【社説①】:企業買収活発化 経済全体の成長につながるか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:企業買収活発化 経済全体の成長につながるか
日本企業による合併・買収(M&A)が活発になっている。事業の規模拡大などで企業の成長を加速させ、経済全体の活性化につなげたい。
英国の証券取引所運営会社によると、2023年に公表された日本企業が関わるM&Aの総額は、前年と比べて約5割多い23・1兆円だった。
投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)などによる東芝の買収計画を始めとして、大型の案件が相次いだ。
M&Aの件数も、4632件と10年前から約7割増えている。
企業の業績は好調で、手元資金が潤沢なほか、国内では低金利が続く。企業が成長に向け、M&Aに活路を求めているのだろう。
東京証券取引所が昨年3月、上場企業に対し、事業再編を含む経営改革を求めたことも影響しているとみられている。
M&Aは、事業規模の拡大のほか、新規事業や海外への進出を図る際などに使われる。後継者難の企業の事業承継にも活用できる。企業価値を高める上で、M&Aは有力な選択肢の一つとなろう。
ただ、過去には失敗に終わった例も少なくない。東芝は、買収した米原子力発電会社の巨額の損失で、経営危機に陥った。
相手企業の経営実態や将来性を精査することが重要だ。その上で、M&Aによる成長を、さらなる投資や賃上げにつなげてほしい。
一方、M&Aの中で、企業の経営陣による自社株買収(MBO)も目立っている。経営陣が、自己資金や融資により、自社株を買い取って非上場化する手法だ。
上場企業は、株主の意向に経営が左右され、外資系ファンドなど経営改革を迫る「物言う株主」から短期的な利益還元を要求されることも多い。MBOで非上場化すれば、経営の自由度が高まる。
大正製薬ホールディングス(HD)は、インターネット通販の増加などで一時的にコストが増えることを想定し、中長期的な視点で経営できるMBOを選択した。
少子化で教育事業の先細りが続くベネッセHDも、デジタル技術による事業の刷新などを図ろうと、MBOの実施を表明した。
ただ、MBOでは経営陣が買収価格を低く抑え、株主が不利益を受けることがあるという。また、非上場化により、決算などの情報開示が 疎 かになりかねない。
MBOを選んだ場合も、経営陣は一定の情報開示を通じた透明化などに努め、緊張感を持った経営を続ける必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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