2004年5月29日・6月5日(金)パーソナリティの発達と病理①②③メモ(2)
笠井仁(筑波大学心理学系)
(補足)用語解説
防衛(defense)
個体の安全性と恒常性を危険におとしいれようとするあらゆる変化を減少・消滅させることを究極目的とする心的操作のこと。
とくに不安は、自我の体制を崩壊させる危険をはらむゆえに、防衛は不安に対する自衛の手段である。
この操作は少なくとも部分的に無意識に行われ、防衛機制と呼ばれる。
昇華、同一化、投射、とり入れ、置きかえ(転移)、退行、折衝など、この機制は様々であるが、抑圧がその根本である。
昇華(Sublimation)
ある目標が社会的な承認を得にくく、また自我によって拒否される欲求(たとえばあらゆる性的欲求、攻撃的欲求など)が容認可能な行動に変容して欲求を満足させること。
同一化(identification)
同一視ともいう。個人が自己にとって重要な他人の外観・特性などを手本とし、それにしたがって、部分的・全体的に自己を変えようとする心理的過程を指す。広義には、模倣、感情移入、共感、精神的幹線、投射などを意味している。
同一化はまた防衛機制の具体的な操作として考えられる。
自我が不安によっておびやかされるとき、その不安をよびおこす源泉である他者との感情的結合によってその解消をはかる。
抑圧(repression)
個人がその本能的欲求(性や攻撃など)に結びついた思考、イメージ、記憶などを無意識の中に押しもどすとか、無意識の中に留めようとする精神作用をいう。本能的欲求の充足は、それ自体としては快感をもたらすものではあるが、その充足や満足は、それと対立する他の欲求に対して不快を誘発し、そのために本来の欲求満足が個人に重大な不安をよびおこすことになる。これは無意識界をつくり出す動きである。
フロイト
一次過程-手を加えていないそのままの思考、心の動きがない、防衛力がない、からそういうことはないだろう。
↓
二次過程-防衛機制がはたらく。
防衛機制の基礎
抑圧という防衛機制の背景には、「かわす」ということがある。決して悪いことではない。
資料NO.3
遺伝と現場:パーソナリティは遺伝するか
・家系研究が行われていた。が家系だけでは説明できない。むしろ環境。
遺伝がないわけではないが環境が大きい。
双生児研究
一卵性双生児-遺伝情報が同じ:必ず性別が同じ
二卵性双生児-遺伝情報が違う(染色体が違う):性別が異なることもある
結果-
一卵性の方が数値が高い。(一致する度合いが高い)
さらにいっしょに育てられた方が数値が高い。特に一卵性の場合、一緒にすごしていると数値が高い。同じ遺伝情報をもっているから。一緒にすごしていることも大きな要因。さらに一致しない例もいっぱいある。
↓
遺伝の影響は無視できないが、いろんな環境要因がパーソナリティを形成している。出会う出来事もさまざま。あきらかに遺伝の影響はあるが、それよりも環境の影響がもっと大きい。遺伝の影響=ある特徴が遺伝するということは必ずそうなるという運命的なことは意味しない。回りの要因で精神病の要因となるストレスを回避できる。環境も含めて人間の行動につながっている。
知能・精神病も似たような傾向を示す。
ネズミを使った行動研究(筑波大で行われている)(ネズミは世代交代が早い)
情動性は遺伝によってはっきり規定されていることが示されている。
人間でいえば緊張しやすさなど、気質的な側面。
↓
この上に人間は環境がある。
何がいいパーソナリティとされるかは、時代の影響を受ける。
明るく元気がいいと今はされているが、明るいばかりがいいとはかぎらない。
カウンセリングは明るい人をつくるためにやっているわけではない。
場に応じてメリハリをつけてふるまう。
調節できることが健康。
父親不在という問題
子供が最初にふれるのは母親でるという事実。
家の中で物理的、心理的に不在になっているかどうかでちがいがでてくる。
物理的にはいなくても心理的にはいるということもある。
父親なしに子育てはありえない。
ソーシャルサポート:支えは大切
虐待の場合など、ズレ具合を病気とみなすかは本人と回りが困っているか
どうかが判断基準のひとつ。
資料NO.6
病理をどうみるか、なにをもって病気とするかは相対的。
3つの視点、名前をつけるとその病気がつくられるという面がある。
ズレている人をみるときの一つの視点としてとらえる。
①同一性統合性:自分というまとまり。
②防衛操作:自分の思いをどうコントロールできるか。
③現実吟味:現実をそのとおりにとらえることができるかどうか。
資料NO.7
パーソナリティの病理
人格障害というと何か仰々しいが、何がいいとされるかはその社会によって
変わる。相対的。
精神病とはちがう。ものの感じ方、とらえ方にズレがある。
ちょっとズレている人に出会った時、その人を捉える視点のひとつ。
行為障害(18歳未満)-反社会性人格障害
警察では非行少年を指す。
精神医学の分類の中で名前をつけようとしたら
こうなった。精神病ではない。
その行為を精神の問題とみなすかどうかという問題。
あるパーソナリティだから病気になるということではない。
関係のあることが、原因と結果を意味しない。
いろんなことが関わってくる。
ある事柄はいろんなことがつながって起こる。
わりきれないことが多い。
あいまいなことをあいまいなままにしておくことも大切である。
いろんな状況を扱いながら問題解決の手助けをするのが
カウンセリング。
河合隼雄『無意識の構造』(中公新書)