報告書がまず問題視したのが秘密裏の交渉による合意の経緯だ。安倍晋三首相の側近の谷内正太郎国家安全保障局長と、朴前大統領の側近で駐日大使も務めた李丙〓(イビョンギ)国家情報院長(当時)による協議の結果、日本は(1)第三国での慰安婦関連碑・像の設置は不適切(2)「性奴隷」という言葉を公式に使わない(3)慰安婦関連団体の説得は韓国政府が行う-などと要望。韓国側は像設置の動きを支援しないと答えるなど、非公開部分の合意は日本側の要望に沿う形になったとしている。
北朝鮮による核・ミサイル開発が続く中、日米韓の安保協力に支障が出かねない合意の破棄や再交渉などは求めないと期待するが、前政権を弾劾した「ろうそく革命」の名残もあり、やや不安はある。(聞き手・境田未緒) ※〓は、土へんに其
「慰安婦像問題」韓国のデメリット大きい 日本からの救いの手はもう無い 投資家も韓国から手を引く?
ZUU online編集部 2017/01/15
https://zuuonline.com/archives/136054
慰安婦問題の最終的・不可逆的な解決③:合意の問題点 2016/01/15 00:00 | 韓国・北朝鮮 |
今回の合意によって本当に問題は決着するのか。
これは、残念ながら分からない、と言わざるを得ません。
合意事項に「不可逆的」という強い文言を入れて、それを米国を巻き込む形で約束させたとしても、合意の履行が当事者の意思にかかっている事実は動かせません。
たとえば韓国側が、日本が合意の精神に反する行動をとったとして、だから韓国も合意に拘束される必要はない、というのも十分にあり得る話であり、しかも今回の合意は解釈の幅をもたせて玉虫色にしている面がありますから、結局のところ当事者がどこまで本気で取り組むのか、というところにかかってくるわけです。
なお、合意の実効性を高めるため、共同宣言という文書の形にしておくべきだった、という意見もあります。たしかにそれはそのとおりですが、大きな問題とは思いません。今回の合意事項は、日韓両国の外交当局のHPで、日本語版のみならず、韓国語版、英語版まで即時に公表されており、両国の意思は広く明示されています。ここまでやれば事実上、共同宣言と同等の効力があるといえるでしょう。交渉当事者も共同文書までこぎつけたかったところでしょうが、時間的制約とお互いの国内事情を考慮し、ギリギリの判断で見送ったのだろうと思います。
しかし、こうした合意の不安定性は、日韓の外交当局も織り込み済みです。両国の国民感情を考慮すれば、ある程度の解釈の幅を認めないと合意に達することなどできません。これはイラン核合意にも当てはまることで、ハードな国際交渉では珍しくない話です。
完璧な合意など不可能ですから、どこまでベターなものが作れるか、そういう視点でないと生産的な議論はできません。
今回の合意に関して、日韓が合意に反するような行動に出るかどうかですが、これは両国の世論・国民感情にかかっています。
今回の一件については、まず①最初の記事のとおり、米国の後押しと韓国の方針転換のシグナルがありましたから、ここは乗っかるというのが常道となります。
その結果、②2回目の記事のとおり、日本としてはこれまでなかった以上に有利に交渉を進め、韓国側から相当の譲歩を引き出しました。
残る問題は、③今回の記事のとおり、韓国世論がどう動くかです。日本としては、これができるだけ有利な方向に動くよう誘導する他ない、ということに尽きるでしょう。
最後に付け加えると、北朝鮮の核実験は、日韓両国が米国とともに連携を強める方向に働きます。朴政権のハードライナー路線も支持を強めることになり、4月の総選挙に追い風になるでしょう。そうなれば韓国政府としても、世論を抑えて、今回の合意を履行することが容易になります。(略)
慰安婦問題の最終的・不可逆的な解決②:合意の内容 2016/01/13 00:00 | 韓国・北朝鮮 |
ここで外務省HPに掲載されている合意事項を読むと、色々な工夫が仕込まれていることが分かります。
まず、民間団体ではなく韓国政府が設立する財団に担当させているのがポイントです。
アジア女性基金が韓国から批判された(元慰安婦が償い金の受け取りを拒否した)理由は、あくまでも民間団体による事業であって、日本政府はこれを支援するに過ぎない、という形をとったことにあります。
これは法的責任があることを認めないためのアプローチですが、このために日本政府が堂々とその事業をアピールできないという弱点を抱えていました。
今回の合意では、韓国政府による事業であり、これを日本政府が支援するという形になっています。こうなれば実施の責任をもつのは韓国政府ですから、批判の矛先は韓国側に向けさせることが可能になります。
しかも日本としてはこれを全面的に支援する立場にありますから、何も遠慮することなく堂々と事業の意義をアピールできます。今回のように共同発表という大々的なプレイアップをしても何も失うものがないわけです。これは非常にうまいやり方です。
もう一つ譲ったと考えられるものは、「責任を痛感している」「おわびと反省の気持ち」という言葉です。
たしかに「責任」については、アジア女性基金の書簡で用いられた「道義的な責任」(=法的責任ではない)と比べると、一歩踏み込んだものとみる余地があります。
しかし、日本としては法的責任は絶対に認めないことを類似繰り返していますから、これをもって「法的責任」を認めたと解釈することは不可能です。
では「道義的な責任」と「法的責任」以外に何があるのかといえば、言語ゲームとしては色々考えられそうですが、今後の日本政府の行動を何ら制約するものにはなりませんから、その議論は無意味です。
そうすると、合意事項にある言葉は、これまでの日本政府の方針から一歩も逸脱しない内容となっており、これを韓国が評価してくれるのであれば日本にとってはもうけものという文章です。
このような言葉の選択に実質的な意味がないのは戦後70年談話と同じです。結論としてここは大きなポイントとは思いません。
そういうわけで、トータルとしてみると、日本としては、10億円は譲りましたが、韓国に対して、元慰安婦への補償の履行の責任を負わせ、政府として問題を蒸し返さないことの約束を米国を巻き込みながら認めさせました。
交渉自体としてはかなり相手に押し込むことに成功したといえます。これまでの韓国政府の頑なな立場を考えると、よほど韓国側は追い込まれていたのだろうと思わせます。(略)
慰安婦問題の最終的・不可逆的な解決①:合意に至る経緯 2016/01/05 00:08 | 韓国・北朝鮮 |
まず、今回の合意をもたらす大きな原動力となったのは、何と言っても米国の関与と考えられます。
合意の発表直後に、ホワイトハウスと国務省が相次いで声明(ライス大統領補佐官のステートメント、ケリー国務長官のステートメント))を発表しました。
本件のような純粋に二国間の問題に対して、米国が、直後のタイミングに、これだけ高いレベルの声明を発出するというのは、極めて異例なことです。
また、日韓の外交当局は共同記者発表の英語版を即時に公表しました(日本外務省のウェブサイト、韓国外交部のウェブサイト)。
さらに、合意の中に、「今後、国連等国際社会において,本問題について互いに非難・批判することは控える」という事項が含まれ、次回述べますが、「不可逆的」という表現を用いています。
これらは、日韓両国が米国の目線を強く意識していることの現れといえます。
米国は、「Pivot to Asia」「Rebalancing」と唱えて、アジア重視の政策方針を明らかにしながらも、自らが地域の問題に首を突っ込むことは回避する慎重な態度をとってきました。
これは中東にも言えることですが、自らが手を汚す形でリスクをとることを避けるオバマ政権のアプローチの特徴といえます。
アジアでは、中国がサイバー戦争、南シナ海、AIIBといった問題において、既存の秩序に挑戦する姿勢を強め、北朝鮮も金正日が死去して状況が不穏になる中で、米国としては、日本と韓国が共同して問題に当たって欲しい、少なくとも不安定要因となることは勘弁して欲しい、という気持ちがありました。
加えて、「オバマ政権のレガシー」で指摘した現政権のレガシー志向があります。
このように、日韓関係の改善への期待を高める米国は、14年3月に日米韓首脳会談をアレンジしたように、積極的な関与の姿勢を強めます。
さて、韓国はといえば、ご承知のとおり、従軍慰安婦問題が解決しない限り首脳会談が実現することはない、と明言して、自ら門戸を閉ざしていました。
日本側としては、韓国が姿勢をあらためない限りどうにもできない、というのがこれまでの基本的な構図になっていました。
しかし、この韓国の強硬な姿勢は今年後半になって急激に変化しました。その端緒となったのは昨年11月の安倍総理・朴大統領にとって初の日韓首脳会談です。
おそらく会談のアレンジの時点で日本側は今回の合意に至るシナリオを描いており、だからこそ韓国も応じたのでしょうが、首脳会談の実現にこぎつけたこと自体が大きなモメンタムとなります。
韓国側の決断の背景に何があったのか。
まず前述のとおり米国からの働きかけが効いたというのが大きな要因でしょう。
韓国の中国への傾斜により米国との関係が厳しさを増す中で、北朝鮮の脅威の高まりやTPPの合意は韓国にとって関係改善に向けた大きなプレッシャーになりました。
また、歴代の韓国政権は、支持率が低迷すると反日感情に訴えるというポピュリスト的なアプローチをとっており、特に朴政権はその傾向が目立つ政権でしたが、最近ではこの手法の限界も見えてきました。
さらに、韓国では今年4月に総選挙が控えていますが、朴政権の支持率は高いとはいえないものの、概ね45%を上回る水準で安定的に推移しており、これに対し、野党新政治民主連合は党内分裂により勢いを欠く状況にあります。
今回の合意における最大のリスクは韓国世論のバックラッシュですが(これは次回述べます)、現在の野党側の混乱にかんがみれば、次の選挙で大きな悪影響が及ぶ可能性は低い、むしろ、外交の成果としてうまくアピールすればさらに支持を伸ばすことができる、これが政権の読みだったのでしょう。(引用ここまで)
日韓最終合意の裏で米政府が進めてきたこと 米国は日韓の和解へ向け努力を重ねてきた
ダニエル・スナイダー : スタンフォード大学教授 著者フォロー 2016/01/10 6:01
https://toyokeizai.net/articles/-/99951
アゴラ 日本人が知らない慰安婦問題に関する日韓合意の意味 --- 江川 純世 2016年01月10日 06:01
http://agora-web.jp/archives/1666262.html
時事通信 【図解・政治】慰安婦問題の日韓合意(2015年12月)
https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_pol_seisaku-gaikou20151228j-02-w410ianhu