路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

2024-02-05 06:45:50 | 【中国・共産党・香港・台湾・一帯一路、「国家の安全」、個人の権利を抑圧する統治】

【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:週のはじめに考える 習氏「軍粛清」の裏には

 中国の習近平国家主席(共産党総書記)による人民解放軍たたきが目立ちます。表向きは軍内の腐敗一掃とされますが、国防相やロケット軍司令官が解任されるなど粛清といえるほど苛烈です。

 胡錦濤前総書記、江沢民元総書記の時代には軍は聖域とされ、共産党トップの総書記といえども昇格人事で軍高官に気を使っていたことを考えれば、隔世の感があります。習氏の軍粛清の裏側にはどんな事情があるのでしょうか。

 ◆狙いは軍権の完全掌握

 1月上旬、中国共産党で汚職摘発を担う中央規律検査委員会の総会が開かれ、習氏は8日の開幕演説で「情勢は依然厳しく複雑だ」と反腐敗の徹底を訴えました。
 
 その最大のターゲットが、装備品調達に関する軍の汚職であることは明らかです。かつて装備発展部長を務めた李尚福国防相や、核ミサイルを扱うロケット軍司令官らが昨年、解任されました。解任理由は明らかにされていないものの、閉会コミュニケは「やいばを内側に向け、集団に害を及ぼす者を一掃する」と強調しました。
 
 一方、党中央は軍を政治的に引き締めるキャンペーンを展開。昨夏以降、習氏は戦区視察や会議などで、党による「絶対的指導」の堅持を軍に求めています。
 
 習氏が「反腐敗」を掲げて政敵を排除し、権力基盤を固めてきたのは事実です。とはいえ、今回の軍粛清については、党すなわち習氏に対する軍の忠誠を徹底させることに重点があるようです。
 
 中国政治に詳しい日中関係筋は「習氏が目標とするのは党が指導する強国建設。それには軍権の完全な掌握が不可欠で党と自身への一層の権力集中を図ろうとしているのではないか」とみています。
 
 歴史を振り返れば、毛沢東の独裁で混乱した中国を立て直すため改革開放路線を進めたのが鄧小平です。鄧は「選挙で選ばれない中国共産党の正統性は、経済成長で全ての国民を豊かにすることだ」との考えに基づき、独裁につながる個人崇拝を廃し、集団指導体制の政治を進めてきました。
 
 鄧が選んだ江、胡両氏も鄧路線を継承したといえます。

 ◆党指導による強国建設

 習氏も党総書記に就いた2012年「党創立から100周年(21年)までに(庶民がまずまずの生活を送れる)『小康社会』を実現する」と公約。鄧路線を歩むかに見えるスタートを切りました。
 
 その後の経済発展には目覚ましいものがありましたが、20年に李克強首相が「中国では6億人が月収千元(約2万円)前後の生活だ」と「小康」に程遠い現状を認めるような“爆弾発言”をします。習氏は翌年「貧困撲滅宣言」を出し「小康」を既に達成したと強弁しましたが、経済発展による統治の「正統性」が揺らぐ事態だったとも言えます。
 
 しかし、習氏には元来、経済発展に統治の正統性の根源を求めるような考えはなかったのではないでしょうか。22年の党総書記3期目以降に顕在化した「共産党指導下での強国建設」こそが、そもそも中国トップになった時から習氏の念頭にあった統治思想であり、リーダーとしての地歩を固めるにつれ鮮明になった鄧路線との決別は、いわば権力集中による強権統治という「地金」が出てきた結果とみることもできるでしょう。
 習氏の強権統治志向を下支えするのがナショナリズムです。米バイデン政権のカート・キャンベル・インド太平洋調整官は習氏1期目の16年の「米外交問題評議会」リポートで、早くも「経済が失速すれば、習政権は国内情勢の不安定さからナショナリズムに訴えるのでないか」と指摘しています。
 
 最近の台湾や南シナ海を巡る国際社会との対立が示すようにキャンベル氏は習氏の統治思想の本質を見抜いていたように感じます。習氏が既に1期目にしてぶち上げていた政治スローガンが、ナショナリズム色の強い「中華民族の偉大な復興」であることとも符丁が合います。

 ◆旧ソ連崩壊「他山の石」

 党の絶対的指導確立のために軍権の完全掌握にこだわる習氏は、旧ソ連の崩壊を「他山の石」とした節があります。香港メディアによると習氏は12年、党内会議で旧ソ連崩壊の理由について「ソ連共産党内の一部の人は党を救おうとしたが、専制の道具(軍)が手中になかったから、それができなかった」と指摘したといいます。
 
 毛沢東が「政権は銃口から生まれる」と言った通り、軍を党の最後の砦(とりで)とみる「毛流」の統治論を習氏が信奉している証左ともいえそうです。ただ、鄧路線と決別し「専制の道具」を手に習氏が進む道が、個人崇拝が社会を大混乱させた毛独裁時代への逆戻りとならないか、強く懸念されます。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年02月04日  07:49:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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