【社説・08.31】:兵庫知事が百条委出席 責任、取り方はき違えている
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・08.31】:兵庫知事が百条委出席 責任、取り方はき違えている
兵庫県の斎藤元彦知事がきのう県議会の百条委員会に初出席し、自身のパワハラ疑惑に関する証人尋問に臨んだ。
元県幹部らに告発された行為の一部は不適切だったと反省しつつ、パワハラかどうかは「百条委などが判断すること」と認めなかった。過去の記者会見と同じく、自らを正当化する主張も繰り返した。
百条委のアンケートでは全職員の4割に当たる1700人超がパワハラを見聞きしたと答えた。元県幹部ら2人が自ら命を絶ったことを鑑みても、知事の認識は甘過ぎる。
自らの言動で混乱を招きながら「県政を前に進める」と言い続けるのは理解し難い。責任の取り方をはき違えている。一刻も早く辞職して正常化を図るべきではないか。
告発されたパワハラの一つに、出張先で公用車を降りて20メートル歩かされた際に職員を怒鳴り散らした言動がある。百条委で知事は「当時は合理的な指摘だった」と説明。元県幹部が報道機関に配った告発文書も「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」として、元県幹部への懲戒処分の正当性を改めて訴えた。
一方、休日や深夜に業務チャットを部下に送っていたことや、協議中に机をたたいたり、付箋を投げつけたりした行為などは不適切だったと認めた。パワハラと認定されてもおかしくない行為の数々には改めて驚く。
知事は「仕事は厳しくするのがスタイル」「職員に嫌われても県民のために」と釈明した。仕事熱心さが行き過ぎたとの主張だが、額面通りには受け入れ難い。職員アンケートや尋問で「業務に関係ない知事のわがままや機嫌に振り回される」との意見が多数あったと明かされたからだ。
その一例が、イベントに参加した知事が県民と同じ更衣室を拒み、別の部屋を用意させた行為だ。百条委では「安全上の理由」と説明したが、個人的な事情で職員を振り回した印象が拭えない。
元県幹部の告発を「うそ八百」と断じ、公益通報と認定する前に懲戒処分した問題や、県産品の「おねだり」疑惑について、9月5、6日に証人尋問がある。これほど疑惑をかけられる時点でトップの適性を欠くのは明らかだ。
知事は多方面からの辞職要求を拒み続けてきた。百条委でも「過去は取り戻せない」「これからはもっといい知事としてやっていきたい」と改めて続投に意欲を見せた。
しかし、こんな姿勢で県民や職員の信頼を取り戻せるとは思えない。県政の停滞をこれ以上放置すべきではない。即刻辞職した上で、それでも正当性を主張したいなら出直し選で信を問うてはどうか。
3年前の知事選で推薦した日本維新の会の責任も問われる。そろって推薦した自民党が早々と辞職要求したのに対し、維新は実態解明が先決と主張。百条委では追及する姿勢も見せたが、当初の擁護方針が知事の態度に与えた影響は大きかろう。
地域のハラスメント根絶に向け知事は率先垂範すべき立場だ。他の首長は他山の石とし、高圧的な言動は許されないと肝に銘じねばならない。
元稿:中国新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年08月31日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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