【社説②】:共通テスト流出 知見集めて不正対策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:共通テスト流出 知見集めて不正対策を
大学入学共通テストの試験中に世界史Bの出題が外部に流出した問題で、大阪府に住む大学1年の女子学生が警察に出頭した。
試験会場でスマートフォンを使って撮影し、家庭教師紹介サイトでやりとりした学生にネット通話アプリで解答を教わったという。
警視庁が偽計業務妨害容疑を視野に捜査を進めている。
公平かつ公正な運用が求められる全国一斉の試験で管理をかいくぐり、あってはならない不正行為が生じた。受験生や社会に与えた衝撃は極めて大きい。
スマホを使った不正は共通テストの前身、大学入試センター試験の導入以降で初の事例である。
国や入試センターは再発防止対策を急ぐ必要がある。情報通信技術の進歩は著しく課題は多いが、知見を集め手だてを探りたい。
捜査関係者によると、女子学生は上着の袖に隠したスマホで試験問題を撮影した。「成績が上がらず魔が差した」と話しているという。だが複数の学生に解答を依頼するなど計画性がうかがえる。
試験会場ではスマホなどの電子機器は電源を切って収納する決まりで、試験官も巡回していたものの防ぐことができなかった。
新型コロナ感染防止で受験生が距離を置いて着席するなど気付きにくい面はあったろうが、死角がなかったのか検証が必要だ。
依頼の内容を不審に思った学生が通報したことから問題が発覚した。届け出がなければ闇に葬られた可能性も捨てきれない。
電子機器による不正は、過去の個別試験では起きた事例もあり、対策が講じられてきた。だが機器の小型化や高性能化が進み、抜本的な対策は難しいのが実情だ。
きょうから共通テストの追試験が始まる。差し当たっては巡回や点検を厳格にするほかなかろう。
その上で費用対効果に留意しつつ有効な対策を練らなければならない。まじめに取り組む大多数の受験生の不安解消にもつながる。
今回の問題は数十万人もの受験生が一斉に受験する仕組みのもろさを示した。試験方法に改良の余地がないか検討してもよかろう。
15日の共通テスト初日には東大の試験会場前で高校2年生が刺傷事件を起こした。この生徒も成績が上向かず悩んでいたという。
いずれも精神的に不安定な年代の若者が学歴偏重の風潮にとらわれ、視野が狭くなっていたのではないか。価値観や将来への進路は多様であると、周囲の大人が教えることが大切だろう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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