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ニシノジャパン(9) 秀逸! トルシエが新代表に提言   文科系

2018年05月23日 13時23分41秒 | スポーツ
 ナンバーウェブの「ワインとシエスタとフットボールと(田村修一 = 文)」を読んだが、標記のようにトルシエへのインタビュー記事だ。この論究が深いという意味で、優れている。流石に、日本代表2回目のW杯出場で、決勝トーナメントに出場という快挙を成したお人だけあると感激した! 読めば解るが、日本の欠陥指摘がここに書いてきた内容そのもので我が意を得たりというだけではなく、民族性とか経済現状までを含んだ日本のスポーツ人にはなかなか書けない広く、深い内容と感じた。抜粋してみよう。


【 「代表と言ってもA代表ばかりではない。五輪代表も停滞し、U-20やU-17も伸びてはいないのではないか? 私としては、今こそ日本全体が覚醒すべきときなのだと思っているが……。
 日本は国全体としても経済の停滞に直面している。出生率も低下し、老人の比率が増え人口構成もいびつになっている。日本経済が活況を呈し、誰もが日本製品を買い求めた時代は完全に過ぎ去った。人々の目は今は中国に向いている。日本はこれまでとは異なるビジョンを抱き、よりオープンになり外にもっと目を向けるべき時代を迎えている。それが今の世界の中の日本だ。
 だが、残念ながら例えば日本の育成の現状を見たときに……。
 私は今も日本人選手の素質は世界最高だと思っている。個の技術的な部分を育てるという意味では、日本の育成部門は今も世界で優れている方だと言っていい。しかしサッカー全体におけるコレクティブな面については、まだまだ育成の段階でやるべきことが非常に多く残っていると言わざるを得ない」


「どうやってひとつのプレースタイルを実践するか、どうやって行動するか……という、もっと基本的なものだ。日本の若年層の選手たちは、個としては世界最高レベルにあるが、彼らはただプレーするだけでゲームをコントロールできていないし、『相手を破壊すること』ができていない。彼らが追求しているのは、勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ。しかし『相手を破壊すること』も、勝つための戦略として厳然として存在するのだ

勝つためにバルセロナよりも優れた、美しいプレーを目指すのも確かに重要ではあるが、ローマはバルセロナのプレーを『破壊』してバルサを破ったということを忘れてはいけない。 彼らはバルサよりプレーが優れていたから、美しいから勝ったわけではない。
(文科系注 ここでトルシエは、今年のヨーロッパチャンピオンズリーグで、バルセロナがローマに負けたゲームのことを語っている。なお、このローマを負かしたのが、ここで何度も書いてきたように、プレミアで再台頭してきたリバプール。ゲーゲンプレスの創始者、ユルゲン・クロップの元で台頭してきたチームだ。このリバプールは、ローマとの準決勝の前には、今をときめくマンチェスター・シティーを5対1で破って勝ち抜けてきた)
 私が2002年のワールドカップのベルギー戦やロシア戦で実践したように、日本の方が相手より明らかに実力で劣っていても、別の解決策、勝てる方法を模索することが絶対に必要だ
 そして、それは日本人だけで準備をしても、おそらく難しいだろう。
 日本人の特徴なのだが……どうしても自分たちのロジックの中で考え方が閉じてしまうことが多いからだ。
 西野氏はたしかに優れた監督だが、彼には日本のチームの経験しかない。ドルトムントの監督をやったわけでもなければ中国のクラブの経験もない。
 日本人の監督、指導者は誰もが日本の中だけで働いているのが現状なのだから、代表が国際レベルで退歩しているのはある意味当然といえるだろう、残念だが……」】


 ここでのトルシエはいかにもフランス人らしく、「俺に任せろ!」みたいな自己主張の雰囲気を醸し出している。が、彼の言っている内容自身は極めて適格に日本の最大弱点を突いたものだと読んだが、どうだろうか?
 ただし、ここで述べている最要点「相手を破壊できること」も、立派に相手より優れていることだと思うのだが、どうだろう。これと、「勝つために優れたプレーをして相手を上回ることだけだ」とが別のことのように書かれているのは、聞き手の翻訳ミスのようなものなのかどうか? それとも、どこか、日本人とフランス人の言語感覚の違いが踏まえられていない、書き手の認識不足によるようなものでもあるのか?
 
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北朝鮮の外交のうまさ   らくせき

2018年05月22日 10時13分18秒 | Weblog
ここにきて悔しいけれど、北朝鮮のほうが外交的な得点をあげている。
このまま決裂しても北はなにも失わない。
むしろ結果的には、中国の支援を得る可能性が高い。



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ニシノジャパン(8)改めて、長谷部の凄さ!  文科系

2018年05月21日 14時55分50秒 | スポーツ
 今現在、標記のことが証明されたような「事件」があった。19日に行われたドイツ・カップ戦で、フランクフルトが優勝。しかも、バイエルンを3対1で負かして。長谷部はフル出場で、センターバックまでを演じている。来年これで、フランクフルトが欧州カップ戦に出られることになり、そこでもまだまだ、彼の活躍が見られるだろう。

 これは新たに長谷部に加わった実績だが、遡ればこういう実績もある。ドイツリーグ戦優勝のレギュラーメンバーにして、その年のドイツ「キッカー誌」ベスト11。つまり優勝チームの絶対的レギュラ-経験者という実績だ。ヨーロッパでこれだけ活躍ができた選手は、もうヒデしか居ないし、守備的選手としては吉田以上と言えるはずで、歴代ナンバー1ということだろう。ただしこれも、本来は比較できないものだ。守備的中盤とDFとは、評価基準が違うからである。

 ところで、こういう選手が日本では実績に似合う評価がされにくいのを不思議に思ってきた。ここでも、攻撃的視点、バルサ的繋ぎの視点にいかに偏った国であるかが、分かるのである。ひどい評価になると、まず長谷部の組織的守備を見るのではなく、「彼のパスが、こう拙い」と来る。こんな評価は、シュート力第一でDFを見るのと同じやり方とさえ言えなくもない。
 ちなみに、こんな評価視点からこそ、山口も不当に低く見られてきたと思う。山口こそ、かって日本にいなかったような中盤選手なのである。ヨーロッパのゲームを頻繁に観る彼は先ず「潰し」を見て、自分自身もそこに特化した日本選手。日本の中盤には滅多にいなかったタイプだと思う。そして、こういう要素を備えた選手がかってなく評価されているのが、現在の世界サッカー・トップチームなのだと思う。あれだけ繋ぐ技術もある宇佐美や香川が、トップチームの中心選手にい続けられないのは、そこが弱いからだとさえ、僕は見てきた。

 事ほど左様に、日本のサッカーマスコミは偏っている。長谷部はそういう事実をも証明してくれた。これも日本サッカーへの警鐘的貢献と言えるはずだ。
 スポーツ・マスコミ批判のついでに加えて一言。ネットのサッカー記事だけを拾っていると、世界サッカーの真実、選手の真の力を見る目は養えない。マスコミとそのスポンサーは、実力を見るのではなく、マスコミで売れる選手を作り出す事を通じて彼を追っかける「マスコミ消費者」を作ればよいのであるから。この事は歴代の各界スポーツの実力者が常に教えてくれたところである。野茂、ヒデらのマスコミ批判は、超有名だった。「嘘とか、馬鹿なことばかり書く」と。
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日大アメフト監督が示した「壊れた社会」 文科系

2018年05月20日 11時48分48秒 | スポーツ
 日大アメフト事件が世を騒がせている。これをめぐって、本日のある中日新聞記事を先ず紹介したい。愛敬浩二名古屋大学教授が、この問題に触れた文章末尾で、こう書いている。

『アメリカンフットボールについて全くの素人の私がこの問題に興味を持ったのは、問題の選手と監督の関係が、「森友問題」や「加計問題」における官僚と政治家(特に安倍首相)の関係にダブって見えたからだ』

 ダブるどころか、今の世界ではこのような問題が目立ちすぎていないか。一言で言うならば、上に立つ者の強烈な腐敗現象。さらに深刻に語るなら、これが上からどんどん周囲に広げられて行くことによって、こういう腐敗を「人間、人間社会の本性というか自然な在り方」のように観る風潮、考え方。

 さて、日大アメフト部・内田正人監督とは、日大内部でも絶大な権力を誇った人のようだ。
 学生78,000人という巨大学校法人の人事担当常務理事と人事部長、運動部全体の予算を握る『保健体育審議会局長』という顔を持ち、学校法人全体の独裁者とも呼ばれていたと報道されている。こういう独裁者だからこそ、あんなにひどい「命令」を平然と出すことができたのだと言えないだろうか。ちょうど、選挙に強い安倍に誰も文句が言えず、政治家にも官僚にも忖度ばかりが蔓延すれば、独裁者はその分余計に腐敗していくというように。

 上記の愛敬教授が、「内田監督と選手らの関係」を、「安倍首相と、官僚やアベチルドレンの関係」と並べて語るのもそういうことなのだ。「レギュラーになりたい」「議員になりたい」「官僚として出世したい」をえさにして、悪事を強要、忖度させるということなのである。独裁者に対しては忖度が蔓延すると述べても良いだろう。

 そしてもう一つ、こういう問題は、トランプ政権を観ると日本国内に留まらず、新自由主義世界全体が生み出しつつあるものだと分かって来るようだ。新自由主義的競争が作る厳しい超格差社会に対して、生きて行くための普通の手段としてさえ、忖度悪事が蔓延していくということではないか。そこから生まれる人間観、社会観というものが今また、大いに問われているのだと思う。例えば、社会ダーウィニズム(的思考)の蔓延。トランプにこそ似つかわしい全米ライフル協会流のマッチョ男社会(や日本財務省・福田次官ら)はセクハラ・女性蔑視批判などどこ吹く風と、ものともしないのである。日大当局も含めたこれら全てがまた、トランプ、安倍の社会的温床になっていくと述べても良いだろう。
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35 → 27 → 23 1970

2018年05月18日 14時25分12秒 | Weblog
ガーナ戦に向けた代表発表。誰を落とすかというよりは、各ポジションで必要なメンバーを上から順番に選んだらこうなったという感じだな。
右サイドのMF候補は、岡崎、本田、宇佐美なのかね。左は乾、原口は不動だから問題は右だな。
落選した中島君は右が出来れば選ばれたが左だけだから厳しかったな。
青山を入れたのは、山口、長谷部のボールの扱いに不安だからだろう。4年前、ザックも同じように青山を入れたが、肝心の本人がコロンビア戦でパスミス連発したんでw今回はちゃんとやれよと。
ここから4人減らすことになるが、コンディション次第で落選する選手もいるだろう。

問題は右サイドの構成だな。ここ何年も上手く機能してないから。
そして、大迫、武藤、宇佐美、岡崎が入ったのでツートップも少し期待しておくw
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よたよたランナーの手記(223)ちょっと「前進」の5月   文科系

2018年05月18日 11時39分06秒 | スポーツ
 風邪の長い後遺症なども残っていた2月下旬以降、5月に入ってやっと前進を遂げつつあると思える。この17日までで走ったのが2、8、11、15、17日の5日で、4日には50キロサイクリングもやった。この50キロは、午前中だけで時速30キロ近くで走り続けて来たから、僕にとってはファーストランだ。信号ストップがない庄内川緑地公園2・3キロ・サイクリングコース10周も入れてきたのだし。

 外走りの最高は11日。ウオームアップを済ませてからキロ平均6分28秒で5キロ超を走った。この時のストライドと心拍数のそれぞれ平均が、96センチの、150。これら3つの数字がすべて、近年の最高に近いもの。
 4月には全くなかったジムラン(30分×2回の走行)を、今月は2回やった。17日のジムでは、時速10キロで10分走った時の心拍数が150前後と、この数字の低さも近年にないものだった。これは、心肺機能がここ数年の最好調時にまで戻っている事を示している。これまでのここ数年は、マシン・ランの10キロ時なら160を越えるのが普通だったからである。

 これからも、LSD中心、時に頑張ってみてと、現状維持狙いというほどに無理はせずに走っていきたい。ただし、夏場になるから、冷房が効いているジムランを増やしていくことになるだろう。それでも、これだけ心肺機能が好調であれば、ジムで1時間10キロが目標になる。今年に入ってからのこの最高2月7日の9・4キロを越えるということになり、そうなればその上のピーク、16年5月27日の9・5キロも越えられるはずだ。

 久しぶりのジムではまた、今月の2回目に上半身のウエート・トレーニング数値も調べてみたが、腹筋以外の背筋や腕、肩、胸などはここ10年ほどの最高時が維持されていた。4日にやった50キロ・サイクルの僕なりのファーストランなども、利いているのだろう。
「もう歳か」とあちこち、あれこれ考え込むことも多くなるこの77歳がちょっとした工夫、努力によって「まだ現状維持以上」と発見できるのは得難い喜びであって、幸せなことだと思う。前回10日のこの手記222号で高齢者活動年齢にかかわって3万人以上相手に最高21年もかけて大々的に行われたある追跡調査結果の結論をこう紹介したこともここに付け加えておく。ランニングとか上半身筋力とかの数値は、今後の活動年齢そのものの予告数値でもあるということだ。
『65歳に時速6キロ近くで歩ける人の平均寿命は95歳。同じく65歳で時速3キロ近くの人なら、80歳。なんとかやっと歩ける人は平均74歳までしか生きられない。そんな追跡調査結果が出て、こんな結論が書いてあった。「歩く速度が速い健康な人は寿命が長く、速く歩くことができなくなると、寿命がどんどん短くなることを示しています」』
 ただし、ここに言うこの言葉は意外に大事と考慮しなければならない。「(歩く速度が速い)健康な人は・・・」。癌とかの持病がないという意味だろう。日本人の死因第1位の癌がこれに当たるのであって、2位の脳血管障害や3位の嚥下性肺炎、4位の心臓疾患に対してはランニングの効果が絶大であること、これは5月1日の第221回でご紹介した通りである。
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ニシノジャパン(7)「繋ぐサッカー」など10年早い! 文科系

2018年05月17日 11時25分08秒 | スポーツ
 ザックもハリルも、日本の実力を世界15位程度とは観ていた。ザック時代には世界13位だったこともあるのだし、当時よりも外国チーム所属日本人選手は質量ともにはるかに底深いものになっているのだから。
では何故日本の順位がこれほどに下がっているのか。その原因を正しく抑えることこそ、ロシアで勝つ道である。そしてその原因とは、外国チームとの決死の戦い場面を観れば分かる。1つは、ブラジル大会。今一つは、ACLである。

 ブラジル大会の敗因は今はもう明らかだろう。準備段階から存在した「選手と監督との食い違い」によるもので、これでもって、ザックが行ってきたほとんどの準備が本番では無駄になるという戦い方しかできなかった。準備段階で監督の指示に従わず「繋ぎ重視」に励んだやの中心選手が複数存在し続けた。それが、本番で敗れた原因である。どの国も必死になる大会で、こんな中途半端をしては勝てるわけがない。ザックが、主として本田と遠藤がやってきて質問したことへの回答としてこう語ったとは、よく知られている話だ。
「そんなことを君等が今言ってくるって、私たちの今までのやり方に確信を持っていたと言えるのか。それでは私がここにいる意味さえないと思う」

 さて、今回のハリル解任には、ブラジル大会の苦い経験もこのように絡んでくるはずだ。協会中枢がこう決断したことは明らかである。
「また、選手と監督とがずれている。やはり日本人の行動とこれを律する感覚は、外国人には分からないのだ。監督を切って、日本人にしよう。ブラジルに二の舞にはしたくない」

 さて、その上で協会はどうするつもりなのか。ハリル流を取り入れるのか、ブラジルでも選手が誇っていたやの「自分らのサッカー」を許容していこうというのか、どうか。これについて僕は、前者しかないと、選手もそれに相応しい人を選べと、大声で言いたい。その理由こそ、ここ数年のACL大会を観れば分かるというもの。
①ACLでさえ、日本流の生半可な「繋ぎ尽くす」などは全く通用しないのである。ここへの新参チームほど、その事を思い知らされてきたはずだ。広島、川崎、セレッソ、柏などである。その原因こそ「日本のサッカーが軽い」ことである。国際的重要ゲームではなおさら、今の日本流の小手先繋ぎなど通用しない。「繋ぎが増えれば、今風カウンターを食うだけ」と肝に銘じておくべきだ。だからこそザックもハリルもこれを禁じたのであった。
②これは案外見落とされていることだが、ザックは「繋ぎ尽くす」のは禁じていた。攻撃について代わりに語っていたのがこれである。「サイドを中心に使って、手数少なく攻めろ。良いカウンターを食わないようにということだ」
③時に応じて高低のゾーンプレスも、リトリートも使った守備に細心の注意を払って固く守りつつ、相手の集中力が途切れたころに、ゲーゲンプレス的得点法もしくはセットプレーで得点する。日本人は集中力は一流だから、こういう鹿島やACL優勝時の浦和のような戦い方が最も似合っていると言いたい。
④ついては、西野に是非お願いしたいことがある。チームコンセプトでも選手選考でも、出来るだけ多く手倉森と相談し合って欲しい。手倉森は世界相手の守り方をよく研究して、知っている人だから。ACLにおける鹿島や浦和の分析にも凄く励んでいたと確信している。

 西野がいたガンバの、遠藤を必要とするようなサッカーを日本が敢行したら、必ずやブラジルの二の舞になるはずだ。「(将来性とか)自分らのサッカーとかよりも、まず勝ちたい」。これはブラジルを前にして内田や岡崎がザックを支持して主張していた言葉だったと思う。 
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書評「シリア情勢」(4) 文科系

2018年05月17日 09時15分24秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 岩波新書「シリア情勢」(青山弘之・東京外語大総合国際学研究学院教授著、17年3月22日第一刷発行)の要約を再掲している。今回はその最終回だ。

 トランプ・アメリカ政権が、オバマの大変な努力による「安定」を嘲笑うようにイラン政策で手の平返しをしたことによって、中東の雲行きがにわかに怪しくなってきた。しかも、このトランプ政策は単なる思いつきではなく、国家の借金がGDPの4倍というアメリカの起死回生を図る狭い道と思われるだけに、根深く執拗なものなのである。日本にとってはまたぞろ、「アメリカとの集団安保を守るという、日本国家の品位、品格の問題??」(谷内正太郎安全保障局長の言葉)なのだそうだし。この谷内発言、そのお人柄については、当ブログ本年1月11日拙稿『なんと愚かな「国防」人事!』を参照されたい。

 この再掲の終わりになったが、そこで最後に一言。
『アメリカ・サウジが一体になってシリアにやってきたことを見れば、アメリカの世界政策が分かる。だからこそ、それと手を組まされた日本の自衛隊の先行き、使われ方もわかるというもの』
 ちなみに、サウジの人権侵害度は北よりもはるかにきついものだと観てきた。この国の人権問題がアメリカから批判されぬのは(つまり、「ならず者国家」と言われて、つぶされようとしないのは)、アメリカの世界原油政策のおかげなのである。

何度でも言うが、アメリカの現国務長官はエクソンモービルの前会長さん。大統領経済問題補佐官など重要閣僚などには、ゴールドマンサックスの前社長なども名を連ねてきた。泡沫候補上がりから思いもかけず大統領になってしまったトランプ政権は、いつの間にかアメリカ経済界の顔たちの巣窟になってしまったようだ。弱肉強食社会の結末として国内内需を減らしたことによって衰退して来たアメリカも、今やなりふり構わぬ、必死さを示している。GDPの4倍の国家借金って、日本などとは比べものにならぬ国の死活問題である。それでいてトランプは、あの冷戦時代の倍をいつの間にか超えている軍事費を毎年捻り出さねばならないのである。そんな金がどこから出てくるというのか? サウジやイスラエル周辺などに最新兵器を買って貰わなければ、軍事会社の最低規模さえキープできないだろう。 

  
【 書評「シリア情勢」(4) 文科系  2017年07月19日

 この本は、2016年12月末に国連がイニシアを取ったシリア全土停戦にも言及して、この3月22日に第一刷発刊となったもの。イスラム国などの敗勢から、「シリア内戦の『終わりの始まり』」に触れている。この部分が今回紹介する「第6章 真の『ゲームチェンジャー』」と「おわりに」である。ついては、政権復活の下で、部外者らの誰が事態を複雑にし、どういう思惑でこの国の平和に抗ってきたのかが、鮮やかに示された箇所とも言えるのではないか。この本の結論を言えば以下のようになるだろう。

 15年9月末に始まったロシアの大々的爆撃が長年の戦乱を鎮めたのである。ロシアは、トルコがギュレン・クーデターの背後にアメリカを疑っている状況を生かしてトルコを懐柔し、合わせて欧米をも説得して、対アサド最強硬派とも言えたサウジ・カタールを疎外しつつ、その支援を受けた過激派反政府勢力にも「穏健派反政府勢力」にも、無差別に爆撃を加えて、鎮圧していった。ただし、この両派は戦闘員の流出入が激しく、団体同士も合従連衡を繰り返すなどと入り乱れて変化していて、どれがどういう性格なのかさえ、分からなくなっている。
 ロシアは、長距離大型爆撃機を派遣したし、カスピ海の潜水艦から巡航ミサイルを打ち出した。巡航ミサイル発射は、ロシアにとって史上初という出来事である。また、イランは、西部航空基地をロシアに提供し、16年4月、ファトフ軍に対して正規軍を派遣している。正規軍派遣も、共和制イラン国初の出来事だ。
 欧米諸国がこれらの攻撃に対してフリーハンドを認めたのは、「テロとの戦い」「難民問題」で、悩み抜いてきたからであると述べられている。

 ロシア空爆開始の直後15年10月に、ジュネーブ三平和協議がウィーンに17か国が集まって開かれた。ここでは、イスラム国以外のアルカイダ勢力をどう処遇するかで最後まで紛糾した。結局、サウジが、支援してきたシャーム自由人イスラム運動、イスラーム軍(イスラム国ではない)等とともに、この協議内容に反対して協議そのものから脱退していく。なお、このシャーム自由人イスラム運動には、人道的救命救急団体と称してきたホワイト・ヘルメット(この団体には日本の資金も出ているとは、前々回に述べた)が行動を共にしている。
 また、これらの「解決」方向に関わっては、国連シリア問題担当特別代表デミストラの仲介も大きかった述べられてあった。

 なお、米国が支援し、トルコが長年の敵としてきたシリア内クルド人勢力は、極めて複雑な立場に置かれることになった。例えば、こんな混乱した諸状況も起こったのである。イスラム国の拠点・ラッカ陥落を目指したクルドには米国は支援し、バーブ市におけるクルドはトルコばかりではなくアメリカからも攻められたのだった。
 かくて就任直前の米大統領トランプはシリアについてこんなことを語ることになる。
「関与すべきでない外国政権の打倒に奔走することはやめる」


 今回のまとめの最後を、この本の帯にも付けられた「おわりに」の中の言葉で締めくくりたい。この言葉は、この本全体のまとめでもあり、世界の今後への教訓ともなるものだろう。
「シリア内戦における混乱を再生産しているのは、シリアにとって異質な部外者であり、シリアの人々は彼らが繰り広げるゲームの駒になりさがってしまった」


 今回でもってこの書評、要約を終わります。ここまでお読み下さった方々、有り難うございました。】


『関与すべきでない外国政権の打倒に奔走することはやめる』という言葉を、トランプはいつ取り下げたのだろう。エルサレムやイランの新政策はそんなことを思わせるのである。政治はずぶの素人ということで夢を見ていたようなトランプが「アメリカの現実」をやっと知り始めたということなのだろうが、結局は対中国冷戦にらみという点では朝鮮半島の現情勢も怪しいものである。「北朝鮮がやはり、全てをぶち壊した」と大音声する機会を狙っていることに結局なるのであろうか。「韓国から核を除かない限り、我が核もなくせない」が首領様の条件だろうから、そこで決裂するまでせいぜい「ノーベル賞級の平和の顔」を続けようというのだろう。
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書評「シリア情勢」(3) 文科系

2018年05月16日 15時13分20秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 岩波新書「シリア情勢」(青山弘之・東京外語大総合国際学研究学院教授著、17年3月22日第一刷発行)の要約を再掲している。中東で何かあればすぐに「日米集団的自衛権」によって自衛隊が引っ張り出されようという日本である。それも、様々な国際的枠組みをひっくり返しているトランプ政権によってだから、怖いこと甚だしい。なんせ、地球温暖化対策とかイラン核合意とか、エルサレムのイスラエル首都認定宣言・アメリカ大使館移転とか、過去の米政府約束をどんどんひっくり返している。そして、2011年から国際的紛争が続いているシリア問題は、今の中東の火薬庫。何故なのか?


【 書評「シリア情勢」(3) 文科系  2017年07月18日

 今回は「第5章シリアの友グループの多重基準」を要約する。2011年3月にシリアにも波及した「アラブの春」が、「軍事化」、「国際問題化」を経て、「アル=カーイダ化」からさらには「テロとの戦い」へと進展していく様が描かれる。この展開は、シリア内の反政府軍勢力と、このそれぞれを支えてきた「シリアの友」諸国の離合集散、合従連衡の過程と言って良い。

 化学兵器問題によってアメリカ開戦寸前まで行った動向が英仏の消極姿勢によって回避されたのが、2013年夏。2014年6月までには、国連の努力でシリアの化学兵器も国外に撤去された。これはシリア政権の後ろに付いていたロシアがアメリカに持ちかけて実現したものであった。
 これらの動きから、シリア政権は言わば、国連、その他関係諸国によって国の代表と認められたに等しくなっていった。この時点から、米国の戦争介入を期待しつつアサド政権を認めないと言い続けたシリア国民連合は、急速に力を無くしていく。2014年1月に国連主催の下にジュネーブに40か国が参加した第2回シリア和平会議では、こんなことも起こっている。アメリカに支えられたシリア国民連合は反政府側の唯一の代表と認めさせることには成功したが、シリア政権の出席を認めないとあくまでも言い張って破れたのである。このことによってシリア国民連合の幹部半分が一時脱会するという大事件にまで発展している。

 さてこれ以降は言わば三つ巴の戦争となる。政権軍、イスラム国、後にファトフ軍となるその他無数の勢力と。ただし、イスラム国とその他勢力との間にさえいつも流出入があるし、その他勢力にもヌスラ戦線などアルカーイダ系過激派が大勢力であったから、反政府軍と言ってもいわゆる「穏健派」などとは言えない。アメリカなどが訓練までして何度も育成を繰り返した、シリア国民連合と関わりが深い自由シリア軍などはむしろ弱小勢力と言って良かった。百戦錬磨のイスラム国、アル=カーイダ系列軍に比べれば現に弱かったし、他軍への集団逃亡も絶えなかったからである。

 さて、2012年夏頃から激しくなっ戦いには、サウジ、トルコ、カタールが金も人も武器も出してきた。ただ、彼等が頑張るほどに、ロシア、イラン、レバノンのヒズブッラーの政権側支援も膨らんでいった。諸外国の経済制裁によって政権支配地域を縮小せざるを得なくなっていたから、余計にそうなって行った。が、イスラム国の台頭により、事態はさらに変化していく。

 シリアのイスラム国が他との違いをはっきりさせ始めたのは、シリア最大のアル=カーイダ・ヌスラ戦線と決裂した2013年ごろからで、アメリカはこのイラク・シャーム・イスラム国をイラク・アルカーイダの別名と見ていた。特にイラク・モスルでバクダーティーが、2014年6月にカリフ制イスラム国を建国宣言した後にはアメリカは、これを「
最大の脅威」と観て「テロとの戦い」の真っ正面に据えることになった。この8月にはイラクで、9月にはシリアで、イスラム国への米軍による爆撃が始っている。
 なお米軍によるシリア人軍事訓練キャンプは、以下のものが有名である。一つは、2013年3月の英米仏によるヨルダンキャンプ。2015年1月にはトルコで15000人の長期訓練を行っている。同じ年11月には、またヨルダンにおいて「新シリア軍」なるものの育成、編成に務めた。このようにして訓練した兵士が過激派部隊へ武器諸共に逃亡していくことが多かったとは、前にも述べたとおりである。なお、CIAが独自に行う反政府軍兵士育成キャンプも存在した。

 イスラム国の台頭の結果、サウジとトルコが手を結ぶようになる。2015年1月にサウジに新国王が生まれると、その3月には両国支援のシリア反政府軍の統一が行われて、これがファトフ軍と名付けられた。対シリアで最も強硬姿勢を取っていたカタールもこのファトフ軍を支え始めて、以降しばらくファトフ軍とイスラム国との相互支援的挟撃によって、政権軍はまたまた後退を続けて行くことになった。

(続く)】


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ニシノジャパン(6)サッカー協会長辞任が必然 文科系

2018年05月16日 02時38分40秒 | スポーツ
 標記のようなことを書く前にも、本日は言っておきたいことがある。今日16日、アジアチャンピオンズリーグに唯一勝ち残っている鹿島の決戦がある。第一優勝候補と言って良い上海上港に鹿島が3対1で勝った第1戦に続く、第2戦目だ。これに勝つようなら、鹿島の優勝がクローズアップされてくる。すると、今年末の各大陸優勝クラブトーナメントに出場できることになる。そして、ここで南米代表を負かして世界2位クラブになった実績を持っている鹿島だからこそ、今日16日の上海上港戦は否が応でも大注目ということ。日本勢には珍しいようなコンタクトと走りを、ここでは特に見せ続けて来た鹿島なのだから。


 さて、ハリル解任の経過を少し詳しく調べた。その結論として、以下を主張したい。
①ロシアの結果がリーグ戦落ちならば、会長は辞任すべきである。
②ただし①には条件がある。ひとつは、ハリルのチームコンセプト、選手選考基準と異なる方針に替えて敗れるならば絶対。これを取り入れて敗れるならば、戦いの内容次第とも。

 以上の結論の説明をする。
 解任理由を会長はこう述べた。
①『選手とのコミュニケーション、信頼関係が崩れている』
②『このままでは勝てないと判断したので、勝つ可能性を少しでも増やすために、協会長権限である監督進退を判断した』

 
 上で、信頼関係が崩れていると結論したのは、看板選手らの監督批判の直訴などがあったからだ。その監督批判に対して、監督の意見は何も聞かずに解任を決めたことも明らかである。選手側からの意見だけを取り入れて「このままでは負けるから、ちょっとでも可能性を!」と、会長が判断したということであろう。なお、選手・監督間の意見の相違とは、ブラジル大会でも問題になった「繋ぎを増やすか否か」にあることも明らかだ。

 さて、これでもって「繋ぎ主体のチーム」に変えるならば、ハリルを選んで強化期間を無駄にした会長責任が問われる。また、ハリルコンセプトを今後も一定取り入れて敗れるとしても、選手の意見だけを取り入れて監督の意見をなぜ聞こうともしなかったのかという落ち度が、指摘されるだろう。
 そもそも信頼関係とは相互責任ではないのか。そして、代表監督と看板選手との対立なんて、サッカーでは日常茶飯事に起こること。そこで一方的に選手の意見だけを容れた協会の態度は、今後に大きな禍根を残した。
「自分を選びそうもないと見える監督なら、著名選手などはどんどん協会に批判直訴をすればよい!」

 いずれにしてもこれは、会長責任問題である。ロシアで予選リーグを通らなければ、サッカー協会会長は辞任すべきである。そしておそらく、良い結果も生まれないだろう。生まれる可能性は、31日の選手選考メンバーを観れば分かると目論んでいる。
 ちなみにもう一つ、ハリルの元でもコーチを務めていた手倉森の意見がどれだけ取り入れられるかが選手選考も含めた今後の鍵になると、僕には思われる。取り入れれば勝つ可能性が増えるし、取り入れなければ弱くなり負けると愚考するからだ。先年、弱小仙台の躍進を導いた手倉森の戦い方と、彼が世界にも通じているというその力に、僕は西野よりもはるかに大きい期待を寄せている。彼に代表の希望を観るような心境で。
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書評 「シリア情勢」(2)  文科系

2018年05月15日 20時13分33秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 先回も見たように、米政権がこのままであれば、イラン問題含みでシリアとベネズエラ現政権との転覆に関わる何かが、必ず起こると観る。そしてそのことはまた、世界的な格差の2極分化がさらに進んでいく道であるとも思う。原油の世界独占価格化とは、米英大金融が世界中の普通の民からお金を奪い取る一大方法なのだ。ガソリン代が上がるだけではなく、輸送費絡みで全ての物価も上がるということも含めて。トランプが「北朝鮮との融和・イラン敵視」を西欧の反対を押し切ってまで強行したのは、そういうことだと観てきた。イラン核合意からアメリカが抜けた途端に原油価格が上がり、アメリカの株が高騰したことも、その証拠になる。過去も常に、イラン問題が起こる度にこうなってきた。
 ちなみに、トランプ政権の国務長官レックス・ティラーソンは、エクソンモービルの前会長である。3月1日まで合衆国国家経済会議委員長と経済担当大統領補佐官とを務めたゲーリー・コーンは、ゴールドマンサックスの社長であった。彼がこの職を退いたのは、鉄鋼、アルミなどの関税問題。この問題では、物と金融とそれぞれの米経済界が、トランプ政権の下で一部矛盾をはらんでいるということなのであろう。
 ちなみに今は、資源大国ロシアが、イラン転覆でアメリカと蔭の取引をしていなければ良いのだがと、願うばかりだ。
 シリアとイランを潰せば、サウジアラビアなどアラブの王制、貴族制国家が米英大金融とともに世界の民主主義発展の足をますます引っ張っていくことになるだろう。サウジの新しい皇太子がトランプ一家を大歓迎した去年の出来事が、鮮やかに思い出されるのである。


【 書評 「シリア情勢」(2)  文科系 2017年07月17日

 今回は「第2章『独裁政権』の素顔」、「第3章『人権』からの逸脱」、「第4章『反体制派』のスペクトラ」の要約をする。

 アサドの父ハーフィズはバース党の若手士官として政権を掌握し、長く共和制首長として君臨してきた。その次男がこれを世襲したから、シリア政体は世襲共和制と呼ばれる。アサドはイギリスで学んだ眼科医で、その妻も英国生まれの元JPモルガン銀行幹部行員である。父の時代のいわば強権安定政権に対して、37歳で世襲後は一定の政治自由化に努めた。政治犯を認めて恩赦をなし、メディア規制を緩和したなどである。
 政体を支える組織は強力で、このようなものがある。政権の蔭の金庫役「ビジネスマン」。数万人の武装部隊にも成り代わることが出来る「シャッビーア」と呼ばれる裏組織。及び、国防隊などの予備軍事組織である。つまり、血族を中心に大きな参加型独裁ともいうべき政体ということだ。

 これに対する「人権派」諸組織はシリアの友グループと呼ばれる外国勢力によって支えられていた。米英、サウジ、カタール、トルコである。彼らは、アサド政権の背後にいたイラン、ロシア、レバノン・ヒズブッラーをも、人権抑圧派として当然批判した。

 シリアの友グループのデモなどが過剰弾圧されたというのは事実である。樽爆弾やクラスター爆弾などが、解放区などにも使用されているからだ。ただし、両勢力のどちらがこれを使ったかは、判明していないものが多い。シリア人権ネットワークの発表は解放区のみの映像などであって明らかに偏向があるし、シリア人権監視団も「民間人」というのはまやかしの側面がある。
 また、アサド政権が難民を作ったというのも、おかしい。難民が急増した時期がイスラム国やヌスラ戦線などの台頭によってアルカーイダ化が進み、国民の命が脅かされる事態が進んだ時期と重なるからである。

 初め、英米はシリアに経済制裁をしようとしたが、国連ではすべてロ中の拒否権にあって有志国としてやっている。ただし、欧米は初め「政権崩壊」を楽観視していて、アルカーイダ化が進み、テロが激化して国際問題になるにつれて、アサド政権の「化学兵器使用」を強調し始め、オバマによる制裁戦争寸前の地点まで行った。が、政権側の化学兵器全廃、引き渡しがロシア・国連の努力で成功すると、戦争は遠のいた。シリア国民連合はこれに反対したが、他二つの反体制派政治団体はこれを歓迎した。
 なお、2014年のマスタードガス使用がイスラム国によってなされたことは、はっきりと分かっている。

 いわゆる「反体制派」「自由・民主派」がいかにも強大なように語るのは、実力で政権を挫いたイスラム国やヌスラ戦線の拡大、残酷な仕業を隠すやり方でもある。それこそ無数の「穏健派」武装勢力が、イスラム国やアルカーイダと、外国人も含めた戦闘員の相互流出入を絶えず繰り返していたことでもあるし。欧米などシリアの友グループは、シリアのアルカーイダなら、政権抵抗勢力として支持していたと言って良い。現に、イラクで14年6月にカリフを名乗ったバグダーティーと、シリア・イスラーム国のジャウラーニーとは、仲違いをしている。イラクとシリアのイスラム国は別組織になったとも言えるのである。米英サウジなどシリアの友グループは当初、シリアのイスラム国を「民主化闘争勢力」と扱っていたことさえとも言える。

 ホワイト・ヘルメットとよばれ、ノーベル賞候補にも上がった「中立、不偏、人道」の救助・救命・治療団体が存在した。2016年には8県にまたがる114のセンターを有し、2850人を擁する大きな組織だ。が、これが不偏というのは偽りであろう。「解放区」でしか活動していないから、イスラム国、アルカーイダ、その他諸団体のいずれからも認められてきた一方で、政府軍地区ではなにもやっていないのだから。この組織を作ったのは、英国人ジェームズ・ルムジュリアー、元NATOの諜報員であり、国連英国代表部にも在籍し、2000年代半ばからはUAEの危機管理会社に移っている。このルムジュリアーが、2013年にトルコのイスタンブールでシリア人の教練を始めたのがホワイト・ヘルメットの発足であった。この組織には、米英独日の資金が流れ込んでいる。アメリカは13年に2300万ドル、イギリスも12~15年で1500万ポンドをここに支出している。】
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書評「シリア情勢」  文科系

2018年05月14日 08時33分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
朝鮮半島がひとまず、と観えたら、「中東・積年のアメリカ・イラン問題」がにわかに世界最前線としてクローズアップされてきた。今や、トランプ政権最重要のブレーンの一人・娘婿ジャレド・クシュナー(有名なイヴァンカの夫)はユダヤ教徒。トランプ政権発足後すぐにエルサレム首都宣言とか、トランプとサウジ新皇太子との相互訪問とかが起こったのも、このクシュナーの助言もあってとか。そして、今の中東問題を理解するのに不可欠なのが、長年続いた米英のシリアへのこだわり。これらのことは、ここでも紹介したトランプ政権初の内幕物「炎と怒り」(この本の内容紹介は、今年4月8日から5回連載があります)の通りです。

 去年7月に掲載した4回連載の書評、内容紹介を再掲します。


『 書評 「シリア情勢」(1)  文科系 2017年07月16日

 青山弘之著「シリア情勢 終わらない人道危機」(17年3月22日第一刷発行)の要約第一回目である。東京外大アラビア語科と一橋大学院社会学研究科を出て、日本貿易振興会付属アジア経済研究所などを経られた、シリア研究30年という東京外語大教授という方だ。
 この本全6章と「はじめに」「おわりに」の8つのうち、今日は「はじめに」と1章を要約する。ここはこの本の概要が最もよく分かる箇所だ。世界を騒がせているが日本政府は冷淡な難民問題の最大震源地。かつ、イラクと並ぶ21世紀の悲惨極まりない世界史的大事件国。こういう地点には、現代世界史が集約されているということも可能と愚考した


 はじめに

 ダマスカスという世界最古都市の一つを有し、かつては中東随一の安定、強国を誇ったシリア。その面影は、2011年3月「アラブの春」(この作者が括弧付きで使う言葉は全て、「そう呼んでよいのか?」という疑問符付きと、ご理解頂きたい)の失敗以来すっかり消えてしまった。47万人が亡くなり、190万人が傷を負った。636万人の国内難民と、311万人の国外難民とを合わせると、全国民の46%が家を追われたことになる。
 この悲劇の根本的な原因の一つは確かに、このこと。シリア・アサド政権の初動の誤りである。過剰防衛弾圧と述べても良い。ただし、通常言われる所の「内戦」とか「自由と人権を求めた反政府派」などという通常解釈も頂けない。内乱の最大主役、イスラーム国とかヌスラ戦線とかはシリア内部の反乱などとは言えないからである。シリアへの米軍空爆は、2014年8月にイラクで起こった翌9月にシリアでも始まったものであるし、2015年9月にロシアが大々的に始めた空爆が、結局この「内乱」を終わらせる雲行きになっている。2015年はまた、シリア内乱がイスラム国による世界的テロ事件として広がった年でもある。

 シリア研究30年の筆者として、この「内戦」をば、可能な限り「冷静」、「冷淡」に記述してみたいと、述べていた。


 第1章 シリアをめぐる地政学

 シリアの「内戦」は、以下のような5段階を辿った。「民主化」「政治化」「軍事化」「国際問題化」「アル=カイーダ化」である。そのそれぞれを記述していこう。

 まず当初の「民主化」は、以下のようにハイジャックされた。
 シリアの「民主化」勢力は強い政権に対して小さかったが、2011年8月の「血のラマダーン」で1000人ほどの国民が虐殺されると、一挙に急進化した。「アラブの春」のどこでも軍の離反が起こり、シリアも例外ではなかったが、2~6万とも推計される「自由シリア軍」では、すぐに海外亡命が始まっている。以降、反政権政治勢力3派による「政治闘争化」していくのだが、これらのうちクルド民族関連を除いては通常の社会生活とはほとんど接点を持たず、海外在住でお金持ちの「ホテル革命家」など夢想家たちの団体ともいえる。
 シリア国民連合は、カタールはドーハでアメリカの金と支援により結成されたものだし、国民調整委員会はダマスカスで結成されたが、古くからのアラブ主義者、マルクス主義者などから成っていた。民主統一党だけが、5万人の人民防衛隊や女性防衛隊を持つなど社会との接点を持っているが、これはクルド民族主義政党なのである。

 この政治化混乱は2011年後半から内乱に発展していき、政府支配地がどんどん縮小されていく。諸外国の猛烈な「援助」があったからだ。①欧米とサウジ、カタール、トルコなど「シリアの友グループ」は、政権を一方的に否定し、「国民を保護する」と介入したし、②ロシア、イラン、中国は、「国家主権は尊重されねばならぬ」という立場だった。③インド、ブラジル、南アフリカ(今で言うBRICS諸国の一角である)は、アサドの過剰防衛を批判はしたが、国家主権尊重という立場であった。
 世界史的に見てシリアの地政学的位置が極めて大きいから、こういう事態になったという側面がある。まず、東アラブ地区というのは、反米・反イスラエルのアラブ最前線基地であった。冷戦終結後に米の強大化から、親イラン・ロシアの性格を強めた。レバノンのヒズボラ、パレスティナ諸派とも結びついていく。ロシアは、地中海唯一の海軍基地をシリア内に有しているし、2015年以降にはラタキア県フマイミール航空基地に空軍部隊を常駐させている。イランとは、1979年王制打倒革命以降フセイン・イラクを共通の敵とした味方同士である。
 つまり、各国がせめぎ合う地点における前線基地として、「それぞれの正義」が飛び交って来た国なのである。「自由と人権」「国家主権」そうして残ったのが「テロとの戦い」。

 この混乱の中でそもそも一体、誰が「悪」なのだろう。
 アル=カーイダとは総司令部という意味だが、イスラム原理主義に基づくこの組織はアフガンにおいてビンラディンが創始し、ザワーヒリーを現指導者としている。この性格は以下の通りである。
 ① 既存社会を全否定し、イスラム化を図る。
 ② ①の前衛部隊として武装化を進め、ジハードを行う。
 ③ 目標はイスラム法に基づくカリフ制度の復興である。
 なお、著者はこの勢力は他の反政府派とは全く違うとして、こう断定している。この点は極めて興味深い。
『懐古趣味や「神意」を引き合いに出して展開される利己主義がそれを下支えしている点で異彩を放っていた』

 シリアのアル=カイダはヌスラ戦線とイスラーム国が主だが、これ以外にもいわゆる過激派は多く、また、無数の反政権派軍事勢力からこの二つへの流入流出も多いのである。なお、「自由」「人権」よりも、「イスラーム」を提唱した方が義援金や武器取得で有利という特徴が存在し続けてきたのも大きな特徴だ。
 外国人戦闘員の数は、2015年末の推計で約100カ国から3万人。多い国はこんな所である。チュニジア6000人、サウジ2500人、ロシア2400人、トルコ2100人、ヨルダン2000人などだ。なお、これらの外国人戦闘員はサウジ、カタール、トルコなどに潜入支援をされて、トルコ、ヨルダン経由などでやってくる。


(あと数回続きます。途切れ途切れになるとは思いますが、頑張ります。なんせ21世紀世界史の最大悲劇の一つですから) 』
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ロシアW杯での理想的な戦い方 1970

2018年05月14日 00時00分28秒 | Weblog
一応これを先に書いておく。あくまで個人的な希望として。

相手の3ヵ国は日本よりも格上になる。当然主導権は相手が持つ場面が多くなるだろう。
そんな中で前監督のハリルはCBやSBからワントップの大迫にボールを放り込んで後は個人技で何とかしてくれというサッカーをやっていた。ウクライナ戦でもベンチから盛んに『蹴れ!蹴れ!』と声が飛んでいました。
しかし、こうしたサッカーが何とか通用したのはアジア予選数試合だけ。ハイチやマリ、ウクライナ辺りのディフェンダー達には日本レベルの放り込みは全く通用しませんでした。挙げ句には日本と同じく監督更迭した韓国相手にも惨敗。
格上相手にはこの戦い方が正しいとするハリル信者の夢を打ち砕きました。

そりゃそうなんだよw
格上チームからしたら格下チームが策もろくに考えず放り込んでくれる程、守備的にラクな試合は無い。又、韓国からすれば日本が5年前の自分達のようなサッカーを始めたぞと喜んだと思うよ。
そして、ハリル監督のサッカーが致命的だったのは、もうひとつ。相手攻撃時にマンツーマンでDFすること。この前フィジカルがどーのこーのって話が出たが、そのフィジカルの差がモロに出るのがこのマンツーマンDF。
結局は上記のチームにいい様に攻撃され失点を重ねた。
このままロシアに行ったら果たして何点失点するのだろうという状態迄堕ちた。

そして解任。

但しハリル前監督にも良かった点はある。その最大のものは、とにかく代表チームのメンバーを取っ替え引っ替えしたこと。メンバーを固定してあんなサッカーやってたらそれこそ向こう5年位は立ち直れなかったw

さて、西野監督に交代した代表だが、テストマッチがありません。まあメンバー発表直前に1試合あるがこんなもんは参考にはならない。監督がどんなサッカーをやるかは発表されるメンバーを見ないと分からない。
但し、推測は出来る。ハリル監督に通用しないと烙印を押された繋ぎのサッカーのメンバーが重用されるだろう。
で、そうしたメンバーを中心にどんな戦いをロシア大会でやってくれるのが理想的か。

ツートップでFWとMFが攻撃を組み立てて欲しいんだよね。格上相手に只でさえ数が少ない攻撃の場面で、ハリルのような放り込みやってたらパス1回で攻撃終了なんだから。ウクライナ戦でそんな場面が何度もあった。マリ戦でも。だから丁寧にボールを回せばいい。同じ相手にボールを奪われるにしても、こうやって時間を掛ける攻撃をやっていれば相手のスタミナは確実に消耗する。そこから相手にもミスが生まれる。

ザック時代と違うのは、乾というリーガーでも屈指のドリブラーもいる。今ドイツでブレーク中の若い伊藤君もドリブラー。パスだけでは無くドリブルからの崩しも日本にはある。寧ろ今やそれが最大の武器になるかも知れないレベルにある。
そして、そもそも大迫の能力をポスト役だけで終わらせるワントップがおかしいんだけどね。彼のパス能力、シュートのスキルはツートップの方が確実に活かせる。宇佐美と組ませればお互いにパス交換からシュート迄持っていけるスキルは十分にある。

少なくともウクライナ戦迄の様に少ない攻撃機会を訳の分からないロングボール1本で終わらせる程マヌケな攻撃にはならない。
今回のW杯で鍵になるのは日本の攻撃だろう。コロンビア、セネガル、ポーランド相手に失点するのは仕方無い。ゼロで押さえろと考える方が無理な相談。ましてアジア予選でもその後のテストマッチでも失点を重ねているわけだから本番だけ上手くいくと思うのがアホらしい。だから、それよりも如何に攻撃の時間を増やして尚且つ得点出来るかが鍵になる。

ま、殆ど試合に出ていない香川は選ばないで欲しいんだよな~w
香川を選ぶ位ならまだ遠藤を選んだ方がマシだ。FKもあるから。
ブラジル大会でフラフラ持ち場放棄して惨敗の最大の戦犯の香川は何とかメンバー外でお願いしたいところなんだよね。
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チョムスキーが説く「イラク戦争」   文科系

2018年05月12日 10時36分34秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 トランプになって、中東の雲行きがにわかに、またまた怪しくなってきた。大統領就任すぐに敢えてわざとのように行ったエルサレム首都宣言。これによって、イスラムの人々の神経を逆なでした上に、今度はイラン敵視政策の一方的な大々的再開である。傍らでは、イスラエルのイラン攻撃をどんどん広げ、深化させた上でのこと。朝鮮半島で融和策?が進む分、こちらでは戦争政策の再開である。満を持しての、と言って良いと思う。

 アメリカが起こす中東事件、その何かの政策を観る場合、短期的な視点では何も分からない。目先のことで常に目眩ましを掛けてきたからである。ちょうどイランを潰して、50万の死者を出したイラク戦争の時の、ありもしなかった「大量破壊兵器」のように。オーソリティーにご登場願おう。長年のアメリカ外交ウオッチャー、チョムスキーのある本の内容紹介を再再掲しますので、よろしく。


【 チョムスキー「イラク戦争の米世界戦略」  文科系 2017年09月04日

 ノーム・チョムスキーをご存じの方も多いだろう。偉大な言語学者にして、現代世界の全ての学者たちの論文で聖書、プラトンに次いで引用される著作が多い現存の人物である。この書を書いた当時87才のアメリカ人だが、米国政府の戦争政策の長年の研究者、告発者でもある。
 彼の著作に「覇権か生存か」という隠れた世界のベストセラーがあって、そこで問題にされているイラク戦争部分を抜粋してみる。2004年9月発行の集英社新書による全9章(新書版337ページ)のうち、主として『第5章 イラク・コネクション』50ページ余の部分から。なお、同書にはこんな壮大な副題が付いている。『アメリカの世界戦略と人類の未来』。
 人が歴史の今ばかりを観させられて、以下のような過去を忘れるようになったことが、民主主義もなかなか正しく機能しない事態をもたらしていると愚考してきた。ちょっと長いが、お読み願えれば嬉しい。

(1)イラク戦争の経過

 1990年までは、アメリカはフセインをずーっと支え続けてきた。イラン・イラク戦争(80~88年の時以降ずーっとイランこそがアメリカの標的だったし、89年10月にもフセイン政権に食糧、化学薬品、科学技術など多大な支援をしている。中東安保の柱として彼を活用して、その「巨悪」にも目をつぶってきた。大量破壊兵器もどんど支援してきた。ところが・・・。
1990何8月 フセインがクゥエート侵攻
1991年1月 湾岸戦争開始
1991年3月 全国で反フセイン暴動発生。アメリカは、フセインによるこれの鎮圧・大虐殺行動を黙認 
2001年9月 9/11テロ事件
2001年10月 アフガニスタン戦争
2002年1月 ブッシュ大統領「悪の枢軸」発言。イラク、イラン、北朝鮮を名指す。
2002年9月 アメリカ、国家安全保障戦略発表。予防戦争(先制攻撃)概念を世界に表明
2002年10月 米議会、対イラク武力行使容認を決議
2002年11月 国連が4年ぶりに、イラク大量破壊兵器を査察
2003年3月 イラク戦争始まる

(2)その「台本」

①国際版
『1980年代における「対テロ戦争」の二大中心地は、中米と、中東及び地中海地域だった』が、その中東を観ると、
『ワシントンにいる現職者が取り組んだ活動の一つは、よく知られるようになった。1980年代にCIAとその関係組織がイスラム過激派を募り、正規軍及びテロリスト部隊としての組織化に成功した事実だ。カーターの国家安全保障担当補佐官だったズビグニュー・ブレジンスキーによれば、その目的は「ロシア人をアフガンの罠におびき寄せること」であり、初めは秘密工作によってソ連をそそのかし、アフガニスタンを侵略させることだった』
『その直後の結果として起こった戦争のためにアフガニスタンは荒廃し、ソ連軍が撤退しレーガンのイスラム聖戦士に取って代わられると、更に悲惨な状況になった。それがもたらした長期的な結果は、20年に及ぶ恐怖政治と内戦だった』
『ソ連軍の撤退後、アメリカとその同盟者(その中にアルカイダを始めとするイスラム聖戦士が含まれる)によって徴募され、武装及び訓練されたテロ組織は矛先を他国に向け・・・・・(1993年には)関連グループが「CIAのマニュアルで教えられた手法」に従い、世界貿易センタービルを破壊する一歩手前までいった。計画を立てたのは、シェイク・オマル・アブドル・ラーマンの支持者だったことが判明している。ラーマンはCIAからアメリカ入国の便宜を図ってもらい、国内でも保護されていた人物だ』

 とまーこんな経過で、イスラム戦士が育成され、911からイラク戦争へと繋がっていったと、チョムスキーは説いている。
 
②国内版
『(2000年に大統領になった)ジョージ・ブッシュ二世のために、広報活動の専門家とスピーチライターは、天国へまっしぐらの実直な男というイメージを作り出した。「理屈抜きの本能」を信じ、自らの「展望」と「夢」を思い描きながら、「世界から悪人を追放」するために前進する男、要するに古代の叙事詩や子供のお伽噺に、カウボーイ小説を混ぜ合わせたごとき滑稽な人物像である』
『(ブッシュらが言うところの)テロとは何を指すのか?・・・・適切な答えが出れば意義あるものにもなろうが、こうした疑問は公開討論の場には決して持ち込まれない。代わりに、都合のいい定義が採用された。テロとは、我々の指導者がそう宣言するものなのだ』

 00年大統領選挙で、ブッシュは民主党候補ゴアと争って、有名な「疑惑の辛勝」を勝ち得た。選挙への無力感が過去最高レベルの50%以上に達した。04年の選挙を控えて、さらに落ちた人気への新戦略が必要だった。軍事費増、富裕層減税から社会保障費削減がさらに進んだからだ。
 そこから『先制攻撃による新しい過激な軍事戦略の提出』に国民の目を向けさせる事に励んでいった。この「冒険主義」には多くのリスクがあったが、以下の狙いに邁進したわけである。『米国社会の徹底的な改造に着手し、それによって1世紀にわたる進歩的な改革を押し返すことと、世界を恒久支配するための帝国の壮大な戦略を確立させることである。そうした目的に比べれば、それに伴うリスクは、些細なことと思えるのかも知れないのだ』(P183)

(3)イラク戦争で問われているもの

『02年9月には、国家安全保障戦略が発表された。でっち上げられた恐怖によって、イラク侵攻に向けて国民の間に充分な支持基盤ができ、意のままに侵略戦争を始める新たな規範が設けられた』
『イラクとの戦争は、それを実行すれば大量破壊兵器とテロが拡大するかもしれないという認識のもとに実行された。だが、それに伴うリスクは、イラクに対する支配権を強化し、予防戦争の規範をしっかりと築き、国内における政治力も高められるという見込みと比べれば些細なことと考えられた』

 こうして著者は「覇権か生存か」で前者を歴史的大局的に描きながらも、後者に希望を託するのである。その下りは、このようなものだ。
『現代史を通じて、人権状況は著しく改善され、生活の一部の面では民主的な管理が行き届くようになった。こうした展開が、啓発された指導者の贈り物であることは滅多にない。ほとんどの場合、一般の人々が戦い、国家やそれ以外の権力中枢に課してきた展開なのである』
『今日の歴史の中に、人は二本の軌道を見出すはずだ。一本は覇権に向かい、狂気の理論の枠内で合理的に行動し、生存を脅かす。もう一本は「世界は変えられる」ーー世界社会フォーラムを駆り立てる言葉ーーという信念に捧げられ、イデオロギー的な支配システムに異議を唱え、思考と行動と制度という建設的な代案を追求する。どちらの軌道が支配するかは、誰にもわからない。こうしたパターンは歴史全体によく見られるが、今日の決定的な違いは、懸けられているのが遙かに重大なものだということである』】
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ひとを小バカにした話   らくせき

2018年05月11日 09時42分07秒 | Weblog
その一 柳瀬とかいう男が国会で2度もウソをいうこと。

その二 アメリカの要人が日本の法律の及ばない飛行場から
入出国をしていること。

その三 小ばかにされた国民の多くががなにも言ず、
    それを見越している最高権力者がのうのうと居座り続けていること。


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