路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説・12.16】:同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ

2024-12-16 07:00:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.16】:同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.16】:同性婚二審 違憲3例目 直ちに法整備の議論始めよ 

 動きの鈍い国会に対し、対応を強く迫る司法からの警告だ。同性同士の結婚を認めない民法などの規定を問う訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は憲法13条に違反すると、初めての判断を示した。

 13条は全ての国民が個人として尊重され、幸せを追求する権利を保障する規定だ。一人一人がありのままに認められ、他人も同じように尊重される。憲法の三大原則の一つ「基本的人権の尊重」の土台でもある。

 同性婚を巡る訴訟は、全国5地裁で計6件起こされた。二審では、これまでの札幌高裁、東京高裁を合わせて3例全てで違憲判決が出た。司法では同性婚を認める方向性が固まったと言えよう。

 福岡高裁の判決は、同性カップルを法的保護の対象にしていない点を問題視した。婚姻は「重要かつ根源的な営み」で、両当事者の希望を最大限尊重するよう憲法が国に求めているとした。男女のカップルと等しい権利があると認め、現状について「制約は重大だ」と踏み込んだ。

 原告らはさまざまな困難を訴えてきた。相続、税制上の優遇、社会保障、親権と、日々の暮らしや人生の岐路で、家族として法的な保障を受けられない事態に直面する。多様な生き方を認めよと正面から言い切った判決は、当事者の思いに応えるものだ。

 今年3月の札幌高裁判決は憲法24条1項で初判断を示した。婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」とする規定は、同性婚も異性間と同程度に保障していると認めた。10月の東京高裁判決は「性的指向により法的な差別的取り扱いをしている」と注文を付け、法の下の平等を定めた14条1項に違反するとした。

 婚姻に関わる法制定での個人の尊厳を掲げた24条2項を含めて、各地の訴訟で争点となった憲法の条項は全てで違憲判断が出た。人権侵害を放置できないとの危機感がうかがえる。立法措置を求めるメッセージに他ならない。

 背景には社会情勢の変化があろう。今春の共同通信社の世論調査で同性婚を「認める方がよい」が7割を超えた。自治体では関係性を公的に証明するパートナーシップ制度が広がるが、地域差があり、法的保障が不十分だとも知られるようになった。

 今回の判決は、婚姻について「血縁集団の維持・存続目的や宗教的立場からの介入は許されない」と指摘した。同性婚を法制度として認めない理由は「もはや存在しない」と断じた。政治は重く受け止めなければならない。

 これまで自民党政権は、伝統的な家族観を重んじる保守派の強い反対を踏まえ、国会での議論に後ろ向きだった。同様に石破茂首相も就任前から後退し、「国民の家族観と密接に関わる」として消極姿勢を見せる。だが注視する段階はとっくに過ぎた。

 国会は少数者の権利を守る手法を編み出すことも仕事のはずだ。家族観が関わるなら、なおさら合意形成していく努力が要る。法整備の実現に向けて直ちに議論を始めなければならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月16日  07:00:00  これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。

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【社説・12.15】:同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時

2024-12-16 04:01:40 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・12.15】:同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.15】:同性婚訴訟「違憲」続く 注視ではなく道開く時

 同性同士の結婚を認めない民法などの規定は、幸福追求権を保障した憲法13条に違反する。  

 福岡市と熊本市に住む同性カップルが国を訴えていた裁判で、福岡高裁が示したのは「基本的人権の尊重」の礎となる13条に踏み込んだ初判断だった。

 高裁段階では3件目の違憲判断となる。新たな論点からの「異議」を重く受け止め、国会に早期の法制化を求める。

 憲法13条は「全て国民は個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」と定めている。

 岡田健裁判長は判決で婚姻は「根源的な営み」と言及。「新たな家族を創設したいという願望は男女と同性で何ら変わりがない」とし、同性カップルを制度の対象外とする規定は幸福追求権を侵害していると結論付けた。

 時代は確実に進み、共同通信が今春実施した世論調査で、同性婚を「認める方がよい」は73%に上った。

 同性婚は「公共の福祉」に反せず、「法制度として認めない理由はもはや存在しない」との判断も明快である。

 一つ屋根の下で暮らし、深い愛情で結ばれるカップルなのに相続人になれなかったり、共同親権を得られないなど法の恩恵を受けられないのは理不尽だ。

 地位を明確にすることで、誰もが生きやすい社会づくりを進めたい。

              ■    ■

 同性婚を巡る訴訟は、全国5地裁で6件起こされている。

 一審は「違憲」2件、「違憲状態」3件、「合憲」1件と判断が割れたが、二審は札幌、東京、福岡とこれまで全てで「違憲」判断が下されている。

 原告側が憲法に違反すると訴えてきたのは(1)幸福追求権を保障した13条のほか(2)法の下の平等を定めた14条(3)両性の合意のみに基づいて婚姻が成立するとした24条1項(4)個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項-だ。

 初の二審判決となった3月の札幌高裁は、24条1項に関し「同性間の婚姻も異性間と同程度に保障している」と初判断を示した。 

 今回、福岡高裁が13条違反に踏み込んだことで、各地の訴訟で争点となった憲法の条項全てで、違憲判断が出たことになる。

 司法の流れは、はっきりしている。

               ■    ■

 機は熟しているにもかかわらず、政府のコメントはいまだに「他の同種訴訟の判断も注視したい」だ。

 自治体ではパートナーシップ制度の導入が進むが、判決は同制度の拡充などで「不平等は解消されない」と国に苦言を呈する。

 世界の潮流からも、人権の観点からも、これ以上放置できない問題である。

 判決後、原告らが掲げた横断幕にはこう書かれていた。「国会、まだ立法せんと」

 最高裁の結論を待つことなく、法制化へ動かなければならない。

 元稿:沖縄タイムス社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月15日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い

2024-12-14 09:31:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.14》:同性婚高裁判決 「幸福」求める権利は重い 

 憲法13条は、国民がそれぞれの価値観に基づいて「幸福」を求めることを、公共の福祉に反しない限り尊重して、国はその条件を整える責務があると規定している。

 同性婚を法的に認めないのは、この幸福追求権を侵害すると初めて認めた画期的な判決だ。福岡市と熊本市の同性カップル3組が、国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁が法規定は憲法13条に違反すると認定した。

 「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」とした上で、「婚姻の成立と維持について、法的な保護を受ける権利を等しく有している」と判断している。

 さらに法の下の平等を定めた14条と、個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた24条2項にも違反するとした。

 全国の5地裁に起こされた計6件の同種の訴訟で、これまでに出された3件の高裁判決は、全て違憲と判断したことになる。地裁判決は違憲が2件、違憲状態が3件だ。唯一合憲とした大阪地裁も、現状を放置すれば将来は違憲となる可能性を指摘している。

 福岡高裁は今回の判決で「婚姻は当事者の自由な意思に完全に委ねられる」として、「同性婚を法制度として認めない理由はもはや存在しない」とも述べた。司法の違憲判断は定着したといえる。

 弁護団は声明で「(13条に対する違憲判断で)全国で主張してきた全ての憲法上の論点について、裁判所から違憲と認める判断が出たことになる」と評価した。

 林芳正官房長官は記者会見で、「確定前の判決だ」として静観する姿勢を示しただけだ。ただ、石破茂首相は5日の衆院予算委員会で「(同性婚が認められないことで苦しむ人たちの)声を傍観することはしない」と述べている。法制化をしないことは、もはや政府と国会の怠慢である。早急に法改正を進めることを求める。

 今回の福岡高裁の判決は、法整備のあり方にも言及し、異性婚と同じ婚姻制度を認めなければ「法の下の平等」違反の状態は解消しないと強調した。

 これまでの判決では、同性婚を法的に認めないのは違憲とした上で、方向性としてパートナーシップ制度など「婚姻に類する制度」を例示した地裁もあっただけに、福岡高裁判決の意義は大きい。

 異性婚と別の制度で同性婚を法制化しても、新たな差別を生み出すだけである。政府、国会は今回の判決を重く受け止めるべきだ。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月14日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《思索のノート・12.01》:女性差別「肯定」、Z世代の男性をつかむ 米大統領選で拡大した「マノスフェア」 

2024-12-01 12:00:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《思索のノート・12.01》:女性差別「肯定」、Z世代の男性をつかむ 米大統領選で拡大した「マノスフェア」〈時代の羅針盤を求めて〉

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《思索のノート・12.01》:女性差別「肯定」、Z世代の男性をつかむ 米大統領選で拡大した「マノスフェア」〈時代の羅針盤を求めて〉

 11月5日に投開票があった米大統領選は、共和党候補ドナルド・トランプが民主党候補カマラ・ハリスに勝利した。

 トランプは、民主党の伝統的な支持層を切り崩すことに成功した。

 これまでトランプの主要な支持層は白人労働者だったが、今回トランプはヒスパニック系や黒人などマイノリティーの労働者にも支持を広げた。

 さらにトランプの重要な票田となったのは…(残り1551文字/全文1722文字) 

 ■続きは、会員登録後、お読みください。 

 元稿:信濃毎日新聞社 主要ニュース 文化・芸能 【思索のノート】  2024年12月01日  12:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・11.19】:国際男性デー 心身の健康考える機会に

2024-11-19 05:01:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【主張①・11.19】:国際男性デー 心身の健康考える機会に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・11.19】:国際男性デー 心身の健康考える機会に 

 11月19日は「国際男性デー」だ。

 男性の心と体の健康や幸福に目を向ける日として、1999年にカリブ海の島国、トリニダード・トバゴで始まったとされる。

 男性の健康や働き方などを巡る課題に向き合い、どうすれば豊かな人生を送ることができるかについて考える機会にしたい。

 健康面で近年、関心が高まっているのは男性の更年期障害に関してである。不安になったり、いらいらしたり、大汗をかいたりするなどの更年期障害は女性特有の症状ではない。

 男性ホルモンである「テストステロン」の分泌が減ることで男性も発症しやすくなる。中高年男性の6人に1人がかかっているという。

 女性の更年期障害は、女性ホルモンが減少する閉経前後の約10年間に起こる。男性はストレスの影響でテストステロンが急減することもあり、若くても起こり得る点で女性と異なる。

 閉経といった女性にみられるようなはっきりとした現象が男性にはないため、症状が更年期によるものという自覚がない人は多い。心身の不調を感じたときは、治療を受けたり、運動、睡眠、食事などの生活習慣を見直したりすることが重要だ。

 経済産業省は、男性の更年期障害による欠勤や業務効率の低下などの経済損失が年間1兆2千億円に上ると試算している。企業側は労働生産性に関わる問題でもあると認識し、性別にかかわらず、この症状に悩む人が働きやすい環境の整備に努めることが求められよう。

 男性を巡る課題はほかにもある。育児はその一つだ。子育ての負担が女性に集中する「ワンオペ育児」は母親の孤立や産後うつを招き、少子化の要因にもなっているとの指摘がある。

 厚生労働省の令和5年度調査で男性の育児休業取得率は30・1%と初めて3割を超えた。ただ、女性は84・1%で開きがある。国際男性デーを機に、夫婦で父親の育児について考えてもよいのではないか。

 2人に1人ががんになる時代だ。必ずしも不治の病ではなくなってきたとはいえ、罹患(りかん)すれば落ち込んだり、将来への不安を抱いたりする。働き盛りの男性ががんになったとき、生きがいを見失わず、仕事と治療を両立させる社会の在り方についても思いを巡らせたい。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月19日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・11.12》:個人通報制度 たなざらしにし続けるな

2024-11-16 09:31:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

《社説②・11.12》:個人通報制度 たなざらしにし続けるな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.12》:個人通報制度 たなざらしにし続けるな 

 選択的夫婦別姓の導入と並んで、国連の女性差別撤廃委員会から重ねて勧告を受けていることがある。個人通報の制度を定めた「選択議定書」の批准だ。

 委員会は、女性差別撤廃条約の締約国の取り組みを定期的に審査し、総括所見(勧告)を出す。選択議定書の批准について、検討中との回答を繰り返す日本政府に対し、先月の勧告で、あらためて早期の批准を促した。

 個人通報は、国内で裁判などの手だてを尽くしても人権侵害の回復が図られない場合に、当事者が国連の条約委員会に対して直接、救済を申し立てる制度だ。女性差別撤廃条約については、付属する1999年の選択議定書で制度が設けられた。

 条約の締約国189カ国のうち115カ国が既にこの議定書を批准し、制度を受けれている。委員会は今回、日本政府の対応を、時間がかかり過ぎていると指摘し、議定書批准の障壁を速やかに取り除くよう求めた。

 ほかにも、国際人権規約や人種差別撤廃条約をはじめとする人権条約はそれぞれ、個人通報の制度を置いている。日本は各条約を批准しながら、個人通報については一つも受け入れていない。

 政府は理由として、国内の司法制度と関連して問題が生じる恐れがあると説明する。関係省庁による研究会を設けているというが、いつになっても結論は出ず、非公開の会合で何が検討されているのかさえ定かでない。

 2009年からの民主党政権下では、受け入れに向けた動きがあり、子どもの権利条約の個人通報制度を定める選択議定書の共同提案国にもなった。自民党が政権に復帰して以降、機運はしぼんだが、女性差別撤廃条約をめぐって、地方から声が広がっている。

 全国のおよそ350自治体の議会で、選択議定書の批准を求める意見書が採択されたという。とりわけ県内は、市民らの働きかけで県議会を含む70議会で可決され、県内全自治体の9割に上る。

 国際条約によって人権を確保するための重要な制度であり、当事者の救済にとどまらず、国内の人権状況の改善を図る上で有益だ。通報を踏まえて条約委が示す見解は、司法の独立を脅かすのではなく、人権のとりでとしての司法の役目を補い、支える。

 背を向ける理由はなく、たなざらしのままにしてはならない。国会が動き、すべての人権条約について、個人通報制度の受け入れに必要な手続きを取るべきだ。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月12日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張・11.07】:高裁「違憲」2例目 ■ 「婚姻の平等」法制化へ前進を

2024-11-07 04:05:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【主張・11.07】:高裁「違憲」2例目 ■ 「婚姻の平等」法制化へ前進を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張・11.07】:高裁「違憲」2例目 ■ 「婚姻の平等」法制化へ前進を 

 戸籍上同性のカップルの結婚を認めないのは違憲とする2例目の高裁判決が出されました。札幌高裁に続く東京高裁の判決です。

 10月30日の東京高裁判決は、同性カップルの結婚の規定がないことは、「性的指向による差別」と述べました。憲法14条1項が定める「法の下の平等」、24条2項の「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した立法」に反すると判断しました。

 ■司法判断流れ定着

 3月の札幌高裁判決は、これらに加え、「結婚の自由」を定めた憲法24条1項に照らしても違憲としています。

 地裁段階では6件のうち5件が「違憲」「違憲状態」としています。同性カップルに対する差別の放置は許されないとの司法判断の流れが定着し、地裁から高裁へと進むにつれて強くなっています。

 東京高裁判決は、結婚がもたらす「配偶者としての法的身分関係」の形成は、安定・充実した社会生活の基盤をなす「重要な法的利益」と位置づけ、それらが与えられないことによる「不利益は重大」だとしました。

 「子を産み育てる」ことは結婚に不可欠な目的ではないと強調したうえで、実際に子を養育している同性カップルがいることも示し、婚姻制度の目的との関係で異性間、同性間を区別する合理的根拠があるとはいえないと指摘。同性カップルの結婚を認めないのは、法の下の平等を定めた憲法に違反すると判断しています。

 司法の違憲判断の背景には、同性婚をめぐる国内外の変化があります。

 ■内外で前向き変化

 世界37カ国・地域が同性婚を認めています。国際条約である自由権規約は性的指向による差別を禁止しており、日本は同規約を批准しています。国連の自由権規約委員会の日本に対する勧告は、男女間の婚姻と同様の権利利益を同性間に認めるよう求めています。

 国内でも、人口の9割近くを占める地域で性的少数者のカップル関係を認める「パートナーシップ制度」が導入されています。国民の意識調査でも、「年を追うごとに同性婚を認めることに賛成する者が増え、反対する者が減る傾向が顕著」(東京高裁判決)です。

 判決は立法について言及し、具体的な制度について「個人の尊重(憲法13条)と法の下の平等(憲法14条)という基本原則に立脚した制度とすべきである」と述べています。配偶者の地位にあることで生じる権利について、男女間の婚姻とは異なる規律とすることは憲法違反の問題が生じ得るとしました。

 同時に具体的な制度のあり方が国会の合理的な立法裁量に委ねられるとしても、それは立法措置をとらない理由にはならないとも指摘しました。国会は、この指摘を真摯(しんし)に受け止め、早急に法制化に向けた準備に着手すべきです。

 市民の調査によれば、今回の衆院選挙の結果、当選した全議員の5割が同性婚に賛成しています。同性婚に反対の議員が、賛成する議員の3倍に上る自民党は少数与党になりました。国会が主導して「婚姻の平等」に向けた立法を実現していくときです。

 元稿:しんぶん赤旗 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月07日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【金口木舌・11.07】:みんなの公道なのに

2024-11-07 04:00:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【金口木舌・11.07】:みんなの公道なのに

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・11.07】:みんなの公道なのに

 作家の高橋源一郎さんはインターネット上の交流空間を人々の言葉が行き交う公共の道路に例えた。その公道で交流を始めたものの、やがて間遠になったそう。言葉が自由に往来したネット上も現実社会の荒んだ言葉が投影するようになったのも一因だ

 ▼そんな現実は沖縄にも突きつけられた。2013年のこと。オスプレイ配備反対の建白書を政府に出し、東京の公道で沖縄の代表団がデモ行進した。その際の沿道からの罵声にぞっとする。「売国奴」「生ごみはごみ箱に帰れ」

 ▼ネットが現実に接近する様相を高橋さんも見たか。著書でこう記す。公道は「大声で叫ぶ、いくつもの集団、あるいは声の大きな人間が怒声を発する現場」になった。ネット空間では、言葉が人を攻撃する武器にもなった

 ▼東京都に近い埼玉県川口市や蕨(わらび)市でトルコ国籍のクルド人が今、矢面に立つ。現実社会もネット上も脅迫の文句が横行する。「出ていけ」「皆殺しにする」

 ▼排斥運動に加え支援団体へ届いたメールの文句を読んでいて暗澹(あんたん)となる。子どもへも被害が及んだとの報道もある。一部とはいえ、その所業は卑劣極まりない。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年11月07日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ

2024-11-05 06:00:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.04】:同性婚訴訟/国会は「違憲」を直視せよ 

 同性婚訴訟の控訴審判決で東京高裁は、同性の婚姻を認めない民法などの規定を「違憲」と断じた。3月の札幌高裁に続く違憲判断だ。

 全国5地裁で起こされた計6件の同種訴訟のうち一、二審合わせて8例目の判決で、違憲は4件、違憲状態は3件、合憲が1件となった。いずれも賠償請求は退けたが、同性カップルの権利を保障する司法の流れは定着しつつある。国会は最高裁の統一判断を待つまでもなく、立法措置に向けた議論を始めるべきだ。

 東京高裁判決は、婚姻制度で同性同士を男女と区別するのは「不合理で、性的指向による差別的な取り扱い」と認め、法の下の平等を定めた憲法14条と、婚姻や家族に関する法律は個人の尊厳に立脚するとした24条2項に違反すると判断した。

 判決は、まず婚姻の意義を説く。人生の伴侶と定めた相手と法的身分関係をつくることで安定、充実した社会生活を送る基盤になるとし、同性カップルの婚姻も重要な法的利益として尊重されるべきだと強調した。生殖の能力や意思は婚姻の要件とされておらず、カップルに子が生まれないとしても、法的関係を区別する合理的根拠はないと明言した。

 「婚姻は両性の合意のみに基づき成立する」と定めた24条1項についての判断は示さなかった。だが、判決の中で「両性」の文言があるからといって同性婚を認めないのは憲法の趣旨とは解せない、と指摘している。より当事者に寄り添い、丁寧に検討を重ねた経緯が読み取れる。

 特筆すべきは、同性婚を可能にする制度の具体的な在り方に言及した点だ。民法と戸籍法を改正して同性婚を認めるか、婚姻とは別の制度を新設するか、複数の方法を想定した上で、男女が婚姻によって得られる権利と異なれば違憲の問題が生じると警告した。男女と同じ婚姻制度の利用を重視する原告側の主張に沿って、立法の道筋を示したと言える。

 踏み込んだ判断の背景には、社会の変化への認識がある。各種調査で同性婚を認める人が反対する人を上回り、パートナーシップ制度を導入する自治体は440を超えた。同性婚を認める国も増えている。判決は「社会的受容度は相当高まっている」との見解を示した。

 国会が動かなければ、こうした現状と法制度とのずれは広がるばかりだ。東京高裁は具体的な制度構築を国会の裁量に委ねる一方で、「(裁量は)立法措置をとらない根拠にはならない」とくぎを刺した。

 衆院選で、自民党は公約に明記しなかったが、立憲民主党などは同性婚に前向きだ。与野党の政策協議が欠かせない新国会は、議論に踏み出す場にふさわしい。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月04日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ

2024-11-05 05:00:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・11.05】:同性婚判決 社会の根幹を壊しかねぬ 

 同性婚を認めない民法などの規定について東京高裁は、違憲との判断をくだした。

 男女間を前提とし、社会の根幹を成す婚姻制度を壊しかねない不当な判決だと言わざるを得ない。

 訴訟は同性カップルの当事者7人が国に計700万円の損害賠償を求めていた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟で、高裁判決は札幌に続き「違憲」とされた。

 最高裁の統一的判断が示されていないことなどから、国への賠償請求は退けられた。

同性婚訴訟の東京高裁判決を受け、会見した原告と弁護団=10月30日、東京都千代田区(関勝行撮影)

 判決では、同性婚を認めない規定について法の下の平等を定めた憲法14条1項と、結婚や家族に関し個人の尊厳や平等に立脚した立法を求めた24条2項に違反すると断じた。

 男女間にしか結婚を認めないことは「合理的な根拠に基づかない差別的取り扱いにあたる」とまで踏み込んだ。

 だが、国側が主張してきたように婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。歴史的に形成された社会の自然な考え方であり、これに根拠がないと断じる方が乱暴ではないか。

 憲法24条2項を挙げ、「違憲」とする解釈には無理がある。同条1項で婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定し、「両性」が男女を指すのは明らかだ。これを受けた2項も男女の結婚などに関するものだ。国側が言うように、憲法は同性婚を想定しておらず、違憲の問題を生じる余地はない―と考えるのが妥当だ。

 判決では各種の世論調査で同性婚を支持する人が増えているとしている。同性同士にも結婚に相当するような法的保護を与えることへの社会的な受容度が「相当高まっている」とも言う。それなら同性婚を想定していない憲法の改正を論議するのが筋ではないのか。

 判決では、異性間の婚姻とは別の規定を含め「複数の選択肢」があるとし、立法を求めている。

 同性愛など性的少数者への偏見や差別をなくす取り組みが必要なのはもちろんだが、そうした権利擁護と、結婚や家族のあり方の議論は分けて考えるべきだ。民法などの結婚や家族に関する規定は、伝統や慣習を立法化したものであり、国民の合意を得た慎重な議論が必要だ。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・11.02】:同性婚訴訟 理解に苦しむ高裁の違憲判決

2024-11-02 05:00:10 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説②・11.02】:同性婚訴訟 理解に苦しむ高裁の違憲判決

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.02】:同性婚訴訟 理解に苦しむ高裁の違憲判決

 同性カップルの結婚を認めるかどうかは、家族制度の根幹に関わる問題で、社会の幅広い議論が必要だ。憲法解釈のような法律論争によって結論を導くべきものではない。 

 同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法違反だとして、東京都の同性カップルらが国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が東京高裁であった。

 判決は、賠償を認めなかったものの、現行の民法などについて「性的指向により法的な差別的取り扱いをするものだ」と述べた。その上で、法の下の平等を定めた憲法14条などに反するとした。

 男女が結婚すると、配偶者としての相続権や税制上の優遇措置などの法的利益が得られる。同性カップルがこうした利益を得られないことは不当だという判断だ。

 性的指向は、本人の意思によって変えることができない。同性カップルだという理由で差別を受けることがあってはならないし、一緒に暮らすことも自由である。しかし、そうであっても今回の高裁判決には違和感を禁じ得ない。

 憲法24条は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」すると定めている。この文言が男女の異性婚を指していることは明白だ。

 婚姻制度は、男女が共に生活し、子供を育てる営みを基礎として作られた。憲法制定時、同性婚の可否など全く議論されていない。従って、民法や戸籍法に規定がないのは当然のことだと言えよう。

 世界人権宣言も、婚姻は「男女」の権利だと明記している。

 ところが高裁判決は、憲法が同性婚を想定していないことを認めながら、民法などに規定がないのは違憲だと結論づけた。憲法が想定しない事態が、なぜ憲法違反になるのか。理屈に合わない。

 同性婚訴訟は、全国の地裁や高裁で「合憲」「違憲状態」「違憲」と判断が分かれている。

 同性婚の問題を憲法が想定していないことをおかしいと言うのなら、同性婚を認めるよう憲法改正を主張するのが筋だろう。

 判決は、同性婚に賛成する人が大半だという近年の世論調査結果に基づいて、「社会的受容度は高まっている」と指摘している。

 同性カップルを公に認めるパートナーシップ制度の導入や、夫婦同様の休暇や手当を認める自治体や企業が増えていることは事実だ。ただ、家族制度の考え方は多様で、世代によっても異なる。

 同性婚の制度化は立法の問題である。国会などで、様々な観点から熟議することが必要だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.01】:同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ

2024-11-01 04:01:50 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・11.01】:同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.01】:同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ

 社会の意識の変化、国際的な流れ、さらには憲法が保障する人権の観点から見ても、当然の判決である。 

 同性婚を認めない民法などの規定について、東京高裁は「違憲」との判断を下した。今年3月の札幌に続き、高裁レベルで2例目となった。

 同種の訴訟は札幌地裁を皮切りに計6件起こされ、地裁では5件が「違憲」「違憲状態」と判断された。

 今回の東京高裁は、同性間に配偶者としての法的身分関係を認める規定を設けていないことを「合理的な根拠に基づかず、性的指向により法的な差別的取り扱いをするもの」と断じた。

 その上で、法の下の平等を定めた憲法14条1項と、個人の尊厳と両性の本質的平等を掲げた24条2項に違反するとした。

 特徴的なのは、同性婚を巡る新たな制度の在り方について言及した点だ。

 民法や戸籍法の規定を改正して立法すること以外に、婚姻とは別の制度を新設する方法などもあると踏み込んだ。

 具体的な制度の構築は国会の裁量に委ねられるとした上で、ただしそれが男女間の婚姻に与える権利と異なる場合は、憲法違反になり得るとも警告した。

 一方で、立法不作為による賠償請求については、同性婚を容認すべきだとする要請に対して、最高裁の判断が示されていないとして認めなかった。

 だがもはや、司法の婚姻平等の流れは定着しつつある。最高裁の判決を待つのではなく、国会は是正に向けて早急に動き出す必要がある。 

                 ■    ■

 東京高裁は、社会の意識の変化を示す根拠の一つとして、パートナーシップ制度の急速な広がりにも触れている。

 現在、全国440以上の自治体が同制度を取り入れており、全人口の約85%の居住地域に達している。

 各種世論調査でも「同性婚に賛成」とする意見は7割を超えており、異を唱える声は少数派になりつつある。

 偏見や差別だけではなく、正式な家族と見なされないことで、病院での対応やアパート契約などの不動産手続き、学校関係など、さまざまな場面で生きづらさを抱えてきた同性カップルは多い。

 原告の一人は「違憲と聞けた。生きていて良かった」と喜びの声を上げた。判決が、多くの人々に大きな勇気を与えたはずだ。

                 ■    ■

 先の衆院選では、主要野党が公約に同性婚の導入を掲げた。与党の大敗という結果を見ても、国民の意識がどこにあるのかを真剣に考える必要がある。

 世界の潮流から取り残されていることも事実だ。

 先進7カ国の中で日本だけが、異性婚と同等の権利を認める国レベルの制度を持っていない。

 同性婚導入については、国連人権理事会から何度も勧告を受けているが、真摯(しんし)に向き合う姿勢は見えない。

 国は問題を先送りにせず、判決を重く受け止めるべきである。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月01日  04:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・10.19】:2024衆院選・選択的夫婦別姓 男女格差なくす第一歩だ

2024-10-27 06:59:45 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説・10.19】:2024衆院選・選択的夫婦別姓 男女格差なくす第一歩だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.19】:2024衆院選・選択的夫婦別姓 男女格差なくす第一歩だ 

 選択的夫婦別姓制度を導入するか否かは、衆院選で自民党と野党の対立軸の一つだ。現行の同姓制度の下、女性に偏って姓を変えさせる現状は男女格差(ジェンダーギャップ)の象徴といえる。とりわけ政治と経済の分野で後れを取る中、変える意思があるのか、見極める材料でもある。

 野党の大半は実現に前向きだ。立憲民主党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党は公約に制度導入を盛り込んだ。日本維新の会は、旧姓の使用に法的効力を持たせる形での別姓制度の導入を主張する。参政党は反対だ。

 一方、自民党は従来通り慎重な姿勢だ。公約は旧姓を使う人の不便の解消を掲げた上で、「制度の在り方については、どのような形がふさわしいかを含め合意形成に努める」とした。不便を強いられる女性たちが長年求めてきた別姓制度について、答えを示していない。連立を組む公明党は「導入を推進する」と明記しており、温度差がある。

 制度については、28年も前に法制審議会が導入を答申した。司法では2015年、21年に最高裁大法廷が現行の同姓制度を「合憲」と判断しつつ、重ねて国会の議論を促した。ともに裁判官の一定数が違憲との意見を示した。既に国会で法案を審議すべき段階だと、自覚せねばならない。

 衆院選公示前に実施した共同通信社の世論調査で、導入に賛成が67%と反対を大きく上回った。30代以下の若年層だと、さらに10ポイントほど高い。現行制度によって生きづらさを感じ、結婚をためらう人も少なくなく、看過できない。

 家族の在り方、生き方を自ら選択できる社会を望む人は確実に増えた。だからこそ衆院選の争点とすべきだ。なぜ賛成で、なぜ反対なのか、深掘りする論戦を求める。

 法案が国会に提出されないのは、自民党の保守系議員らが反対してきたからだ。先の総裁選でも、候補者の賛否は割れた。石破茂氏は前向きだったが、首相に就任して後退した。従来の政府見解に沿って「さらなる検討を要する」と述べるにとどまった。

 ならば衆院選では、候補者の賛否をチェックしたい。自民党内でも大きな違いがある。男女格差の解消を進める意識があるのか、現行のままで構わないと考えるのかの試金石だ。本紙でも小選挙区の候補者に問い、一覧で掲載するなどして伝えている。

 別姓制度に反対の国会議員は主な理由に「家族の一体感を損なう」を挙げてきた。伝統的な家族観に基づき、性別による役割分担意識にとらわれた考え方があるのは否めない。加えて、与野党とも議員の大半は中高年の男性が占めている。男女格差の解消が、なかなか政治課題に据えられない現実がある。このままでいいわけがない。

 格差意識を取り除かなければ、解決できない難題は山積みだ。少子化や賃上げ、パート女性らの働く意欲をそぐ「年収の壁」の解消などであり、国力や経済に直結する主要な政策そのものだ。別姓制度の導入を第一歩とし、格差をなくす政治を求めたい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年10月19日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【ぎろんの森・04.20】:「人間とは何か」考え続けて

2024-05-20 07:19:30 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【ぎろんの森・04.20】:「人間とは何か」考え続けて

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ぎろんの森・04.20】:「人間とは何か」考え続けて 

 読者から重い問い掛けが本社に届きました。
 
 東京新聞は17日社説「死刑執行の通知 人間らしい最期の時を」=写真=で「当日の通知では執行までに残された時間は限られる」「国際的には非人道的な扱いとみなされる。この運用は見直されるべきだ」と指摘したところ、読者から「次は『人間はどういう存在なのか。人間は何か』ということを真正面から取り上げる社説が読みたい」との要望をいただいたのです。
 
 人間とは何か。自分自身、学生時代から新聞記者、そして社説を書く論説委員の仕事を通じて40年以上考え続けてきましたが、いまだに答えは出ていません。
 
 人類誕生以来、哲学者をはじめとする数多くの先達が挑んできた設問ですから、すぐに答えを見つけられないのは当然とも言えます。
 
 そういえば吉田拓郎さんの歌詞に「人間なんて ラララ ラララララ」とありましたね…。少し脱線しました。
 手っ取り早く、碩学(せきがく)に尋ねてみると、17世紀のフランスの思想家、パスカルの名言に「人間は考える葦(あし)である」があります。人間は自然の中では弱い存在だが、考えることができるという強さも持つ、という意味だそうです。
 
 やはり自分で突き詰めて考えることが、人間らしさ、人間の営みなのでしょう。今はやりの生成AI(人工知能)も利便性向上の一方で、人間自身が考えたり書いたりすることの意味を問いかけているような気がします。
 
 ところで安倍晋三政権当時の2015年、文部科学省が国立大学法人に、教員養成系と人文社会系の学部・大学院の廃止や見直しを求める通知を出したことがあります。
 
 人間とは何か、を追求したり、その人間を教育する人材を育てる学問を、国は無用と考えているのでしょうか。人間とは何かなんて突き詰める必要はない、と言っているように聞こえてなりません。
 
 「人間とは何か」を真正面から取り上げる社説を書き上げるにはまだ年月がかかりそうです。その日まで、読者の皆さんとともに考え続けたいと思っています。 (と)
 
 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【ぎろんの森】  2024年04月20日  07:08:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

2024-05-05 05:04:20 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・05.02】:両性は本質的に平等だ

 NHKの連続テレビ小説「虎に翼」は日本初の女性弁護士の人生を描く。ドラマでは、戦前の民法下における妻に対する夫の差別を取り上げており、じっくり見入った

 ▼旧民法で妻の財産は夫の管理と明文化されていた。ドラマの見どころは、暴力で夫婦関係が破綻した場合も、夫はこの規定を盾に妻の財産管理権を主張できるかという法廷での審理
 ▼結論は夫の主張を裁判所は退けた。いくら権利でも乱用を法は許さない。敗訴した夫のせりふが強引だ。「俺は絶対、お前と離婚しないからな。お前だけ幸せになるなんて絶対許さない」
 ▼ここからは民法を巡る現実の話。離婚後の共同親権導入に向けた民法改正案が気になる。参議院で審議が進むが、衆院では自民党議員が「離婚しづらい社会が健全だと思う」と発言し、波紋を広げた。これでは離婚を望む配偶者を縛り付けてしまう
 ▼親権を盾に、子と元配偶者を暴力的に支配することがあってはならない。3日で施行から77年になる憲法は両性の本質的平等と夫婦同権を定めているではないか。

 元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】  2024年05月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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