路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①・12.02】:死刑存廃の提言 実態の直視と議論の契機に

2024-12-02 16:00:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説①・12.02:死刑存廃の提言 実態の直視と議論の契機に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.02】:死刑存廃の提言 実態の直視と議論の契機に

 国会議員や学識者ら16人でつくる「日本の死刑制度について考える懇話会」が、現行の死刑制度について「運用の在り方は放置することの許されない問題を伴っている」として、存廃や改善策について国に議論を求める提言を発表した。

 議論には元検事総長や元警察庁長官ら刑事司法の幹部経験者、犯罪被害者の遺族らが参加した。

 死刑制度に懐疑的な人だけでなく、制度の運用や犯罪被害の当事者側も加わっての提言は注目されよう。

 かねて指摘されてきた誤審の可能性について、「神ならぬ人が行う裁判には誤判のおそれが必然的に伴うという否定し難い事実」があるとし、それが死刑制度そのものに根本的な疑問を投げかけている、と訴える。

 刑事裁判をやり直す再審制度については、事件証拠の扱いを警察、検察が事実上独占している現状を踏まえ、誤審立証への証拠開示は「弁護人の熱意と能力と献身という偶発的事情に依存している」と批判する。

 死刑判決を受けた袴田巌さんが58年の時を経て再審で無罪となった事件は、無実の人が死刑台に送られる可能性があることを改めて突きつけた。

 死刑制度の存廃の立場を超えて、取り返しのつかない誤判を排除する仕組みが必要との提言は当然だ。超党派の議員連盟が議論を進めているが、再審法改正へ国会が動くべき時である。

 提言は、死刑制度の維持が「国際社会での日本の国益を毀損(きそん)している」との視点も示す。

 世界の国や地域の約70%が死刑を廃止か停止する中、国連人権条約機関は度々、日本に死刑廃止を勧告している。

 懇話会は、死刑廃止国から容疑者引き渡しなどを拒否された事例をあげた上で、死刑存置が国際司法協力にどんな影響を与えているかを、国が調査して国民に説明すべきとする。

 不透明さが内外から批判されている死刑の運用実態についても、情報公開が不可欠だ。

 政府は死刑存続の理由に、「やむを得ない」と容認する国民が8割超(内閣府調査)という世論の支持をあげている。

 ただ、ベールに包まれた刑執行の判断過程、現場の刑務官の心理的負担など、実態はほとんど知られていない。「国民が正しい意見を形成する前提が欠けている」という懇話会の指摘は的を射ているといえよう。

 政府は提言について「廃止は適当でない」(林芳正官房長官)との従来の立場を繰り返す。

 在任中に2人の死刑囚への執行命令書にサインした千葉景子元法相は「情報を公開し、国会や市民が刑罰の在り方を考えるべき」と訴えている。

 死刑の存廃を考える上では、犯罪被害者支援の充実も欠かせない。社会と刑罰の実態、国際事情を幅広く見据えて議論する必要がある。

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月02日  16:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【郷原弁護士】:「強制捜査を含め、相当大規模な捜査体制が必要」 なぜ? 地検&県警に告訴状を提出

2024-12-02 14:17:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【郷原弁護士】:「強制捜査を含め、相当大規模な捜査体制が必要」 なぜ? 地検&県警に告訴状を提出

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【郷原弁護士】:「強制捜査を含め、相当大規模な捜査体制が必要」 なぜ? 地検&県警に告訴状を提出 

 元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授が2日、兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。郷原、上脇両氏は2日、オンラインで会見した。

オンラインで記者会見する郷原信郎弁護士(左)と、神戸学院大の上脇博之教授(共同)

斎藤元彦知事(24年11月撮影)

 告発状によると、PR会社「merchu(メルチュ)」が斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、ネットによる選挙運動を含む広報全般の企画・立案を実行。斎藤氏が71万5000円を選挙運動への報酬として支払い、選挙運動員に金銭を供与した、としている。

 告発状を神戸地検、兵庫県警の両方に提出したことについて、郷原弁護士は「県の組織のトップである県知事(斎藤氏)を捜査の対象にするのは、警察としては非常にやりにくい事件になることは否定できない」と指摘し、「神戸地検がぜひ積極的にかかわってもらいたいということを上脇先生と話し合って、両者を並べるかたちで告発状を提出した」と説明した。

 告発状では「真相解明には、関係各所の捜索等の強制捜査を含め、相当大規模な捜査体制が必要となるものと考えられる」と明記した。

 斎藤氏は11月25日の記者会見で、PR会社に支払った71万5000円は公選法で認められたポスターの制作費などだったと説明。代理人弁護士も会見し、「交流サイト(SNS)戦略や広報全般を任せた事実はない」と述べ、公選法が禁じる運動員買収を否定した。 PR会社の女性経営者はこれまでのところコメントなどは出していない。

  元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授・兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。】  2024年12月02日 14:17:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【疑惑】:裏金事件捜査のきっかけ告発の上脇教授「間違いなく買収、被買収は成立する」斎藤知事らを告発

2024-12-02 13:03:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【疑惑】:裏金事件捜査のきっかけ告発の上脇教授「間違いなく買収、被買収は成立する」斎藤知事らを告発

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【疑惑】:裏金事件捜査のきっかけ告発の上脇教授「間違いなく買収、被買収は成立する」斎藤知事らを告発 

 元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授が2日、兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。郷原、上脇両氏は2日、オンラインで会見した。

斎藤元彦知事(24年11月撮影)斎藤元彦知事(24年11月撮影)

 告発状によると、PR会社「merchu(メルチュ)」が斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、ネットによる選挙運動を含む広報全般の企画・立案を実行。斎藤氏が71万5000円を選挙運動への報酬として支払い、選挙運動員に金銭を供与した、としている。

 PR会社は兵庫県西宮市の「merchu」で、女性経営者が11月20日付でインターネットの投稿プラットフォーム「note(ノート)」に記事を公開し、記事で広報全般を任されたとした。

 東京地検特捜部による裏金事件捜査へのきっかけとなる刑事告発をした上脇教授は「女性経営者のノートを拝見し、どう考えても、選挙に主体的に、かつ裁量のある戦略的なPR活動を行ったことは明らか」と話した。

 斎藤氏の代理人によれば、斎藤氏は9月29日に「meruchu」を訪問。面識のあった女性経営者から説明を受けた。その後、同社に対して依頼した仕事内容は、知事選に向けたデザイン制作として、メインビジュアルの企画・制作、チラシデザイン制作、ポスターデザイン作成、公約スライド制作、選挙公報デザイン制作の5点。この5点に対し、同社から10月31日に71万5000円の請求があり、11月4日に支払ったと説明した。 

 上脇教授は女性経営の公開したノートの冒頭部分に注目し「冒頭で斎藤氏が会社を訪れ、(女性経営者が)提案し、“広報全般を任せていただくことになりました”と書かれている。どう考えても真実が書かれているノート」とした。

 斎藤氏の代理人が会見する前までは「実際に報酬は支払われたのか、約束があったのかは客観的なものが確認できなかった」とし、代理人の説明で支払いが公表されたことで「間違いなく選挙運動への報酬支払いで買収、被買収は成立する」と告発の経緯を説明した。

 公選法は有権者や運動員に対し、金銭や物品のほか、財産上の利益、職務を供与することを禁じている。

 斎藤氏は11月25日の記者会見で、PR会社に支払った71万5000円は公選法で認められたポスターの制作費などだったと説明。代理人弁護士も会見し、「交流サイト(SNS)戦略や広報全般を任せた事実はない」「SNS運用については、斎藤事務所などが主体的に行っていて、代表はボランティアだった」と述べ、公選法が禁じる運動員買収を否定した。

 PR会社の女性経営者はこれまでのところコメントなどは出していない。

  元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授・兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。】  2024年12月02日 13:03:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県】:斎藤元彦知事に告発状「PR会社経営者を買収」公選法違反と大学教授ら

2024-12-02 11:51:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【兵庫県】:斎藤元彦知事に告発状「PR会社経営者を買収」公選法違反と大学教授ら

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県】:斎藤元彦知事に告発状「PR会社経営者を買収」公選法違反と大学教授ら 

 兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、上脇博之神戸学院大教授と郷原信郎弁護士が2日、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。

郷原信郎弁護士(共同)

 PR会社は兵庫県西宮市の「merchu(メルチュ)」で、経営者の女性が知事選の広報全般を担ったとするインターネット記事を公開していた。公選法は有権者や運動員に対し、金銭や物品のほか、財産上の利益、職務を供与することを禁じている。

 告発状によると、メルチュが斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、ネットによる選挙運動を含む広報全般の企画・立案を実行。斎藤氏が71万5千円を選挙運動への報酬として支払い、選挙運動員に金銭を供与した、としている。

 斎藤氏は11月25日の記者会見で、PR会社に支払った71万5000円は公選法で認められたポスターの制作費などだったと説明。代理人弁護士も会見し「交流サイト(SNS)戦略や広報全般を任せた事実はない」と述べ、公選法が禁じる運動員買収を否定した。

 女性が公開した記事によると、同社は選挙用プロフィル写真の撮影やキャッチコピーの提案、SNSの公式応援アカウントの運用などを手がけたとしている。

 ◆兵庫知事選PR会社の経過

 ▼11月17日 兵庫県知事選で斎藤元彦氏が再選

 ▼20日 PR会社「merchu(メルチュ)」経営者の女性が交流サイト(SNS)を使った戦略を提案し「広報全般を任された」などとする記事をインターネットに公開

 ▼25日 斎藤氏がポスターの制作費などとして約70万円を支払ったと認め、公選法違反には当たらないと説明

 ▼27日 斎藤氏の代理人弁護士が記者会見し「SNS戦略や広報全般を任せた事実はない」と運動員買収を否定

 ▼12月2日 上脇博之神戸学院大教授らが公選法違反容疑の告発状を1日に郵便で発送したと記者会見(共同)

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授・兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。】  2024年12月02日 11:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【兵庫県】:斎藤元彦知事らを公職選挙法違反で告発「針の穴に糸を通すような難しい弁解」郷原信郎弁護士

2024-12-02 11:33:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【兵庫県】:斎藤元彦知事らを公職選挙法違反で告発「針の穴に糸を通すような難しい弁解」郷原信郎弁護士

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【兵庫県】:斎藤元彦知事らを公職選挙法違反で告発「針の穴に糸を通すような難しい弁解」郷原信郎弁護士 

 元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授が2日、兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。郷原、上脇両氏は2日午前、オンラインで会見した。郷原弁護士は「早ければ今日中に届くと思います」とした。

斎藤元彦知事(24年11月撮影)斎藤元彦知事(24年11月撮影)

 告発状によると、メルチュが斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、ネットによる選挙運動を含む広報全般の企画・立案を実行。斎藤氏が71万5000円を選挙運動への報酬として支払い、選挙運動員に金銭を供与した、としている。

 PR会社は兵庫県西宮市の「merchu(メルチュ)」で、経営者の女性が知事選の広報全般を担ったとするインターネット記事を公開していた。

 郷原弁護士は「上脇教授と慎重に検討した上、公選法違反であり、この支払いが選挙運動の報酬に該当すると判断した」と説明した。

 斎藤氏は11月25日の記者会見で、PR会社に支払った71万5000円は公選法で認められたポスターの制作費などだったと説明。代理人弁護士も会見し、「交流サイト(SNS)戦略や広報全般を任せた事実はない」と述べ、公選法が禁じる運動員買収を否定した。

 郷原弁護士は「この弁解は、どう考えても、なかなか通らない。説明自体が針の穴に糸を通すような難しい弁解であり、ちょっとしたことで崩れてしまうような弁解だと思う。弁解が成り立たないことを判断する根拠が十分にある」と強調した。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・元検事の郷原信郎弁護士と神戸学院大の上脇博之教授・兵庫県の斎藤元彦知事が再選された知事選でPR会社経営者に違法に報酬を支払ったなどとして、斎藤氏と経営者に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を1日付で兵庫県警と神戸地検に郵便で発送したと明らかにした。】  2024年12月02日 11:33:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・12.02】:危険運転の処罰/合理的な線引きの追求を

2024-12-02 06:00:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説・12.02】:危険運転の処罰/合理的な線引きの追求を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.02】:危険運転の処罰/合理的な線引きの追求を

 悪質な速度超過や飲酒運転による重大事故に厳罰を科す危険運転致死傷罪が創設されたのに、適用が難しい現状は見過ごせない。遺族らの強い要望を受け、要件の在り方を議論していた法務省の有識者検討会が報告書をまとめ、適用拡大を打ち出した。速やかに法制審議会に諮り実効性のある制度改正を目指すべきだ。

 同罪は、1999年に女児2人が死亡した東名高速飲酒運転事故などをきっかけに、2001年に新設された。死亡事故の場合、法定刑の上限は通常の過失致死罪の懲役7年に対し、懲役20年となった。

 適用の要件は、高速度が「進行の制御が困難」、飲酒は「正常な運転が困難」とするが、数値基準はなくあいまいと言わざるを得ない。

 適用の可否が注目を集めたのは21年、大分市の一般道で発生した死亡事故だ。当時19歳の元少年が法定速度の3倍超の時速194キロで交差点に進入し右折中の対向車に激突、男性会社員を死亡させた。

 大分地検は当初、「制御困難とはいえない」として過失致死罪で在宅起訴したが、遺族らは「異常な高速運転を過失で処罰するのは不適切」として危険運転の適用を求める署名活動を展開し、地検が訴因変更する異例の経緯をたどった。

 28日の大分地裁判決は「常軌を逸した高速度」として危険運転と認め、懲役8年を言い渡した。道路を逸脱しない運転に対し、危険運転を認定するのは前例がないという。一方で求刑の懲役12年を下回る量刑には遺族から不満が漏れた。厳格な適用には要件の明確化が避けられない。 

 報告書は危険運転について、超過速度や血中アルコール濃度などの基準を設ける方針を示した。具体的な数値は示さなかったが、委員からは「法定速度の1・5倍や2倍」などの意見が上がったという。一律の基準を設けるのは分かりやすいが、危険度は個人差や現場状況で異なる場合もある。議論を尽くし、納得できる線引きを探ってもらいたい。

 報告書は、タイヤを滑らせるドリフト走行など「曲芸的な走行行為」も危険運転への追加が考えられると提言した。一方で、スマートフォンを注視する「ながら運転」への適用には慎重な見解を示した。

 危険運転と過失の刑罰の差を埋めるために、中間の刑を創設する案もある。検討会は消極的だが、危険運転の合理的な要件設定が難しければ一考に値するのではないか。過失致死傷の法定刑の上限を引き上げる方法も考えられる。

 危険運転の適用拡大は、悲惨な事故による犠牲者をなくすためだ。議論を深め、安全運転の意識を高める方策を追求してほしい。

 元稿:神戸新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月02日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【社説①・12.01】:危険運転の基準 社会通念に沿う改正を

2024-12-01 04:03:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説①・12.01】:危険運転の基準 社会通念に沿う改正を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.01】:危険運転の基準 社会通念に沿う改正を

 自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪を巡り、法務省の検討会が高速度と飲酒の運転に数値基準を導入するよう提言した。
 
 危険運転致死傷罪は適用要件があいまいで、立証のハードルが高いと指摘されてきた。
 たとえ猛スピードを出していても、酒酔い運転の状態であっても、「制御困難ではなかった」などの理由から危険運転ではなく、刑罰が軽い過失運転が適用される例が多くみられた。
 社会通念上も、事故が招いた結果の重大性とも釣り合いが取れているとは言い難かった。
 提言には危険運転の適用要件を明確にする狙いがある。議論を深めて納得のいく法改正につなげ、無謀な運転を抑止していかねばならない。
 車の死傷事故は長らく過失、つまり不注意によるミスと扱われるのが一般的だった。東名高速道路でトラックに追突され2児が死亡した痛ましい飲酒運転事故を受け、2001年に危険運転致死傷罪が新設された。
 危険で悪質な運転による事故を故意犯として厳しく罰する考え方に立つ。法定刑の上限は懲役20年で、過失運転致死傷罪の7年より格段に重い。
 ところが刑事司法の場では適用が限られてきたのが実態だ。
 危険運転と認定されるには、飲酒運転の場合は「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」でなければならない。
 運転者が深酔い状態だったのに「事故前の運転状況にそれほど異常がない」などとして裁判所が危険運転ではなく過失運転と判断したケースは複数ある。
 高速度運転は「進行を制御するのが困難」が要件だが、「事故発生まで車線を逸脱していない」といった理由で過失運転とされた例も少なくない。
 大分地裁が時速194キロで走行した車による死亡事故に、危険運転致死罪が成立するとの判決を出した。この事故も当初運転者は過失運転で在宅起訴され、遺族の訴えを受けて訴因変更された経緯がある。
 検討会は、呼気や血中のアルコール濃度、走行速度が一定数値を超えれば危険運転罪を適用することが考えられるとした。
 ただし数値のみに頼れば、基準以下なら大丈夫―といった誤った受け取られ方もされかねない。アルコールの影響は個人差があり、速度の危険度は運転の技量や道路状況などに左右される。事故の全体をみて判断する枠組みが求められる。
 もちろん厳罰化だけで悪質な運転がなくなるわけではない。運転者教習の見直しも含めた多角的な取り組みが重要になる。
 
 元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年12月01日  04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【主張①・11.30】:検事が「人格否定」 侮辱で供述は得られない

2024-11-30 05:01:55 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【主張①・11.30】:検事が「人格否定」 侮辱で供述は得られない

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・11.30】:検事が「人格否定」 侮辱で供述は得られない 

 岸田文雄前首相の演説会場で爆発物を投げ込んだ殺人未遂罪などで起訴された無職、木村隆二被告に対する和歌山地検の検事の取り調べの一部について、最高検が「不適正」と認定した。

 検事は被告に「法律の専門家は私も含めてメジャーリーガーだとして、木村さんは小学校低学年ぐらいの知識」などと見下す発言をしたという。被告が引きこもり生活をしていた点に触れ、「社会に貢献できていない」「かわいそうな木村さん」とも述べ、被告の人格を否定するような発言を繰り返したとされる。

和歌山地検

 被告からこれらの言動を伝えられた弁護人が「明らかな人格攻撃」と地検に口頭で抗議したが不適正と認めなかったため、最高検監察指導部に苦情申し入れ書を郵送していた。

 黙秘する被告の取り調べが難しいことは理解できる。だからといって人格攻撃、否定が許されるわけがない。それはもはや取り調べとはいえず、仮に供述が引き出されたとしても、その真実性には疑問符がつく。冤罪(えんざい)にもつながりかねない。

 真相解明につながる核心供述は、容疑者と取調官に信頼関係が生まれてこそ引き出される。容疑者も人間だ。「この人は信用できるか」と取調官を観察している。侮辱されて口を開く者はいない。人として当然のことを検察は忘れていないか。

 検察に限らず捜査機関には「容疑者のプライドを砕く」との手法が残る。それ自体が直ちに誤りとはいわないが、その意味するところは「証拠に基づく理詰めの調べで過ちを悟らせ、贖罪(しょくざい)意識を芽生えさせよ」ということだろう。暴力的な言動で萎縮させることではない。

 取調官は人間観察のプロであり、罪を告白させる専門家だ。冤罪の防波堤でもある。供述しないからといって侮辱するなど、取調官として恥ずべき行為であると心得たい。

 検察を巡る環境は深刻だ。侮蔑的取り調べだとして被告から訴えられて敗訴し、検事が特別公務員暴行陵虐罪で刑事裁判にかけられるなど、問題が相次ぐ。そうした中で、今回の問題について当事者の和歌山地検は取材に「この事案を把握しているかどうかも言えない」としか答えない。社会とのコミュニケーションや説明責任をどう考えているのか。独善に呆(あき)れる。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月30日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①・11.29】:危険運転の処罰 法見直しへ市民感覚を

2024-11-29 16:05:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説①・11.29:危険運転の処罰 法見直しへ市民感覚を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・11.29】:危険運転の処罰 法見直しへ市民感覚を

 無謀運転を抑止する法整備がさらに求められる。

 大分市の一般道で2021年、時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突し、相手の男性を死亡させたとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の罪に問われた被告の男に、大分地裁が懲役8年の有罪判決を言い渡した。 

 判決は、法定速度60キロの3倍以上の猛スピードでの運転を「常軌を逸した進行制御困難な高速度」だったと認定した。

 その上で、「加速の高まりを楽しむ」という動機を「身勝手で自己中心的」と厳しく非難し、過失罪より重い危険運転致死罪の成立を認めた。社会的な常識や市民感覚にかなうといえよう。

 悪質な運転を「故意」として「過失(不注意)」より厳しく臨む危険運転致死罪については、2001年に新設されたが、適用の線引きがあいまいで立証のハードルが高いという指摘が度々なされてきた。

 現在、同罪に問うには「進行の制御が困難な高速度」や「アルコールの影響で正常な運転が困難」だったことなどの立証が必要とされる。

 そのため、実態としては検察が過失致死傷罪などで起訴することが少なくない。

 だが、飲酒を過失とするのは、事故遺族から批判が強く、一般的な感覚ともかけ離れていると言わざるをえない。

 同罪についてはおととい、法務省の検討会が、速度違反と飲酒に関する数値基準の設定を促す報告書をまとめた。

 速度については「最高速度の1・5倍や2倍」との委員の意見を紹介し、飲酒でも呼気中のアルコール濃度などの数値基準を定め、超えた場合に一律で同罪を適用することとした。

 具体的な数値は、法務大臣の諮問機関である法制審議会に委ねられる。

 ただ、数値だけが適用の基準になれば、「基準以下だから危険運転にはあたらない」という運用につながりかねない。留意した議論が必要だろう。

 事故原因に飲酒がどの程度影響したかを総合的に判断すれば、アルコール濃度が基準値以下でも危険運転と見なす可能性はあり得るのでないか。

 厳罰化だけで事故をなくすことは難しい。危険な運転を防ぐ車両の開発やインフラ面の改良に加え、ドライバー一人ひとりの安全意識を高める施策を強化したい。 

 元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月29日  16:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.25】:危険運転の要件見直し 国民感覚に沿った議論を

2024-11-26 07:00:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説・11.25】:危険運転の要件見直し 国民感覚に沿った議論を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.25】:危険運転の要件見直し 国民感覚に沿った議論を 

 自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪の在り方を議論する法務省の有識者検討会が報告書のたたき台をまとめた。

 飲酒や高速度運転の悪質性を重視し、適用条件に飲酒量や速度の数値基準を設けることなどが示されている。

 これまで危険運転の適用は線引きが不明確で、悪質としか思えない事例も過失運転として処罰されることが少なからずあった。たたき台は「処分が軽過ぎる」と感じる交通事故遺族の思いに応える点でも評価できるものだろう。

 ただ数値基準だけで問題は解決できない。国民感覚にかなう基準はどうあるべきか。議論を深めてもらいたい。

 危険運転致死傷罪は飲酒や高速度、信号無視などが招いた死傷事故で特に危険、悪質なケースに適用されてきた。懲役20年が刑の上限になっており、懲役7年の過失運転致死傷罪よりはるかに重い。

 故意と過失で量刑に大きな差があるのは分かる。だが、二つの罪の要件の違いは「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」「進行を制御することが困難な高速度での走行」といった曖昧な内容にとどまってきた。

 処罰に柔軟性を持たせる狙いがあることは否定しない。ただ、検察庁が2022年に過失運転とした28万件余りに対し、危険運転はわずか454件。よほど悪質性がない限り、危険運転に問われてこなかったことも事実である。

 大分地裁では今、時速194キロの車が交差点で対向の右折車と衝突した死亡事故の公判が進んでいる。猛スピードでの走行が過失運転とはとても思えない。それでも被告側は「直線道路で車線をはみ出さずに走行できていた」として危険運転ではなかったと主張しているようだ。

 三重県では法定速度60キロの道路を時速146キロで走った車の死亡事故で、危険運転罪の適用が裁判で認められなかった。こうした事例を繰り返してはなるまい。

 たたき台では飲酒運転、高速度運転への数値基準のほか、ドリフト走行なども新たな処罰対象に追加するよう示している。しかし、危険運転と認定する速度や飲酒量の基準をどう定めるかでは意見が分かれているようだ。

 数値基準を厳格に線引きすれば、むしろ基準を下回った悪質な運転を摘発できなくなることも考えられる。とりわけアルコールの摂取量は個人差が大きい。基準超えだけでなく、下回った場合でも個別に判断できるように、基準を「二段構え」とするような想定が必要だ。

 危険運転致死傷罪は、1999年に東名高速道で起きた飲酒運転のトラックが乗用車に追突し、女児2人が死亡した事故を契機に新設された。

 悲惨な事故が起きるたびに最高刑を懲役20年に引き上げたり、刑法から自動車運転処罰法として独立させたり、あおり行為なども処罰対象に加えたりしてきた経緯がある。

 それでも痛ましい事故はなくならない。厳罰化に頼るだけでなく、どうすれば事故を減らしていけるのか。社会全体で考えていく課題だろう。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月25日  07:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説・11.21】:自転車罰則強化 危険な運転なくす契機に

2024-11-22 06:05:30 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説・11.21】:自転車罰則強化 危険な運転なくす契機に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.21】:自転車罰則強化 危険な運転なくす契機に 

 自転車は運転ルールを守らなければ、人を死傷させる凶器になる。安全運転の意識を高めるきっかけにしたい。

 改正道交法が1日に施行され、自転車で走行中にスマートフォンなどを使う「ながら運転」や酒気帯び運転に対する罰則が強化された。

 法律上、自転車は軽車両で車の一種である。車の運転手と同じように、歩行者を守る注意義務を負う。

 スマホで通話したり、画面を触ったりして自転車を運転すると周囲への注意が散漫になり、非常に危険だ。

 改正道交法は、6月以下の懲役または10万円以下の罰金を科す。事故を起こすなど、悪質な場合は1年以下の懲役か30万円以下の罰金となる。

 酒気帯び運転も罰則対象になった。呼気1リットル当たり0・15ミリグラム以上のアルコール分が検出されれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金だ。

 酒を飲んで自転車に乗れば判断能力が低下し、正常な運転はできない。歩行者や車との事故の恐れが増す。

 これまでは酩酊(めいてい)状態の酒酔い運転だけが罰則の対象だった。飲酒運転すると知りながら酒類を提供した人にも懲役や罰金を科す。車の飲酒運転と同じと受け止めるべきだ。

 警察庁によると、2023年の自転車関連の事故は約7万2千件で、前年より2千件以上増えた。全交通事故の2割を超える。

 自転車が加害者で、歩行者が死亡か重傷になった事故は358件に上った。ながら運転が原因の事故は、14年の9件から26件に急増している。

 事故の4割近くは歩道で起き、被害に遭った歩行者の過半数は65歳以上だった。高齢の歩行者への目配りを一層心がけたい。

 事故を減らすため、罰則の強化はやむを得まい。

 警察庁は、ながら運転や信号無視、一時不停止など113の違反行為に対し、反則金納付の通告制度を26年度までに導入する。いわゆる青切符で、16歳以上が対象になる。

 電動アシスト自転車の普及もあり、幅広い年齢の人が日常生活に自転車を使う。

 だが、基本的なルールを認識している人はどれだけいるだろうか。車道の左側通行が原則で、歩道を走るのは例外だ。暗くなればライトを点灯させなくてはならない。

 イヤホンやヘッドホンをして周りの音が聞こえない状態で運転する人、傘を差して運転する人をよく見かける。これも違反に当たる。

 昨年4月から自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務となった。1年半が経過しても定着には遠く及ばない。

 自動車運転と違い、自転車は講習の機会が少ない。警察や自治体、学校、事業者が協力して啓発を強化したい。車道の自転車専用レーンの整備も必要だ。

 加害者にも被害者にもならないように、最低限のルールとマナーを身に付けよう。

 元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月21日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②・11.22】:車の危険運転 遺族の訴えを生かせる改正に

2024-11-22 05:00:40 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【社説②・11.22】:車の危険運転 遺族の訴えを生かせる改正に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.22】:車の危険運転 遺族の訴えを生かせる改正に

 車の悪質な運転者が厳しく裁かれない現状に、遺族が不満を募らせるケースが相次いでいる。無謀な運転を抑止するためにも、厳正に処罰できる法律に改める必要がある。 

 法務省の検討会が、自動車運転死傷行為処罰法の「危険運転致死傷罪」について、要件の見直しを求める報告書案をまとめた。猛スピードや飲酒運転による事故に適用する際、速度や飲酒量の数値基準を導入するよう促す内容だ。

 車の人身事故は一般に、運転ミスによる過失と見なされてきた。しかし、東名高速道で女児2人が死亡する飲酒運転事故が起きたのを機に2001年、危険運転致死傷罪が新設された。

 法定刑の上限は、「過失運転」の場合、懲役7年だが、「危険運転」は悪質な故意犯として懲役20年と重くなっている。実態を適切に見極めて処罰することが重要なのは、言うまでもない。

 ところが、実際には全国各地で法適用の混乱が見られる。

 大分市では、法定速度60キロの道路を194キロで走った車による死亡事故で、運転者が当初、過失運転で在宅起訴された。群馬県伊勢崎市で飲酒運転のトラックに衝突されて家族3人が死亡した事故も、起訴は過失運転とされた。

 いずれも遺族の訴えを受けて危険運転に訴因変更されたが、当初の検察の判断は市民感覚と著しく 乖離 かいり していたと言えよう。遺族が納得できないのは当然だ。

 検察が危険運転の適用に慎重になる背景には、現行法の曖昧さがあるとされる。危険運転は「制御困難」な速度や「正常な運転が困難」な飲酒での事故などに適用されるが、明確な数値基準がないため、立証のハードルが高い。

 そのため検討会は今回、基準となる速度や飲酒量を定め、それに達すれば、一律に危険運転とみなすよう求めた。数値基準があれば判断のばらつきも少なくなるはずだ。妥当な提案であり、国は基準作りを進めてほしい。

 ただ、基準ができても、それだけに頼っていては、正しく判断できない事例もあるだろう。速度が基準を下回っていたとしても、飲酒などの複合的な要因が加わることで全体として危険運転と評価されることは十分あり得る。

 数値基準を活用しながら、最終的には、事故の全体像を捉え、適切に判断することが大切だ。

 当然のことではあるが、速度超過や飲酒の状態で車を運転しないという意識を、社会全体で改めて徹底することも欠かせない。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②・11.18》:危険運転罪 運用を改善できる要件に

2024-11-19 09:31:25 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

《社説②・11.18》:危険運転罪 運用を改善できる要件に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・11.18》:危険運転罪 運用を改善できる要件に 

 悪質な死傷事故に適用される自動車運転処罰法の「危険運転致死傷罪」について、あり方を話し合う法務省の有識者検討会が報告書案をまとめた。

 飲酒や猛スピードの悪質さをより客観的に立証できるよう、数値基準を設ける方向を示した。

 今は条文があいまいで、酒酔い運転の状態でも、時速200キロ近い速度を出していても、刑の軽い「過失」とされる例があり、遺族らが疑問の声を上げていた。

 悲惨な事故をなくしていくために、開かれた場でさらに議論を重ね、多くが納得できる新たな適用の要件を導き出したい。

 危険運転致死傷罪は2001年に新設された。東名高速道で飲酒運転のトラックが乗用車に追突、女児2人が猛火に包まれて亡くなった事故などがきっかけだ。

 飲酒、高速度、信号無視、あおり運転などによる死傷事故のうち、とくに危険、悪質な運転に適用される。刑の上限は懲役20年で、「過失運転致死傷罪」の懲役7年よりずっと重い。

 「過失」との分かれ目は、悪質さ(故意)が認められるかどうかだ。だが、条文にあるのは「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」や「進行を制御することが困難な高速度」といった文言でしかない。

 アルコールの影響は体質や体調によって差異があり、速度も道路状況や運転技能に左右されうる。罪状の解釈に幅が生じ、起訴後に訴因が変わる例も相次ぐ。

 3年前、大分市の一般道で時速約194キロで乗用車を運転し右折車と衝突、男性会社員を死亡させた事故では、県警が危険運転容疑で書類送検したのを、検察が過失運転で起訴。その後、再び危険運転に切り替えている。

 この5月、群馬県伊勢崎市で飲酒運転のトラックが乗用車に突っ込み、幼児を含む家族3人が亡くなった事故でも、検察がいったん過失運転で起訴した後、危険運転に変更している。

 いずれも遺族が危険運転での審理を訴えてのことだ。今月、大分市の事故の裁判員裁判で被害者の姉は「遺族が声を上げなくても危険運転で起訴されるべき事故はきちんと起訴される世の中になってほしい」と語っている。

 今後、一律で危険運転と判断できる速度やアルコールの体内濃度の検討が続く。ただ、数値だけに縛られると、基準以下の悪質な運転に対応できないことも考えられる。どんな要件が適切か、多角的な議論が求められる。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月18日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【主張①・11.18】:危険運転致死傷罪 遺族感情に応える改正を

2024-11-18 05:01:50 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

【主張①・11.18】:危険運転致死傷罪 遺族感情に応える改正を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・11.18】:危険運転致死傷罪 遺族感情に応える改正を

 法務省の検討会が、悪質事故に適用される危険運転致死傷罪の要件見直しを提案する報告書案をまとめた。曖昧と批判があった高速度と飲酒について、一定の数値基準を設定するよう求めている。

 妥当な提案だ。法改正は悪質運転で大切な人を奪われた遺族が強く求めていた。遺族の怒りは国民の思いでもある。国民感情との乖離(かいり)を埋めるべく、法務省は同罪の適用要件を明確化してほしい。

法務省

 同罪は、東名高速道で飲酒運転のトラックが女児2人を死亡させた事故をきっかけに平成13年に創設された。法定刑の上限は20年で、過失運転罪の上限7年とは大きな開きがある。

 現行法は高速度の対象を「進行の制御が困難」、飲酒を「正常な運転が困難な状態」とし、具体的な速度や数値を定めていない。報告書案は一定の速度以上を高速度の対象とし、「法定速度の2倍や1・5倍」とする意見もあった。

 令和3年2月、大分市内の県道交差点を右折する会社員の車に、当時19歳の少年が運転する直進車が衝突し、会社員は死亡した。直進車は法定速度の3倍を超える194キロで走行していたが、大分地検は「直線道路で走行を制御できていた」として過失運転致死罪を選択した。

 そもそも制御できなかったから、事故は起きたのだ。納得できない遺族は署名を集めて訴因変更を求めた。補充捜査を経て訴因は危険運転致死罪に変更されたが、なお争われている。

 遺族の声による訴因変更こそが要件の曖昧さを象徴する。一定の数値設定は必要である。

 ただし、要件に定めた速度や数値が厳罰逃れの指標となってはならない。

 例えば法定速度の2倍を高速度と定め、60キロ道路で120キロ以上のスピードで事故を起こせば「危険運転」となるが、これ以下の速度であっても「ながら運転」や飲酒などの複合要因で悪質な運転と判断されるケースはあり得る。数値を唯一の基準とすべきではない。

 遺族らの強い処罰感情は、ただ怒りに任せたものではない。同じ不幸を経験する人がなくなる よう、事故そのものを恨み、撲滅を目指すものだ。

 厳罰化や処罰対象の明確化が悲惨な事故の減少に寄与することは、飲酒運転の取り締まりが証明している。

 元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】  2024年11月18日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説①・11.15》:死刑制度の存廃 議論を棚上げにするな

2024-11-16 09:31:45 | 【法務省・法制審議会・検察庁・地検・保護司・刑法・刑罰・死刑制度】

《社説①・11.15》:死刑制度の存廃 議論を棚上げにするな

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.15》:死刑制度の存廃 議論を棚上げにするな 

 現行の死刑制度と運用には、放置できない多くの問題がある。現状のまま存続させてはならない―。政府、国会が正面から受けとめるべき問題提起だ。

 学識者らによる「日本の死刑制度について考える懇話会」が報告書をまとめた。死刑の存廃を含め、制度を根本的に検討する会議体を国会、内閣の下に早急に設けることを提言している。

 懇話会は、日弁連が呼びかけて2月に発足した。刑法学者の井田良・中央大教授を座長に、与野党の国会議員、犯罪被害者の遺族、元検事総長、元警察庁長官ら16人が加わっている。

 検討すべき事柄としてまず挙げたのは、国際社会の動向を踏まえた日本の立場と責務だ。死刑を廃止するか執行を停止した国は144カ国に上り、世界の7割を超す。国連総会で廃止や執行停止を求める決議が繰り返し採択され、日本政府は人権条約機関から再三、廃止の勧告を受けてきた。

 懇話会は、そのことが日本の国益を損ねている疑いを指摘するとともに、現行の制度や運用が人権保障の国際標準に合致しているかを再検討すべきだと述べている。政府は、国際社会の懸念や批判に向き合おうとしない姿勢それ自体を改める必要がある。

 提言が次に挙げたのは、誤った裁判による冤罪(えんざい)の可能性だ。袴田巌さんが再審で無罪となった事件は、無実の人が死刑に処される恐れが現実のものであることを、あらためて突きつけた。

 死刑が再審で覆った事例は、1980年代に無罪となった4事件を含め5件に上る。人の命を奪う死刑は、執行されてしまえば取り返しがつかない。提言は、誤判を排除する特別な裁判手続きの要否も検討の必要があるとした。

 懇話会はまた、実態が明らかでない執行手続きについて政府に情報公開を求めている。死刑を続ける根拠として政府は国民世論の支持を挙げてきたが、制度のあり方について国民が意見を形成する前提が欠け、現状を正当化する理由にならないと指摘している。

 日本はこの先も死刑を続けるのか、議論が不可欠だ。内向きの論理に閉じこもって、棚上げにしておけない。懇話会の提言を踏まえて国会は会議体の設置に動くべきだ。政府は情報を公開し、議論の土台をつくる必要がある。

 何より肝心なのは、主権者である私たちが自らの問題として向き合うことだ。国会、政府に働きかけるとともに、開かれた議論の場を社会に広げたい。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年11月14日  09:31:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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