ナンバーウェブの「ワインとシエスタとフットボールと(田村修一 = 文)」を読んだが、標記のようにトルシエへのインタビュー記事だ。この論究が深いという意味で、優れている。流石に、日本代表2回目のW杯出場で、決勝トーナメントに出場という快挙を成したお人だけあると感激した! 読めば解るが、日本の欠陥指摘がここに書いてきた内容そのもので我が意を得たりというだけではなく、民族性とか経済現状までを含んだ日本のスポーツ人にはなかなか書けない広く、深い内容と感じた。抜粋してみよう。
【 「代表と言ってもA代表ばかりではない。五輪代表も停滞し、U-20やU-17も伸びてはいないのではないか? 私としては、今こそ日本全体が覚醒すべきときなのだと思っているが……。
日本は国全体としても経済の停滞に直面している。出生率も低下し、老人の比率が増え人口構成もいびつになっている。日本経済が活況を呈し、誰もが日本製品を買い求めた時代は完全に過ぎ去った。人々の目は今は中国に向いている。日本はこれまでとは異なるビジョンを抱き、よりオープンになり外にもっと目を向けるべき時代を迎えている。それが今の世界の中の日本だ。
だが、残念ながら例えば日本の育成の現状を見たときに……。
私は今も日本人選手の素質は世界最高だと思っている。個の技術的な部分を育てるという意味では、日本の育成部門は今も世界で優れている方だと言っていい。しかしサッカー全体におけるコレクティブな面については、まだまだ育成の段階でやるべきことが非常に多く残っていると言わざるを得ない」
「どうやってひとつのプレースタイルを実践するか、どうやって行動するか……という、もっと基本的なものだ。日本の若年層の選手たちは、個としては世界最高レベルにあるが、彼らはただプレーするだけでゲームをコントロールできていないし、『相手を破壊すること』ができていない。彼らが追求しているのは、勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ。しかし『相手を破壊すること』も、勝つための戦略として厳然として存在するのだ」
「勝つためにバルセロナよりも優れた、美しいプレーを目指すのも確かに重要ではあるが、ローマはバルセロナのプレーを『破壊』してバルサを破ったということを忘れてはいけない。 彼らはバルサよりプレーが優れていたから、美しいから勝ったわけではない。
(文科系注 ここでトルシエは、今年のヨーロッパチャンピオンズリーグで、バルセロナがローマに負けたゲームのことを語っている。なお、このローマを負かしたのが、ここで何度も書いてきたように、プレミアで再台頭してきたリバプール。ゲーゲンプレスの創始者、ユルゲン・クロップの元で台頭してきたチームだ。このリバプールは、ローマとの準決勝の前には、今をときめくマンチェスター・シティーを5対1で破って勝ち抜けてきた)
私が2002年のワールドカップのベルギー戦やロシア戦で実践したように、日本の方が相手より明らかに実力で劣っていても、別の解決策、勝てる方法を模索することが絶対に必要だ。
そして、それは日本人だけで準備をしても、おそらく難しいだろう。
日本人の特徴なのだが……どうしても自分たちのロジックの中で考え方が閉じてしまうことが多いからだ。
西野氏はたしかに優れた監督だが、彼には日本のチームの経験しかない。ドルトムントの監督をやったわけでもなければ中国のクラブの経験もない。
日本人の監督、指導者は誰もが日本の中だけで働いているのが現状なのだから、代表が国際レベルで退歩しているのはある意味当然といえるだろう、残念だが……」】
ここでのトルシエはいかにもフランス人らしく、「俺に任せろ!」みたいな自己主張の雰囲気を醸し出している。が、彼の言っている内容自身は極めて適格に日本の最大弱点を突いたものだと読んだが、どうだろうか?
ただし、ここで述べている最要点「相手を破壊できること」も、立派に相手より優れていることだと思うのだが、どうだろう。これと、「勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ」とが別のことのように書かれているのは、聞き手の翻訳ミスのようなものなのかどうか? それとも、どこか、日本人とフランス人の言語感覚の違いが踏まえられていない、書き手の認識不足によるようなものでもあるのか?
【 「代表と言ってもA代表ばかりではない。五輪代表も停滞し、U-20やU-17も伸びてはいないのではないか? 私としては、今こそ日本全体が覚醒すべきときなのだと思っているが……。
日本は国全体としても経済の停滞に直面している。出生率も低下し、老人の比率が増え人口構成もいびつになっている。日本経済が活況を呈し、誰もが日本製品を買い求めた時代は完全に過ぎ去った。人々の目は今は中国に向いている。日本はこれまでとは異なるビジョンを抱き、よりオープンになり外にもっと目を向けるべき時代を迎えている。それが今の世界の中の日本だ。
だが、残念ながら例えば日本の育成の現状を見たときに……。
私は今も日本人選手の素質は世界最高だと思っている。個の技術的な部分を育てるという意味では、日本の育成部門は今も世界で優れている方だと言っていい。しかしサッカー全体におけるコレクティブな面については、まだまだ育成の段階でやるべきことが非常に多く残っていると言わざるを得ない」
「どうやってひとつのプレースタイルを実践するか、どうやって行動するか……という、もっと基本的なものだ。日本の若年層の選手たちは、個としては世界最高レベルにあるが、彼らはただプレーするだけでゲームをコントロールできていないし、『相手を破壊すること』ができていない。彼らが追求しているのは、勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ。しかし『相手を破壊すること』も、勝つための戦略として厳然として存在するのだ」
「勝つためにバルセロナよりも優れた、美しいプレーを目指すのも確かに重要ではあるが、ローマはバルセロナのプレーを『破壊』してバルサを破ったということを忘れてはいけない。 彼らはバルサよりプレーが優れていたから、美しいから勝ったわけではない。
(文科系注 ここでトルシエは、今年のヨーロッパチャンピオンズリーグで、バルセロナがローマに負けたゲームのことを語っている。なお、このローマを負かしたのが、ここで何度も書いてきたように、プレミアで再台頭してきたリバプール。ゲーゲンプレスの創始者、ユルゲン・クロップの元で台頭してきたチームだ。このリバプールは、ローマとの準決勝の前には、今をときめくマンチェスター・シティーを5対1で破って勝ち抜けてきた)
私が2002年のワールドカップのベルギー戦やロシア戦で実践したように、日本の方が相手より明らかに実力で劣っていても、別の解決策、勝てる方法を模索することが絶対に必要だ。
そして、それは日本人だけで準備をしても、おそらく難しいだろう。
日本人の特徴なのだが……どうしても自分たちのロジックの中で考え方が閉じてしまうことが多いからだ。
西野氏はたしかに優れた監督だが、彼には日本のチームの経験しかない。ドルトムントの監督をやったわけでもなければ中国のクラブの経験もない。
日本人の監督、指導者は誰もが日本の中だけで働いているのが現状なのだから、代表が国際レベルで退歩しているのはある意味当然といえるだろう、残念だが……」】
ここでのトルシエはいかにもフランス人らしく、「俺に任せろ!」みたいな自己主張の雰囲気を醸し出している。が、彼の言っている内容自身は極めて適格に日本の最大弱点を突いたものだと読んだが、どうだろうか?
ただし、ここで述べている最要点「相手を破壊できること」も、立派に相手より優れていることだと思うのだが、どうだろう。これと、「勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ」とが別のことのように書かれているのは、聞き手の翻訳ミスのようなものなのかどうか? それとも、どこか、日本人とフランス人の言語感覚の違いが踏まえられていない、書き手の認識不足によるようなものでもあるのか?