月組『赤と黒』
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月組『赤と黒』-思い出し日記(2)
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約半年おくれで始まった宝塚大劇場月組公演、残念ながら遠征することはできないのでライブビューイングで見届ける予定です。この公演が初宝塚観劇でたまきち(珠城りょうさん)の虜になってしまい退団発表していることを知った方のつぶやきがときめき具合が楽しすぎて、無事に退団公演まで見届けてほしいと今から願っています。そういう方もいらっしゃるんですね、ファンになるのにおそすぎるということはないと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=b4m6B8AsToU
2月の外箱『赤と黒』、ナウオンステージをまじえながらもう少し断片的に。
自分が銃を向けたレナール夫人@美園さくらちゃんが軽傷ですんだこと、そしてジュリアン@珠城りょうさんをおとしめようとするフリレール副司教@蒼真せれんくんに嘘の手紙を書かされたことを告げられたジュリアンは、死刑判決がくだされると幸せに満たされて微笑みさえ浮かびて自らの最期を受け入れていくのでした。「後悔していません、自分に嘘をつかずに生きた結果がこうなったのです。わたしが幸せになる事を許さない世界と戦ったのですから」。たまきちジュリアンの言葉、いんしつな環境の中でオマエはばかなのかとか言われて疲れ切った脳みそに響きました。
黒幕のフリレール副司教はほとんど舞台に登場しない、レナール夫人にジュリアンの行状について「女を手に入れその家の財産を乗っ取る男である」と嘘の手紙を書かせる2幕20場で登場するだけ。なので「フリレール、フリレール」って言わないと客席に伝わらないとナウオンでたまきち。
自分が最期を迎える時、レナール夫人とマチルド@天紫珠季さんを馬車に乗せて刑場の近くまでだったかな、連れてきてほしいとコラゾフ公爵@月城かなとさんにジュリアンは頼むのでした。下を向き「あなたがいなければ生きては行けない」とただただ祈りの中にひれ伏すレナール夫人はこのあとジュリアンのあとを追ってしまったのかもしれないと想像しました。レナール夫人に対して「あなたの首を持ち帰って弔うのがわたしの役目」と上を向く、激しい貴族の令嬢マチルダはどうしたでしょうね、先祖であるボニファス・ドゥ・ラ・モール公爵に憧れてジュリアンにその追い求める理想像を投影させ恋したマチルド、ジュリアンとぶつかり合うように恋をしたマチルドが本当に愛したのは自分だけだったのかもしれません、ジュリアンに恋する自分だけ。夫がレナール夫人と結婚目前までいったマチルド、二人の女性が同じ場所に乗って共通の恋人の最期の時を迎えるなんてドロドロ以外のなにものでもないところを宝塚の世界観に美しく昇華した舞台。カーテンコールでのたまきちの挨拶は、劇中のジュリアンのように、一回一回誠心誠意努めてきている舞台に後悔はないという内容のものでした。
月城かなとさん、出番が少なかったのが残念ですが、一幕ではほとんど友達のいない孤独なジュリアンのことを心配する友達フーケ、二幕ではマチルドを嫉妬させるための指南をジュリアンにするコラゾフ公爵を好演。ナウオンで貴族社会をジュリアンからみて共感できない世界にしたいと。2幕はパリの舞踏会、シャンデリアの下で紳士・淑女が華やかに集う場面からスタート。月組は久しぶりの華やかな舞台とたまきち。
フィナーレの「恋こそ我がいのち」にのせて踊るデュエットダンスは羽山紀代美さん振付、月組にあわせてあらたにかきおろされたもので役の延長にある感じとたまきち。毎回リフトがあるのは体が心配ですが、一幕のレナール夫人の部屋の場面からの延長線にある赤と黒を背景にしたダンスはさくらちゃんのそった細い背中が美しすぎて素敵でした。トップ娘役が自信をもって踊る姿は爽快でした。「恋と野望」にのせた娘役群舞では娘役さんたちをひきいて先頭で踊る姿が、ウエスト細すぎですがかっこよくてかっこよくて。群舞ダンスは安寿ミラさん振付、娘役が並ぶところはシャープでスタイリッシュ、月組娘役という感じがする。「若き日の輝き」にのせた男役群舞は燕尾服で客席おりもありました。燕尾服で客席おりはめったにないこととたまきち。客席おりが戻ってくることはもうない、あっても何年も先になるだろうと思うとかけがえのないものでした。「赤と黒のバラード」にのせた5組のカップルダンスも安寿ミラさん振付。芝居の流れのあるダンス、それぞれも振りも回転もちがう、爽やかで清涼感のあるダンスというたまきの話でした。
2008年に安蘭けいが外箱でジュリアンを演じていますが、すごくやりたかった作品でその映像をみたとはなしていたのは蓮つかさくんだったかな。専科のお二人、ラ・モール公爵@一樹千尋さんとピラール神父@夏美ようさんはやはりすごいという話もナウオンで出ていました。いろいろとおしえてくださり学ぶところが多いと。宝塚の芸ってこうして受け継がれてきているんですね。ヴェリエールの助役、ヴァルノ@千海華蘭さんが今回も専科の方が演じておかしくないようなしぶい役所で締めていたのが『夢現無双』に続いて印象的でした。蘭乃はなちゃんと同期、男役15年目でこんなにしぶい役と可愛いが同居しているすごさよ。芝居の月組味を感じさせる存在感。レナール夫人の夫@輝月ゆうまさんの、夫人に愛されてはいない存在、下級生が演じたレナール夫人の子ども3人は可愛いことしきり。家庭教師に入ったジュリアンがラテン語の聖書をすらすらっと暗唱してみせるところ、レナール夫人が惹かれていくのも無理ない爽やかで頭のいい青年ふりのたまきちジュリアン。
柴田作品、音楽学校で教材として使われることも多いようです。生徒さんたち、作品によっては台詞がすっかり頭にはいっていたり。時代にあわなくなってきているところもあるかもしれませんが美しい言葉に彩られた珠玉の作品たちはこれらからも繰り返し上演されていくことでしょう。