【社説・11.03】:闇バイト強盗 日常に潜む犯罪防がねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.03】:闇バイト強盗 日常に潜む犯罪防がねば
交流サイト(SNS)などで犯罪実行者を募る「闇バイト」による強盗事件が首都圏を中心に相次ぐ。実行役の大半は20代以下の若者だ。まずは背後にいる指示役の特定・逮捕を急ぐ必要がある。
強盗罪は5~20年の懲役が科される重罪だ。人を傷つけたり死なせたりした場合は、極刑や無期懲役の可能性もある。未熟な若者が凶悪犯罪に加担しないよう、対策を強めねばならない。
先月には山口県光市の民家へ強盗に入る準備をしていたとして、関東の中高生3人が逮捕された。危険は地方都市にも広がっている。家庭や地域の防犯力も高めておきたい。
実行役の多くはSNSのバイト募集に応じた。高額報酬をうたうものもあり、光市の事件では数十万円の報酬が示されたという。重罪に見合う仕事など存在しないと肝に銘じるべきだ。
見極めが難しいのは「ホワイト案件」「行政の許可」などの文言を使い、通常の求人を装うケース。応募者に本人や家族についての情報提供を求めた後、その情報を盾に取って犯罪への加担を命じるのが常とう手段である。
神奈川県横浜市での強盗殺人容疑で逮捕された22歳の男は、SNSで「ホワイト案件」と検索して応募。犯罪と知って怖くなったが、「家族に危害が及ぶのを恐れて断れなかった」と警察に供述している。
逮捕者に若者が多いのは、社会経験や判断力の未熟さにつけ込まれるからだろう。SNSでの職探しには、一生を棒に振るリスクが潜んでいることを忘れてはならない。
犯行の指示役との連絡には秘匿性の高い通信アプリ「シグナル」が使われるケースが多いという。求人元に不審を感じたら、ためらわずに警察に相談してもらいたい。
逮捕者の中には14歳の中学生もいた。家庭や学校での啓発も重要になる。背後にある経済事情や家庭環境にも目を配りながら、社会全体で犯罪の芽を摘む必要がある。
一連の事件は深夜に、集団で一戸建ての窓ガラスを割って押し入る手口が共通する。窓ガラスにフィルムを貼ったり、鍵を増やしたりして防犯対策を強めておくことも大切だ。もちろん、集合住宅だからといって油断はできない。
現場周辺では、事件前にリフォームや水道業者を名乗る人物が各戸を訪ねていたことも報告されている。住人の数や資産状況、侵入のしやすさなどを調べ、襲撃する住宅を物色していた可能性がある。
被害者は高齢者が中心だが、光市では30代の男性宅が狙われた。誰が襲われてもおかしくない。地域のコミュニティーをいま一度点検し、不審な人物や車などの情報を共有する態勢も築き上げたい。
被害も加害も日常のすぐ隣に潜む。元凶の指示役がいる限り事件は続くだろう。広域強盗などで2年前に逮捕された「ルフィ」などと名乗るグループの幹部は、フィリピンから指示を送っていた。これ以上、治安への不安や若者の犯罪を加速させぬよう、警察は一刻も早い実態解明と摘発に全力を注いでもらいたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月03日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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