サンデー毎日9月3日号に載った政治学者、白井聡の論文を要約する。主題と副題はこうだ。
『岸田政権「大増税」と「米兵器購入」の核心』
『「亡国のカラクリ」をすべて暴く』
「(日本の)米兵器購入の核心」とは、「悪循環」から崩壊しつつある米「三位一体世界政策」を日本に新たに支え直させようとするものと説いている。
この「三位」とは、「米国の赤字垂れ流しとペトロダラーシステムと巨大軍事力」との一体の世界政治。石油=ドル体制を維持するべく大軍事力に物言わせてきたが、その結果、国家累積赤字が垂れ流され、ドル体制も綻び、軍事力にも限りが見えるなどの悪循環が起こっていると説かれる。石油ドル体制の破綻は、サウジの離米とか、ウクライナ戦争制裁などでさらに増えてきたルーブルや人民元による支払い増とか、イラク、イラン、ベネズエラ、リビアなど産油国への過去の戦争政策とかで説明されている。
この米世界政策論、「三位一体世界政策の悪循環」における最も深刻な最先端の現実を転載すると、
『米中対立の緊迫が高まるなか、中国の仲介によりサウジがイランと和解することを米国が許容した(止められなかった)ことの重大性はどれほど強調してもし足りない。つまりは、米国はペドロダラーシステムの核心部の支配を失いつつある』
このサウジ米離反の直接原因を僕が付け加えると、シリコンバレー銀行などの破綻と平行して起こったクレディ・スイス倒産がある。サウジ・ナショナルバンクがここの筆頭株主であり、そのサウジがクレディを見限ったことがクレディへの死の宣告となったと報道されていた。さんざんアメリカに貢いだ挙げ句に種々被害ばかり被り、最後は米金融に切り捨てられたに等しいサウジの恨みはいかばかりかと推察していたものだ。
さて、白井はドルの暴落とか、米国家赤字の増大を避けるために、今度は同盟国・日本にさらなる負担を求めに来たと説いてゆく。
「今日のウクライナは明日の日本」
「他国民の犠牲のもとに敵対的大国を弱体化させることにより覇権を強化するという米国の(ウクライナ戦争の)企図は、戦争がさらに長引けば叶えられるかもしれない。ただしそうなったとき、青年壮年の男子人口を大量に失ったウクライナ国家は果たして再建可能であろうか」
古くはアフガンの米同盟者タリバンをソ連崩壊に利用してやがてこれを切り捨てて、彼らとの長い長い戦争に敗北したこと。イ・イ戦争時の米同盟者フセイン・イラクがやがて米国に裏切られていった、その末路。さらには、ウクライナやサウジ。これらの末路からこそ、日本は学ぶべきなのだ。アメリカがここまで、同盟国の国民をいくらでも犠牲にする結果になって来たのは、その覇権の維持のためなのである。そして、この覇権維持はもはや不可能と僕は観始めたその現象こそ、「新自由主義経済国が、保護貿易主義に換わってしまったという、手前勝手過ぎる醜態」。元米会計検査院長の15年の計算で、国家累積赤字は当時の米GDPの4倍という数字が報道されたが、現在は遙かにこれを越えているだろうというのも、白井言うところの「三位一体政策悪循環」の末路、結末なのである。
アメリカと日本がこのまま進むならば、「反撃能力」とかの鳴り物入りで今大々的軍拡中の日本の末路も、想像可能というものではないか。今回の岸田「反撃力」軍拡は、「毒を喰らわば皿まで」、今ルビコンを渡ったという覚悟が、今の自民党に存在しているか? ゼレンスキーも、自分が今のような立場にさせられるとは、去年の初めまで思いもしなかったはずだ。
「NATOには入るが、ロシアは攻めてこない」とどういう根拠があってか言い続けてきたその結果、「国の若者、壮年を数十万単位で殺し続けている大統領」。ゼレンスキーのこの言明は、アメリカに欺されていたのだと、僕は思う。去年4月だったか、「東部を放棄して停戦・和平へ」と進められた交渉も、なぜか突然頓挫させられたのだし。