【社説②・12.27】:年金制度改革 信頼確保へ議論深めて
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・12.27】:年金制度改革 信頼確保へ議論深めて
厚生労働省の社会保障審議会が、5年に1度となる公的年金制度改革の方向性を示す報告書をまとめた。厚労省は通常国会への関連法案提出を目指す。
短時間労働者が厚生年金に加入する「年収106万円の壁」では要件の撤廃を盛り込んだ。一方、最大の焦点の基礎年金の底上げは結論を示さなかった。財政負担が増すことなどに慎重な意見があったためだ。
少子高齢化で年金を受け取る人は増え、支える人が減る流れは加速していく。保険料を薄く広く集めて財源を確保し、持続可能で信頼性のある制度にしていかねばならない。政府は多様な意見を聞き、議論を深めてもらいたい。
年金の給付水準は現在、物価や賃金の上昇率よりも抑制する仕組みが適用されている。基礎年金の水準は2057年度まで下がり続ける。将来の年金世代の暮らしが脅かされかねず、底上げが課題だ。
審議会は抑制する仕組みの適用期間を短縮し、厚生年金の積立金を活用して基礎年金を底上げする案を議論してきた。
この場合、厚生年金の受給者が受け取る年金額は一時的に下がる。また基礎年金の財源の半分は国庫負担のため、増税が避けられないとの見方もある。
このため「経済が好調に推移しない場合」に発動するとの考え方を示し、政府に一層の検討を求めた。
審議会に先立ち自民党社会保障制度調査会がまとめた提言にも同様の文言があった。来夏の参院選を控え、増税議論につながることを警戒したのだろう。
各年金の保険料はそれぞれの給付に使われる前提で徴収される。厚生年金の積立金を基礎年金の財源に充てることについて、納得のいく説明が必要だ。
「106万円の壁」については賃金のほか従業員51人以上の企業要件も撤廃する。実現すれば財政にもプラスとなろう。
加入により、労働者と企業は保険料を折半して払う。とりわけ中小企業には負担が大きい。政府は新たな支援策も検討してもらいたい。
会社員らの配偶者で、一定以下の収入であれば自ら保険料を払わなくても基礎年金を受け取れる第3号被保険者制度は、縮小を基本的な方向性とした。
女性が専業主婦の世帯を想定した制度で、働く女性が増えた現代では不公平だとして経済界から廃止を求める声が強い。
ただ第3号被保険者には介護や健康などの事情で働けない人もおり配慮が欠かせない。救済策も含め幅広い検討が必要だ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月27日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます