【社説・11.24】:PFAS汚染対策 米本国と同基準の適用を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.24】:PFAS汚染対策 米本国と同基準の適用を
沖縄の米軍基地から派生する環境汚染が、放置できない人権侵害の問題であることを、国際的な専門家が明確に示した。有害化学物質として規制の強化が進む有機フッ素化合物(PFAS)について、米本国と同じ厳しい環境基準を在日米軍基地にも適用させなければならない。
有害物質および廃棄物に関する国連特別報告者のマルコス・オレリャーナ氏が18~20日に沖縄を訪れ、PFAS汚染が確認されている基地周辺の水源などを視察した。記者会見でオレリャーナ氏は「PFAS汚染と米軍基地の間に関連性があるのは明らかだ」と指摘し、日米両政府の見解を聞く意向を示した。
PFASを巡る水質管理や浄化は欧米でも大きな社会問題となっている。沖縄の水源から高濃度のPFASが検出される深刻さを日米両政府は認識することだ。
米政府は4月、発がん性などの毒性が強く指摘されるPFOA、PFOSの2種について水道水1リットル当たり計70ナノグラムとしてきた勧告値を、順守の義務もある各4ナノグラムの規制値へと改めた。米国防総省は、飲料用井戸水の汚染に米軍の活動が関係していると判断された場合、浄化に取り組む指針を新たに定めた。
しかし、米国内でPFAS濃度の大幅な規制強化を進めながら、国防総省の指針は米国外の基地には直接適用されない。人体の安全に関わる措置について、米国の内と外で「二重基準」を設けることは人道に反するものだ。
特に沖縄では米軍基地からPFASが漏れ出た疑いが指摘されてきた。しかし、日米地位協定が壁となり汚染源の特定が進まない。地位協定が認める排他的管理権を盾に、沖縄県による立ち入り調査を米軍が拒んできたためだ。
在日米軍司令部は14日に、嘉手納基地や陸軍貯油施設(うるま市)に残っていたPFOS、PFOAを含む泡消火剤の廃棄が完了したと発表した。過去には消火設備への残留物が流出する事故があったほか、既に流出したPFASへの対応も残る。米軍が基地内調査を認めないままでは、周辺の環境改善につながるかどうか不透明だ。
オレリャーナ氏は、日米地位協定に環境問題への言及がないことにも言及し、現代の新しい国際基準に従うべきだと提起している。特別報告者は国連人権理事会で選任され、どの政府からも独立した個人の立場で調査、報告を行う専門家だ。政府や企業のしがらみを離れた指摘は、人権を守るよりどころとなる。
玉城デニー知事は昨年9月に国連人権理事会での演説にPFAS問題を盛り込み、国連の先住民族の権利に関する専門家機構(EMRIP)では「宜野湾ちゅら水会」などの市民団体が報告を行った。
広大な軍事基地に暮らしが圧迫される沖縄にとって、官民で粘り強く国際社会に働き掛けていくことが重要だ。
元稿:琉球新報社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月24日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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