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路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【兵庫県】:私的情報漏えい問題 文春記事の取材源も調査依頼、議会には説明せず

2025-04-18 06:49:40 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【兵庫県】:私的情報漏えい問題 文春記事の取材源も調査依頼、議会には説明せず

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県】:私的情報漏えい問題 文春記事の取材源も調査依頼、議会には説明せず

 兵庫県の元西播磨県民局長の公用パソコンに記録されていたとされる私的情報などが交流サイト(SNS)上で拡散された問題で、県が設置した第三者調査委員会に対して、県側が週刊文春電子版記事の情報源を調査するよう依頼していたことが分かった。<button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-1gjvus9-0 cZwVg" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26">兵庫県庁の庁舎=神戸市中央区下山手通5</button>

兵庫県庁の庁舎=神戸市中央区下山手通5(Copyright(C) 2025 神戸新聞社 All Rights Reserved.)

 ■【写真】百条委の非公開音声「私が立花氏に渡した」 兵庫の増山県議告白 N党党首が入手「申し訳ない」  

 記事は告発文書を巡る斎藤元彦知事らの対応を批判する内容だった。週刊文春の情報提供者を探る調査内容について、県法務文書課は取材に「報道機関であっても調査は必要と判断した」としている。  

 私的情報は昨年11月以降、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表がSNSや動画サイトに投稿して拡散。県は県保有情報かどうかや漏えい経路を調べるとして今年1月、3人の弁護士でつくる第三者委を設けた。3月末に調査を終えたが、報告書の内容は公表されていない。  

 県法務文書課によると、調査対象にはSNSと動画投稿サイトのほか、昨年8~9月に配信された週刊文春電子版の記事6本が含まれた。内容は元県民局長らへの「調査実施手順書」や事情聴取の音声データなどで、調査費を計上する補正予算を可決した県議会にも説明しなかった。同課は「外部からの指摘を踏まえた対応。恣意的に選んではいない」と取材源の秘匿に踏み込む意図を否定した。実際に調査、聴取したかどうかは「答えられない」としている。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・元西播磨県民局長の公用パソコンに記録されていたとされる私的情報などが交流サイト(SNS)上で拡散された問題・県が設置した第三者調査委員会・週刊文春電子版記事の情報源を調査するよう依頼していたこと】  2025年04月08日  07:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探しの第三者委員会」に違法疑惑 県議会が指摘した「地方自治法」問題

2025-04-18 06:49:30 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探しの第三者委員会」に違法疑惑 県議会が指摘した「地方自治法」問題

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探しの第三者委員会」に違法疑惑 県議会が指摘した「地方自治法」問題

 ◆元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が指摘

 斎藤元彦兵庫県知事をめぐる問題。これを告発した元県民局長の私的情報とされる内容が、昨年11月に立花孝志氏のSNSなどを通じて漏えいした件を調べる目的で第三者調査委員会が設けられた。しかし、同委員会は「週刊文春記事の情報源」を調べるよう県から依頼されていたことが判明。「報道への圧力」として批判が集まる中、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、「この委員会自体に違法の疑いがある」と指摘した。

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           西脇亨輔弁護士(ENCOUNT編集部)

 ■ 【画像】斎藤知事との2ショットも…PR会社の女性社長による実際の投稿  

 県当局が、第三者委を使って斎藤知事に批判的な週刊文春報道の「ネタ元」を調べようとしていたと判明。驚きが広がっているが、そんな中、さらに信じがたい事実が神戸新聞で報じられた。  

 県が第三者委に「週刊文春のネタ元探し」を頼んだことは、県議会に「秘密」にされていたというのだ。一方で議会は、情報漏えいに関する2つの委員会の調査に計1200万円の予算を決めている。つまり、斎藤知事の下で県当局は文春の「ネタ元」を調べることは隠したままで、調査予算を引き出していたことになる。  

 なぜ、県当局にこんなことができたのか。その背景には委員会の作り方の「からくり」がある。  

 県が外部専門家による「調査委員会」などを作る場合、県議会に「条例」で設置を決めてもらうのが本来の姿だ。我が国は民主主義なので、住民に選ばれた議会が行政を「条例」でコントロールするのは当然。これは、知事などが独断で「調査」や「審理」の組織を作って暴走しないために必要な仕組みで、「条例主義」と呼ばれる。地方自治法でも、自治体が調査会などの機関を設置するには法律か条例が必要と決められている。兵庫県が第三者委についてこの手続きを踏んでいたら、議会も事前に調査事項に気付くことができただろう。 

 しかし、文春の取材源を突き止めるよう依頼された委員会をはじめ、斎藤元彦知事問題をめぐる第三者委はどれも「条例」の定めがなかった。これは地方自治法に反しているのではないか。この点を今年2月の県議会で上野英一県議が指摘したところ、県当局は条例なしで第三者委を作った理由を次のように説明した。

 「県が兵庫県弁護士会からの推薦を受けた各委員との間で、個別に調査委託契約を締結し、調査を委託したものでございます」「調査の主体は各委員であって、必ずしも機関としての性質を有しているものではございません」  

 つまり、「調査の契約は弁護士一人ひとりと個別に結んでいて、その弁護士がたまたま何人か集まって作業しているだけ。『委員会』という『組織』を作ったわけではないので、条例は要らない」というのが県側の説明だ。  

 だが、このような弁明を「へ理屈」というのではないか。こうした理屈を使った例は兵庫県以外にもあるのだが、その試みは裁判で「違法」とされることが多い。2023年12月には、愛知県が「表現の不自由展」の少女像が議論を呼んだ「あいちトリエンナーレ」を検証する委員会を「条例なし」で作り、住民から訴えられた。名古屋高裁はこの委員会設置を「違法」と判断。「一定の範囲の事項についてその真実を調べる」ための調査委員会は、条例なしでは作れないとした。日本弁護士連合会が作った地方公共団体の第三者委のガイドラインも「契約は弁護士一人ひとりとしている」という言い訳は、「委員会を脱法的に設置しているとして、違法と評価される可能性があることに留意しておくことが必要である」と明記している。

 事態を正せるのは司法のみか

 元稿:ENCOUNT 主要ニュース 社会 【話題・地方自治・兵庫県・知事によるパワハラ疑惑】 2025年04月10日  15:20:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探し」は許されるのか…第三者委が隠してきたもう一つの「不都合な真実」

2025-04-18 06:49:20 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探し」は許されるのか…第三者委が隠してきたもう一つの「不都合な真実」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【斎藤元彦知事問題】:「文春ネタ元探し」は許されるのか…第三者委が隠してきたもう一つの「不都合な真実」

 ◆元テレ朝法務部長・西脇亨輔弁護士が指摘

 斎藤元彦兵庫県知事をめぐる問題を告発した元県民局長の私的情報とされる内容が、昨年11月に立花孝志氏のSNSなどを通じてネット上に漏えいした。この問題で斎藤知事が設置を表明したものの実態が不明だった「第三者による調査」の実施要綱が、3月31日に公開されて波紋を呼んでいる。その調査依頼対象には、立花氏の発信だけでなく、週刊文春記事の情報源の調査も含まれていたのだ。報道弾圧という指摘もされる中、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、兵庫県側の「狙い」を指摘した。

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西脇亨輔弁護士© ENCOUNT

 斎藤知事の下で、兵庫県が週刊文春の情報源を調べ上げようとしている。この衝撃の事実を前に頭に浮かんだのは、「暴走」という2文字。そしてこの事態を読み解くカギは「立花孝志氏の件と抱き合わせ」という点にあると感じた。

 昨年11月末、立花氏が突然、斎藤知事問題を告発した元県民局長の私的情報をSNSで公表。県の調査情報の漏えいが疑われて斎藤知事は第三者による調査を表明したが、調査のメンバーや詳細はなぜか明かされないままだった。そして3月31日、ようやく調査の「実施要綱」が公表されて明らかとなったのは、驚くべき事実だった。

 「情報漏えい先」として調査の対象とした10件のうち6件が、立花氏関連ではなく「週刊文春」の記事だったのだ。県は調査委に、SNS関連だけでなく、斎藤知事をめぐる疑惑を報じた「週刊文春」についても「情報の漏えい者」、つまり取材源・ネタ元も突き止めろと依頼していた。

 TBSはこの事実を「報道の自由、取材の自由に圧力をかけるものだ」と、専門家見解とともに報じた。私はそれに加え、斎藤知事の兵庫県には「深謀遠慮」があるように思える。それは「立花氏の情報源を罰するなら、斎藤知事批判報道の情報源も罰してやる」という戦略だ。

 百条委の秘密会音声を立花氏に渡して維新の会から処分された増山誠県議は「立花氏をメディアと認識している」と述べ、テレビや雑誌などの「オールドメディア」と立花氏のSNS発信を同列に扱う「論法」を繰り返している。この「論法」は、今回判明した兵庫県の「立花氏と週刊文春、両方の情報源を調べろ」という依頼と奇妙に符合している。そしてこの「論法」の下で第三者の調査が行われるとしたら、それは「反斎藤派」の粛清につながったり、逆に「反体制派が罰して欲しくなかったら、立花氏への情報漏えいも大目に見ろ」と追及を鈍くするために利用される可能性が考えられる。

 だが、この件で週刊文春と立花氏の発信を「同列」に扱うのは間違いではないか。なぜなら、兵庫県の「実施要綱」の調査対象一覧を見る限り、両者の発信内容は性格が全く違うからだ。

 立花氏はXに「県民局長が、公用パソコンを使って作成した文書です!YouTubeで出したらBan(アカウント停止)になるかも?」と私的文書と思われる画像を投稿したり、「県民局長と不適切な関係にあった」として特定の女性の実名や顔写真を公表した。しかし、それらは元県民局長による告発の中身と関係ない。兵庫県知事選中には元県民局長が男女間の犯罪に関わったかのような言説も飛び交ったが、もちろん、その証拠も示されていない。立花氏の発信は内部告発者への人格攻撃の域を出るものではないと考えられる。

 一方で、週刊文春の記事はどうだったか。兵庫県が「取材源の調査」を求めた文春報道のリストの冒頭は、昨年8月23日付の「告発職員への「事情聴取音声」独自入手!“抗議の自死”の3カ月前に強い口調で詰問」という記事。片山副知事(当時)から告発の情報源を問い詰められた元県民局長が回答を拒みながら「みんな噂してますよ」と述べると、その一言をとらえた片山副知事が「噂か。噂をまとめただけやということやな」と決めつけ、これを受けて斎藤知事が会見で告発を「ウソ八百」と断じた経緯を報じたものだった。

 この斎藤知事の「ウソ八百」発言は、3月19日に発表された文書問題第三者委の報告で「告発はウソ八百と無視できないもの」であり、斎藤知事の発言こそがパワハラだと認定された。ということは、この真実をいち早く指摘した週刊文春記事は正しく、そのための録音・情報の提供は問題解明に貢献した正当な行為ということになる。

 ◆絶対に目を離してはいけない事態

 さらに斎藤知事の「ウソ八百」発言は法律上、ただの「パワハラ」では済まされない可能性がある。「ウソ八百を告発」と決めつけられた元県民局長は名誉を傷つけられているので、斎藤知事の発言は「名誉毀損罪」に当たるとも考えうるのだ。昨年9月2日付の週刊文春電子版には、「ウソ八百」会見を受けて元県民局長が職員局長に送った次のメールが掲載されている。

 「事実確認も事情聴取もろくにせずに、昨日の一方的な知事記者会見はあかんやろ?こっちが名誉を毀損されたと思うけど」

 元県民局長が斎藤知事に「名誉を毀損された」とすると、週刊文春への情報提供は斎藤知事をめぐる刑事犯罪の疑いを告発するものとも考えられる。こうした犯罪などの法令違反に関する情報は、「秘密」として保護する価値はないため、公務員が外部に告発しても守秘義務の対象外とされている。消費者庁が作成した公益通報者保護法の「行政機関向けQ&A」にもその旨が明記され、「公務員として積極的に法令違反の是正に協力すべきものと考えられます」と公務員による通報を奨励している。

 県内部の不正や犯罪についての「情報提供」と、人格攻撃以外に意味を見つけがたい発信への「情報漏えい」。この2つは性格がはっきり違う。それを一緒くたにし、どさくさに紛れて週刊文春の取材源を暴こうとする兵庫県の行動は、第三者委が批判した「公益通報者保護法違反の趣旨に反する」所業そのものではないか。

 だが、斎藤知事は今月3日の定例会見で、第三者委による公益通報者保護法違反の指摘を受け入れず、その理由をこう述べた。

 「最終的には、兵庫県知事である私が判断した」

 知事であろうとも国の法律の解釈を勝手に「判断」できるはずはない。しかし、斎藤知事は何度質問されてもこの答えを繰り返し、会見を終えた。

 何かの底が抜けようとしている。そして、これは絶対に目を離してはいけない事態だと思う。

 □西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)

 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。西脇亨輔

 元稿:ENCOUNT 主要ニュース 社会 【話題・地方自治・兵庫県・知事によるパワハラ疑惑】 2025年04月07日  16:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【西脇亨輔弁護士】:斎藤元彦知事「最後は司法」の根拠「専門家も言った」は都合のいい“切り抜き”

2025-04-18 06:49:10 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【西脇亨輔弁護士】:斎藤元彦知事「最後は司法」の根拠「専門家も言った」は都合のいい“切り抜き”

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【西脇亨輔弁護士】:斎藤元彦知事「最後は司法」の根拠「専門家も言った」は都合のいい“切り抜き” 

 ◆元テレビ朝日法務部長が指摘した「疑問点」

 兵庫県の斎藤元彦知事が、告発文書問題を調査した第三者委員会の報告書を受けて3月26日に会見した、そして、「公益通報者保護法違反」と認定されたにも関わらず、「告発文書の取扱いは適切だった」というこれまでの主張を繰り返した。「自ら設置した第三者委の結論を受け入れないのか」という批判には「最終的には司法の判断」と反論。その斎藤知事の言葉に、元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士はある「疑問点」を指摘した。

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西脇亨輔© ENCOUNT

 「この人には、言葉や論理が通じない」

 これは斎藤知事の会見を受けた朝日新聞社説の一節だ。第三者委の報告を受けた会見で斎藤知事は公益通報者保護法違反という結論を受け入れず、その姿勢を批判されると「最終的には委員会ではなく、司法の場で判断されるべき」というこれまでの反論を繰り返した。そして、この主張をする時に斎藤知事はいつも枕詞のように、こうしたフレーズを添えている。

 「百条委員会に参考人として出席した専門家が指摘している通り」

 斎藤知事は「『最終的には委員会ではなく司法の場で判断される』というのは自分だけの考えではない。百条委で専門家も言っていたのだ」と主張する。だが、この言葉を聞くたびに私は次のような疑問を感じていた。

 「本当に専門家は、そんなことを言ったのか

 そこで百条委に出席した参考人の証言を見直すことにした。証言した参考人は奥山俊宏・上智大教授、消費者庁の委員会メンバーでもある山口利明弁護士、専門書を著した結城大輔弁護士の3人。この中の誰かが「最後の判断をするのは司法・裁判所なので、委員会の判断には従わなくても良い」と発言したのか。

 百条委の議事録と証言の動画を改めて見たが、そのような趣旨の発言はなかった。

 念のため「出席」だけではなく「書面」で提出された意見も確認したが、斎藤氏の言動を違法ではないとする徳永信一、野村修也両弁護士、違法と指摘した髙巖・明治大特任教授のいずれの文書にも「最後は司法」とは書かれていない。

 では、なぜ斎藤知事は「専門家も言ってた」と発言しているのか。百条委の議事録をもう一度注意深く読んでいくと、斎藤知事が「材料」にしたと思われる箇所を2つ見つけた。

 一つは奥山教授が公益通報者保護法の「もともとの成り立ち」を語った場面。ここには同法が「労働法制の一部でしたので、公益通報者保護法に違反しているかどうかということの、不利益扱いになるかどうかということの最終的な判断は、裁判所に仰ぐという建てつけになっています」と述べられている。

 しかし、奥山教授の説明はここで終わっていない。続きがある。今回大きな問題となっているのは「通報者探しの禁止」という、同法が「もともとの成り立ち」から改正・進化して生まれた「体制整備義務」の一つ。これに反するかどうかは必ずしも「裁判を起こして裁判所に判断してもらうもの」ではない。この点について奥山教授は、民間企業だと裁判所ではなく消費者庁が違法性を判断し指導・勧告できると説明した。ただ一方で、兵庫県のような地方自治体に対しては、地方分権の観点から国が乗り出す仕組みにはなっていないという。では誰が違法性を判断するのか。

 ◆百条委員会や第三者委員会の無視は「自治」否定の可能性

 それは自治体「自身」だ。地方自治をつかさどる自治体が自らを律し、自分で自分の違法性を判断する責任を負う。そして、その「自律」「自浄」の羅針盤となるのが百条委員会や第三者委員会のはず。それを無視することは「自治」の否定にもつながりかねない。奥山教授は百条委で次のように証言していた。

 「これは『日本の歴史に残るような百条委員会だな』という風に感じております」

 その奥山教授が「法律のかつての成り立ち」の説明の中で使った「最終的な判断は裁判所に仰ぐ」という一言を利用して、「委員会の結論は司法の判断じゃないから従う義務はないと、専門家も言っている」と主張するならば、それは「ミスリード」だろう。

 もう一つ、山口利昭弁護士の証言には「最後はやっぱり裁判所なりで紛争解決をするということにならないと、確定ということにはならないのかなという風に思います」という一節があるが、これは「不利益取扱いなどによって『内部告発つぶし』をした人は、県が処分する必要がある」という話の一環。「内部告発つぶしをした人」を県が違法と判断して処分した後に、その人から不服を申し立てられたら裁判所に行くことになるという内容だった。

 もし斎藤知事が、この2つの発言を理由に「最終判断は司法の場だと、参考人の専門家も指摘している」と述べているなら、それは文脈を無視し、参考人の言葉を「切り抜き」して都合よく使っていることになるのではないか。

 斎藤知事は第三者委の報告後も、委員長の「時間をかけて読んで欲しい」という言葉を何度も引用し、回答を先延ばしする理由にした。発言者の真意と異なるであろう「切り抜き」は、真偽不明情報の「断片」が拡散された兵庫県知事選挙とも重なって見える。

 斎藤知事が第三者委や百条委を真に「尊重」するかどうか。それは現在の兵庫県が本当に「自治」できるのかどうかという、重い問いをはらんでいるように思う。

 □西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)

 1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうまワイド』『ワイド!スクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いた。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。昨年4月末には、YouTube『西脇亨輔チャンネル』を開設した。西脇亨輔

 元稿:ENCOUNT 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・元県民局長が斎藤知事の疑惑を告発した問題】  2025年03月31日  10:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<6>斎藤元彦知事、告発対応は「適切」10回繰り返す…

2025-04-18 06:49:00 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<6>斎藤元彦知事、告発対応は「適切」10回繰り返す…県幹部「こんな調子では誰もついていけない」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<6>斎藤元彦知事、告発対応は「適切」10回繰り返す…県幹部「こんな調子では誰もついていけない」

 ◆[終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年]<6>  

 兵庫県立大学の授業料無償化、若者・Z世代への支援……。県議会で3月24日に可決された総額2兆3582億円の2025年度一般会計当初予算には、知事の斎藤元彦の肝いり施策が盛り込まれた。

2025年度の一般会計当初予算案を発表する斎藤知事(2月、兵庫県庁で)
2025年度の一般会計当初予算案を発表する斎藤知事(2月、兵庫県庁で)

 斎藤が昨年9月末に失職し、11月に再選するまでの約50日間、県政には「知事不在」の期間が生じた。斎藤は予算案を発表した今年2月の記者会見で「私が不在の間も、多くの県職員が準備し、しっかり予算編成できた」と胸を張った。

 ただし、県立大の授業料無償化は24年度に始まっている。25年度予算には、既定路線の事業も多かった。ある自民党県議は「新味に欠ける。知事が不在だった影響は如実に出ている」と指摘した。

 20年続いた前知事時代からの「刷新」を掲げ、21年の知事選で初当選した斎藤は、前知事が批判を受けた公用車をトヨタの最高級車「センチュリー」からミニバン「アルファード」に変更。行財政改革にも力を入れ、県の貯金に当たる財政基金は23年度末で127億円となり、就任時の約4倍となった。 

 一方で、積み残された課題も多い。その一つが、新庁舎整備だ。

 県庁舎の一部に耐震強度不足が判明し、県は前知事時代に高層ビルなどへの建て替え構想を公表した。斎藤は就任後、財政難を理由に白紙に戻し、23年には在宅勤務を増やすなどして対応する考えを示した。

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斎藤知事の主な実績と課題

 ところが、職員アンケートでは在宅だと業務効率が「低下した」との回答が多く、斎藤は再選後、予算を抑えたコンパクトな新庁舎を建設する案を公表。基本構想はまだできておらず、着工は28年度以降になる見通しだ。

 知事選期間中、斎藤を応援するSNSでは、1期目の公約達成率として98・8%という数字が拡散された。実はこれは「達成・着手率」で、わずかでも着手していればカウントされる。実際の「達成率」は27・7%で、今後が正念場となる。

                ◇

 今後の県政運営で鍵となるのが、県職員や県議会との関係構築だ。

 県の第三者委員会が3月19日に公表した内部告発問題の調査報告書について、斎藤は1週間程度、複数の県幹部と協議を重ねていた。報告書では斎藤に関する10件のパワハラと、内部告発を巡る県の対応の違法性が認定された。

 県関係者によると、県幹部は、これまでの対応を見直し、斎藤の報酬カットや、告発者の前県西播磨県民局長(昨年7月に死亡)が受けた懲戒処分を一部撤回することを進言したという。

 しかし、斎藤は3月26日の記者会見で、パワハラは認めて謝罪したものの、内部告発への対応は「適切」という言葉を10回ほど繰り返し、考えを変えなかった。

 会見を見届けたある県幹部は「こんな調子では、誰もついていけない」とため息をついた。別の幹部は「知事選で『民意』を得たから、強気で同じコメントを繰り返す。とても誠実とは言えない」と語った。

                ◇

 斎藤が再選直後に「準備を進める」と明言した若手・中堅職員との意見交換会は、3月中旬時点で開催されていない。昨年末には部長らを集めた懇親会を開いたが、参加者の1人は「自ら積極的に会話をする様子はなく、重苦しい雰囲気だった。コミュニケーションはむしろ悪化した気がする」と話す。

 昨年9月に不信任決議を突きつけた県議会との関係も、改善の兆しは見えていない。

 2人の副知事のうち、議会との折衝を一手に担っていた片山安孝は昨年7月、内部告発への対応で混乱を招いた責任を取るとして辞職したが、後任は約8か月が過ぎても決まっていない。県幹部の1人は「今、火中の栗を拾いたがる人などいない」と話す。

 斎藤は3月26日夜、自民県議団が開いた懇親会に参加したが、ここでも口数は少なく約40分で退席したという。あるベテラン県議は「本当にこれからこの人とやっていけるのか」とぼやいた。

 斎藤は21年の知事選前、読売新聞の候補者アンケートに、4年後の県の姿について「県庁内を明るく風通しのいい組織にしていく」と答えていた。

 まもなくその「4年後」を迎える。混迷を抜け出し、県政をどう前に進めるのか。方向性は見えてこない。

 ◆周囲の意見尊重を…岩崎忠・白鴎大教授(行政学)

 斎藤知事が第三者委員会の結論を正面から受け入れなかったことで、職員は「知事は反省しておらず、何も変わっていない」と考える可能性がある。職員が不安を抱えたままでは、自由 闊達かったつ なコミュニケーションが生まれる職場にはならない。県政の課題を解決し、成果を出そうと思うなら、リーダーは周囲の意見を尊重するべきだ。職員が意見を言いやすい雰囲気をつくり、組織の一体感を高めていく必要がある。

 (敬称略、おわり)

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<5>斎藤批判一色から選挙期間中の沈黙、「メディアが報じない真実」SNSで拡散…

2025-04-18 06:48:50 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<5>斎藤批判一色から選挙期間中の沈黙、「メディアが報じない真実」SNSで拡散…広がったメディア不信

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<5>斎藤批判一色から選挙期間中の沈黙、「メディアが報じない真実」SNSで拡散…広がったメディア不信

 ◆[終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年]<5>  

 兵庫県知事の斎藤元彦のパワハラなどの疑惑が全国的に注目を集めるようになったのは、疑惑を内部告発した前県西播磨県民局長の男性職員が昨年7月7日に死亡してからだった。

知事選投開票日の斎藤知事の事務所。集まった記者に対し、支持者から「謝れ」との声が飛んだ(昨年11月17日、神戸市中央区で)
知事選投開票日の斎藤知事の事務所。集まった記者に対し、支持者から「謝れ」との声が飛んだ(昨年11月17日、神戸市中央区で)

 男性職員は自殺とみられるが、その理由はわかっていない。しかし、SNS上では、斎藤に責任があると断定する投稿が相次ぎ、テレビの情報番組でも同様の発言をするコメンテーターがいた。

 新聞やテレビ、週刊誌が、内部告発問題を連日取り上げていた頃、兵庫県伊丹市の医師の男性(58)は、斎藤を「悪者」と思っていた。しかし、昨年11月、知事選の候補者討論会をユーチューブで見て衝撃を受けた。

 立候補した政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志が、男性職員が死亡したのは、公用パソコンに保存していた私的情報の発覚を恐れたからだと主張し、メディア批判を展開した。

 その後、男性は立花の動画を毎日見るようになった。斎藤批判一色だったメディアに不信感を抱くようになり、選挙に入ると報道が激減したことにも疑問を持った。

 「立花さんは兵庫の闇を暴いてくれた。メディアは情報を隠している」

               ◇
 
 知事選で広がった「メディア不信」。火種は、選挙の2か月以上前の8月に生まれていた。

 東京大の鳥海不二夫教授(計算社会科学)のX(旧ツイッター)の分析を基に、読売新聞が投稿の推移を確認したところ、男性職員が死亡した7月以降、X上でも斎藤を支持しない投稿が大勢を占めていた。

 しかし、県議会百条委員会が実施した職員アンケートに基づき、パワハラや贈答品受領の疑惑が盛んに報じられた8月中旬から、斎藤を支持する投稿が増え始めた。斎藤への不信任決議が県議会で可決される前後の9月中旬には、初めて支持が不支持を上回った。

 この分析とは別に、ユーザーローカル社のSNS分析ツール「ソーシャルインサイト」を使って読売新聞がXを確認しても、9月以降、斎藤関連の投稿で、メディア不信を意味する「マスゴミ」「偏向報道」との文言が増えていた。

 兵庫県西宮市の自営業女性(62)は、「おねだり」などと斎藤を 揶揄やゆ するテレビ報道に疑問を持ったという。「面白おかしく報じようとしていると感じ、不快だった」と振り返る。

               ◇

 斎藤の疑惑を巡る報道は、9月30日に斎藤が失職した後、知事選が事実上スタートし、衆院選が行われたこともあって激減した。読売新聞では、知事選の関連報道は続けていたが、疑惑に関する記事は減った。

斎藤知事に関するユーチューブ動画の投稿本数の推移
斎藤知事に関するユーチューブ動画の投稿本数の推移

 テレビでも同様だった。読売新聞が、昨年7月から知事選の投開票日前日の11月16日までに在阪民放4局がユーチューブに投稿した斎藤や知事選関連のニュース動画を確認したところ、計299本のうち9割が失職するまでのもので、知事選告示後は4本しかなかった。

 一方、立花が告示後に投稿した知事選関連の動画は120本確認され、総再生数は民放4局合計の55倍に上っていた。 

 新聞やテレビが、選挙期間中に「政治的公平性」から沈黙し、その空白に「メディアが報じない真実」などと主張する立花が入り込んだ構図が浮かぶ。

                 ◇

 読売新聞は男性職員の死亡を伝えた昨年7月9日の記事で「男性職員は公用パソコンで作成した私的な文書などの提出を百条委に求められる可能性が強まり、百条委側に『プライバシーに配慮してほしい』と要請していた」と報じていた。その後も複数回報じたが、私的情報の中身を取り上げることはなかった。告発内容の真偽と関係がなく、死亡した理由との関係も検証が困難だったからだ。

 立花はほかに、今年1月に死亡した前県議が斎藤を陥れた「黒幕」とする主張も繰り返していた。別の県議から渡された出所不明の文書などに基づく主張だが、SNS上の一部で「真実」と受け止められ、今も拡散し続けている。

 神戸市中央区で衣料品店を営む男性(60)は以前から斎藤を支持し、立花の主張が「真実に近い」と考えたこともあって斎藤に投票した。しかし、選挙から4か月たってもSNS上で真偽がわからない過激な投稿が飛び交い続けていることにうんざりしている。

 「何を信じたらいいのか」

 男性は、斎藤の情報は、テレビや新聞、SNSでも見ることをやめたという。(敬称略)

 ◆選挙期間中も報道を…曽我部真裕・京都大教授(情報法)

 斎藤知事を巡る報道は、特にテレビの情報番組では表現に過剰な部分があった。それが選挙に入ると一転して沈黙したことが、メディア不信を招いた一因だろう。選挙期間中でも有権者にとって重要な情報は報じるべきだった。メディアに不信感を持つ人は、社会に不満を抱いているとの調査もある。メディアはそうした人の声にも耳を傾け、取材に基づいた正確な事実を伝えていくことが重要だ。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年04月06日  11:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<4>「政局」優先だった兵庫県議会、再度の不信任決議には及び腰…

2025-04-18 06:48:40 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<4>「政局」優先だった兵庫県議会、再度の不信任決議には及び腰…「伝家の宝刀」百条委の切れ味失う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<4>「政局」優先だった兵庫県議会、再度の不信任決議には及び腰…「伝家の宝刀」百条委の切れ味失う

 ◆[終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年]<4> 

 「全議案を議了いただき、厚くお礼を申し上げます」

 兵庫県議会最終日の3月26日、登壇した知事の斎藤元彦はそう感謝の弁を述べた。その2日前、斎藤が提案した県立大の授業料無償化を含む新年度一般会計当初予算案は、一部議員を除く賛成多数で可決されていた。

県議会であいさつする斎藤知事(左奥)(3月26日午前、兵庫県公館で)
県議会であいさつする斎藤知事(左奥)(3月26日午前、兵庫県公館で)

 公明党県議団の幹事長を務める越田浩矢は3月26日の県議会終了後、記者団に「混乱の収束には、(知事との)対立を深めるのではなく、歩み寄っていく必要がある」と話した。

 議会の斎藤への向き合い方は、この半年間で大きく変わった。

             ◇

 斎藤がパワハラなどの疑惑を内部告発された問題を巡る県議会の動きは、「政局」と密接に関係していた。特に目立ったのが、最大勢力の自民党と、第2勢力の日本維新の会の駆け引きだ。

【一覧】斎藤知事と県議会の対応
【一覧】斎藤知事と県議会の対応

 斎藤は2021年7月の知事選で自民と維新から推薦を受けた。ところが23年8月、維新の大阪での政策にならって県立大の授業料無償化を表明し、自民から「根回しが全くなかった」と怒りを買った。昨年3月には維新の党大会に初めて出席し、自民から「『維新の知事』になった」と反発を受けた。

 内部告発があったのは、そんなタイミングだった。

 斎藤は5月、議会の要請を受け入れて第三者委員会の設置を決定した。しかし自民は6月、「議会でも問題を調査する必要がある」として、維新などの反対を押し切って百条委員会の設置を主導。8月に始まった証人尋問で、他会派の議員とともにパワハラや贈答品の受領疑惑について斎藤を厳しく追及した。 

 当時、秋の衆院選が予想されていた。維新は当初、「反知事勢力の仕掛けた政争」と静観していたが、8月の大阪府箕面市長選で維新公認の現職が本拠地・大阪の首長選で初めて敗れるなど党勢に陰りが見え始めると、衆院選への影響を考えて斎藤をかばいきれなくなった。

 8月末以降、各会派は競うように「斎藤おろし」の動きを加速させ、9月に全会一致で不信任決議を突きつけた。自民県議の一人は「当時は、どの会派が不信任を先に出してアピールするか、心理戦のようになってしまっていた」と振り返った。

               ◇

 斎藤は失職後、11月の知事選で約111万票を得て再選を果たした。

 百条委は3月4日、「県の対応は公益通報者保護法に違反している可能性が高い」などとする調査報告書を公表した。しかし斎藤は翌日、「一つの見解」「逆に言うと、適法の可能性もある」と発言し、受け入れなかった。

 百条委はその強力な調査権限から、地方議会が首長を追及する「伝家の宝刀」とされる。首長が報告書を受け入れなければ、議会は問責決議や不信任決議を検討するのが一般的な流れだ。

 しかし、県議会では「知事は昨年の知事選で民意を得た」として、再度の不信任決議に慎重な声が相次いだ。百条委の結論が出る前の不信任決議が、「宝刀」の切れ味を失わせた。

 自民県連幹事長で県議の黒川治は3月22日の県連会合後、記者団に「もう勢いに任せて(知事を)追い込むことはない。同じ てつ は踏まない」と述べた。

              ◇

 第三者委は3月19日、県の対応の違法性を認定する調査報告書を公表した。しかし斎藤は3月26日、「対応は適切だった」とする従来の見解を変えず、自身が設置を決めた第三者委の結論も受け入れなかった。

 第4会派「ひょうご県民連合」の迎山志保は記者団の取材に「馬耳東風、 ぬか にクギ。きちんと受け止めないのであれば、議会としては不信任(決議)をするしかない」と踏み込んだ。

 それでも、自民や維新、公明の幹部が不信任決議に言及することはなかった。

 背景にはまたも、選挙に向けた思惑が絡む。今夏には参院選があり、自民、公明は兵庫選挙区で公認候補を決めている。両党の関係者は「知事が失職し、再び知事選が行われたら、参院選に影響する。それだけは避けたい」と口をそろえる。

 ある県議は自嘲気味にこう話す。「『議会は政局ばかり』と見られても仕方がない。混乱が今も収まらない原因は、議会にもあると言っていい」(敬称略)

 ◆「場当たり的」印象を拭えず…河村和徳・拓殖大教授(政治学)

河村和徳・拓殖大教授
河村和徳・拓殖大教授

 百条委の調査結果が出る前に知事に対する不信任を決議するなど、一連の兵庫県議会の対応は「場当たり的」との印象を拭えず、県民の目には「斎藤潰し」と映ったのではないか。県議会はもっと慎重に対応するべきだった。議会の本来の役割はルール作りだ。今後は政争ではなく、パワハラの再発防止を制度的にどう担保するかなど、建設的な議論を期待したい。

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年04月05日  14:29:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<3>斎藤元彦知事、第三者委の指摘に「一つの意見」…

2025-04-18 06:48:30 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<3>斎藤元彦知事、第三者委の指摘に「一つの意見」…幹部「握り潰されるなら声を上げようと思えない」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<3>斎藤元彦知事、第三者委の指摘に「一つの意見」…幹部「握り潰

 「 誹謗ひぼう 中傷性の高い文書との認識に変わりはない」「当時としてはやむを得ない適切な対応だった」

 兵庫県知事の斎藤元彦は3月26日の記者会見で、県の第三者委員会に「違法」と認定された内部告発文書への対応について、従来の主張を繰り返した。

 前県西播磨県民局長の男性職員(昨年7月に死亡)が、斎藤の疑惑を内部告発する文書を報道機関などに送付してから1年。焦点となり続けたのが、文書が「公益通報」に当たるかどうかだった。

 2006年施行の公益通報者保護法や同法に基づく指針は、告発者を特定する行為や、告発を理由とした不利益処分を禁じている。

斎藤知事
斎藤知事 

 斎藤は公益通報には当たらないと一貫して主張し、告発した男性職員を特定し、懲戒処分にしたことも適切との認識を示してきた。

 これに対し、第三者委は3月19日に公表した調査報告書で、告発文書に刑法に触れる疑惑が含まれることなどから「公益通報」に当たるとして、斎藤の主張を否定。告発者の特定や懲戒処分は違法だと明確に認定した。 

前県西播磨県民局長が作成した告発文書(*画像を一部修整しています)
前県西播磨県民局長が作成した告発文書(*画像を一部修整しています)
 
 その上で、第三者委委員長で弁護士の藤本久俊は19日の記者会見で、斎藤の対応をこう批判していた。

 「利害関係者が関与すれば、(告発文書は)『誹謗中傷』という方向に行くのは当たり前。関与してはいけない典型例だった」

 斎藤や県幹部の対応と言動から浮かぶのは、公益通報制度に対する意識の低さだ。

 「徹底的に調べてくれ」。昨年3月21日、副知事だった片山安孝は、斎藤から告発文書を示され、指示を受けたという。片山本人が県議会百条委員会で証言した。

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公益通報を巡る第三者委の認定と斎藤知事の主張

 第三者委の報告書によると、文書の内容からその日のうちに男性職員の名前が浮上。1年分のメール履歴を調査し、片山が男性職員から事情聴取することになった。聴取後、男性職員の公用パソコンを引き揚げると、告発文書と同じ内容の文書が見つかった。間もなく男性職員は人事課に電話し、文書作成を認めた。

 告発者を特定したのは、斎藤が調査を指示してからわずか5日目のことだった。

 県として公益通報の可能性を初めて検討したとみられるのが、昨年3月31日、公益通報の可能性を指摘するSNS投稿を人事課が見てからだ。翌4月1日、人事課が弁護士に相談し、男性職員が県の内部通報窓口に通報していなかったことを理由に、「公益通報として扱う必要はない」との見解を得ていた。

 この見解が、斎藤が公益通報を否定する根拠となっているが、裏を返せば、告発者捜しを始めた時点で公益通報の可能性を考慮していなかったことになる。

 斎藤も昨年8月の記者会見で「公益通報かどうかまでは認識しなかった」と認めていた。

 公益通報制度で、告発者捜しが禁じられているのは、不正を告発しようとする人が 萎縮いしゅく し、不正を改める機会が失われてしまうからだ。

 公益通報の取り扱いを巡っては、百条委も3月4日に公表した報告書で「違法の可能性」を指摘していたが、斎藤は翌5日の記者会見で「別の可能性もある」と抗弁。男性職員が公用パソコンで「わいせつな文書」を作成していたと明かしていた。

 さらに、自身が設置を決めた第三者委の指摘に対しても、3月26日の記者会見では「一つの意見」と述べた。

 かたくなに主張を変えない斎藤に職員の思いは複雑だ。知事レクで斎藤と顔を合わせることもある幹部は言う。

 「知事は何も変わらない。不正を知ったとしても、握り潰されるなら声を上げようとは思えない」(敬称略)

 ◆違法状態が継続…奥山俊宏 上智大教授

 公益通報制度は、組織の不正を防ぐためのもので、組織のトップこそ理念を理解するべきだ。しかし、斎藤知事は記者会見で告発者の人格をおとしめ、第三者委の指摘も受け入れず、違法状態を継続している。選挙で選ばれたからといって、何をしても許されるわけではなく、法令には従わなければならない。法にのっとって告発者の処分を見直すべきだ。

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深夜や休日も「承知しました」、理不尽な叱責にも「申し訳ありません」…斎藤元彦知事との「同質化」がパワハラの背景に

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年04月04日  09:53:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<2>深夜や休日も「承知しました」、理不尽な叱責にも「申し訳ありません」…

2025-04-18 06:48:20 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<2>深夜や休日も「承知しました」、理不尽な叱責にも「申し訳ありません」…斎藤元彦知事との「同質化」がパワハラの背景に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<2>深夜や休日も「承知しました」、理不尽な叱責にも「申し訳ありません」…斎藤元彦知事との「同質化」がパワハラの背景に  

 兵庫県の内部告発問題を調査する第三者委員会は3月19日に公表した調査報告書で、知事の斎藤元彦によるパワハラの背景について、「コミュニケーション不足」や「同質性」という言葉を使って説明した。

兵庫県知事選で当選を確実にし、タイを持ってガッツポーズする斎藤元彦さん(2021年7月18日、神戸市中央区で)
兵庫県知事選で当選を確実にし、タイを持ってガッツポーズする斎藤元彦さん(2021年7月18日、神戸市中央区で)

 斎藤の就任前、県は約60年間、副知事経験者が知事の座を占め続けていた。斎藤は大阪府財政課長などを歴任したが、同県での勤務経験はない。2021年8月、同県では戦後最年少の43歳で知事となった斎藤が頼ったのが、総務官僚時代からの旧知の面々だった。

 斎藤は就任直後、直轄の新組織「新県政推進室」の設置を発表。室長の小橋浩一、次長の井ノ本知明らは東日本大震災の復興支援で宮城県へ派遣された際、出向中の斎藤と知り合い、その後も交流があった。

【図解】チャットでの主なやりとり
【図解】チャットでの主なやりとり

 斎藤は推進室メンバーに県の要職を兼任させた。報告書は、「(斎藤は)推進室のメンバーとコミュニケーションを密にし、メンバーを通じて他の職員に考えを浸透させようとする傾向が強かった」とする。

 前知事の井戸敏三は、職員が報告事項などをまとめた文書にコメントを付けて返却することで幅広い職員と意思疎通を図っていたが、斎藤がコメントを付けることは少なかったという。幹部を集めて2週間に1回開かれていた「政策会議」も、斎藤の就任後は頻度が減り、23年度は不定期になった。

             ◇

 斎藤と側近以外の職員との「行き違い」は、早くから起きていた。 

 報告書によると、知事就任から1か月後の21年9月、自身の知らない案件が新聞で報道されたことに怒った斎藤は、知事室で担当局長と課長に「県として意思決定していないことを先に出すのはよくない。許せない」と机をたたいて 叱責 しっせき した。机をたたく「ドン」という音は、隣の秘書課まで届いたという。

 しかし、報道された案件は前知事時代に協議されてパブリックコメントも経ており、「県として意思決定していない」というのは、斎藤の誤解だった。

 パワハラ認定された事案は、職員が「理不尽」と感じるものが多かった。ある県幹部は読売新聞の取材に、「知事は人の意見を聞き入れないので、議論が難しい。『結論ありき』の姿勢で、職員はモチベーションを失っていった」と振り返る。

 第三者委は報告書で、「コミュニケーションの不足は、認識のそごを生じさせた。知事のいらだちの原因の一つとなり、職員に対するパワハラと不適切な言動につながった」と記した。

                 ◇

 新県政推進室は23年3月末に廃止されたが、斎藤は翌4月に幹部職員とのチャットを始め、側近との密なやりとりは続いた。

 報告書によると、同年4~12月の間、斎藤が平日午後8時以降に関与したチャットのやりとりは38回(災害など緊急時を除く)。最も遅いものは午前3時40分で、土日祝日のやりとりも16回あった。

 斎藤は「スピード感」を重視すると公言しており、小橋や井ノ本ら側近は指示があると、深夜や休日でも「承知しました」「すぐ取りかかります」と従った。叱責を受けると、理不尽でも反論せず、「申し訳ありません」と謝罪した。 

 第三者委は夜間や休日のチャットについて、「過度の精神的負担を与えるものも相当数ある」としてパワハラと認定。側近が斎藤と同じ考え方をする「同質性」が次第に強まり、「知事にパワハラや不適切な言動があっても、いさめることはほとんどできない集団になってしまっていた」と指摘した。 

                ◇

 斎藤は3月19日、報告書について「大変重く受け止める。ハラスメントのないよう、しっかりやっていく」と述べた。

 幹部職員の一人は取材に対し、斎藤は最近、夜間や休日のチャットはほぼゼロになり、職員が政策を説明する「知事レク」で声を荒らげることはなくなった、と明かした。「知事はパワハラにかなり気を付けており、県政の停滞も感じない」と話す。

 一方で、ある若手職員はこう打ち明けた。「職員との関係を良くしようという気配は、今も感じられない。もうみんな諦めて、淡々と仕事をこなしている」(敬称略)

 ◆幅広い声を聞くこと必要

 ■ 太田肇・同志社大名誉教授(組織論)  

 一部の側近だけで県政を引っ張ろうとすることには無理があった。新たな県政を進めるなら、管理職から若手まで幅広い職員を登用し、自由に意見できる雰囲気をつくるべきだった。しかし、側近を通じたトップダウンの手法に頼った結果、職員が 萎縮いしゅく して知事に本音を言えなくなり、組織内の自浄作用が機能しなくなったと考えられる。今後は、謙虚な姿勢でさまざまな職員の話に耳を傾けるというプロセスが欠かせない。

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斎藤元彦知事の「うそ八百」発言が発端、第三者委が指摘…精査せぬまま「怪文書と決めつけ」

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年04月03日  15:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<1>斎藤元彦知事の「うそ八百」発言が発端、

2025-04-18 06:48:10 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<1>斎藤元彦知事の「うそ八百」発言が発端、第三者委が指摘…精査せぬまま「怪文書と決めつけ」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【終わらぬ混迷 兵庫内部告発1年】:<1>斎藤元彦知事の「うそ八百」発言が発端、第三者委が指摘…精査せぬまま「怪文書と決めつけ」 

 兵庫県の斎藤元彦知事が、自身に関するパワハラなど7項目の疑惑を指摘した内部告発について、「うそ八百」と発言した記者会見から、1年が過ぎた。県の第三者委員会は3月19日、10件のパワハラと県の対応の違法性を認定する調査報告書を公表した。問題がなぜ、ここまで大きくなったのかを検証する。

第三者委の報告書を受け、取材に応じる斎藤知事(3月19日、兵庫県庁で)
第三者委の報告書を受け、取材に応じる斎藤知事(3月19日、兵庫県庁で)

 「問題の発端は、知事が『うそ八百』と発言したことにあると思います」

 第三者委委員長で弁護士の藤本久俊は報告書を公表した3月19日、県庁で開いた記者会見でそう述べた。

 「うそ八百」発言は昨年3月27日、定例記者会見で飛び出したものだ。

記者会見する第三者委の藤本委員長(中央)ら
記者会見する第三者委の藤本委員長(中央)ら

 斎藤はその約1週間前、前県西播磨県民局長の男性職員(昨年7月死亡)が作成し、一部の報道機関や県議らに送付した告発文書を、知人を通じて入手していた。すぐに副知事(当時)の片山安孝、総務部長(同)の小橋浩一ら側近に指示し、告発者を特定。この日の会見で、3月末に予定されていた男性職員の退職取り消しと解任を発表した。

 「知事として看過できないと判断したのですか」。記者の問いに、斎藤はこう語気を強めた。「業務時間中に、『うそ八百』含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格です」 

               ◇

 第三者委の報告書によると、県人事課はこの会見前、発表の詳細については「これ以上申し上げることはできない」との想定問答を用意していた。斎藤は事前に片山と小橋を呼び、「名誉 毀損 きそん で法的に問題のある文書。流布しないよう注意喚起したい」と話したという。

 ただし、斎藤が記者会見で放った「うそ八百」や「公務員失格」という言葉は、想定問答にも、片山らとの打ち合わせにもない厳しい表現だった。

 それまで告発文書の存在は報じられておらず、世間の注目を集めているとも言えなかった。中身の精査は済んでおらず、事実が含まれていた場合、知事の発言は批判される恐れがあった。

 小橋は会見後、斎藤に第三者委の設置を進言したと昨年10月の県議会百条委員会で明かし、「(斎藤は)ちょっと渋い顔をされ、『どうかな』と受け入れられなかった」と証言した。

 当初、読売新聞には告発文書は送られていなかったが、斎藤の発言を受けて入手。裏付け取材を進め、「県内企業から高級コーヒーメーカーなどを受け取った」との疑惑について、斎藤ではないものの、側近が受け取り、後に返却していたことをつかんで昨年4月16日の朝刊で報道。告発文書が全くの事実無根ではないことが明らかになった。

 藤本は記者会見で、「うそ八百」発言について、「調査未了の段階でこのような強い語句や断定口調で公に知らしめる必要は、どこにもなかった」と述べた。

             ◇

 斎藤がここまで強く反応した理由は何だったのか。

 これまで斎藤は、告発文書に具体的な企業名などが記されていることから、「 誹謗 ひぼう 中傷性の高い文書で、放置すると多方面に不利益が生じる」と説明している。

 確かに、告発文書には「特定企業との癒着」を指摘する記述があったが、第三者委は「事実は認められなかった」としている。一方で、「机をたたいて激怒」などを含む10件のパワハラを認定した。

 告発文書には「事実」と「事実ではないこと」が混在していたことになる。ところが斎藤は、告発文書の入手直後、文書に疑惑への関与が記載されていた片山や小橋らと対応を協議し、一方的に「事実無根」と断じた。

 報告書では、告発された当事者だけで協議した結果、「各々が自分の指摘されている事実を否定し合う会話の中で、文書を『核心部分が真実でない怪文書』と決めつけた」と明記された。 

             ◇

 県関係者によると、作成者不明の文書が出回ることは過去にもあった。ある県幹部は「今回は、知事の怒りに任せた発言が問題を深刻化させた」と話す。

 早い段階で第三者委の調査を進言した小橋は、昨年10月の百条委で「我々としても、もう少し強く言って止めるべきだったと思う」と後悔を口にした。

 斎藤は3月19日、第三者委が報告書を公表する前の定例記者会見で「うそ八百」発言が適切だったかと問われ、「表現としては強かったので、反省はしている」と答えた。

 県の対応を適切だったと主張し続ける斎藤の、数少ない「反省の弁」だった。(敬称略)

◆初動の誤りが問題を大きく

 

  ■片山善博・大正大特任教授(前鳥取県知事)  

 自治体では、 誹謗ひぼう 中傷からまじめな内容まで、幅広い文書が流布されることがある。私の知事時代にも度々あったが、的外れの内容は相手にしなかった。もし対応が必要なら、当事者が疑いを否定するだけでは信用されないため、直ちに第三者に調査を委ねて客観的に判断してもらう必要がある。斎藤知事が告発者を捜して公の場でつるし上げるような発言をしたことは首長としてあり得ない対応だった。告発文書を巡る初動を誤って、問題を大きくし、現在まで県政の混乱が続く事態となった出発点と言えるだろう。

 ■関連記事
 ・兵庫県内部告発問題、百条委員会委員の丸尾牧県議に大量の誹謗メール「お前もとっとと…」

 元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年04月02日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【HUNTER・04.02】:否定された「うそ八百」「公務員失格」|斎藤兵庫県知事の土壇場

2025-04-18 06:47:50 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【HUNTER・04.02】:否定された「うそ八百」「公務員失格」|斎藤兵庫県知事の土壇場

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・04.02】:否定された「うそ八百」「公務員失格」|斎藤兵庫県知事の土壇場 

 「うそ八百」「公務員失格」発言から約1年、兵庫県の斎藤元彦知事の内部告発について県設置の第三者委員会が調査結果を公表。パワハラやおねだりが事実だったとした県議会百条委員会の報告より踏み込んだ形で、内部告発で指摘された16件のうち10件のパワハラを認定。内部告発した元県民局長を貶める発言もパワハラとされた。さらに第三者委は、内部告発者を特定しようと探索を行ったことも公益通報者保護法に触れると断罪している。

 ■破綻した知事の主張

 第三者委員会の報告書が出された後、マスコミ対応した斎藤知事は、「分量が多く、今読ませていただいている」「読み続けているところ」と逃げのコメント。元県民局長への処分が間違いだったことも認めようとせず、反省の色さえ見せない。兵庫県のベテラン職員がこう話す。

 「斎藤知事は、第三者委員会の結論が百条委員会よりも言い訳ができる内容になるという甘い見通しを持っていた。しかし、第三者委員会の報告書は百条委員会よりもさらに厳しいもの。調査にかかわったのは、元裁判官の弁護士を中心としたメンバーでした。(知事は)県議会の百条委員会でなら政治的な主張も可能でしたが、第三者委員会ではその手は通らない。パワハラ認定された以外にも、贈収賄や背任という刑事事件絡みの事項にも言及している上、斎藤知事が明らかなウソを言っていたというような記述まであります」

 斎藤知事が県内の有名企業からコーヒーメーカーやトースターを受け取ったという疑惑について第三者委は、《結論として斎藤知事個人がコーヒーメーカー等を受領した事実は認められない》としたものの、そこまでの経緯を読めば「未遂」だったことが分かる。

 《「僕、コーヒー好きなんですよね」と述べた際、社長からは「(ちょうど)今日用意しているので、持って帰ってもらそうと思っています」とお土産にコーヒーメーカーを渡す予定だった。斎藤知事は「いいんですか」と反応し、受領する意思があることを前提にしたやりとりをした。しかし、周囲で両者の会話を聞いていた記者が「本当に受け取るんですか」と疑問を投げかけ質問したところ、斎藤知事は回答に詰まった様子であった。(少なくとも回答しなかった)。斎藤知事が玄関まで出たところ、社長がコーヒーメーカー(小売価格約3万円)の入った段ボールを手渡そうとしたところ、知事は受領を辞退した》――つまり、斎藤知事に同行した記者が質問しなければ受領した可能性が大ということだ。

 報告書では、付き添った県幹部に斎藤知事が「上手に断れ」という趣旨の指示があったことも明かしている。だが、県幹部はその前のやりとりも聞いていたことから《斎藤知事が受け取る前提》だったとの理解だった。そこで斎藤知事個人ではなく《県への贈与》として産業労働部に送ってもらうことになったと証言している。

 第三者委員会の報告は次のように続く――《(知事は)記者から疑問視されたため受け取りを断ったのではなく、高価、家電製品と理由を述べているが、別件では豊岡の鞄や竜山石の湯呑等といった高価品を受領している。(中略)調査委員会としては斎藤知事の上記弁解が当時に受領を断った理由であると認定できない。外形的事実からは、発言どおりに斎藤知事が当初はコーヒーメーカーを受領する意思があったものと推認できる》

 問題のコーヒーメーカーは、内部告発あった後、返却されていることが明らかとなっている。

              ◆   ◆

 「竜山石の湯呑」については、企業を視察した際に小売価格約4万円弱の湯呑セットの贈与を受けていた。知事室で来客に使用しており、斎藤知事個人ではなく県として受領したと報告書には書かれている。しかし湯吞の提供に関しては《斎藤知事が「使ってみたいな」等といった興味、関心を示す発言をしたこと、(中略)斎藤知事は普段からあまり多くを語らず、周囲の職員には知事の意向を汲み取って動くことを期待していた様子から、態度を見て贈与を希望していると(県職員が)理解した》、《外形的にみて(斎藤知事が)「おねだり」をしたと見られる可能性がある状況であったことは事実》と記している。

 博物館などの公的施設を無料で利用できよう兵庫県が小中学校向けに発行している「ココロンカード」や、「はばたんPay」に関する斎藤知事からの指示はパワハラではないとされた。しかし、斎藤知事は自身の家族が保有するココロンカードを見て、前任者の井戸敏三前知事の名前が記載されているのを発見。これを問題視して複数の職員に不満を述べていた。

 斎藤知事が初当選したのは2021年7月。その前からカードは発行されており井戸氏の名前が入っていても何らおかしなことはない。しかし、斎藤知事は《井戸前知事の名前が入ったカードが配布されたままの状況を問題視。今後、新小学1年生のものだけではなく、小中学生の持つ既発行のカード全てについて、裏面に斎藤知事の名前が入ったものを配布しなおすことを求めた》とされ、その結果、2024年のカード予算を増額し、すべてのカードが差し替えられたという。報告書は、《140万円の費用が多額に支出されていることが判明した》と斎藤知事の指示による税金の「無駄遣い」を指摘している。

 はばたんPayのPR用うちわに、自身の写真とメッセージが入っていないことについて斎藤知事は、職員の前で「舌打ち」「ため息」して問題視。結局、うちわは斎藤知事の写真、メッセージ入りのものを追加で発注し、2種類のPR用うちわが併存する形になっていた。その理由について報告書は、《「誰やと思っているんや。オレは知事やぞ」等強い口調で叱責》するような場面があったことが背景にあると指摘した。

 斎藤知事は昨年9月の県議会の不信任決議案で失職したが、11月の知事選で再選。だが、百条委員会、第三者委員会の報告を受けて、県議会では不信任決議案の再提出が検討される状況だ。

 「第三者委員会の報告書が分厚いならゆっくり読めばいい。二つの報告書の結論は、斎藤知事に県政の最高責任者としての資格がないことを示している。彼は県政を前に進めることはできない。次の県議会は6月。そこで再度大きな波がくるはず。昨年11月の知事選のような斎藤劇場はもうありえない」(自民党県議)

 百条委と第三者委の報告書によって、土俵際まで追い詰められた斎藤知事。それでも元県民局長の内部告発を「誹謗中傷性のある文書」と言い続ける姿勢には呆れるしかない。

 元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【社会ニュース・話題・地方自治体・兵庫県・「うそ八百」「公務員失格」発言から約1年、斎藤元彦知事の内部告発について県設置の第三者委員会が調査結果を公表】  2025年04月02日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【混迷する兵庫県政】:パワハラに初謝罪「斎藤知事」を追い詰める新たな一手 「元県民局長の私文書抜き取り」首謀者が判明する可能性も

2025-04-18 06:47:40 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【混迷する兵庫県政】:パワハラに初謝罪「斎藤知事」を追い詰める新たな一手 「元県民局長の私文書抜き取り」首謀者が判明する可能性も

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【混迷する兵庫県政】:パワハラに初謝罪「斎藤知事」を追い詰める新たな一手 「元県民局長の私文書抜き取り」首謀者が判明する可能性も 

斎藤元彦知事(新潮社)

 ◆県職員を刑事告発

 ◆「真摯に受け止める」

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【深層解明】:「兵庫県知事の何がパワハラだったのか」報告書を完全解説!…前回の出直し選挙の費用は21億円「あまりに高すぎる民主主義のコスト」

2025-04-18 06:47:30 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【深層解明】:「兵庫県知事の何がパワハラだったのか」報告書を完全解説!…前回の出直し選挙の費用は21億円「あまりに高すぎる民主主義のコスト」

 『漂流する日本の羅針盤を目指:【深層解明】:「兵庫県知事の何がパワハラだったのか」報告書を完全解説!…前回の出直し選挙の費用は21億円「あまりに高すぎる民主主義のコスト」 

(c) Adobe Stock

 ◆一体何がパワハラだったのか

 ◆知事と職員のコミュニケーション不足や職員風土、組織上の問題点

 ◆「公務多忙でしばらく時間をもらいたい」

 ◆「告発内容の調査に当事者は関与しないこと」

 ■佐藤健太

 【関連記事】

 元稿:MINKABU 主要ニュース 社会 【話題・兵庫県の斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などの内部告発をされた問題】  25年03月26日  09:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県政】:<第三者委報告から>(下)組織風土 知事の意向は側近通じて職員に伝達 相互不信生む

2025-04-18 06:45:30 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【兵庫県政】:<第三者委報告から>(下)組織風土 知事の意向は側近通じて職員に伝達 相互不信生む

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県政】:<第三者委報告から>(下)組織風土 知事の意向は側近通じて職員に伝達 相互不信生む 

 第三者調査委員会の報告書にこんなくだりがある。

 「使ってみたいな」。斎藤元彦知事の一言に、県の職員は察した。「知事は贈与を希望している」。そして高砂市名産「竜山石」の商品を扱う団体理事長に相談、約4万円相当の湯飲みを譲り受ける。2023年5月のことだ。

告発文書問題を巡り、第三者委が提出した調査報告書

 告発文書にあった知事が各団体などから贈答品を受領した疑惑について、第三者委は「贈収賄と評価できる事実はなかった」と結論付けた。一方で竜山石の湯飲みの件のように、知事が要望したとも受け取れる発言が複数あったと記す。

 「知事は普段からあまり多くを語らず、周囲の職員には意向や趣旨をくみ取って動くことを期待していた様子だった」

              ◆   ◆

 一連のパワハラや告発文書への不適切な対応の背景と原因として、第三者委は次の四つを挙げる。

 【1】知事と職員とのコミュニケーション不足【2】知事と側近の「同質的な集団」化【3】知事と側近の批判耐性の弱さ【4】ハラスメント防止規定や公益通報の要綱が十分に機能しない体制。

 20年間続いた井戸県政の刷新を掲げた斎藤知事は就任後、自身の考えや政策を浸透させるために直轄組織「新県政推進室」を立ち上げる。メンバーは主に総務省の官僚時代に知り合った兵庫県の職員で、県庁の部長級幹部は登用しなかった。

 知事の意向は推進室の側近を通して間接的に、職員に伝えられるようになった。第三者委はこの状況が「組織の分断と不透明感、相互不信を生んだ」と指摘する。

 また、側近は知事の叱責(しっせき)を受けるうちに個性を失って知事と「同質化」し、「いさめることができない集団になっていた」とする。

 聞き取り調査に対し、職員からは年長者を中心に「過去はもっとひどいパワハラがあった」「これぐらいは我慢できる」との証言が寄せられた。第三者委はこうした「我慢強い職員風土」がパワハラを温存させていたとみる。そして「真面目に頑張ることは評価すべきだが、就業環境を害することも顧みず、上司の要求に応えようとする職員風土、空気感は改善されなければならない」と求めた。

              ◆   ◆

 斎藤県政発足から3年、庁内は異論を許さない空気感が漂い、「組織的な安全装置が働かない状態にあった」。コミュニケーション不足から認識の齟齬(そご)が生じる中、知事はいら立ちを募らせていく。第三者委は昨年3月20日、告発文書を知った時の心境を推察する。「自身を非難する内容の言説に接し、冷静な判断を欠いたまま違法不当な対応につながった」

 外部機関に判断を委ねることを進言する職員もいたが、知事は耳を傾けなかった、とも記している。

 告発文書にある、プロ野球阪神・オリックスの優勝パレードを巡る補助金疑惑について、第三者委は「キックバックは認められなかった」と判断。ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長の急死を巡る疑惑も「死亡とストレスの因果関係は不明」とした。

 だが、いずれも「疑念を生じさせかねない点」「職員が疑問を抱く余地」があったと断じた。

             ◆   ◆

 第三者委は総括として、知事と幹部に「自分とは違う見方もありうると複眼的な思考を行う姿勢を持つべきだ」と求めた。藤本久俊委員長は今月19日の会見で「知事に望むこと」を問われ、諭すように語った。

 「すぐに反論したり、判断したりしないでほしい。ゆっくり報告書を読んでほしい。違う意見もあるかもしれないが、取り入れるところは取り入れよう。そんな姿勢を持っていただけたら」

 斎藤知事は21日、一連の対応は「適切だった」と改めて自身の正当性を主張。一方で「報告書をしっかり読み込んでいく」とも語り、26日以降に見解を表明する意向を示している。(連載取材班)

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年03月24日  05:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県政】:<第三者委報告から>(中)公益通報 「対応違法」百条委より踏み込む

2025-04-18 06:45:20 | 【22年改正公益通報者保護法・組織内部の通報が困難な時、報道機関等外部へ通報可】

【兵庫県政】:<第三者委報告から>(中)公益通報 「対応違法」百条委より踏み込む

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県政】:<第三者委報告から>(中)公益通報 「対応違法」百条委より踏み込む 

 第三者調査委員会の報告書から告発文書問題の経緯をたどる。

 昨年3月12日、斎藤元彦兵庫県知事らのパワハラ、贈収賄などの疑惑が書かれた匿名文書が、兵庫県警や報道機関などに届いた。21日、知事は片山安孝元副知事ら側近4人を集め、調査を指示。メール調査と事情聴取に踏み切り、作成者を元西播磨県民局長と特定する。同時に、片山元副知事が公用パソコン(PC)を回収した。

公益通報の問題に対する第三者調査委員会の主な指摘(要旨)

 31日、交流サイト(SNS)で「文書は公益通報に当たるのでは」との書き込みを確認した県は、特別弁護士に相談。「(県庁内の公益通報窓口に)手続きがされていない。取り扱う必要はない」との助言を得る。

 4月4日、元県民局長がほぼ同じ内容の文書を庁内の窓口に提出。だが県は公益通報の調査結果を待たず、「人事課による(非公開の)内部調査を済ませた」として5月7日、「文書の作成・配布」など四つの非違行為を理由に、元県民局長を懲戒処分とした。

            ◆   ◆

 「まさに(疑惑の)利害関係者が関与してしまった典型例だ」。元裁判官で第三者委の藤本久俊委員長は、今月19日の会見で知事や幹部らの対応を批判した。第三者委は県議会調査特別委員会(百条委)より踏み込んだ判断を示している。

 まず知事側の「告発文書は核心的部分が事実でない『誹謗(ひぼう)中傷文書』。公益通報には当たらない」との主張を真っ向から否定。昨年3月の告発文書には刑法に触れる内容が含まれているため(当初から)外部公益通報の法的要件を満たしている、と断じた。

 さらに「文書の配布は(公益通報にならない)不正目的」とする元副知事の主張についても、元県民局長が「職員らの将来を思っての行動」と記した文書があり、知事や幹部への不満はうかがえるものの、失脚させる狙いがあったとまでは認められないと判断した。

 法的に公益通報である限り、「告発者捜し」は公益通報者保護法に基づく指針で禁じられている。メール調査、事情聴取、公用PCの回収のいずれも「違法」となる。

 これを受けて第三者委は、四つの非違行為について、こんな見解を示す。まず「文書の作成・配布」による処分は明らかに「違法」であり、効力がないと結論付けた。

 他の三つについては、公用PCの中から見つかった業務中の私的文書作成により「職務専念義務違反」などとする処分自体は適法であっても、そもそもが「違法な調査で判明したもの」だと。

              ◆   ◆

 もう一つ、第三者委が注目したのが、知事の発言だ。告発文書問題が公になる昨年3月27日の定例会見で、知事は元県民局長の解任を発表するに当たり、人事課の想定問答を自ら書き直し、さらに打ち合わせになかった言葉を発して担当職員を驚かせた。

 「ありもしないことを縷々(るる)並べた内容を作ったことは本人も認めている」「うそ八百」「公務員失格」

 これらの発言に対し、第三者委は「元県民局長が、事実無根の内容の文書を作ったと認めたことはない」として、極めて不適切と断じた。さらに「むしろ-」と加えてこう記している。

 「文書には、数多くの真実と真実相当性のある事項が含まれている」

 「知事の発言は元県民局長に精神的苦痛を与え、職員一般を萎縮させ、勤務環境を悪化させるものであり、パワハラに該当する」

   ◆   ◆

 第三者委が「告発文書の内容と関係がない」と言及したのが、SNS上で流れた元県民局長の私的文書だ。斎藤知事は今月、「県民の関心が高い」と公開する構えを見せた。しかし、最終的には「人事課の判断」で非公開を決定。これについて、藤本委員長は会見で「県が自浄力を発揮し、ほっとした」と語った。(連載取材班)

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・地方自治体・兵庫県・兵庫県の告発文書問題を調べた県の第三者調査委員会が19日に公表した報告書は、計264ページに及ぶ事案】  2025年03月23日  05:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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