【社説・10.13】:2024衆院選・裏金議員処遇 政治不信なくす道筋を競え
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・10.13】:2024衆院選・裏金議員処遇 政治不信なくす道筋を競え
国民の納得と共感を得ることができるだろうか。15日公示の衆院選で、派閥裏金事件に関係した自民党議員15人が非公認となった。党員資格停止などで既に固まっていた下村博文、西村康稔両氏らに加えて小選挙区の6人、比例代表の杉田水脈(みお)氏(比例中国)ら3人が加わった。
石破茂首相は総裁選の際、裏金議員を「公認するのにふさわしいかどうか徹底的に議論すべきだ」と強調した。だが、党内の反発に配慮したのか、その後はトーンダウンしていた。党内の反発を押し切る形で一部の非公認にかじを切り直したのは、国民の強い批判を意識したのだろう。
決着はしたが、すっきりしない。首相の言動に「政治とカネ」問題に本気で向き合う姿勢がどうも感じられない。
非公認とした裏金議員の選挙区には、新たな候補は立てない。さらに首相は、裏金議員が当選すれば「追加公認することはあり得る」とまで言い切った。これでは批判を集める裏金議員を選挙期間中だけ、党から「隔離」しているだけにも思える。
追加の小選挙区6人を選んだ基準も「地元に理解を得られているか」である。選挙に負けそうな一部の議員を切り捨てただけではないのか。
一方で、比例代表への重複立候補は認めなかったものの裏金議員の34人は公認した。首相は事前には「相当程度の非公認が生ずる」と説明していたが、実際には立憲民主党の野田佳彦代表が指摘するように、「大半が公認ではないか」という受け止めの方が国民には自然だろう。
比例で救済されない議員は厳しく感じるだろうが、党が獲得した比例代表の議席数は確保される。当選者の顔ぶれが変わるだけである。
国民に厳しい処分をアピールしつつ、政権維持のために党内の反発をかわしたい思惑が透けて見える。党のリーダーを代え、選挙の顔をすり替える「疑似政権交代」の刷新感で選挙を乗り切れば、後は「国民の負託を得た」というのでは都合が良過ぎる。
「政治とカネ」の問題は裏金議員の処遇で終わりではなく、総選挙がみそぎになるわけでもない。石破首相は総裁として政治資金を透明化し、金のかからない仕組みに改めていくことが必要だ。
例えば、政党から政治家個人に渡される政策活動費をどうするのか。使途の報告義務がなく、これまでも裏金の温床と指摘されてきた。
自民党の支出が飛び抜けており、2022年は約14億円にも上る。参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件でも原資と疑われた資金である。
各党が廃止をこぞって打ち出しているのに、自民党の公約は「将来的な廃止も念頭に透明性の確保に取り組む」である。極めてあいまいな表現で片付けられても困る。
政治資金規正法での政治家本人の厳罰化や企業・団体による政治資金パーティー券の購入禁止など、今回の衆院選の争点は多い。金権政治と決別し、政治の信頼をどう回復するのか。決意と具体策を競う選挙戦にしてもらいたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年10月13日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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