【主張】:ウクライナ穀物 露は合意を踏みにじるな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:ウクライナ穀物 露は合意を踏みにじるな
世界では深刻な食料不足が続いている。農業大国ウクライナが穀物を輸出できないような理不尽があってはならない。
ウクライナ侵略を続けるロシアが、ウクライナ産穀物の輸出に関する18日までの国際合意を延長しない構えを見せている。ロシアは身勝手な主張をやめ、無条件で延長に応じるべきだ。
ウクライナはもともと世界有数の穀物輸出国だ。小麦などの大半を黒海経由で輸出していた。ロシアが昨年2月の侵攻後に海上封鎖をし、輸出できなくなった。
この状況を打開するために昨年7月、ロシアとウクライナ、国連、トルコの間で輸出再開の合意が結ばれた。イスタンブールの「合同調整センター」が航路の安全を確保し、ウクライナの港に出入りする船舶の検査を行う。
この合意は昨年11月と今年3月に延長され、ウクライナは2700万トン以上を黒海経由で輸出することができた。
しかし、ここにきてロシアは、米欧日の対露経済制裁でロシアの穀物輸出に支障が出ているとし、「然(しか)るべき措置」が講じられなければ合意を延長しないという。
牽強(けんきょう)付会にほかならない。
ロシアの穀物輸出は何ら対露制裁の対象となっていない。ロシアは金融や機械分野などの制裁が穀物の生産や輸出に影響しているというが、ウクライナの穀物とは全く関係のない話だ。
そもそも制裁の原因はロシアの侵略行為であり、まず露軍を撤退させるのが筋である。責任を転嫁し、ウクライナの穀物を人質にとるようなまねは許されない。
ウクライナは侵攻後、ポーランドなど東欧諸国への陸路の輸出を増やした。このルートは「連帯の回廊」と呼ばれてきた。
だが、このルートも試練に直面している。東欧諸国では輸出港まで穀物を運ぶトラックや鉄道貨車が不足し、ウクライナ産が滞留してしまった。ウクライナ産が国内市場に流入して価格が下落し、各国の農家を圧迫した。
欧州連合(EU)は訴えを受け、東欧5カ国にウクライナ産を流入させず、第三国への通過だけを認める緊急措置を決めた。5カ国の農家に補償金も払うが、これらは暫定的な措置にすぎない。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2023年05月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。