【社説・11.17】:日中首脳会談 対話重ね相互理解深めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.17】:日中首脳会談 対話重ね相互理解深めよ
石破茂首相は日本時間のきのう、南米ペルーの首都リマで、中国の習近平国家主席と初会談した。戦略的互恵関係の包括的な推進と、建設的かつ安定的な関係を構築する方向性を確認した。約35分間と短かったが、まずは両トップが対面し意見交換した意義を認めたい。
米国の次期大統領に決まったトランプ氏は対中強硬姿勢を鮮明にし、関税を大幅に引き上げる考えを示している。国務長官には強硬派のマルコ・ルビオ上院議員を起用すると発表した。
世界の大国である米中の関係が悪化すれば、各国に不安が広がる。双方と関係が深い日本は日中間の関係改善に加え、米中両国を取り持つ役割で国際社会の期待に応えるべきだ。今回の会談をその第一歩にしたい。習氏と今後も会談を重ねる方針で一致したことは、一定の成果だろう。
戦略的互恵関係とは、日中両国がアジアと世界に対して厳粛な責任を負うとの認識の下、アジアと世界に共に貢献する中で、互いに共通の利益を拡大していくという考え方である。最大の共通利益の一つは無用な衝突、特に軍事衝突を避けることに違いない。
そのためには、さまざまな形で相互に理解を深める努力が不可欠だろう。会談で申し合わせた通り、外相の相互往来や閣僚級の「日中ハイレベル人的・文化交流対話」「日中ハイレベル経済対話」を確実に実現してほしい。
日中関係は冷え込みが続いていた。中国は日本の領海や領空への侵犯を繰り返し、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、日本産水産物の輸入を全面停止した。日本も南西諸島のミサイル配備など防衛力を強化してきた。両国間で不信が増幅し、悪循環に陥っている面があった。
今回の会談で石破首相は、中国の活発な軍事活動に対する懸念を伝え、日本人学校の児童の刺殺事件などを受けて邦人の安全確保を求めた。互いに言うべきことを言える関係が重要である。
中国は、日本との関係を悪化させたくない状況だろう。国内経済の不振は深刻で、デフレの懸念が強まっている。トランプ氏が米大統領に就任すれば、輸出の環境もさらに悪化すると思われる。
習氏は「中日関係は改善と発展という重要な段階にある」と述べた。9月に合意した日本産水産物の輸入再開も「きちんと実施する」と確認した。関係改善の好機と受け止めたい。
とはいえ、習氏は中国共産党総書記として3期目入りを決めた2年前の党大会で台湾統一を目標に掲げ「武力行使の放棄は約束しない」と明言。今年10月には台湾を包囲する海空域で軍事演習をした。危機が近くにある状況に変わりはない。
石破首相は日中首脳会談に先立ち、米国のバイデン大統領、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領とも会談し、安全保障分野などでの協力を調整する事務局組織の新設で合意した。独自の対話チャンネルを重層的にしつつ、関係各国と連携するバランス感覚が求められる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月17日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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