《社説②》:習・ゼレンスキー協議 中国は責任果たす関与を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:習・ゼレンスキー協議 中国は責任果たす関与を
ロシアのプーチン大統領に対する影響力を行使して、侵攻したウクライナからの軍撤退に応じるよう働きかけるべきだ。
中国の習近平国家主席がウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議した。侵攻後、両首脳が意見を交わしたのは初めてだ。
習氏は「速やかな停戦と平和の回復のため独自の努力をする」と表明した。3月のプーチン氏との会談に続き、対話による解決を呼びかけた。
ゼレンスキー氏は「中国の政治的影響力」に期待を示す一方、ロシアに有利な中国の提案に対し「領土を犠牲にした平和はあり得ない」とくぎを刺した。武器供与など対露支援を控えるよう求めた。
米国に対抗するため、ロシアと連携する中国の戦略が大きく変わったわけではない。それでも、国内で絶大な権力を握る習氏が、主権や領土一体性を尊重する原則を確認した意義は小さくない。
侵攻から1年2カ月を経て、習氏がゼレンスキー氏との電話協議に臨んだのは、国際社会において中露が一体とみなされるリスクを気にしたからだろう。
中国にとって最も避けたいシナリオは、ロシアに向けられた欧米の結束が、自国への包囲網に発展することだ。
欧州諸国では、中国の対露姿勢への警戒感が高まっている。最近も、ウクライナの主権を疑問視するような駐フランス大使の発言が物議を醸し、習指導部は火消しに追われた。
今回の協議で、習氏は、出口の見えない戦争について「対岸の火事と傍観せず、火に油を注ぐこともしない」との立場を強調した。「核戦争に勝者はいない」とも指摘し、核兵器による威嚇を辞さないプーチン氏との違いをアピールした。
習氏の言動からは、ロシア、ウクライナの双方と対話ができる優位性を誇示し、対外イメージの改善につなげる思惑がうかがえる。
ただ、中国が停戦の実現に向けて力を尽くすというならば、国連憲章を踏みにじったロシアの暴挙を見過ごすことは許されない。
「仲介役」を果たすには、責任ある大国として火中の栗を拾う覚悟が求められる。本気度が試されるのはこれからだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月01日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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