昨日の東奥日報の社説に画期的な見解が出されました。ここまで来たか!という感慨にふけりました。同時に、ここまで言うのであれば、このような「不良品」をつくるうえで、日本のマスコミがどのような役割を果たしたか、検証すべきです。ここまで安倍首相を好き勝手に、やりたい放題にさせたのは、どのような力がはたらいたか、選挙制度もありますが、それを許した民意を形成したものが何であったか、明らかにすべきです。
現行の小選挙区比例代表並立制の導入は「自民党の分裂を避けるために同意した」とする河野洋平氏の無責任さに呆れるばかりです。非自民·非共産連立政権(実は反共政権)の首相であった細川護熙氏と河野洋平氏は、更に、重大なことを決定しました。それは比例代表制に11のブロック制の導入でした。これは深夜の会見で発表されたのです。しかも国会で充分審議することなく成立させたことでした。もう一つは、政党助成金制度です。
この制度が、その後の日本の政党政治に何をもたらしたか、明瞭です。大量の死票という民意が切り捨てられている実態、これが元になって生じた政治不信による棄権票の増大、そのことによる自民党の暴走と悪法の成立による政治の暴走など、憲法無視が横行する政党政治です。その象徴的な言葉は貧困の増大です。東アジア諸国との連携の欠如など、外交政策の貧困化の進行です。
こうした政治の貧困化を推進した選挙制度を決定したことの責任を、細川・河野両氏と、それに関わった政治家たちに、どのように求めるかです。更に言えば、この選挙制度をつくらせた時の「民意」のスリカエはどのようなものであったか、このことも明らかにすべきです。
一つは、都市と農村の格差の象徴として顕在化してきた中選挙区制度下における一票の格差の放置によって自民党政権の延命に手を貸してきたこと、二つは、自民党の派閥政治の温存と金権腐敗にメスを入れてこなかったこと、三つ目には、そのような自民党政権と真っ向対決を避けてきた中間政党や新党が自民党政権の延命を助けてきたこと、四つ目は、ソ連・中国の「脅威」論が、政権延命に貢献してきたこと、このような構造を操作してきた背景にアメリカの軍事戦略と日本の財界の意向がはたらいてきたこと、これらのことを明らかにすべきです。
自民党の金権腐敗批判をスリカエるために使われた言葉が「政治改革」です。それを自民党を批判するかのようなフリをしてスリカエを駆使して登場してきた日本新党とそれを中心とする細川内閣 (日本新党・社・新生・公・民社・さ・社民・民主改革)政権が、細川首相の佐川急便との金権癒着・腐敗に汚染されていたことが明らかになったことで政権を投げ出し、その後の羽田内閣(新生・日本新党・民社・公明・自由)政権、村山内閣・橋本内閣(自社さ)政権、小渕内閣(自自公)政権、森内閣 (自公保)政権、「自民党をぶっ壊す」と言わざるを得ないほど自民党政治に対する不信が渦巻いていた状況下に小泉内閣(自公保)政権を成立させたことなど、実は国民の政治不信を首を挿げ替えることで交わしていく大なるスリカエ手法でした。
以上のように90年代のスリカエは、2000年代には「備えあれば憂いなし」「改革には痛みを伴う」、「劇場型政治」を演出したのでした。国民参加型を装ってでした。しかし、その後の日本の政治・経済・外交がどのような結果をもたらしたか、そのことを検証すれば明瞭です。その象徴的事実は、小泉氏の原発ゼロ発言と言えます。もう一つは、安保自衛隊を容認した80年の社公合意の完成としての村山・橋本自社さ政権の樹立です。
それでは以上の視点を象徴する95年前後の以下の動きを掲載しておきます。こうした動きのなかで、現在の安倍首相の暴慢暴走が準備されていったことを強調しておきます。
全道庁労連:NO91 雇用を破壊した「新時代の『日本的経営』」論
文部省 審議会答申等(21世紀を展望した我が国の教育の在り方 ...
日米軍事同盟の異常/世界と日本 25回党大会決議案から 2009年12月2日
「冷戦終結と変質する日米安保体制-地域から問う平和戦略の構築 ... 2010年5月25日
最後に、東奥日報の主張を踏まえて言うのであれば、絶対支持率30%以下の自民党が圧倒的多数の議席獲得する虚構の安倍政権が、その支持率の高さを口実に暴走しているという事実です。この高支持率はどのような報道によって演出されているか、です。
もう一つは、民意を正しく反映した国会をどのようにすれば実現できるかということです。そのためには、まず度々繰り返される「政界再編劇」と「新党ブーム」、最近では「第三極ブーム」などにマスコミはどのように関わったかがあります。更に言えば金権腐敗を排除するためにという理由で設置された政党助成金の検証についてです。最後に言えば、一票の平等を確実に具体化できる選挙制度、国際社会では多数派となっている比例制度の実現と公平な政党選択と参政権を具体化するための必要不可欠条件である国民の知る権利を保障する選挙制度の構築です。マスコミやマスメディアが、国民にどのような選挙情報を提供してきたか、或いは公約をどのように具体化してきたか、或いは公約を破ってきたか、国民に報せる責任です。政党助成金を受けていながら公約に違反する、憲法に違反する政治を行う政治にどのように渇を入れていくか、です。
一票の格差解消で言えば、自民党や地方の自治体などが盛んに主張している一票の格差を是正していけば地方の声が国会に届かなくなるという口実です。こうした民主的な選挙制度の構築を妨げる口実をどのようにして克服していくか、です。都市と農村の格差を作り出してきた張本人が、今、その議席を掠め取るための方便を振りまいているのです。
そもそも国会議員の任務は、憲法に明記されているのです。それは国会・両議院は、「全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」とあるように、一行政区の利益を代弁するものでありません。問題は、「全国民を代表する」政治と地方の声を国政に反映させることの統一です。「正当に選挙された」、国民を代表した議員が、権力を行使することで、国権の最高機関、唯一の立法機関の国会において、国民が「福利」を「享受する」法律をどのように制定しているか、チェックできているかどうかです。
例えば沖縄の普天間基地問題は、一沖縄の問題でしょうか。原発再稼動は原発立地自治体の問題でしょうか。限界集落問題は過疎地の問題でしょうか、TPP参加は農民の問題でしょうか、農村の疲弊は都市には関係ない問題でしょうか、などなど、多くは国政上の、全国民の福利向上の問題です。これを一地方の問題にスリカエているのは、誰でしょうか。こうしたスリカエを許さない報道はなされているでしょうか。
そのような視点で東奥日報の社説を読んでみたという訳です。それにしても、安倍首相の暴走についての批判が多くなってきた年末ですが、それでも総辞職・国会解散を求めない日本の民主主義の後進性には呆れると同時に、声を大にして、安倍政権の退場を求めて生きたいと思います。同時にその受け皿として、これまでのような首のすげ替えではなく救国暫定国民連合政権の樹立です。
東奥日報 死に票多い選挙が背景に/強引な政権運営 /2013/12/30 10:05
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2013/sha20131230.html
2013年は「民主主義が死んだ年」として記憶される可能性大である。民主主義とは、主権者たる国民の意思が政治に反映される制度であるが、安倍晋三首相の強引な、世論無視がまかり通った年だった。原因は、突き詰めれば、膨大な「死に票」を生む選挙制度にある。選挙制度は早急に、何らかの見直しが必要だ。昨年12月の衆院選での自民党の得票率は、比例代表27%、小選挙区43%にすぎない。1強状態は決して民意を映した姿ではない。それを自覚し、謙虚な政権運営を心掛けるなら救いもあるが、政府・自民党は数のおごりを隠そうとしない。10月の共同通信世論調査で国民の半数以上(50.3%)が反対した 特定秘密保護法案を、衆参合計たった68時間の審議で、強行採決してしまった。今また、 南スーダンで国連平和維持軍(PKO)として活動する韓国軍への銃弾1万発無償提供を、 国家安全保障会議(NSC)と、持ち回り閣議で即決。武器や弾薬を提供することはないという政府見解を、あっさり変更した。この調子でいけば、国民の53.1%が反対(共同通信の電話世論調査)する、憲法解釈見直しによる集団的自衛権の行使容認も強行されかねない。政策の善しあし以前に、政治手続きとして危惧の念を抱かざるを得ない。3月、総務省が明らかにした数字によると、昨年の総選挙で落選者の獲得した得票総数は53.06%で、当選者のそれを上回った。また、死に票が50%以上の小選挙区が、6割の188に及び、長野3区や東京1区では死に票率70%を超えた。本県1区も59.53%と高率で、県全体でも44.54%と半数近い。選挙に行く気が薄れる一因でもあろう。 参院選は、改選数1人区から5人区まであり、死に票率の算出は衆院選より難しいが、「 1票の格差」是正へ選挙区定数4増4減が行われた7月の参院選では、改選1人区が2増えて31になり、衆院選に近づいた。山梨県選挙区では死に票率62.7%に上った。今年は「1票の格差」をめぐる訴訟が相次いだが、死に票は、大多数の意思反映がゼロになるという意味では、1票の格差以上に憲法第14条の「法の下の平等」に反する可能性もある。10月3日付本紙夕刊に載った河野洋平氏のインタビューが興味深い。1994年、細川護煕首相の衆院選・小選挙区比例代表並立制の導入に、自民党総裁として合意したが、本心は「小選挙区制は必要ない」だった。政権交代可能な制度をつくるのが目的でもない。自民党の分裂を避けるために同意したという。「与党の間違いをチェックする野党がいることが、議会制民主主義で最も重要だ」とも河野氏は述べた。合意したご当人が今ごろになってそれに言及するのは、ひどい結果を招いてしまったという悔恨がよほど強いのだろう。もし不良品なら、早めに直した方がいいのではないか。(引用ここまで)