【社説・08.04】:秘書給与詐取事件 政治不信に危機感ないのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・08.04】:秘書給与詐取事件 政治不信に危機感ないのか
公金で賄われる秘書の給与をだまし取ったとする詐欺容疑で、東京地検特捜部が広瀬めぐみ参院議員(自民離党)の事務所や自宅を家宅捜索した。政治とカネを巡る議員の不祥事がまた浮上した。言語道断であり、徹底した事実の解明を求めたい。
広瀬氏は弁護士で、2022年に岩手選挙区から初当選した。22年12月~23年8月に公設第1秘書の妻を第2秘書として参院に届け出たが、特捜部は勤務実態がなかったとみている。国から第2秘書に支払われる給与は月30万~40万円台。詐取の総額は300万円台後半とみられる。最終的に広瀬議員に渡っていたとすれば、国民への背信行為であり、許せない。
公設秘書は国家公務員特別職で議員1人に3人まで認められる。うち1人は政策秘書で資格が要るが、公設第1、第2秘書は資格が要らない。
端緒になったのは、第2秘書に勤務実態がないと報じた3月の週刊誌である。広瀬氏はホームページで「事実無根」と反論していた。うそをついていたのであれば、法律家としての資質も問われる。事実関係を公の場で説明するべきだ。
広瀬氏は昨年、フランス研修中の写真が「観光旅行のよう」と批判され、党女性局の役員を辞した。今年3月に報じられた不倫疑惑については事実と認めながらも説明責任を果たしていない。
政治とカネを巡る自民党の不祥事では、7月に堀井学衆院議員(離党)の秘書たちによる香典提供事件の強制捜査もあった。党派閥の裏金事件のけじめもまだついていない。国民の自民党への不信は深まる一方だ。
自民党は危機感を持って襟を正すべきだ。離党したら関係ないと言わんばかりの素っ気ない対応はいかがなものか。広瀬氏、堀井氏とも疑惑は党所属時代のものであり、調査、説明する責任は党にもあるはずだ。議員は離党で党に対する責任を取ったかもしれないが、国民への責任は果たしたとは言えない。
国民は物価高で生活が苦しい。税金や社会保険料といった国民負担率も一昔前より大幅に上がった。そんな中で議員が公金をくすねるような疑惑が浮上すれば、国民と政治の距離はますます開いていくだろう。
秘書給与の詐取では、与野党の国会議員が1990年代末から00年代前半にかけて何人も逮捕された。社民党衆院議員だった立憲民主党の辻元清美参院議員は02年に議員辞職し、後に執行猶予付きの有罪判決を受けている。
再発防止策として04年に国会議員秘書給与法が改正され、議員の配偶者を公設秘書に採用するのを禁じ、給与は秘書の口座に直接振り込むようにした。ただ秘書が受け取って議員に渡す抜け道があると当初から指摘されていた。
議員のモラルに任せた運用ではもう無理かもしれない。公設秘書の勤務実態や給与の支払い状況を第三者機関がチェックし、結果を公表するなどさらなる対策を考えるべきではないか。
元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年08月04日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます