【ジャニーズ事務所】:「東山新体制」を待ち受ける難題 補償金の総額は10億円 消えた社長候補の名前は
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ジャニーズ事務所】:「東山新体制」を待ち受ける難題 補償金の総額は10億円 消えた社長候補の名前は
藤島ジュリー景子氏(57)がジャニーズ事務所の社長を退任し、東山紀之(56)が新社長に就いた。東山の目の前には問題が山積み。創業者・ジャニー喜多川氏(2019年に87歳で死去)による性加害行為の補償問題、所属タレントのCM契約に企業側が躊躇している問題、新たな退所者が出そうな問題――その上、ジュリー氏が代表権付きの役員として留まることから、社内の権力構図は変わらないと見られる。<button class="sc-dwDwWi fsCfUO" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button><button class="sc-dwDwWi fsCfUO" data-cl-params="_cl_vmodule:detail;_cl_link:zoom;" data-cl_cl_index="26"></button>
東山紀之と藤島ジュリー景子氏(新潮社)
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◆なぜ、東山が社長なのか
ジャニーズ事務所の7日の記者会見を見た限り、まるで東山は批判の矢面に立たされるために社長に就かされたようだ。
ジュリー氏は社長を降りたが、代表権のある役員のまま。しかも株式を100%持つオーナー。その上、世界に類を見ない性加害行為におよんだジャニー氏の名前を冠した事務所名も変えない。事務所の体質を変えると叫んでも、これでは一般市民や国際社会に信じてもらうのは至難ではないか。
ジュリー氏が代表兼付き役員に留まる理由は、ジャニー氏の性加害被害者の補償と現所属タレントのケアに当たるためだという。最終的に被害者は1000人になるとも指摘されており、補償金額の算定が難航必至であることから、ジュリー氏は数年単位で代表兼付き役員のままであることが見込まれる。これでは何が変わるというのだろう。
「デイリー新潮」は8月31日配信の記事で、昨年10月に元副社長の滝沢秀明氏(41)が退社してから退所者が相次ぎ、今年3月にはジャニー氏の性加害問題が再び明るみに出たが、同事務所の売り上げは落ちていないと報じた。ひとえにファンのお陰だろうが、これがジュリー氏の自信につながっているようだ。
加えて「ジュリー氏が陰から経営への関与を続ける場合、東山紀之が次期社長の最有力候補」とも報じた。その後、井ノ原快彦(47)、国分太一(49)らの名前も伝えられた。
どうして社長候補の名前が次々と挙がったのか。「みんな社長就任に二の足を踏み、すぐに決まらなかったから」(現在もジャニーズ事務所内の事情に詳しい元スタッフ)。
ほかの役員の収入から推し量ると、同事務所の社長の年収は数億円。タレント活動の収入を軽く超える。それでも社長の座が敬遠されたのは、問題が山積しているためだ。わざわざ火中の栗を拾いたくないと考えたのだろう。
一方、約10人の社員を同事務所に出しているレコード会社、ソニー・ミュージックエンタテインメントのシニアアドバイザーで同事務所顧問を務める竹中幸平氏の名前も社長候補として取りざたされた。竹中氏は6月30日でソニー・ミュージックの執行役員を退任し、7月1日に同事務所の顧問に就いていた。まるで新社長になることを匂わせる人事だった。しかも、竹中氏は芸能ビジネスの世界での評価が極めて高いので、社長にふさわしかった。
「誰もが優秀だと認めている人」(芸能事務所幹部)
もっとも、ソニー・グループは日本屈指のグローバル企業。国連人権理事会が動くほど深刻で大規模な性加害問題の舞台となった同事務所を、自分たちが救済するように見えるのは避けたいだろう。欧米では少年少女への性加害行為が日本と比較にならないほど憎悪されているのだから。
同事務所の顧問には、放送界や芸能界に顔が利くNHKの理事経験者もいる。だが、テレビ局と同事務所の関係にも批判の目が向けられているため、やはり社長就任は難しかった。結局、新社長はタレント最年長でジュリー氏との関係も良い東山しか考えられなかった。
同事務所には体育会系の一面があるから、タレント最年長は後輩たちをまとめるのにプラス。また、補償問題や会社の改革問題があるので、全株式を持つオーナーのジュリー氏と気脈が通じていなければ社長は務まらない。
ただし、東山は同事務所の顔の1人。性加害問題の発覚前に社の問題点を指摘したことはない。このため、どこまで改革を進められるかは不透明だ。
◆東山の前にある難題の数々
新体制が第一に解決しなくてはならない問題は、ジャニー氏の被害に遭った人たちへの補償問題。同社が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」の提言には、補償金額を決める場合、あらかじめ民法学者らに意見を聴き、判断基準を策定しておくべきだとある。
補償金額は被害の内容によって一人ひとり異なるが、おおよその基準となる金額はある。その金額は「過去の性加害問題に照らし合わせると、100万円程度になるようだ」(同・元事務所スタッフ)。
被害者は計1000人とも言われるため、1人につき補償金100万円が支払われるとしたら、総額は計10億円となる。個人が引き起こした性加害問題の補償としては空前の額だ。
もっとも、同事務所には「不動産と預貯金などを合わせると、少なくとも3000億円以上の資産がある」(同・元事務所スタッフ)というから、10億円程度で屋台骨が揺らぐことはない。ただし、その莫大な資産が作り上げられる陰で、多数の少年たちがジャニー氏の犠牲になっていた。
それを考えると、過去の例に照らし合わせるだけで補償金額の基準を決めていいのかという声が上がりそうだ。補償は被害者の問題だが、世間の関心事になるのは間違いない。進め方を誤ると、新体制にとって命取りになりかねない。
◆「嵐」の退所問題の行方
ジャニーズ所属タレントのCM起用を企業が躊躇しているという問題もある。企業側としては高い契約金を支払って商品のイメージを上げるつもりが、下がってしまっては目も当てられない。逡巡するのは当然だ。
「企業のCM担当者や広告代理マンたちが『ジャニーズ事務所のタレントを起用したままで大丈夫なのか』などと不安を漏らし、同時に性加害問題の世間への影響について情報収集を行っている」(前出・芸能事務所幹部)
共同通信は主要企業114社を対象とした景気アンケートに、ジャニーズ所属タレントの新規CM契約や起用継続に関する設問を追加した。9月2日に発表されたその結果からは、企業側の戸惑いがうかがえる。たとえば、選択肢には契約を「行う」と「行わない」があったが、どちらかを選んだ企業は1社もなかった。
CMが減ると、同事務所の売り上げが落ち、一方でタレントの退所志向が高まる。テレビ出演のギャラよりCMの契約金のほうが圧倒的に高く、それが減ると同事務所とタレントの双方にとって打撃だからだ。
ドラマの主演クラスのギャラは1話当たり約200~300万円だが、CMの契約金はその約10倍。CMを減らさないため、新体制は同事務所のイメージ回復に努めるしかない。
もっとも、イメージ回復のために新体制に何がやれるかというと、なるべく早く補償問題を解決することくらい。同事務所は1995年の阪神・淡路大震災のころから寄附活動に熱心で、大きな自然災害があると必ず巨額の義援金を贈ってきたが、今後は難しいだろう。「まず補償を」と言われるのは必至だからだ。
退所者が出ないようにするため、東山は気配りもしなくてはならない。既に退所が囁かれているのが「嵐」である。元同事務所スタッフたちは、芸能活動休止中のリーダー・大野智(42)がメンバーを誘って出て行く可能性を指摘している。
「大野氏とジュリー氏の間にある溝が、退所すると見られた理由。そもそも2人の間には意見の相違があり、大野氏に関する女性誌記事への対処を巡って亀裂が生じた。大野氏はジュリー氏側に記事への対処を求めたが、その要望は通らなかった。大野氏は強い不信感を抱いた」(同・元同事務所スタッフ)
大野には人望があり、櫻井翔(41)、二宮和也(40)、松本潤(40)との絆は強いという。だから、大野が2年半も活動を休んでいるにもかかわらず、3人とも批判や不満を口にしない。大野が誘えば、3人は同調すると見られた。
もうジュリー氏は社長ではないが、代表権があり、なによりオーナーだ。大野はジュリー氏体制下の同事務所で復帰することはないと見られていたが、今後はどうするのかが注目される。また、相葉雅紀(40)はジュリー氏との関係が良好とされるものの、こちらも新体制になったことで今後の動きに関心が集まりそうだ。
ファンクラブの会員が約300万人もいるエースの「嵐」が退所した場合、現所属タレントたちにも動揺が走るだろう。
木村拓哉(50)にも退所説がくすぶっている。木村はメリー喜多川・元名誉会長(2021年に93歳で死去)から特別待遇を受け、その娘のジュリー氏からも厚遇されたが、新体制でもそのままとは限らないからだ。
タレントたちは今後、イメージが落ちた同事務所に留まることが得策かどうかを考えることになる。
■高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。
※デイリー新潮編集部
元稿:新潮社 主要出版物 デイリー新潮・DAILY SHINCHO 【芸能・エンタメ・ジャニーズ性加害問題】 2023年09月08日 06:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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