どうにも東芝の不正会計問題へのマスコミの追及が生ぬるい。幹部らが組織的に1562億円の巨額の利益の水増しを行っていたことが発覚したというのに、第三者委員会は巧みに粉飾という表現を避け続ける。

最初は不適切会計だったのを不正会計と表現を変えたが、意地でも粉飾という言葉を使わなかった。しかし、これ素人目から見ても立派な粉飾である。なのに粉飾という言葉がテレビではほとんど出てこない。
どうやら粉飾にカテゴライズされたくないどっかの思惑が働いているとしか思えない。

テレ朝のモーニングバードでは、コメンテーターは
「刑事事件にならないと粉飾にはならず、今の段階では粉飾とはいえない。」

などと解説していたが、それって順序が逆じゃないか。粉飾だから事件にしないといけないのに、言葉をぼかして事件として報道しないのは極めて不自然で、あぁ裏になんかあるなと勘ぐってしまう。
警察が動かないと事件としてちゃんと報道できないのは、最近の殺人事件の報道を見ててもよくわかる。実名も顔をぼかし続けて、逮捕された瞬間に一斉に鬼の首をとったように晒し者にする。

誰も責任を取ろうとしないのはマスコミも一緒なんだなと思う。
 
粉飾に分類されると、上場廃止と損害賠償金、刑事罰など多くのペナルティが課せられる。そうなると、東芝の屋台骨が揺るぎ、経営が立ち行かなくなるといろいろと困る方が政界や経済界にたくさんおられるようだ。

まず、「東芝さま」はテレビやマスコミにとって大スポンサーである事。テレビ局の営業部や経済部からは泣きが入っており厳しい批判を封印している。

もう一つは、歴代社長経験者は自民党政府の重要ポストに就いているという事。彼らの批判をすることはそのまま自民党への批判に直結する。

それだけではない、東電の原発事業のメンテナンスを一手に引き受けている東芝をここで頓挫させたら、山積する原発処理と再稼働の問題が立ち行かなくなるとの政府の見方もある。

加えて過去に買収した米原発大手企業ののれん代の償却問題がのしかかっている。原発事業悪化で今後すでに3000億円ほどが特別損失として計上されるという。

ここで粉飾というレッテルを張られてマスコミや国民の追及を浴びれば、政府や日本経済界への影響は甚大となる。そんな大人の事情が複雑に絡み合っているとからといって、完全に腰が引けた粉飾報道となっているのだとしたら、それこそマスコミの存在価値などない。

かたや倒産危機、戦犯はだれかなどとまるで極悪企業のようにマスコミに叩かれているシャープだが、これは単に経営戦略のミスだ。ここまでボロクソに書かれる筋合いはない。

東芝のやったことこそガンガン攻めて、ボロクソに書いてやるべきだ。

長年にわたり虚偽の申告をし続けた事は、社会に対する背信行為で、それは今までの歴史と信頼を失墜させるほどの重大な事件である。

たとえば、消費者としての僕の感覚で言わせてもらうなら、今後電化製品を買う場合、シャープの商品ならなんとか頑張って欲しいという思いで購入しようとすることもあるが、東芝は最初から検討対象から外してしまう。この差は案外でかい。