【自民党】:裏金事件ついに逮捕者で大詰め 二階俊博氏と世耕弘成氏「和歌山の大物2人」に“明暗くっきり”の声が出るワケ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【自民党】:裏金事件ついに逮捕者で大詰め 二階俊博氏と世耕弘成氏「和歌山の大物2人」に“明暗くっきり”の声が出るワケ
ついに逮捕者が出た。東京地検特捜部は1月7日、自民党・安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティーをめぐる問題で、派閥から約4800万円のキックバックを受けながら、政治資金収支報告書に虚偽の記載をした疑いで、池田佳隆衆院議員と会計責任者を逮捕した。事件がどこまでの広がりを見せるのか、捜査は大詰めを迎えつつある。<button class="sc-kPMLMy iJRAKq" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-kPMLMy iJRAKq" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button>
和歌山を地盤に勢力争いを繰り広げてきた世耕氏と二階氏(時事通信フォト)(NEWSポストセブン)
そうしたなか、裏金事件の捜査でターゲットとなっている面々にも明暗がわかれているようだ。特捜部は昨年末、安倍派の指導部メンバーで前自民党参院幹事長の世耕弘成氏らを事情聴取したが、年明け早々には、世耕氏が地元・和歌山を二分するかたちで主導権争いを繰り広げてきた二階俊博・前幹事長に対しても事情聴取を行った。
そんな2人の大物がしのぎを削る地元・和歌山では、“2人の明暗がわかれそうだ”と囁かれているという。
二階氏の地元、和歌山県御坊市で二階氏の側近との間で議席を争ってきた元県議の楠本文郎氏(日本共産党)が、裏金事件で走った激震の大きさを語る。
「裏金疑惑がさかんに報道されるようになった昨年の暮れから、“あの2人は和歌山を疲弊させるばかりで何をしてくれたんや”という有権者の声を聞くことが増えました。これまでこの2人を批判しなかったような立場の人からもそうした声を聞いています」
保守王国・和歌山の政界で長年、大きな影響力を保ってきた二階氏との暗闘が取り沙汰されていたのが、世耕氏だ。二階氏の地盤である和歌山2区(旧3区)を念頭に衆議院鞍替えに意欲を示してきた世耕氏は、強制捜査前に行われた月刊誌『Hanada』のインタビューで「いずれは国のかじ取りをしてみたい」と首相への意欲を語っていた(同誌の発売は安倍派各議員への任意聴取開始4日後の12月20日)。
◆近畿大の職員組合からも辞任要求
地元関係者の間では、今月1日発行の元公明党県議の渡辺勲氏が主宰する県域の情報誌「和歌山〈21政経フォーラム〉」に掲載された「ほんま、世耕弘成は運のない男やな?」と題した座談会形式の記事が話題になっている。「運がない」とは、衆議院への鞍替えに向けて具体的な動きを見せた2021年10月以来、6度も躓いたという指摘だ。
AとBという2人の「事情通」はこんなやりとりを交わしている。
〈B「第1の躓きは、2021年10月の衆院選での立候補断念。世耕は二階俊博が出馬せず(筆者注・息子に)後継指名したら二階の選挙区和歌山3区から立候補する構えだった。選挙カーまで秘密裡に用意して出馬の機会をうかがっていたが、二階本人が出ることになって出馬を断念した」
A「世耕は二階と正面から殴り合いをする覚悟ができていなかった。次の機会が巡ってくるのを待とうとしたことが失敗だった。腰砕けだな。そして一昨年の7月8日、青天の霹靂の如く世耕の後ろ盾だった安倍晋三が狙撃死〔原文ママ〕するという事態が出来。これが世耕の第2の躓き。第3の躓きは、一昨年の県知事選における自民党推薦候補者選び『二階VS世耕代理戦争』での敗北」〉
代理戦争とは、現在の知事である元国民民主党の衆議院議員、岸本周平氏を推した二階氏に対抗するかたちで世耕氏が総務官僚を擁立しようとした県連内バトルを指すが、ここでも世耕氏は撤退している。
第4の躓きは2022年10月、安倍派の後継争いで派閥内の参院グループを動かすかたちでトップを目指すもこれまた衆議院側の反発で頓挫。さらに第5の躓きは2023年12月に任意とはいえ特捜部の聴取を受けることになった裏金疑惑と参議院幹事長の辞任だ。
しかもその影響は深刻で、世耕氏が理事長を務める近畿大学の組合の一つ「近畿大学教職員組合」が12月11日、「本学の社会的評価の低下を招く」などとして理事長辞任を求める要望書を学校法人近畿大学に提出する事態に発展した。これが6番目の躓きだ。
近畿大学といえば世耕氏の祖父で元自治大臣の弘一氏が創立して以来、一族がトップに君臨してきた家業だ。その足元から吹き出した辞任要求のダメージは計り知れず、情報誌の記事は、〈1998年の初当選以来5期25年、世耕は一度たりとも金にまつわるスキャンダルに見舞われたことがない“キレイな体”だったが、今回の裏金疑惑で世耕が営々と築いてきた信用までも失墜した〉〈衆議院鞍替えは(略)儚く消滅した〉と結んでいる。つまり、首相の目も潰えた、というのだ。
◆欠席の世耕、出席の二階
実際、昨年12月16日の安倍派各議員への任意聴取開始以降、世耕氏は地元の恒例行事にも姿を見せていない。
例えば、12月17日に御坊市で行われた毎年恒例の全国イベント「ロボットフェスティバル」の会場には姿を見せず、新年1月4日の御坊市を中心とした地域の政財界人が集結することもあって昨年は出ていた「2024年新春賀礼会」も欠席。ラジオ和歌山放送が毎年この時期に衆参の国会議員を招いて行う新年1月6日午後の生放送「和歌山県選出国会議員座談会」も欠席した。
ちなみに、ロボットフェスについては二階氏も欠席したが、御坊の賀礼会はもちろん出席し能登半島地震を念頭に「オールニッポンで対応していこう」とあいさつ。新春のラジオにいたっては任意聴取が報道される数時間前にもかかわらず、二階氏は元気に出席している。一方、世耕氏は二階氏の影響力をそいで主導権を奪うには退けない場面だったのに、雲隠れを続けた格好になった。
過去には西松建設から偽装献金を受け取った問題など大騒動の渦中で何度も名前が挙がるなど“古傷”も多い二階氏の場合、この程度の疑惑は“屁の河童”ということなのか。あるいは、万が一責任を問われても、後継者とみられる三男・伸康氏に立ちはだかる世耕氏の衆議院転出の可能性がしぼみ、後顧の憂いが減ったということなのか。和歌山の2人に着目すると、今回の裏金事件で世耕氏が受けた打撃は、二階氏が受けたそれに比べてはるかに大きかったということは言えそうだ。
■取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
元稿:小学館 主要出版物 週刊ポスト 【NEWSポストセブン】 2024年01月08日 07:15:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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