日比谷シャンテの3階で開催中の『ローマの休日』キャストのサイン入りポスター展より。
アン王女、Wキャストの土屋太鳳さん、つちやたおさんと読むんですね。宝塚の芸名みたいですが本名だそうです。土屋さん主演の回とまあ様(朝夏まなとさん)主演の回では客層がだいぶ違うのだろうと推測。ヅカオタのわたしはまあ様をみたかった。平方元基さんとの組み合わせもみたかったですが加藤和樹さんとの組み合わせだけでもみることができて幸せです。
まあ様の太陽のような笑顔は帝国劇場ばかりでなく、コロナでおおわれた世界を明るく、あったかく照らしてくれているように思います。オンデマンド配信で視聴しするまあ様が宙組生と歴代のショー作品の中から名場面を再現する番組、2013年にスカイステージで放送されたもので、花組から異動してトップスターとなったまあ様、娘役さんたちに「君可愛いね」と声かけてチャラ男と言われています。そのまあ様が退団から3年、こんなにキュートになってわたしたちを元気づけてくれるのがうそのようです。
有名な、後ろにブラッドレーをのせたスクーターでローマの街を疾走する場面、映像を使った演出でまあ様と和樹さんの姿がアップで映しだされました。その笑顔のキュートなこと、キュートなこと。終盤、カメラマンのアーヴィングが隠し撮りした写真をブラッドレーが一枚一枚愛おしそうにみていく場面では、これもお馴染みですがアーニャを名乗るアン王女が煙草を吸ったり、船上パーティーで自分をみつけだした追手の頭をギターでぼこっとするところなどのモノクロ写真が大きく映し出されました。どの写真もキュートで太陽のように明るい笑顔。疲れた心に沁みました。キュートな女子になったまあ様に、笑顔満開の役所、よく似合うと思いました。
宮殿へ戻ることを決意したアーニャがブラッドレーの部屋で別れを告げる場面、宮殿の前で最後のハグをして別れる場面、記者会見で王女に戻ったアンがブラッドレーと見つめ合い握手を交わす場面、二人がこうして会うことはもう二度とない、アン王女はブラッドレーと過ごした一日の時間を胸にこれからの人生を王室に一員として生きていく。わかってはいても切なくて涙がこぼれました。
カメラマン、アーヴィングの藤森慎吾さん、お笑いコンビオリエンタルラジオのお一人なんですね。全くわかっていないまま拝見しましたがブラッドレーに蹴られたりひっくり返ったりするときの笑いの間の絶妙さ、さすがでした。終演後、「楽しんでもらえましたか?」「退場は係員が順番にご案内しますのでお席でお待ちください」の案内もアーヴィングのお仕事でした。こういうところも明るい作品は楽しくていいですね。
10月24日(土)17時公演のカーテンコールの最後は、ブラッドレーがアーヴィングと手をつないでアン王女が嫉妬する場面も。最後はちゃんと和樹さんブラッドレーがまあ様アン王女をエスコートして幕。
ヴィアバーグ伯爵夫人の久野綾希子さん、二年前シアタークリエでまあ様のおばちゃんを演じていました。劇団四季『キャッツ』のメモリーを世に知らしめた方、健在ぶりが嬉しかったです。映画と違い、幼い頃から王女のお世話をしてきた想いを歌う場面が二度あって新鮮でした。アン王女もブラッドレーもそれぞれの想いを歌にのせているのでよりわかりやすく伝わってくるのはミュージカルならでは。これもお馴染みですが、冒頭の舞踏会でアン王女の脱げてしまった靴をはかせるために王女をダンスに誘うプロヴノ将軍、どなたかと思ったら今拓也さん。すっかり日本ミュージカル界の重鎮に。
もうひとつ今書きとめておきたいのは、これまた映画でお馴染みですが、瞳を輝かせてローマの街を歩くアーニャが美容院をみつけると髪を切る場面。映画でほんとに切っていいのっていう素振りのイタリア人美容師のマリオがオフ、オフっていいながら長い髪をはさみをいれていきますが、この場面を鬘で再現。アーニャの長い髪は鬘で、マリオがはさみをいれた髪の束も鬘、オペラグラスでみているとカットするたびに髪の束が外れるような仕掛けになっているようでしたがほとんど違和感を感じさせない鬘の丁寧でこまやかなつくりとマリオの手さばき。『エリザベート』『1789~』で鬘を提供したスタジオADのヘアメイクはさすがと唸りました。よくできています。そしてマリオのはさみをいれていく手さばき、演じていたのは岡田亮輔さん、ずいぶん練習されたんだろうなと思います。全く違和感を感じさせずお見事でした。
美しい舞台装置は『ハンナのお花屋さん』『モーツァルト』などを手掛けた松井るみさん、東宝でも宝塚でもすっかりお馴染みになりました。一日だけ望むことが叶う街ローマ、行ったことないし、この世にいる間に行くことはもう無理っぽいですが、舞台装置と映像、そしてイタリア語もまじえた台詞に、ひととき、アン王女と一緒にローマを旅しているような気分になりました。振付も東宝、宝塚ですっかりお馴染みの桜木涼介さん、クリエィティブ陣も戻ってきて安心しました。
8月14日(金)のコンサート以来の帝国劇場でした。ペットボトルの飲み物など一か所だけ売店が開いていました。劇場内ほんとに静かでさみしいですが、こうして幕があがり、自分、無事に観劇できたことが奇跡。いつ千穐楽がくるのかわかりません。なにかあればただちに上演できなくなるし、自分無事でいないと観劇できなかったのでありがたいことです。
しゃくねつじごくとコロナ禍でようやく過ぎた夏、これから厳しい寒さ、生きているだけで疲れます。その上に、疲れとストレスに満ちた中へ毎朝慣れない、バスに体を乗せて向かわなければならない生活。十分すぎるほどにきついです。休日に体をバスに乗せるのもそうとうにきついですがこんな時こそ観劇の時間は必要。1日の月組ライブビューイング、ファミマでチケット発券の用紙が足りなくなってきているとかツィッターでみかけました。当たり前みたいだったことの全てが当たり前ではないですね。
明日のことは誰にもわからない、一日一日を生き延びていく。『モーツァルト』に『レ・ミゼラブル』、まだ死ぬわけにはいかない。