒になった。彼らの多くが我々が15年間働いてきた我々のパートナーだが、今政府を運営している人々の一人、彼らの最上級者が私に言った。「なんとまあ。あなたは我々を決してあきらめなかった。我々自身見限る覚悟をしていた時でさえ。」

 マレーシアで「自由を推進する」どころか、トワイニングはマレーシア内政に干渉する究極の目的は、マレーシアだけでなく、地域全体で、特に中国を包囲し、封じ込め、アメリカの権益を維持することだったのを明らかにしている。トワイニングは、こう自慢する。新政府最初の一歩が一体何だったか当てられだろうか?中国のインフラ出資凍結だ。そして
[マレーシア]は、大いにアメリカ寄りの国というわけではない。実際のアメリカ同盟国になることは、おそらく決してないが、これは我々の利益に寄与するだろう、長期戦略の一例だ。

 NED資金で、数十年にわたり、国内に並行する政治制度を構築し、最終的に、2016年、アウンサンスーチーとアメリカに支援される彼女の全国民主連盟(NLD)の権力掌握をもたらしたミャンマーも、同じことの繰り返しパターンだ。ミャンマーにとって、現地の反政府派に対するアメリカ支援は実に根深く、本格的で、選挙で、毎回、事実上、アメリカが支援する候補者の勝利は保証されていた。アメリカ全米民主主義基金自身のウェブサイトだけでも、世論調査から、政党構築や、メディア・ネットワークや中国が始めたインフラ計画を阻止するために使われる「環境保護」団体への資金投入など、あらゆることのために、アメリカ政府資金を受け取る80以上のプログラムと組織を列記している。
 今年の2月、アウンサンスーチーとNLDを追放したミャンマー軍による動きは、これを是正することを意図していた。
 だが、街頭で抗議行動する政治団体の支持に加えて、アメリカは何十年も、全国的に反政府派民族を支持し、武装させてきた。これら反政府派は今アメリカが支援するNLDと連絡を取り「国際介入」に対する明示的要求を含め、2011年にアラブ世界に対し、リビア、イエメンやシリアなどの国で使われたアメリカが支援する政権転覆戦術を繰り返している。

 アメリカが画策した「アジアの春」

 2011年、アメリカが「アラブの春」の際にしたと同様、アメリカ国務省は、アジア中で様々な政権転覆キャンペーンの相乗効果を作り出そうと、アメリカが支援する個別政権転覆の企みをアジア地域規模の危機に転換するため「ミルクティー同盟」を導入した。
 BBCは「ミルクティー同盟:ツイッター、民主化運動活動家用絵文字を作成」という記事で、こう認めている。この同盟は香港と台湾の反北京抗議者とタイとミャンマーの民主化運動活動家を糾合。
 BBCの「ミルクティー同盟」報道で(意図的に)抜けているのは、それを結び付けている本当の共通点だ。全米民主主義基金などを通したアメリカ資金供給と、アメリカ国務省自身が推進する趣旨に基づく中国嫌悪での統一だ。

 

 ペンタゴン・ペーパーズに戻って、アメリカが中国を包囲しようと画策した地域キャンペーンを想起し、トランプ政権のホワイトハウス・アカイブで公開されている「インド-太平洋の枠組み」のような最近のアメリカ政府政策報告書を見ることができる。政策報告書の最初の箇条書きは、こう問うている。中国が新しい不自由な勢力圏を確立し、地域の平和と繁栄を推進する協力地域を育成するのを阻止しながら、いかにインド-太平洋地域で、アメリカの戦略的優位を維持し、自由な経済秩序を推進するか?

 この報告書は「世界中での中国の強制的な振る舞いや影響工作」に関し世界を「教育する」ことを意図した情報キャンペーンも論じている。これらキャンペーンは、中国新彊での「中国による大量虐殺」非難をでっちあげるプロパガンダ戦争、中国通信機器企業ファーウェイが世界規模の安全保障上の脅威で、アメリカではなく、中国が今日の世界平和と安定に対する最大の脅威だと主張している。実際は、中国包囲を目指すアメリカ政策は、世界舞台での、あらゆる戦争の継続や、それから生じる人道的危機虐待にも数十年にわたり、何のおとがめもなく済んでいるのを続けたいというにワシントンの願望に基づいている。

 中国とワシントンの「競争」全貌理解は、貿易戦争、ミャンマーで進行中の紛争や混乱、南西パキスタンでの爆発、タイの学生暴徒、香港での暴動や南シナ海を国際紛争に転換するアメリカの企み等展開している個々の危機を巡る混乱を解明する助けになる。これらの出来事が全てつながっていることを理解し、アメリカの取り組みの成否を評価すると、中国包囲におけるワシントン全体的成功の、より明確な構図が見える。それは、国家や地域や世界平和や安定を脅やかすアメリカの破壊活動から守る上で、各国政府や地域ブロックに、どのように政策を運営すべきかのより明確な構図にもなる。

 Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。】

コメント (1)
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